内定式が終わり、会議室の椅子を端に寄せて、立食の準備を整える。乾杯の音頭が済んだあと、内定者は内定者同士で小さく固まり、社員は壁際で腕を組んだまま動かない。仕出しの弁当は開けられないまま、時間だけが過ぎていく。
こうした光景を見たことのある人事担当の方は、少なくないと思います。
私は出張料理人として、法人の集まりに料理を持って伺うことが多くあります。周年パーティー、レセプション、オフィスでの会食。そこで毎回感じるのは、会が動くかどうかは、進行表ではなく場の作り方で決まっているということです。この記事では、内定者懇親会の企画を、企画ネタの一覧ではなく設計の手順として整理します。
結論:内定者懇親会の目的は、内定者の不安を減らすことです。 内定者懇親会は、内定から入社までの不安を和らげるために企業が開く会で、10月の内定式前後と、4月の入社前に行われることが多くあります。 内定式に向けて内定者が最も不安に感じているのは「他の内定者と仲良くなれるか」57.6%、次いで「社員や役員とうまく話せるか」43.0%でした(マイナビ・2026年卒調査)。 つまり企画すべきは余興ではなく、会話が生まれる状態です。社員と内定者の比率、立食か着席か、食事の形。この3つが、当日の会話の量を左右します。
内定者の不安はマイナビ2026年卒大学生キャリア意向調査、フォロー施策の評価はマイナビ総合研究所の若手社会人1,936名調査、辞退理由は就職みらい研究所『就職白書2026』を参照しています。料理形式は立食パーティーの料理設計と法人向けシェフ派遣もご覧ください。
結論 内定者懇親会は「企画」より「会話が生まれる状態」を設計する
内定者懇親会とは、内定から入社までのあいだに生じる不安を和らげるために、企業が内定者を招いて開く会のことです。開催時期は、10月1日の内定式前後と、4月の入社直前に集中します。
多くの企画は「何をやるか」から入ります。アイスブレイク、グループワーク、社長からのメッセージ。けれど、内定者の側が抱えている不安を先に見ると、必要なものはもっと単純です。知らない人と、話せる状態をつくること。それだけです。
そして、会話が生まれるかどうかを決めている要素は、意外なほど物理的です。社員と内定者が何対何で立っているか。座っているか、立っているか。手に何を持っているか。企画の巧拙よりも、この3つのほうが当日の空気に効きます。
以下では、調査データで内定者の不安の中身を確かめたうえで、企画の5要素、当日の内容、避けるべきこと、そして食事の選び方の順に見ていきます。
内定者が不安に感じているのは「人」でした

マイナビが2026年卒の学生に行った調査(2025年8月実施・入社予定先を決めている学生 n=1,100)では、内定式に向けての不安として次の項目が挙がりました。
| 内定式に向けて不安なこと | 割合 |
|---|---|
| 他の内定者と仲良くなれるか | 57.6% |
| 内定先の社員や役員とうまく話せるか | 43.0% |
| 服装や髪型はどうしたらいいか | 27.0% |
| 企業理解が足りず、筋違いなことを言ってしまわないか | 18.0% |
| 会った人の顔と名前が思い出せるか | 17.4% |
| 当日のタイムスケジュールや持ち物がわからない | 16.4% |
上位2つが、どちらも人間関係です。同じ調査で「社会人になるにあたって不安に思うこと」を聞いた設問(n=775)でも、1位は「職場での人間関係」61.4%、3位が「会社のルールや組織・風土になじめるか」45.5%でした。
内定者が恐れているのは、仕事の難しさよりも先に、そこにいる人たちと自分が馴染めるかどうかです。
需要と供給が、はっきりずれています
もうひとつ、企画の後押しになるデータがあります。
マイナビの2027年卒 内定者意識調査(2026年6〜7月実施)では、内定者が「実施してほしい」と答えたフォローのうち、対面の内定者懇親会は58.9%で2位でした。一方、実際に「他の内々定者も交えた食事会・懇親会があった」と答えたのは32.4%にとどまります。
さらに企業規模別に見ると、この差は広がります。
| 企業規模 | 実際に食事会・懇親会があった割合 |
|---|---|
| 従業員300人未満 | 15.1% |
| 300〜999人 | 26.1% |
| 1,000〜4,999人 | 31.4% |
| 5,000人以上 | 46.2% |
300人未満の企業では、6人に1人ほどしか経験していません。裏を返せば、規模の小さい企業ほど、まだ空いている打ち手だということです。
ただし、辞退が防げると断言はできません
ここは正直に書きます。内定者懇親会と内定辞退を直接結びつけた、信頼できる大規模調査は見つかりませんでした。
