ワインの種類は多い。そう感じたことはないでしょうか。

売り場に立つと、産地の名前が並び、品種の名前が並び、聞いたことのない言葉が並んでいます。赤か白か、というところまでは決められる。けれどその先で、何を手がかりに絞ればよいのかが分からなくなる。

種類が多く感じるのは、覚える対象を間違えているからかもしれません。世界には1万を超えるぶどう品種があるといわれます。端から覚えていく道は、現実的ではありません。

この記事では、覚えることを増やしません。むしろ一つに減らします。恵比寿で一日ひと組・八席のレストランを営み、ワイン会で実際に注いできた立場から、種類の整理の仕方をお伝えします。

SUMMARY

結論:ワインの種類は、赤・白・ロゼ・オレンジの四色に、泡の有無と甘辛の二軸を掛け合わせて整理できます。 色の違いを決めているのは原料のぶどうではなく、皮と果汁を一緒に発酵させるかどうかという造り方の違いです。 黒ぶどうを皮ごと発酵させれば赤、途中で皮を外せばロゼ。 白ぶどうを果汁だけで発酵させれば白、皮ごと発酵させればオレンジになります。 この一つの軸が分かると、品種名を暗記しなくても、棚の一本の見当がつくようになります。

関連する基礎知識は、ワイン初心者が最初に持つ三つの軸ワインのテイスティング方法でも紹介しています。

結論|ワインの種類は、色・泡・甘辛の三軸で整理すると迷わない

ワインの種類は、次の三つの軸を掛け合わせるだけで整理できます。

1. ―― 赤・白・ロゼ・オレンジの四つ

2. ―― あるか、ないか

3. 甘辛 ―― 甘口か、辛口か

品種も産地も、この三軸の内側にあります。先に軸を持っておけば、あとから知識を足していけます。逆に軸を持たないまま品種名を覚えても、覚えた順に忘れていきます。

そして、この三軸には共通点があります。三つとも「造り方の違い」だということです。

色は、皮と果汁を一緒に発酵させるかどうかで決まります。泡は、二度目の発酵をどこで起こすかで決まります。甘辛は、発酵をどこで止めるかで決まります。ワインの種類とは、突き詰めれば造り手が発酵をどう扱ったかの記録です。

私がレストランやワイン会でロゼやオレンジワインをお出しするときも、まず造り方をお話しします。赤ワインと白ワインの造り方を並べて、「だからこんな味わいになります」とお伝えする。そのほうが、香りの説明を重ねるよりも早く伝わります。

色による四分類|赤・白・ロゼ・オレンジは、皮を漬けるかで決まる

赤・白・ロゼなどの違いを学ぶワイン
果皮を果汁と一緒に置く時間が、色と味わいの方向を決めます。

多くの方が、赤ワインは赤いぶどうから、白ワインは白いぶどうから造られると考えています。半分は当たっていますが、半分は違います。

決め手は、果皮を果汁と一緒に発酵させるかどうかです。

黒ぶどうの果汁そのものは、搾っただけならほとんど色がついていません。あの深い色は、果皮から移ったものです。渋みのもとであるタンニンも、主に果皮と種に由来します。つまり赤ワインの色と渋みは、皮と一緒に過ごした時間の長さでできています。

この一点が分かると、四色が二×二の表に収まります。

造り方味の傾向
黒ぶどうを、果皮ごと発酵させる色が濃く、タンニンによる渋みが骨格になる
ロゼ黒ぶどうを漬け、色が移った時点で果皮を外す果実の香りを残しつつ、渋みは軽い
白ぶどうを搾り、果汁だけを発酵させる酸が輪郭をつくり、渋みはほとんどない
オレンジ白ぶどうを、果皮ごと発酵させる白の酸に、果皮由来の色と渋みが重なる

表の縦の並びを、もう一度見てください。赤とオレンジは、同じ造り方です。違うのは使ったぶどうの色だけ。白とロゼも、果皮をどう扱うかという点では近い位置にいます。

四つの言葉は、別々の四つの飲み物を指しているように見えます。けれど実際には、二つの問い ―― どちらのぶどうか、皮を漬けるか ―― の答えの組み合わせにすぎません。

合わせる料理も、この構造から見当がつきます。渋みが骨格になる赤は、脂のある肉に寄り添います。酸が輪郭をつくる白は、魚介や野菜の繊細さを損ないません。ロゼはその中間で、卓の上のいろいろな皿に対応します。オレンジは渋みがある分、出汁や発酵調味料を使った料理と対話しやすくなります。

なお、ロゼの造り方には、漬けた液の一部を引き抜く方法や、短時間だけ漬けて搾る方法などがあります。細かな呼び名は不要です。色が移った時点で皮を外している、という一点で足ります。

赤ワインの種類|主要五品種を、軽重とタンニンで並べる

色の軸が決まったら、次は品種です。ただし全部を覚える必要はありません。世界には1万を超える品種があるといわれますが、市場に流通するものの九割ほどは、約20品種で占められています。

