SUMMARY

結論:イタリアワインの品種は数が多く見えますが、ワインリストは品種と産地の組み合わせで読めるようになります。 まず覚えるのは5つです。サンジョヴェーゼ(トスカーナ)、ネッビオーロ(ピエモンテ)、モンテプルチアーノ(中部)、ネロ・ダーヴォラ(シチリア)、そして白のピノ・グリージョ。 この5つで、イタリアのワインリストのかなりの部分が読めます。 そこから12品種まで広げれば、北から南までの地図が頭の中に出来上がります。

あわせて、イタリアワインは、その土地の料理と一緒に選ぶとバローロとバルバレスコは、同じぶどうの「強さ」と「しなやかさ」もご覧ください。

ワイングラスと皿をセットした恵比寿の店内の長いテーブル。イタリアワインの品種を並べる会の前
名前で覚えるより、並べたほうが早く入ります(写真は会の開始前の店内)

イタリアのワインリストを渡されて、固まってしまった経験はないでしょうか。知っている名前が一つもない。産地なのか品種なのか造り手なのかも分からない。結局、値段の真ん中あたりを指して終わる。

イタリアワインの品種は、たしかに数が多いです。国家品種登録簿に登録されたワイン用のぶどう品種は、約600にのぼります。すべてを覚えるのは、現実的ではありません。

ただ、全部を覚える必要はありません。実際に目にする品種は限られていて、作付面積の75%を80品種あまりが占めているという数字もあります。さらに言えば、最初の入口は5つで足ります。

この記事では、まず覚える5品種と、そこから広げる主要12品種を、味の方向と合う料理まで含めて一覧にします。産地と格付けの全体像はイタリアワインの全体像をまとめた記事にあるので、ここでは品種に集中します。

イタリアに土着品種が多い理由

なぜイタリアだけ、こんなに品種が多いのでしょうか。

理由のひとつは、国としての歴史の長さと、統一の遅さです。イタリアは長く都市国家や地方の集まりとして存在していました。土地ごとに農業の慣習が完結していて、他の地域の品種を導入する強い動機がなかった。結果として、その土地にあったぶどうが、その土地で生き残りました。

もうひとつは、地形の複雑さです。アルプスからシチリアまで南北に細長く、しかも大半が丘か山です。気候も標高も海からの距離もばらばらで、それぞれの環境に適した品種が別々に定着しました。

そしていま、土着品種はむしろ増えています。近年も国家品種登録簿には新たな品種が追加されていて、その多くが土着品種です。かつて見捨てられた品種が掘り起こされ、登録されている。イタリアのワインづくりは、多様性を資産として扱う方向に動いています。

ぶどう栽培の多様性という点で、イタリアは世界第1位とされます。この数の多さは、覚える側にとっては壁ですが、飲む側にとっては豊かさです。

まず覚える5品種

最初の5つを選ぶ基準は、「日本のワインリストや売り場で出会う頻度が高いか」です。

品種色主な州味の方向
サンジョヴェーゼ赤トスカーナ酸が明るく、渋みは中程度
ネッビオーロ赤ピエモンテ色は淡いが、酸と渋みが強い
モンテプルチアーノ赤アブルッツォ、マルケ果実が濃く、渋みは穏やか
ネロ・ダーヴォラ赤シチリア熟した黒い果実、渋みは穏やか
ピノ・グリージョ白北東部軽やかで、柑橘と白い果実

この5つは、イタリアの南北と味の幅を代表しています。

サンジョヴェーゼは、イタリアで最も栽培面積の広い品種です。栽培面積は6万ヘクタールを超え、黒ぶどうの2位にあたるモンテプルチアーノ(約3万ヘクタール)の2倍以上を占めます。トスカーナのキャンティやブルネッロの中身がこれです。

ネッビオーロは、ピエモンテのバローロとバルバレスコの品種です。ワイン診断では「バラと力強い酸」という言葉で表しています。渋みの強さで言えば、診断で扱う赤5タイプの中でもっとも強い位置にあり、渋みと酸の両方が強いため、料理と合わせる前提で選ぶ品種です。

