セラーから一本を抜いて、人を集める。その一本をどこで開けるかを考えはじめると、多くの方が同じところで立ち止まります。店に持ち込めるのか。何本までなら許されるのか。そして、その一本に料理は合うのか。
イタリアン・フレンチのレストランを貸切にする場合、三つ目の問いには、ご自宅やパーティールームとは違う答え方ができます。コースには順番があるからです。前菜から魚へ、魚から肉へと進む流れの、どこにその一本を置くか。順番が決まっている場に持ち込むということは、料理のほうを寄せてもらえる余地がある、ということでもあります。
この記事では、10〜30名の会でイタリアンやフレンチの店を貸し切り、持ち込む一本にコースを寄せてもらうための頼み方と、人数ごとの費用、そして店を見分ける軸を、料理をつくる側からお伝えします。8名までの少人数の会なら、店選びの条件が変わりますので、東京でワインを持ち込むなら ― 8名までの少人数で一本を主役にする店選びをご覧ください。
結論:10〜30名でイタリアン・フレンチの店を貸し切るなら、持ち込むワインは予約のときに伝えるのが最善です。 コースには順番があります。だから銘柄が先に分かっていれば、料理のほうをその一本に寄せて組み立てられます。東京で10〜16名さまなら着席コースでお一人15,000円から、17名さま以上はビュッフェ形式でお一人8,000円からが、私たちの目安です。店を見分ける軸は二つ。持ち込み料と本数の上限を明言しているか、そして型の違うグラスが人数分あるかどうかです。8名までの会は、少人数の持ち込みの記事で別に整理しています。
あわせて、8名までの少人数でワインを持ち込む店選びと、人数別に考える貸切パーティーの会場の選び方もご覧ください。
貸切には三つの型があります
「レストランを貸切にする」と一口に言っても、人数によって成立する形はまったく変わります。私たちがお受けしている形を、そのまま並べます。
| 人数 | 会場 | 料理の形式 | お一人あたり |
|---|---|---|---|
| 6〜8名さま | 恵比寿の店(一日ひと組の完全貸切) | 着席コース | 15,000円〜/ペアリング付 22,000円 |
| 9〜16名さま | 出張料理、または手配した会場 | 着席コース | 15,000円〜/ペアリング付 22,000円 |
| 17〜30名さま | 手配した会場(港区のタワーレジデンス、丸の内のクラブラウンジなど) | ビュッフェ | 8,000円〜 |
表示している金額には、税・サービス料・出張費が含まれます。
境目は16名さまです。ここを超えると、一皿ずつお出しする形は物理的に成立しにくくなります。そのため17名さま以上は、大皿でお出しして現地で仕上げるビュッフェ形式でご提案しています。着席とビュッフェは、価格の高い低いではなく、設計思想の異なる別のサービスです。
時間の区切りについて
時間の扱いも、型によって変わります。
恵比寿の店は一日ひと組の完全貸切のため、時間の区切りを設けていません。開始時刻も、19時が多いものの、18時や20時に寄せることができます。
一方、私自身が客として個室を使ったときには、2時間制のことがありました。一晩に2回転、3回転させている店ほど、時間の制約は厳しくなります。貸切だから時間が自由になる、とは限りません。ワインを何本も開ける会なら、予約の段階で時間の区切りの有無を必ず確かめてください。
「一本に料理を寄せる」とは、どういうことか

通常のペアリングは、料理が先にあって、そこにワインを探しにいきます。持ち込みの場合は、順序が逆になります。ワインが先にあって、料理のほうを動かす。
このとき私が見ているのは、銘柄の格やヴィンテージの評価ではありません。そのワインのボディに対して、火入れとソースをどう応答させるか、その一点です。味付けの好みで決めているわけではないのです。
三つ、実際の寄せ方をお見せします。
ブルゴーニュ系の繊細な赤なら、鴨に軽やかなソースを
繊細な造りの赤を持ち込まれたときは、鴨や鳥など、少し軽めの肉を合わせたくなります。
火入れは、水分量を十分に残す方向へ。ソースには軽やかさを持たせ、果実味の豊かな風味が立ち上がるように組みます。ワインの繊細さに、料理の側から歩幅を合わせていく作業です。
シャブリのような白なら、牡蠣に海苔とレモンを
白の場合は、香りを三つに絞るところから始めます。