赤ワインの種類を考えるとき、私は二つの物差しをおすすめしています。軽いか重いかと、渋みが強いか柔らかいかです。

品種軽重タンニン
カベルネ・ソーヴィニヨン重い強い
メルロー中〜重い柔らかい
ピノ・ノワール軽い〜中軽い
シラー重い強い傾向
サンジョヴェーゼ中程度で、酸が高い傾向

香りの方向も、一行ずつ添えておきます。

  • カベルネ・ソーヴィニヨンは「赤ワインの王」と呼ばれます。骨格が強く、カシスやプラムの香りを持ち、長期の熟成に向きます
  • メルローはタンニンが柔らかく、ブルーベリーやプラムの香り。単独でも、ブレンドの相手としても優れています
  • ピノ・ノワールは「赤ワインの宝石」と呼ばれる品種です。繊細で優雅、樹液を思わせる質感があり、冷涼な土地で品質が上がります
  • シラーは色が濃く、香りにスパイスの印象が出る傾向があります
  • サンジョヴェーゼは酸がしっかりしていて、トマトを使った料理と合わせやすい傾向があります

ただし、この表はあくまで目安です。

同じ品種でも、産地と造り手によって別人格になります。ブルゴーニュのピノ・ノワールは繊細さが際立ち、カリフォルニアのものは肉厚な果実感が前に出ます。同じDNAが、地球の二点で違う音楽を奏でている。表の一行では、この幅を書ききれません。

白ワインの種類|酸と果実味で四品種を見分ける

白ワインの種類を整理するときは、物差しが変わります。渋みがほとんどないため、酸の高さ味わいの方向で見ます。

品種味わいの方向
シャルドネ中程度樽の有無で大きく変わる
ソーヴィニヨン・ブラン高いハーブ、グレープフルーツの青さ
リースリング高い甘口から辛口まで幅が広い
甲州中程度穏やかで、和食に寄り添う

シャルドネは、産地と造り方で最も表情が変わる品種です。冷涼な土地ではレモンやリンゴのような香りになり、温暖な土地ではバターやトロピカルフルーツの印象が出ます。樽の有無でも、香りは大きく動きます。

ソーヴィニヨン・ブランは、青々とした特性がはっきりしています。ハーブやグーズベリー、グレープフルーツを思わせる香りと、高い酸。白身魚に合わせるなら、この透明感が効きます。

リースリングは、白い花やライチ、ミネラルを思わせる香りと、透明な酸を持ちます。そして重要なのは、この品種には甘口から辛口まで幅があることです。品種名が分かっても、甘辛までは決まらない。だから甘辛は、別の軸として立てる必要があります。

泡の種類|二度目の発酵を、どこで起こすか

泡のあるワインも、造り方の軸で説明できます。

ワインの泡は、後から炭酸を吹き込んだものではありません。二度目の発酵で生まれた炭酸ガスを、閉じ込めたものです。分かれ道は、その二度目の発酵をどこで起こすかにあります。

瓶の中で起こす方法では、泡が細かくなり、香りに複雑さが出やすくなります。フランスのシャンパーニュ、同じくフランス各地のクレマン、スペインのカヴァがこの造りです。なかでもシャンパーニュは、シャンパーニュ地方で造られたものだけを指します。同じ製法でも、産地が違えば別の名前になります。

タンクの中で起こす方法では、ぶどう本来の果実の香りがそのまま残ります。イタリアのプロセッコが代表的で、華やかで軽やかな印象になり、食前の一杯に向きます。

泡は、料理の脂を洗い流し、口の中を一度まっさらにする働きを持っています。乾杯のためだけの一杯ではなく、コースの途中に置いても役目を果たします。

甘口・辛口の見分け方|発酵をどこで止めたかが、そのまま残る

甘辛も、やはり造り方の話です。

ぶどうの糖は、発酵によってアルコールに変わります。最後まで変えきれば、糖は残らず辛口になります。途中で発酵を止めれば、変わりきらなかった糖が残って甘口になります。甘口ワインは砂糖を加えたものではなく、発酵を止めた場所の記録です。

見分ける手がかりは三つあります。

一つめは、ラベルの表記です。辛口は英語で Dry、フランス語で Sec、イタリア語で Secco、ドイツ語で Trocken と書かれます。甘口はフランス語で Doux、イタリア語で Dolce。泡の場合は Brut という表記が辛口を指します。なお泡の甘辛表記は少し紛らわしく、Extra Dry と書かれていても Brut より甘い側に位置します。表記の全体像は、ラベルの読み方を扱う記事で改めてお話しします。

二つめは、アルコール度数です。糖がアルコールに変わった量が多いほど、度数は上がります。したがって度数が高いものは辛口に振れやすい傾向があります。ただしこれは傾向であって、法則ではありません。度数だけで断定はできません。

三つめは、産地の傾向です。冷涼な土地のぶどうは酸が高く、辛口の方向に仕上がりやすくなります。温暖な土地では果実味が前に出ます。同じ品種でも土地が変われば別人格になる、という先ほどの話と地続きです。

