ある日ふと、気づくことがあります。ここ数年、新しく親しくなった人がいない。会っているのは職場の人と、学生時代からの友人だけ。連絡帳をたどっても、増えているのは仕事の相手ばかりです。
そのとき多くの方が、自分のせいだと考えます。人付き合いが下手になった。誘われなくなった。年をとって面倒くさがりになった。社会人になってから友達がいないと感じると、原因を自分の内側に探してしまいます。
けれど、そこではありません。この記事では、社会人が友達を作る方法を、性格ではなく場の構造から整理します。私たちは恵比寿で、月に一度の料理教室とワイン会を続けています。運営している側から見えることを、そのままお伝えします。
結論:社会人になってから友達ができにくいのは、性格ではなく「繰り返し会う場」がなくなるからです。 学生時代は、同じ場所に毎日いるだけで関係が育ちました。社会人になると、その前提が消えます。 大人の友人ができるのは、目的が友達作りではなく、利害がなく、同じ人と何度も会う場です。 習い事や趣味の会がそれにあたります。友達を作ろうと意気込むより、通い続けられる場を一つ持つほうが近道です。
関連する考え方は、ワイン会の流れと会の目的を見分ける視点でも紹介しています。
社会人に友達ができにくい大きな理由は、「繰り返し会う場」が減ること
先に結論を置きます。社会人になってから友達ができにくいのは、学生時代のように「同じ場所で繰り返し顔を合わせる」機会がなくなるためです。
大人の友人は、目的が友達作りではなく、利害がなく、同じ人と何度も会う場から生まれます。習い事や趣味の会が、それにあたります。
言い換えれば、これは能力の問題ではありません。環境の問題です。
学生の頃、私たちは友達を作ろうと努力していたでしょうか。おそらく、していません。教室に座っていた。部活に出ていた。同じ電車で帰っていた。それだけです。関係は、努力の結果ではなく、回数の結果として生まれていました。
社会人になると、その回数が消えます。消えたのは回数であって、あなたの魅力ではありません。だから「友達を作るには、社会人はどうすればいいか」という問いは、正確にはこう置き換えられます。失われた回数を、どこで取り戻すか。
以下では、学生時代に何が働いていたのかを分解し、そのうえで大人の場に必要な条件を三つに整理します。
学生時代と何が違うのか

学生時代と社会人とで、決定的に変わることが三つあります。順に見ていきます。
同じ場所に、毎日いない
学校には、出席という仕組みがありました。会いたいかどうかに関係なく、同じ人と同じ部屋に、毎日いることになります。
この「意思と無関係に何度も会う」状態が、関係の土台でした。一度目に話が弾まなくても、二度目があります。三度目には共通の話題が生まれています。一度で打ち解ける必要が、まったくなかったのです。
社会人になると、会う相手は自分で選ぶことになります。選ぶということは、選ばなければ会わないということです。予定を立て、時間を確保し、連絡を取る。この手間が入った瞬間、偶然の重なりは起こらなくなります。
利害が発生する
社会人が最も長い時間を過ごす場所は職場です。しかし職場は、友人関係が育ちにくい場でもあります。
理由は単純で、そこには利害があるからです。評価する側と、される側。担当と、その相手。今日は同僚でも、来期には立場が変わっているかもしれません。
利害があると、人は少しだけ本音を引きます。愚痴を言えば伝わる可能性があり、弱みを見せれば覚えられる可能性がある。その計算が働く関係は、友人ではなく同僚のままとどまります。
転職や異動をきっかけに、職場の人間関係がすっと途切れた経験をお持ちの方は多いはずです。あれは薄情だったからではありません。関係を支えていたのが友情ではなく、同じ会社にいるという条件だったからです。
時間が合わない
三つめは、時間です。学生時代は、生活のリズムが全員ほぼ同じでした。社会人になると、業種も勤務形態も、家庭の事情も違ってきます。
「今度飲もう」が実現するまでに三か月かかる。三回に一回は流れる。そうして、誘うこと自体が億劫になっていきます。
ここで大切なのは、これも意欲の問題ではないということです。調整コストが高すぎる関係は、好意があっても続きません。 逆に言えば、調整しなくても会える仕組みさえあれば、関係は続きます。
大人の友人ができる場の三つの条件
ここまでを裏返すと、条件が見えてきます。社会人の友達作りでうまくいく場には、共通して三つの特徴があります。
条件一 同じ人と、繰り返し会えること
最も大切な条件です。一度きりの集まりからは、知り合いは生まれても友人は生まれにくいものです。
必要なのは頻度そのものより、次があることです。月に一度でも、次の予定が見えていれば関係は続きます。逆に、その日で完結する集まりは、どれだけ盛り上がっても翌週には残りません。
私たちの料理教室では、リピートしてくださる方がとても多く、その場で次回のご予約をされる方もいます。同じ回に居合わせた方同士が、揃って同じ次の会を予約していかれることもあります。関係が続いているのではなく、場が続いているから関係が続いている、という順番です。
条件二 目的が「友達作り」ではないこと
