翌朝、メールの本文欄に「昨日はありがとうございました」まで打って、その先で手が止まる。会食のお礼メールを送ろうとして、こうした経験をされた方は少なくないと思います。

失礼があってはいけない。けれど時間はない。始業前の十分ほどで、なんとか送ってしまいたい。そんな朝のために、この記事では立場別の例文をそのまま使える形でご用意しました。

そのうえで、もうひとつお伝えしたいことがあります。お礼メールが書きにくいのは、実のところ文章力の問題ではありません。その会に、書けることがあったかどうかです。年間200件超の食卓に出張料理人として立ってきた立場から、後半でその話をさせてください。

SUMMARY

結論:会食のお礼メールは、翌日の午前中までに送るのが基本です。 文面に必要なのは、当日の具体的な話題への言及、次につながる一言、そして簡潔さの3つです。「昨日はありがとうございました」だけでは、相手の記憶には残りません。 本記事では、接待した側・された側・社内・初対面という立場別に、そのまま使える例文をご用意しました。 あわせて、出張料理の現場から見えた「お礼メールが書きやすい会と、書きにくい会の違い」についてもお伝えします。

会食のお礼メールは24時間以内に|翌朝がもっとも届く

送るタイミングは、翌日の午前中までを基本とお考えください。

理由は単純です。相手の記憶が鮮明なうちに届くほど、当日の話題に触れた一文が生きるからです。三日後に「先日の◯◯のお話が」と書かれても、相手はまず記憶をたどる作業から始めなければなりません。翌朝であれば、読んだ瞬間に昨夜の情景が戻ってきます。

もし数日空いてしまったとしても、送らないという選択よりは、送るほうが誠実です。その場合は「ご連絡が遅くなり失礼いたしました」と一言添えて、通常どおりの内容で構いません。

件名は、用件が一目で分かる形にします。「昨日の会食のお礼」「◯◯の件、ありがとうございました」といった具合です。凝った表現は必要ありません。朝のメールボックスは混み合っていますから、開けることを最優先に考えます。

そのまま使える会食のお礼メール例文|立場別

会食に整えられた個室のテーブル
話に集中できる設えが、翌朝の一通につながります。

ここからは、立場別の例文をご紹介します。「◯◯」の部分をご自身の状況に置き換えてお使いください。

接待した側から、ゲストへ

取引先をお招きした側からの一通です。来ていただいたことへの感謝を軸に、次の接点をそっと置きます。

件名:昨日の会食のお礼

 

株式会社◯◯

◯◯様

 

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。

 

昨日はご多用のなか、会食にお越しいただきありがとうございました。

 

◯◯様からお伺いした△△についてのお考えは、私どもにとって示唆に富むものでした。社内でも早速共有し、次のご提案に反映してまいります。

 

ご相談いただいた件は、改めて資料をまとめてご連絡いたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

□□

接待された側から、ホストへ

招いていただいた側からの一通です。接待のお礼メールでは、場や料理への具体的な言及が、そのまま相手への敬意になります。

件名:昨日の会食のお礼

 

株式会社◯◯

◯◯様

 

お世話になっております。株式会社△△の□□です。

 

昨日はお招きいただき、誠にありがとうございました。お店の選定からお心配りをいただき、恐縮しております。

 

とくに◯◯のひと皿は印象に残っており、今朝も同行した者と話しておりました。△△についてお話を伺えたことも、貴重な時間となりました。

 

次回はぜひ私どもにお声がけさせてください。引き続きよろしくお願いいたします。

 

□□

社内の会食のあと、上司へ

社内の集まりでは、硬すぎる文面はかえって距離を生みます。敬意は保ちつつ、少しだけ温度を上げます。

件名:昨日はありがとうございました

 

◯◯部長

 

お疲れさまです。□□です。

 

昨日はお声がけいただき、ありがとうございました。普段の業務のなかでは伺えない△△のお話を聞くことができ、自分の視野の狭さを実感しました。

 

ご指摘いただいた◯◯の点は、今週中に整理してご相談させてください。

 

引き続きよろしくお願いいたします。

 