たとえばシャブリなら、レモン、潮やヨード、青りんご。この三つを実在の食材に置き換えて、それぞれから連想を広げます。レモンからは牡蠣や貝や白身魚。海苔からも牡蠣や貝。青りんごからはセロリや豚。複数の連想に共通して現れたのが、牡蠣でした。
そこで組み上がるのが、生牡蠣に海苔とレモンのジュレ、青りんごのすりおろしという一皿です。青りんごは、酸と甘みで口の中をいったん戻す役を担います。ここで塩は足しません。牡蠣自身の塩気だけに留めることで、料理の総量がワインより一段下に収まるからです。
香りで繋ぎ、強度で一歩引く。 この二つが揃って、はじめて皿がワインのほうを向きます。組み立ての手順については、ペアリングの組み立て方を四つの工程に分けた記事で詳しくお伝えしています。
骨格のある赤なら、火入れの香ばしさで受ける
ボルドー系のように骨格の強い赤であれば、脂質の多い肉が合います。牛肉、あるいは鹿などのジビエ。
ここでは火入れをしっかり入れて、香ばしさを立たせます。ワインのボディ感に負けない火入れを意識する、という言い方がいちばん近いでしょうか。繊細な赤とは、まったく逆の方向へ料理を振ります。
熟成の進んだ赤なら、また別の組み方になります。きのこ、ドライフルーツ、紅茶といった香りから連想を広げると、三つすべてから熟成肉が出てきます。干し椎茸のソースと、プルーンと紅茶のジュを添えて、熟成牛のローストへ。干す、煮出す、煮詰めるという時間の要素だけで組んだ一皿です。
予約のときに伝える、三つの情報
料理をワインに寄せてもらうために、主催者の側で必要なことは多くありません。予約のときに三つ伝えるだけです。
- 銘柄(分かる範囲で。生産者名だけでも構いません)
- 年号(ヴィンテージ。古酒かどうかの判断に直結します)
- 本数(グラスの準備数と、コースの構成に関わります)
持ち込みの可否も料金も店ごとに異なりますので、この三つを伝えたうえで、受けてもらえるかを確認するのが確実です。
そのまま使える、予約時の文例
メールでご予約される場合は、このくらいで十分に伝わります。
◯月◯日、10名で貸切をお願いしたく存じます。
当日、ワインを持ち込ませていただきたく、可否と持ち込み料をお伺いできますでしょうか。
現時点では以下の3本を予定しております。
・ブルゴーニュ 赤 2018年 1本
・シャブリ 白 2021年 1本
・シャンパーニュ 2016年 1本
本数は当日までに増える可能性がございます。
差し支えなければ、この3本に合わせてコースを組んでいただけますと幸いです。
お電話の場合も、伝える中身は同じです。「ワインを持ち込みたいのですが、持ち込み料と本数の上限はございますか」から始めて、銘柄と年号を続けます。
ボトルをいつ渡すかも、あわせて相談してください。事前配送がもっとも確実です。 当日お持ちになる場合は、入店時にまとめてお渡しいただく形になります。夏場の持ち運びには、どうかご注意ください。真夏は一日二日でも、直射日光や高温にさらすと状態が変わります。
古酒については、提供の約一週間前から店のセラーで動かさずに保管しておくことができます。澱を落ち着かせる時間が要るからです。古酒を開ける予定があるなら、この点は早めにお伝えください。
銘柄が決まっていない場合
すべての会で、銘柄が事前に決まっているわけではありません。持ち寄りの会なら、当日まで何が集まるか分からないこともあります。
その場合でも組めます。当日にリストが分かる形であれば、調味料やソースで料理の味わいを寄せて、ワインを引き立てる方向へ持っていきます。
私の記憶に残っているのは、夏の暑い日のことです。グレープフルーツとハーブをふんだんに使ったサラダに、その日フラッと持ち込まれたソーヴィニヨン・ブランが重なりました。事前に銘柄が分かっていた一本ではありません。それでも、思った通りの一品が目の前で重なる瞬間があります。ああいう夜のために、この仕事をしているようなところがあります。
グラスの数と型が、店選びの分かれ目になります
持ち込みを受けてくれるかどうかと同じくらい、場合によってはそれ以上に効いてくるのがグラスです。
ワインの出方を現場で調整する手段は三つあります。効きはじめるまでの時間が、それぞれまったく違います。
| 手段 | 効きはじめるまで |
|---|---|
| グラスを替える | 注いだ瞬間 |
| 温度を変える | 10〜15分 |
| デキャンタージュ | 30分〜2時間 |