就職みらい研究所の『就職白書2026』(内定辞退経験者 n=802)によれば、辞退の理由の上位は「他の企業の選考に通過したから」32.2%でした。以下、「業種が志望と合わなかった」29.1%、「職種が合わなかった」21.9%と続きます。一方、「一緒に働きたいと思える人がいなかったから」は4.8%にとどまりました。
懇親会が動かせるのは、この4.8%と、その手前にある漠然とした不安の部分です。他社の内定や条件の不一致による辞退を、食事の場で覆すことはできません。懇親会は辞退を止める装置ではなく、不安を減らす場だと捉えるほうが、設計を誤りません。
内定者懇親会の企画 先に決める5つの要素
内容を考える前に、器を決めます。以下の5つが決まれば、当日の空気はほぼ決まります。
| 要素 | 推奨 | そう考える理由 |
|---|---|---|
| 時期 | 10月の内定式前後、または4月の入社前 | 内定式を実施する企業は61.9%。前後に組むと参加率が上がります |
| 時間 | 2時間前後 | 会話が温まる前に終わらず、疲れる前に終わる長さです |
| 人数比 | 社員と内定者を1対1に近づける | 不安の2位が「社員とうまく話せるか」43.0%だからです |
| 形式 | 立食を基本にする | 席が固定されないほうが、会話は動きます |
| 食事 | 片手で食べられる形にする | 手が塞がると、会話も名前を覚える余裕も消えます |
人数比が、いちばん効きます
社員の人数は、多くの企業で「手が空いている人」を基準に決められます。しかしここは、内定者の人数から逆算するほうが確実です。
マイナビ総合研究所の調査(2026年4月実施・社会人1〜3年目 n=1,936)に、示唆的な結果があります。企業が最も多く実施しているのは、内定者同士の懇親会です。ところが、受けた側の印象が良かった施策の上位は違いました。「社内報・資料の共有」83.0%、「社内見学・工場見学」80.1%、そして「先輩社員との交流・懇親会」80.1%です。
つまり、内定者同士のヨコのつながりだけでは、満足度は伸びにくい。タテのつながりと、会社が具体的に想像できる情報が混ざったときに、印象は良くなるという傾向が読み取れます。
内定者10名に対して社員10名を用意できるなら、たとえば内定者1名に社員1名をパートナーとして組み、その2人で会を楽しんでもらう、という組み方も考えられます。ヨコの不安(57.6%)とタテの不安(43.0%)に、同時に効く形です。会の途中でパートナーを一度入れ替えれば、内定者はひと晩で2人の社員と話したことになります。
形式は、立食から考える
私の実感として、会話は立食のほうが生まれやすいと感じています。着席の会は、料理と進行が丁寧に届く代わりに、隣と正面の3人としか話せずに終わることがあります。立食であれば、皿を取りに動くたびに立ち位置が変わります。その移動そのものが、会話のきっかけになります。
もちろん、着席が向く場面もあります。内定者が5、6名で、一人ずつの話をじっくり聞きたいなら、着席のコース形式のほうが深く届きます。人数と目的で選ぶものであって、立食が常に優れているわけではありません。
当日の内容 どの不安に効くかで選ぶ
企画のネタを増やすより、それぞれがどの不安に効くのかを確かめるほうが、当日は機能します。2時間の会を想定した配分の一例として、次のように整理できます。
| 内容 | 時間配分の目安 | 効く不安 |
|---|---|---|
| 開会・自己紹介 | 冒頭に短く | 他の内定者と仲良くなれるか 57.6% |
| 社員とのペア歓談・座談会 | 中盤に厚く | 社員や役員とうまく話せるか 43.0% |
| 会社紹介・社内見学 | 短く、具体的に | 組織や風土になじめるか 45.5% |
| グループワーク | 任意 | 他の内定者と仲良くなれるか 57.6% |
| 食事・自由歓談 | 全体の半分以上 | 上記すべての土台 |
配分の目安であって、分単位の正解があるわけではありません。押さえたいのは一点だけです。食事と歓談に、全体の半分以上を残しておくこと。
進行を詰め込むほど、会は静かになります。自己紹介、社長の挨拶、会社紹介、グループワーク、締めの言葉と並べていくと、内定者が自由に人と話せる時間は20分ほどしか残りません。その20分で、57.6%の不安が解けることはありません。
グループワークを入れるなら、勝敗のつく形は避けたほうが無難です。内定者同士がまだ互いを知らない段階では、競争は距離を縮めるよりも、得意な人と苦手な人を可視化してしまうことがあります。
やってはいけない4つのこと
お酒をすすめる空気をつくる