□□

初対面の相手だった場合

もっとも書きにくく、もっとも効果の大きい一通です。名乗り直しから始め、印象に残った話題をひとつだけ具体的に置きます。

件名:昨日の会食のお礼(株式会社△△・□□)

 

株式会社◯◯

◯◯様

 

昨日の会食でご一緒させていただきました、株式会社△△の□□と申します。

 

席が近く、△△についてお話を伺えたことを嬉しく思っております。◯◯というお言葉が、帰り道もずっと頭に残っておりました。

 

ご興味をお持ちいただいた件について、資料をお送りできればと存じます。改めてご挨拶に伺える機会をいただけましたら幸いです。

 

□□

会食のお礼メールに入れたい3要素

例文をご覧いただくと分かるとおり、どの一通にも共通する要素があります。次の3つです。

具体的な話題への言及

何を話したか、何を食べたか。会のなかで実際に起きたことをひとつだけ書きます。ここが文面の中心になります。

次につながる一言

資料を送る、相談させてほしい、改めて席を設けたい。関係を先へ進める一文を置きます。お礼で終わらせないための要素です。

簡潔さ

翌朝の相手も忙しいものです。本文は五段落程度、スマートフォンで一画面から二画面に収まる長さを目安にします。

では、なぜ「昨日はありがとうございました」だけでは弱いのでしょうか。

それは、その一文が誰に送っても成立してしまうからです。感謝の言葉そのものに問題があるわけではありません。ただ、どなたにでも当てはまる文章は、受け取った側にとって「自分に宛てられたもの」として届きません。同じ夜を過ごしたという事実が、文面から消えてしまうのです。

3要素のうち、二番目と三番目は書き方の工夫で満たせます。けれど一番目の「具体的な話題」だけは、少し性質が異なります。この点については、記事の後半で改めて触れます。

やってはいけないお礼メールの書き方

避けたい書き方も、あわせて整理しておきます。

長すぎる

感謝を伝えたい気持ちが強いほど、文面は長くなりがちです。しかし翌朝のメールボックスで、長文はそれだけで後回しにされます。伝えたいことが複数あるときは、もっとも大切なひとつに絞ってください。残りは次の連絡に回せます。

定型文すぎる

検索して見つけた文面をそのまま送ることは、送っていないのとほとんど変わりません。この記事の例文も、「◯◯」の部分にご自身の会の具体を入れて初めて機能します。一文でいいので、その夜にしかなかったことを差し込んでください。

全員に同じ文面を送る

これがもっとも避けたい失敗です。同席した方同士は、案外お互いのメールを見比べるものです。同じ文面が並んでいると分かった瞬間、届けたかった敬意は逆の方向に働きます。宛先ごとに、触れる話題を変えてください。

いずれも、根にあるのは同じことです。相手をよく見ているかどうか。会食のマナーそのものについても、私たちは同じ考えを持っています。席次や作法といった会の最中の振る舞いについては、こちらの記事(上座・下座とは?会食・レストランの席次と、品格を決めるマナー)で詳しく紹介しています。

お礼メールの前に、そもそも会をどう設えるか

ここまで、翌朝の文面の話をしてきました。最後に、その手前の話をさせてください。

3要素の一番目、「具体的な話題への言及」。これは文面をひねって作れるものではありません。その具体は、会の側にあらかじめ存在していなければならないからです。

私は出張料理人として、年間200件を超える食卓に立ってきました。そのなかで、面白いことが起きます。ゲストからホストへ届いたお礼メールの内容を、ホストの方から教えていただくことが、たびたびあるのです。

そこに書かれていたのは、こうした言葉でした。

この料理が素晴らしかった

出張料理でここまでのクオリティのものが出てくるとは思わなかった

一般的な感謝ではありません。料理という具体です。ゲストの方は、書くことを探す必要がなかったのだと思います。

その具体は、どこから生まれるか

では、そうした具体はどこで生まれているのでしょうか。現場でしていることを、いくつか挙げてみます。

トリュフをお客様の目の前で削りかけることがあります。皿が完成する瞬間を、ご本人が自分の目で見ている。すると「出てきた料理」ではなく「目の前で起きたこと」に変わります。