意外に思われるかもしれませんが、これも欠かせません。
友達作りを目的に掲げた場では、参加者全員が「相手を友達候補として見る」前提で集まります。すると、値踏みが起こります。話しかける前に、この人と合うだろうかと考えてしまう。その空気は、双方に伝わります。
一方、別の目的が先にある場では、値踏みが起こりません。料理を習いに来た。ワインを飲みに来た。目的が外側にあるぶん、隣の人は評価の対象ではなく、同じものを見ている人になります。
これは冷たさではなく、設計です。目的を交流に置かないほうが、結果として交流が起きる。そう考えています。
条件三 利害がないこと
三つめは、その場に損得が持ち込まれないことです。
参加者の誰かが何かを売りに来ている場では、警戒が生まれます。一人でもそういう人がいると、場全体の空気が変わります。
私たちの会では、不動産・ネットワークビジネス・保険など、明らかに営業を目的とした参加はお断りしています。それ以外の参加者同士のやり取りは、それぞれにお任せしています。連絡先の交換を勧めることも、禁じることもありません。仲を取り持つこともしません。
場の役割は、安心して素のままでいられる状態を保つことまでです。そこから先は、参加された方が決めることだと考えています。
場ごとに、三つの条件を満たすか比べてみる
条件がそろったところで、実際の選択肢を並べてみます。一般的な傾向として整理したものです。
| 場 | 繰り返し会えるか | 目的が友達作りでないか | 利害がないか | 費用の目安 | 時間帯 |
|---|---|---|---|---|---|
| 職場 | 満たす(毎日会う) | 満たす(仕事が目的) | 満たしにくい(評価と立場が絡む) | なし | 平日日中 |
| 習い事・教室 | 満たしやすい(固定制なら特に) | 満たす(学ぶことが目的) | 満たす | 回ごと、または月ぎめ | 週末・夜 |
| 社会人サークル | 満たしやすい(続けば) | 満たしにくい(交流自体が目的の会もある) | 満たす | 会費は幅が大きい | 週末中心 |
| マッチング・友達作りアプリ | 満たしにくい(一度で終わりやすい) | 満たさない(友達作りが目的) | 満たす | 無料〜月ぎめ | 随時 |
| 趣味の会 | 会の開催頻度による | 満たす(趣味が目的) | 満たす | 会による | 月一回程度が多い |
| ジム | 通えば顔は合う | 満たす(運動が目的) | 満たす | 月ぎめ | 随時 |
| ボランティア | 活動が続けば満たす | 満たす(活動が目的) | 満たす | 無料のものが多い | 週末中心 |
表の読み方を、三点だけ補足します。
一つめ。職場は、三つのうち二つを満たしています。 だからこそ職場の人と親しくなること自体は起こります。ただ、利害という一点が抜けているために、退職や異動で関係が途切れやすい。ここが弱点です。
二つめ。マッチングアプリや友達作りアプリが不利なのは、質の問題ではありません。 一度会って終わりになりやすい構造と、目的が友達作りだと最初から共有されている点が、条件一と条件二にそのまま当たります。使うのであれば、そこから「何度も会う場」へ移行できるかどうかを見るとよいと思います。
三つめ。ジムは条件を二つ満たしていても、会話が起こる設計になっていません。 顔を合わせることと、言葉を交わすことは別です。条件を満たすかどうかに加えて、その場に会話の入口があるかを見てください。
「友達を作ろう」としないほうが、うまくいく理由
条件二について、もう少し踏み込みます。ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
「友達を作ろう」と強く思って場に出ると、たいてい空回りします。目的が透けると、人は少し引くからです。誰しも、誰かの目的の対象になるのは落ち着かないものです。
反対に、共通の目的が先にあると、会話の入口に困りません。
私たちの料理教室で、参加者の方々が何を話しているかというと、ほとんどが料理の話です。「これ、作ったことがある」「家で作りたいと思っていた」「普段はこういうものを作っている」。目の前に共通の題材があるので、自己紹介の巧拙が問われません。
話す内容を、自分で用意しなくていい。 これが共通の目的がある場の、いちばん大きな利点です。
もう一つ、私たちがしていることがあります。会の最初に自己紹介の時間を設け、途中でこちらから話題を振ります。一品目を召し上がっているタイミングで、話が起きるように言葉を挟む。交流は偶然ではなく、主催者が場を回した結果として起こります。
自己紹介から始めているのには、理由があります。一人で来ても楽しめた、という感覚が残れば、緊張はほどけていくからです。最初にお互いの顔と名前がわかっていると、その感覚が生まれやすくなります。ほどけた人から、自然に話し始めます。
一人で参加するときの、最初の一歩
条件を満たす場を見つけても、最後に残る壁があります。一人で行くのが気まずい、という感覚です。