内定者は、まだ社員ではありません。多くは学生で、断りにくい立場にあります。
私が料理を担当してきた会でも、缶ビールや缶チューハイが少しあって、あとはノンアルコールという構成の会は実際にあります。それで場が寒くなったことはありません。20代の方が飲まない場合でも、料理だけ楽しんでいただければ十分に成り立ちます。
お酒の種類を揃えることに予算を使うより、料理の側で満足してもらう設計にしたほうが、参加者の幅を選びません。
役員の話が長い
会社の考えを伝えたいという気持ちには、内定者の側にも需要があります。実際、「会社を具体的に想像できる体験」は、印象の良い施策の上位に入っていました。
問題は長さです。壇上からの一方通行が20分続くと、会は式典になります。伝えたいことがあるなら、話す時間を短くして、そのぶん役員が会場を回って個別に話すほうに配分するほうが届きます。43.0%の不安は、聞くことではなく、話すことでしか解けません。
立食にして、あとは放置する
立食は会話が生まれやすい形式ですが、放っておけば勝手に混ざるわけではありません。乾杯のあと、内定者は内定者同士で固まります。それが自然な反応です。
だからこそ、人数比とパートナーの組み方を先に決めておきます。誰が誰に話しかけるかを事前に決めておくだけで、最初の10分がまったく変わります。
内定者に費用を負担させる
内定者はまだ入社前で、多くは学生です。会場までの交通費も含めて、企業側が負担する形をおすすめします。
費用の負担を求めることは、参加をためらう理由をひとつ増やすことにほかなりません。会の成否は、まず参加率に左右されます。
内定者懇親会の服装はどうするか
ここは学生の側から多く検索される項目なので、先に答えておきます。
企業からの案内に指定があれば、それに従ってください。「服装自由」「私服でお越しください」と書かれている場合は、オフィスカジュアルが無難です。男性であれば襟のあるシャツにジャケット、女性であればブラウスにきれいめのパンツやスカート。ジーンズやサンダル、露出の多い服は避けておくと安心です。指定がなく判断に迷う場合は、スーツを選んでおけば失礼になることはありません。
そして、ここからは企画する側の話です。
服装や髪型への不安は27.0%、当日のタイムスケジュールや持ち物がわからないという不安は16.4%ありました。これらは、案内文を丁寧に書くだけで消える不安です。
日時、場所、所要時間、服装の目安、当日の流れ、参加する内定者と社員のおおよその人数。この6つを案内に明記して早めに送るだけで、当日会場に着いた時点での緊張は確実に下がります。会場で解こうとする前に、案内文で解いておくほうが早いのです。
食事の選び方で、会話の量は変わる
内定者懇親会の食事は、大きく3つの選択肢に分かれます。それぞれ、会話の生まれ方が違います。
| 形式 | 会話の生まれやすさ | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 弁当・仕出し | 生まれにくい | 昼開催、短時間、席が決まっている会 |
| ケータリング(立食ビュッフェ) | 生まれやすい | 17名以上、社員と内定者を混ぜたい会 |
| レストランを貸切る | 中程度 | 少人数で、じっくり話を聞きたい会 |
弁当は、手配が最も簡単です。ただし、ひとりに1つ配られた時点で、その人の居場所が固定されます。蓋を開け、箸を持ち、膝の上に置く。この状態で立ち歩く人はいません。
手が塞がると、会話は止まります
私が料理の形を決めるとき、いちばん先に考えるのは味ではなく、手が空いているかどうかです。
名刺交換のある会では、フィンガーフードや、一口で食べきれる大きさに切り分けた料理を意識します。片手に皿を持ったまま、もう片方の手が自由でいられる状態をつくるためです。手が塞がると、名刺も出せませんし、そもそも人のほうを向けません。
内定者懇親会も、構造は同じです。内定者は名刺こそ交換しませんが、初対面の社員に自己紹介をし、名前を覚え、質問をしようとしています。ナイフとフォークで格闘している最中に、それはできません。
配置も同じ理由で設計します。人数が多く、料理に人が集中しそうなときは、大皿を2か所に分けて置きます。1か所に固めると行列と滞留が生まれますが、分散させれば人の流れが2本になり、そのぶん立ち位置の入れ替わりが増えます。
出し方も、会によって変えます。最初から全品を出し切る「全出し」と、半分を出して途中で補充する形です。進行が読めない会や人数の多い会では、先に全部を出しておくほうが、会が押しても料理側で問題が起きません。逆に、途中で新しい皿が出てくると、そのたびに人が動きます。