モンテプルチアーノは、ここで一度つまずきやすい品種です。トスカーナに「モンテプルチアーノ」という町があり、そこのワイン(ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノ)はサンジョヴェーゼから造られます。町の名前と品種の名前が別のものとして存在している、ということだけ覚えておけば混乱しません。

ネロ・ダーヴォラはシチリアの赤、ピノ・グリージョは北東部の白です。どちらも手に取りやすい価格帯で広く流通していて、最初の基準点になります。

5つ覚えると、何が起きるか

品種を5つ押さえると、ワインリストの読み方が変わります。

ラベルや品書きに「キャンティ」と書いてあれば、中身はサンジョヴェーゼです。「バローロ」ならネッビオーロ。「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」ならモンテプルチアーノです。産地の名前を見て、品種が推測できるようになる。これが、イタリアワインの読み方の基本です。

フランスのように品種名をラベルに書く習慣が薄いぶん、イタリアでは産地の名前が品種の情報を含んでいます。だから、産地と品種をセットで覚えるのが近道になります。

主要12品種の一覧

5つから広げます。赤8、白4で、北から南までをカバーします。

品種色主な州代表ワイン味の方向合う料理
サンジョヴェーゼ赤トスカーナキャンティ、ブルネッロ明るい酸、乾いたハーブトマトの料理、サラミ
ネッビオーロ赤ピエモンテバローロ、バルバレスコバラと力強い酸、強い渋みきのこ、熟成チーズ、煮込み
バルベーラ赤ピエモンテバルベーラ・ダスティ酸が高く、渋みは穏やか肉の前菜、パスタ
モンテプルチアーノ赤アブルッツォ、マルケモンテプルチアーノ・ダブルッツォ果実が濃く、渋みは穏やか焼いた肉、ラグー
アリアニコ赤カンパーニア、バジリカータタウラージ渋みと酸が強く、長命煮込み、羊肉
ネロ・ダーヴォラ赤シチリアネロ・ダーヴォラ、チェラスオーロ・ディ・ヴィットリア熟した黒い果実ナスの料理、肉の煮込み
プリミティーヴォ赤プーリアプリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリア甘やかで、アルコールが高め炭火の肉、スパイスの料理
コルヴィーナ赤ヴェネトアマローネ、ヴァルポリチェッラ赤い果実と、干しぶどうの甘み熟成チーズ、ジビエ
ピノ・グリージョ白北東部ピノ・グリージョ軽やかで柑橘前菜、白身魚
ヴェルメンティーノ白サルデーニャ、リグーリア、トスカーナ海沿いヴェルメンティーノ塩気とハーブ魚介、貝
ガルガーネガ白ヴェネトソアーヴェ穏やかな酸、アーモンドの香り鶏の白い料理、野菜
グレーラ白ヴェネトプロセッコ軽い泡、白い花と洋梨食前、揚げもの

赤の8品種を、渋みの強さで並べる

一覧表は産地順なので、味の軸でも並べ直しておきます。渋みの穏やかな側から並べると、おおよそこうなります。

  1. バルベーラ(酸は高いが、渋みは穏やか)
  2. ネロ・ダーヴォラ、モンテプルチアーノ(果実が濃く、渋みは穏やか)
  3. プリミティーヴォ(甘やかで、アルコールが高め)
  4. コルヴィーナ(干しぶどうの甘みが入る)
  5. サンジョヴェーゼ(酸が明るく、渋みは中程度)
  6. アリアニコ、ネッビオーロ(渋みと酸がともに強い)

渋みが苦手な方は、1から3のあたりから入ると無理がありません。

ここで一つ、厨房の知恵をお伝えします。たんぱく質と脂は渋みを和らげ、塩は苦みを和らげます。そして甘い料理は渋みを強めます。 つまり、渋みの強い赤は「渋いから飲めない」のではなく、「合わせる料理が決まっている」だけです。アリアニコやネッビオーロを単独で飲んで渋いと感じた方は、羊肉や牛の煮込みと一緒に試してみてください。同じ一本が別の顔になります。

白の4品種の使い分け

白は、酸の高さと厚みの2軸で考えます。

  • 軽やかで、料理の邪魔をしない:ピノ・グリージョ、グレーラ(プロセッコ)
  • 塩気とハーブで、魚介に寄り添う:ヴェルメンティーノ
  • 穏やかな酸で、白い肉や野菜に合う:ガルガーネガ(ソアーヴェ)