グラスは、いちばん速い調整手段です。 ボウルの大きさが香りの広がり方を決め、飲み口のすぼまり方がワインの落ちる位置を決めます。舌の前方に落ちれば甘みと果実が先に来て、中央から奥に落ちれば酸とタンニンが立ちます。
代表的な型と、寄せられる料理は次の通りです。
| 型 | ワインへの効果 | 寄せられる料理 |
|---|---|---|
| ボルドー型 | タンニンが立ち、骨格が前に出る | 赤身肉、炭火焼き、脂のある肉 |
| ブルゴーニュ型 | 香りが大きく広がり、酸が丸くなる | きのこ、鴨、繊細な赤で組む料理 |
| 白ワイン型 | 温度が上がりにくく、酸と果実が締まる | 白身魚、前菜、和食 |
| フルート/チューリップ | 泡と酸が立ち、集中する | 揚げ物、塩気のある前菜 |
同じボトルでも、グラスを替えれば寄せる方向が変わります。前半の繊細な皿には小さめのグラスで輪郭を立たせ、メインの肉には大きなグラスで香りを開かせる。そうすると、一本のワインがグラスの使い分けだけで二皿にまたがれます。
ですから、持ち込みを本気で考えるなら、確かめるべきは「グラスはありますか」ではありません。型の違うグラスが、人数分あるかどうかです。10名で3本を開けるなら、理屈のうえでは30脚が要ります。
恵比寿の店では、お一人あたり6〜8脚のグラスに対応でき、フルペアリングにも対応できます。手配する会場での会も含めると、グラスは約100脚あります。デキャンタ、パニエ、アイスクーラー、古酒用のオープナーなど、ワインのサービスに必要な器具も一通り用意しています。
10名・20名・30名の費用
費用の見立てを、人数ごとに並べます。私たちの単価で計算した目安です。
| 人数 | 形式 | お一人あたり | 料理の合計目安 | 持ち込み料 |
|---|---|---|---|---|
| 10名さま | 着席コース | 15,000円〜 | 150,000円〜 | 0円 |
| 10名さま | 着席コース+ペアリング | 22,000円 | 220,000円〜 | 0円 |
| 20名さま | ビュッフェ | 8,000円〜 | 160,000円〜 | 0円 |
| 30名さま | ビュッフェ | 8,000円〜 | 240,000円〜 | 0円 |
着席コースは、1回のご依頼につき90,000円からが最低のラインです。お一人15,000円に6名さまを掛けると、ちょうどこの金額に届く計算になります。
ここで見ていただきたいのは、右端の列です。
東京のレストランでワインを持ち込む場合、持ち込み料は1本あたり2,000〜5,000円が想定される相場です。無料で受ける店は、多くはありません。
10名の会で10本を開けたとすると、この相場で計算して20,000〜50,000円。お一人あたりに直せば2,000〜5,000円が、料理とは別に乗ることになります。持ち込む本数が増えるほど、この差は開いていきます。持ち込み料の有無は、ワインを軸にした会では、費用の構造そのものを変える項目です。
なお、会場を手配する場合の場所代は、会場と日程によって変わります。この記事では金額に触れません。ご相談をいただいた段階で、候補の会場ごとに個別にご案内しています。
キャンセルについては、開催日の7日前からは料金の100%を頂戴することが多くなっています。人数が減る場合はこのポリシーに沿った取り扱いになりますが、増える場合は前日のご連絡でも対応できます。
東京で店を探すときの三つの軸
持ち込みができる店を東京で探すとき、見るべきところを三つに絞ります。
持ち込み料と本数の上限が、明言されているか
「応相談」とだけ書かれている場合は、予約の前に必ず口頭で確かめてください。金額だけでなく、本数の上限も聞いてください。持ち込みの可否も料金も、店ごとに異なります。
個室を取る場合は、個室料が別にかかることもあります。私自身、客として個室を使って求められた経験があります。最低利用金額をはっきり明記している店は少ない印象ですが、そのかわりに「お酒は一杯は頼んでください」といった条件がつくことはあります。書かれていないことは、聞かないと分かりません。
事前にワインリストを渡せて、ボトルを預けられるか
料理を寄せてもらうには、店側に考える時間が要ります。リストを事前に受け取る運用があるか。ボトルの事前配送を受けてくれるか。古酒を預かって、動かさずに保管してくれるか。
この三つを受けてくれる店は、持ち込みを「許可する」のではなく「設計に組み込む」構えがある店です。