出張料理は、お客様との距離が近いことも特徴です。調理しているところを見に来られる方もいらっしゃいます。作っている場面そのものが、体験の一部になります。

メニューは基本的に、その日のためだけに組んでいます。汎用のコースを持ち回るのではなく、その会のために設計する。ですから、その夜に出た皿は、その会にしか存在しなかった皿になります。

そしてワインと料理のペアリングについて、お話しすることが多くあります。品種名をお伝えするのではなく、なぜこのワインにこの料理を合わせているのかという理由をお渡しする。理由を受け取った方は、それを誰かに話したくなります。

ホストの方から、会の進行そのものをご相談いただくこともあります。「スタートから締めまで、どうしたらいいか」と。そのときは会の趣旨を伺ったうえで、全体の流れをご一緒に作ります。どこに印象の山を置くか、を設計しているのだと思っています。

印象に残るポイントさえあれば、書ける

記憶に残るワイン。記憶に残る料理。そして、一緒に卓を囲んだ方の人柄。

このいずれかが立ち上がっていれば、翌朝の文面は自然に決まります。逆に言えば、お礼メールに書くことが見つからない会というのは、書き手の問題ではなく、その夜に印象の山がなかったということなのだと思います。

会食の設え方そのものについては、経営者の方に向けた記事「高級店から出張シェフへ。接待の場が変わるとき、マナーも変わる」でも触れています。

まとめ

会食のお礼メールについて、要点を整理します。

  • 送るタイミングは翌日の午前中まで。遅れた場合も、一言添えて送るほうが誠実
  • 件名は用件が一目で分かる形に。凝った表現は不要
  • 文面に入れたいのは、具体的な話題への言及・次につながる一言・簡潔さの3要素
  • 長すぎる、定型文すぎる、全員に同じ文面。この3つは避ける
  • 具体的な話題は文面で作るものではなく、会の側にあらかじめ用意されているもの

翌朝、何を書こうかと迷ったときは、文例を探す前に昨夜を思い出してみてください。記憶に残っている一場面が見つかれば、会食のお礼メールはそこから自然に立ち上がります。

よくある質問

次のステップ

お礼メールに書くことが見つからない会と、いくらでも書ける会があります。その差は、料理の値段ではありません。その場でしか起きなかったことがあったかどうかです。

シェフが目の前で仕上げる。その日のためだけに組んだ一皿がある。なぜこのワインなのかという理由が、言葉として手渡される。そうした会は、翌朝の文面が勝手に決まります。

Na Team Labでは、ご自宅やオフィス、ショールームにシェフが出向き、ひと夜のレストランを仕立てています。次の会食を設えるとき、選択肢のひとつに加えていただければと思います。

会食のお礼メールはいつまでに送ればよいですか?

翌日の午前中までが基本です。相手の記憶が鮮明なうちに届くほど、当日の話題に触れた一文が伝わります。数日空いてしまった場合も、送らないより送るほうが誠実です。遅れた旨を一言添えて送りましょう。

会食のお礼メールの件名はどう書けばよいですか?

「昨日の会食のお礼」「◯◯の件、ありがとうございました」のように、用件が一目で分かる形が基本です。凝った表現は必要ありません。初対面の相手には、件名に社名と氏名を添えると、多数のメールのなかでも埋もれずに届きます。

接待した側とされた側で、お礼メールの内容は変えるべきですか?

変えたほうが自然です。接待した側はお越しいただいたことへの感謝と次回への一言を、された側は招いていただいたことへの感謝と場や料理への具体的な言及を軸にします。どちらも当日の話題に触れる点は共通です。

川原壯太(Na Team Lab シェフ)
AUTHOR 川原 壯太 Na Team Lab シェフ

恵比寿のレストランを拠点に、年間200件を超える出張料理・会食を手がける。5味のバランスやペアリングなど「9つの原則」に基づいて食卓を設計し、料理教室・ワイン会も主宰。

Instagram @nateam.kawahara


翌朝、書けることが残る会を。

お礼メールが書きにくいのは、文章力の問題ではありません。その会に、書けることがあったかどうかです。進行も配膳も片付けもこちらが担えば、主催者は話すことだけに集中していられます。

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