品数の目安としては、30名規模でおよそ10品、70名規模で15種ほどを用意することが多くあります。ただし、これは参加者の顔ぶれで変わります。若い男性が多い会では、炭水化物を厚めに組みます。量は少し多めに、余るくらいで持っていきます。「思ったより食べる方が多かった」という失敗のほうが、あとに残るからです。
主催者は、たいてい食べていません
もうひとつ、法人の会で毎回起きることがあります。主催者が食べていないのです。
けれど話を聞くと、主催者の方は「食べたい」よりも「みんなと話したい」と思っていることがほとんどです。だから私たちは、料理とドリンクが切れないように、サービスの側をこちらで預かる形をとっています。補充や配膳を気にせず、人と話すことに集中していただくためです。
内定者懇親会の人事担当者も、同じ立場にいます。当日、あなたは会場を回る側です。そのときに皿の残量まで見ていられるかどうかを、企画の段階で考えておく価値があります。
オフィスに料理人が来るという選択肢
Na Team Lab では、ご自宅やオフィスへシェフが伺い、その場で料理を仕立てています。運ぶのではなく、現地で仕上げる形です。
食材、器、グラス、カトラリー、調理道具まで一式を持参します。会議室のように火や水道のない場所でも、調理機材を持ち込んで組み立てます。片付けや終了時刻に制約がある場合は、その時刻に合わせて撤収の段取りを引きます。オフィスでの会食は、不動産会社のショールームでお受けした実績があります。
内定者10名と社員10名で20名前後になる会であれば、ビュッフェ形式でお一人 8,000円〜(17名さま〜)が目安です。内定者が数名で、着席してじっくり話す会をお考えなら、コース形式でお一人 15,000円〜(6〜16名さま・税・サービス料・出張費込)となります。1回のご依頼につき 90,000円〜を最低料金としています。
対応エリアは基本的に東京都内で、都外・遠方も別途ご相談に応じています。ご相談は2週間前までにいただけると、内容を丁寧に組み立てられます。会場の手配からご相談いただくこともあります。
Na Team Lab の出張料理やケータリングの詳細については、公式LINEにてご案内しています。
まとめ
- 内定者懇親会の目的は、内定から入社までの不安を減らすこと。内定者の不安の上位は「他の内定者と仲良くなれるか」57.6%、「社員や役員とうまく話せるか」43.0%で、どちらも人間関係
- 内定者の58.9%が対面の懇親会を望む一方、実際にあったのは32.4%。従業員300人未満では15.1%にとどまり、規模の小さい企業ほど打ち手として空いている
- 企画は内容より先に、時期・時間・人数比・形式・食事の5要素を決める。なかでも社員と内定者の比率がいちばん効く
- 進行を詰め込まず、食事と歓談に全体の半分以上を残す。会話の時間が20分では、不安は解けない
- 食事は片手で食べられる形にする。手が塞がると、会話も名前を覚える余裕も止まる
- 服装や当日の流れへの不安は、案内文を丁寧に書くだけで、会場に着く前に消える
当日の進行表をどれだけ精密に作っても、会話が生まれなければ、内定者が持ち帰るものはありません。企画すべきは出し物ではなく、人が話せる状態のほうです。
よくある質問
内定者懇親会はオンラインでも開けますか?
開けます。実際に企業の19.4%がWEBでの内定者懇親会を実施しています(マイナビ・2026年卒企業調査)。ただし内定者が希望するのは対面の懇親会が58.9%と高い水準です。遠方の内定者への配慮など、理由がある場合の選択肢と考えるのが現実的です。
内定者懇親会の参加率を上げるにはどうすればよいですか?
案内の段階で不安を先に消しておくことが有効です。服装や髪型への不安は27.0%、当日の流れや持ち物がわからないという不安は16.4%ありました。日時・場所・服装の目安・当日の流れ・参加人数を具体的に書いた案内を、早めに届けることをおすすめします。
内定者に費用を負担させてもよいのでしょうか?
内定者はまだ入社前で、多くは学生です。会場までの交通費も含めて、企業側が負担する形をおすすめします。費用の負担を求めると、参加をためらう理由をひとつ増やすことになります。会の成否は、まず参加率に左右されるためです。
ご依頼の前に、料理を確かめる体験ランチ。
法人ケータリングをご検討中の方へ、恵比寿の店舗で料理をご体験いただけます。担当者様・役員の方々もご一緒に。1〜8名様 / お一人様15,000円(税込)・ドリンク込み / 約2時間・完全予約制。完全予約制・開始時間はご都合に合わせて調整。
法人ケータリングの体験ランチ
ご依頼前に、担当者様・役員の方を交えて。
1〜8名様・お一人様15,000円(税込)・ドリンク込み体験ランチの詳細を見る