型の違うグラスが、人数分あるか
前の章でお伝えした通りです。数を聞くことに遠慮は要りません。ワインを何本も開ける会だと伝えたうえで、グラスの型と実数を確かめてください。答えが具体的に返ってくるかどうかで、その店がどれだけワインに向き合っているかが分かります。
Na Team Lab の場合
私たちは、人数によって場所を変えています。
6〜8名さまなら、恵比寿の店です。恵比寿一丁目、恵比寿駅から徒歩約8分、広尾駅からは徒歩約10分。一日ひと組の完全貸切で、コースはお一人15,000円、ワインペアリングをお付けする場合はお一人22,000円です。税とサービス料を含みます。コース代金のほかに、席料・チャージ料・貸切料をいただくことはありません。
9名さまを超えると、出張料理の形か、会場を手配する形に移ります。港区のタワーレジデンスのパーティールーム、丸の内のクラブラウンジなど、17〜30名さまが入る場所をご用意できます。音楽ができる会場、夜景を望む会場など、会の目的に応じて選びます。港区は、私たちがもっとも多く伺っているエリアです。
そして、ここが大切なところです。会場が変わっても、持ち込み料は無料のままです。本数の制限もありません。 恵比寿の店で貸し切る場合と、別の会場を手配する場合とで、持ち込みの条件に差はありません。
ご予約の際には、アレルギーや苦手な食材のほか、お好きな食材も伺います。持ち込まれるワインのリストを事前に共有していただければ、その日限りの一本に合わせてコースを設計します。ワイン好きの方のためにつくった店ですので、できる限りご要望に応じる方針でおります。
ご相談は、2週間前までにいただけると余裕をもって組み立てられます。日程が固まっていない段階でも構いません。
貸切とワインのご相談は、公式LINEにて承っております。
まとめ
イタリアン・フレンチのレストランを貸切にして、ワインを持ち込むときの要点を整理します。
- コースには順番があります。 持ち込む一本を先に伝えれば、料理のほうをその一本に寄せて組み立てられます
- 伝えるのは、銘柄・年号・本数の三つ。 ボトルは事前配送がもっとも確実で、古酒は約一週間前から店のセラーで預かれます
- 店を見分ける軸は、持ち込み料と本数上限の明示、事前のリスト共有と預かり、型別グラスの実数の三つです
- 費用の目安は、10〜16名さまの着席コースでお一人15,000円から、17名さま以上のビュッフェでお一人8,000円から。 持ち込み料の相場は1本2,000〜5,000円ですので、無料かどうかで費用の構造が変わります
- Na Team Lab では、6〜8名さまは恵比寿の八席、9名さま以上は港区・丸の内などの手配会場へ。 会場が変わっても、持ち込み料は無料で本数の制限もありません
開ける一本が決まっているなら、その一本の名前から会の相談を始めてみてください。順番のある場所でなら、料理はそこへ寄っていけます。
よくある質問
何名から何名までの会を想定した記事ですか?
この記事は、10〜30名でイタリアンやフレンチの店を貸し切る会を想定しています。10〜16名さまは着席コースでお一人15,000円から、17名さま以上はビュッフェ形式でお一人8,000円からが私たちの目安です。8名までの会なら、恵比寿の店を一日一組で貸し切る形が合いますので、少人数でワインを持ち込む記事をご覧ください。
持ち込むワインがまだ決まっていなくても相談できますか?
ご相談いただけます。当日にリストが分かる形でも、調味料やソースで料理の味わいを寄せて、ワインを引き立てる方向へ組み立てます。持ち寄りの会で当日まで銘柄が分からない場合も、同じようにお受けしています。
ボトルは事前に送っておけますか?
事前配送に対応しています。当日お持ちになる場合は、入店時にまとめてお渡しください。夏場の持ち運びは状態が変わりやすいため、ご注意いただけますと幸いです。古酒は、提供の約一週間前から店のセラーで動かさずに保管できます。
アレルギーや苦手な食材にも対応してもらえますか?
ご予約の際に伺います。苦手な食材やアレルギーのほか、お好きな食材もお聞かせください。対応できることは、できる限りコースに反映してまいります。当日の進行のご希望も、あわせて打合せで伺います。
一組で店を貸し切る夜へ。
恵比寿の八席を貸し切り、持ち込みの一本や会の目的に合わせてコースを組み立てます。