温度は、軽い白が8〜10℃、厚みのある白が10〜13℃を出発点にします。冷やしすぎると香りが出なくなるので、厚みのある白は冷蔵庫から出して少し置いてから注ぐのがおすすめです。

ボトルからワイングラスへ赤ワインを注いでいる場面
色の濃さと渋みの強さは、いつも一致するわけではありません

プリミティーヴォとジンファンデルは、同じ品種です

品種の話で、ひとつ面白い事実をお伝えします。

プーリアのプリミティーヴォと、カリフォルニアのジンファンデルは、同じ品種です。

長いあいだ別の品種として扱われていましたが、DNA解析で両者の同一性が証明されました。さらにクロアチアのカシュテル・ノヴィで、同じDNAを持つクリリェナク・カシュテランスキという品種が見つかります。その後、古い標本から取り出したDNAの解析によって、トリビドラグ、クリリェナク、プリミティーヴォ、ジンファンデルがすべて同一の品種であると結論づけられました。遺伝的な起源は、クロアチアのダルマチア海岸にあります。

同じぶどうが、プーリアでは甘やかな果実味の赤になり、カリフォルニアではまた別の性格のワインになる。品種が同じでも、土地と造り方で人格は一つではない、ということです。

Na Team Lab がワインを9つの原則で捉えるとき、品種はその一つにすぎません。産地と造り方という残りの原則が、同じ品種を別のワインに変えていきます。

イタリアの「三大ワイン」と呼ばれるもの

「イタリア三大ワイン」という言い方をよく見かけます。

ここは正確に書いておきます。公的機関による「三大ワイン」の定義は、確認できません。 イタリアの法律にも、生産者団体の規定にも、そういう区分はありません。

実際には、日本で慣用的にバローロ、バルバレスコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの3つを挙げることが多いようです。前の二つはピエモンテのネッビオーロ、三つめはトスカーナのサンジョヴェーゼ100%です。

この3つが並べられる理由は、推測できます。どれも長期熟成を規定で義務づけられていて、価格も高く、国際的な評価が確立しているからです。

ただ、これを「イタリアの頂点3つ」と受け取ると、見落とすものが出てきます。カンパーニアのタウラージ(アリアニコ)、ヴェネトのアマローネ(コルヴィーナ)も、同じように時間をかけて造られる赤です。3つという数は、覚えやすさのための区切りであって、品質の序列ではありません。

バローロとバルバレスコの違いは、同じネッビオーロの2大産地を比べた記事で詳しく書いています。

飲みやすい品種から試す順番

「飲みやすい」という言葉は、人によって中身が違います。酸が好きな方と、コクが好きな方では、飲みやすい一本が逆になります。

そのうえで、イタリアの品種を試す順番としては、次の流れをおすすめしています。

段階試す品種分かること
1段目プロセッコ(グレーラ)泡の軽さと、食前の役割
2段目ピノ・グリージョ、ソアーヴェ白の「軽い」と「穏やか」の違い
3段目ネロ・ダーヴォラ、モンテプルチアーノ渋みの穏やかな赤の果実味
4段目キャンティ(サンジョヴェーゼ)酸が料理とつながる感覚
5段目バローロ(ネッビオーロ)渋みと酸が、料理を必要とする理由

この順番の意味は、難易度ではありません。比較の基準点を少しずつ増やしていくことです。

1本目に何を飲んだかを覚えていないと、2本目は「おいしい」か「おいしくない」でしか評価できません。基準点がひとつあると、2本目は「1本目より酸がある」と言えるようになります。この言語化が増えていくと、自分の好みの方向が見えてきます。

まず自分がどのタイプかを知りたい方は、無料のワイン診断が入口になります。酸が好きか果実味が好きかが分かると、上の表のどこから始めるとよいかも決めやすくなります。診断はあくまで仮説なので、答え合わせは実際に飲み比べて行ってください。