ここで、白ワインの表を思い出してください。リースリングには甘口も辛口もありました。品種名は、甘辛を教えてくれません。甘辛をもう一本の軸として立てる必要があるのは、このためです。

その他の分類|酒精強化・貴腐・アイスワイン

ここまで見てきた四色は、造り方の分岐でした。一方、次に挙げるものは四色と並ぶ分類ではなく、別の軸で切ったものです。並べて覚えると混乱しますので、分けて置いておきます。

酒精強化ワインは、発酵の途中でアルコールを加えて度数を上げたものです。スペインのシェリー、ポルトガルのポートやマデイラが知られています。加えた時点で発酵が止まるため、糖が残って甘口になるものもあります。

私の経験では、甘口ワインや酒精強化ワインをお出しすると、感動される方が多くあります。「こんなワインがあったのか」という反応です。甘口は、デザートに合わせてお出しすることが多い一杯です。コースの終わりに、甘さと甘さが響き合う瞬間があります。

種類が分かると、選べるようになる

種類の話をしていると、お客さまの反応に段差があることに気づきます。

ロゼワインは、飲み慣れている方が多い。すでに選択肢の一つとして認識されています。一方で、オレンジワインはまだ珍しいと感じる方が多い。ワインを飲み慣れている方にとっては当たり前に飲むものですが、そうでない方からすると「オレンジワインというものがあるんだ」という驚きになります。

甘口や酒精強化も同じです。知らなかった種類に出会ったときの反応は、いつも似ています。

以前、苦味が苦手だとおっしゃりながら、ボルドー系のワインしか飲んだことがなかった方がいらっしゃいました。渋みが苦手な方もいれば、甘すぎると感じる方もいます。好みは逆の方向に出ます。共通しているのは、飲んだことのある幅が狭いという一点でした。

「ワインが苦手」なのではありません。まだ合う一本に出会っていないだけです。

ですから私は、おすすめの銘柄をお渡しするところから始めません。まず、これまで美味しいと感じた一本を伺います。その一本に含まれていた特徴を言葉にして、「その味わいなら、この品種が当てはまります」と接続する。好みから逆算していく順番です。種類を知る目的は、正解を当てることではなく、大きく外さないようになることにあります。

ワイン会では、四色に加えて甘口や泡を並べることもあります。そうすると、いろいろな味わいが楽しめて嬉しい、という声をいただきます。一本ずつ順に飲んでいては、違いはなかなか見えません。並べた瞬間に、輪郭が立ち上がります。

Na Team Lab のワイン会には、コースとともに六杯をお出しする形式と、十本から十五本を並べて立食で楽しむ形式があります。テーマと参加費は開催ごとの案内ページで事前にお伝えしています。四色を一度に比べてみたい方には、立食の会が向いています。

料理と一緒に学びたい方には、恵比寿で開いている料理教室があります。8名限定・2時間・1回6,000円(税込・ドリンク込み)で、実演を見ながら、その場でワインを飲んでいただける形です。

Na Team Lab の世界観や、レストラン・出張料理の詳細については、公式LINEにてご案内しています。

まとめ

  • 三軸で整理する:ワインの種類は、色(四つ)・泡の有無・甘辛の掛け合わせで捉えられます
  • 色は皮で決まる:黒ぶどうを皮ごと発酵させれば赤、途中で外せばロゼ。白ぶどうを果汁だけなら白、皮ごとならオレンジです
  • 赤は軽重と渋み:カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シラー、サンジョヴェーゼの五品種を、この二つの物差しで並べます
  • 白は酸で見る:シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、甲州。同じ品種でも甘辛は決まりません
  • 甘辛は発酵の止め方:ラベルの表記、アルコール度数、産地の傾向という三つの手がかりがあります

覚えることを増やすより、軸を一本持つほうが早い。色も泡も甘辛も、すべて造り方の記録です。次に売り場に立たれたとき、この一本を持っていっていただければ幸いです。

よくある質問

ロゼワインは、赤ワインと白ワインを混ぜて造るのですか?

一般的には違います。多くのロゼは黒ぶどうを皮ごと発酵させ、色が移った時点で果皮を取り除いて造ります。漬けた時間の長さが、そのまま色の濃さになります。赤と白を混ぜる造り方もありますが、これは一部の産地やスパークリングに限られた例外的な方法です。

オレンジワインとは、どんなワインですか?

白ぶどうを、果皮ごと発酵させて造った白ワインのことです。赤ワインと同じ造り方を白ぶどうに使うため、果皮由来の色と渋みが出て、オレンジがかった色になります。オレンジという果物は関係ありません。白ワインより渋みがある分、出汁や発酵調味料を使った料理とよく合います。

種類が多くて選べません。最初はどれから飲めばよいですか?

一本ずつ試すより、同じ日に二本を並べるほうが早く分かります。白なら酸の高いものと樽の効いたもの、赤なら軽いものと重いものというように、一つだけ条件を変えて比べてください。違いは、単独で飲んでいるときには見えず、並べた瞬間に立ち上がります。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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