絵の前のテーブルに並べた白ワインと赤ワインのボトル5本
基準点を一本ずつ増やすと、次の一本が選べるようになります

品種は、並べると覚えられます

ここまで一覧と順番を書いてきましたが、品種を覚えるのにいちばん効くのは、暗記ではありません。同じ晩に、並べて飲むことです。

理由は単純です。サンジョヴェーゼの酸が「明るい」と言われても、比べる相手がなければ明るいかどうか分かりません。隣にネッビオーロがあって初めて、サンジョヴェーゼのほうが軽いと感じられる。一杯ずつでは分からない違いも、隣に並べればはっきりします。

Na Team Lab では、恵比寿の8席のテーブルで、月ごとにテーマを変えたワイン会を開いています。11月27日の回は、イタリアの6州から6種(泡1・白2・赤3)を、ペアリングのフルコースとともにお出しする夜です。州が違えば品種も変わるので、この記事の一覧表を一晩で体験することになります。

ワインを選ぶのは、オーナーシェフの川原壯太です。年間約2,000種のワインを試飲し、そのなかから毎回のワインを選び、合わせる料理をつくっています。

この6本をボトルで揃えると、上代だけで17,300円(税抜)になります。会費は14,800円(税込)です。

▶ ワイン会の日程と空席を見る

まとめ

イタリアワインの品種について、要点を整理します。

  • 国家品種登録簿に登録されたワイン用品種は約600。 それでも作付面積の75%は80品種あまりが占めています
  • まず覚えるのは5つ。 サンジョヴェーゼ、ネッビオーロ、モンテプルチアーノ、ネロ・ダーヴォラ、ピノ・グリージョです
  • イタリアでは産地の名前が品種の情報を含んでいます。キャンティならサンジョヴェーゼ、バローロならネッビオーロです
  • 赤は渋みの穏やかな側(バルベーラ、ネロ・ダーヴォラ)から、強い側(アリアニコ、ネッビオーロ)へ並べて覚えると整理できます
  • 渋みの強い赤は、料理と合わせる前提の品種です。たんぱく質と脂が渋みを受け止めます
  • 「イタリア三大ワイン」に公的な定義はありません。 日本では慣用的にバローロ・バルバレスコ・ブルネッロが挙げられます
  • プリミティーヴォとジンファンデルは同一品種。DNA解析で決着しています

次にイタリアワインを買うときは、2本を同時に選んでみてください。品種の違う2本を並べた夜が、どんな品種事典より早く頭に入ります。

6州ぶんを一晩で並べる場は、恵比寿の8席のテーブルでご用意しています。11月27日の回です。

▶ ワイン会の日程と空席を見る

まず好みを知りたい方は、無料のワイン診断から。

よくある質問

イタリアの三大ワインは?

公的な定義はありません。日本では慣用的に、バローロ、バルバレスコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの3つを挙げることが多いようです。前の二つはピエモンテのネッビオーロ、三つめはトスカーナのサンジョヴェーゼ100%から造られます。

飲みやすいイタリアワインは?

渋みが穏やかな赤から入ると無理がありません。ネロ・ダーヴォラやモンテプルチアーノ、酸は高いが渋みの穏やかなバルベーラが候補です。白ならピノ・グリージョやソアーヴェ、泡ならプロセッコが扱いやすい方向です。

ワインに詳しくなくても、ひとりで参加できますか?

参加者の半数以上がおひとりです。知識は要りません。恵比寿の8席のテーブルで、シェフがその晩のワインを一杯ずつ説明しながらお出しします。会費は予約時のお支払いで、当日は手ぶらでお越しいただけます。

イタリアワインの品種はいくつありますか?

国家品種登録簿に登録されたワイン用のぶどう品種は約600にのぼります。ただし作付面積の75%は80品種あまりが占めていて、最初に覚えるのはサンジョヴェーゼ、ネッビオーロ、モンテプルチアーノ、ネロ・ダーヴォラ、ピノ・グリージョの5つで足ります。

プリミティーヴォとジンファンデルは違う品種ですか?

同じ品種です。DNA解析によって、プーリアのプリミティーヴォとカリフォルニアのジンファンデルが同一であることが証明され、遺伝的な起源はクロアチアのダルマチア海岸にあると結論づけられました。同じぶどうでも、土地と造り方で別の性格のワインになります。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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