数字を一つお伝えします。私たちがこれまでに開いてきたワイン会では、七割近くの方が一人でのご参加です。料理教室も、お一人でお越しになる方が多くを占めます。年齢は三十代から四十代が中心で、六十代の方もいらっしゃいます。男女の比率は、おおむね半々です。
つまり、一人で来ている人が多数派です。会場で浮くのは、一人で来た人ではありません。
そのうえで、三つだけ具体的な動き方をお伝えします。
主催者に、一言だけ声をかける
到着したら、主催者や講師に「初めてです」と伝えてください。それだけで十分です。
場を回している人は、初参加の方がどこにいるかを把握したがっています。把握できていれば、話が回りやすい位置に案内できますし、会話が途切れたときに間に入ることもできます。参加者全員に話しかける必要はありません。一人にだけ伝えておけば、あとは場が動きます。
二回目に行く
これが最も効きます。社会人の友達の作り方として、一つだけ選ぶならこれです。
一回目は、ほぼ全員が様子見です。名前も顔も、まだ入っていません。二回目に行くと、状況が変わります。「前も来ていましたよね」という一言が生まれ、そこから先は初対面ではなくなります。
私たちの会にも、三回くらい通ううちに顔なじみになっていかれる方がいます。三回といっても、月に一度の会なら三か月です。急がなくていい速さだと思います。
一回目で手応えがなかったことを、相性の問題だと判断しないでください。一回目に手応えがないのは、普通のことです。判断するなら、三回目でかまいません。
その日に、連絡先を聞かない
意外かもしれませんが、初回に連絡先を交換しようとしないほうがうまくいきます。
連絡先を求める行為は、相手に「この人は何を目的に来たのか」を考えさせます。せっかく目的が外側にあった場に、目的を持ち込むことになります。
私たちの会でも、連絡先を交換される方はいます。ただ、それは自然に交わされるもので、こちらから勧めることはありません。同じ場に通っていれば、また会えます。急いで確保しなくていい関係のほうが、長く続きます。
四十代以降に、友人が増える人と増えない人
四十代を超えると、条件はもう少し厳しくなります。仕事の裁量が増え、家庭の時間が動かしにくくなり、新しい場に入ること自体のハードルが上がるからです。
それでも、この年代で友人が増えている方も確かにいます。共通しているのは、新しい人に会おうとしているのではなく、続けている場を持っていることです。十年通っている店がある。毎月出ている会がある。増やそうとしていない人のほうが、結果として増えています。
四十代以降の関係の作り方については、あらためて別の記事で詳しく扱います。
同じ顔ぶれと、月に一度
私たちは恵比寿で、八席の店を営みながら、月に一度の料理教室とワイン会を続けています。
料理教室は八名限定で、一つのテーブルを全員で囲んでいただきます。カウンターに横並びではなく、同じ卓を囲む形です。この配置にしているのは、囲むから仲良くなる、と考えているからです。ワイン会は毎月企画を変え、十九時から二十一時半ごろまで。会の性質によって、平日の日もあれば週末の日もあります。
はっきり申し上げておくと、どちらも友達を作る場としてご用意しているわけではありません。 料理を楽しみたい方、ワインを楽しみたい方に向けた会です。
ただ、同じ顔ぶれが月に一度集まっていると、結果としてそういうことが起きます。次回を一緒に予約していかれる方がいる。会の外で会っている方がいる。誘い合ってワインを飲みに行っている方がいる。一緒に仕事をされている方もいます。
念のため申し添えると、営業を目的としたご参加はお断りしています。そのうえで、通ううちに結果として仕事が生まれることは起きている、ということです。順番が逆になった関係は、たいてい続きません。
私たちは、この広がりを良いことだと思って見ています。仲を取り持つことはしませんし、連絡先の交換を勧めることもありません。繋がっていただいてかまわない、という立場です。
もし、条件を満たす場を一つ持ってみようとお考えでしたら、ご案内できるものがあります。
- ペアリングクラス(https://nateamlab.jp/pairing-class/)… 8名限定・約2時間・1回6,000円(税込・ドリンク込み)。入会金はなく、一回だけの参加もできます
- ワイン会(https://nateamlab.jp/wine-club/)… 毎月テーマを変えて開催。一人でのご参加が多い会です
日程や次回のテーマは、公式LINEでご案内しています。ご質問もこちらで承ります。
まとめ
社会人が友達を作る方法について、場の構造から整理してきました。要点を振り返ります。
- 社会人に友達ができにくい大きな理由は、「繰り返し会う場」が減ること
- 学生時代と違うのは、毎日同じ場所にいないこと、利害が発生すること、時間が合わないこと
- 大人の友人ができる場の条件は、繰り返し会える・目的が友達作りでない・利害がない、の三つ
- 職場は三つのうち二つを満たすが、利害があるため関係が途切れやすい
- 「友達を作ろう」と意気込むほど空回りする。共通の目的が先にある場を選ぶ
- 一人での参加は珍しくない。主催者に一言かけ、二回目に行き、その日に連絡先は聞かない
新しい場を探す前に、一つだけ確かめてみてください。いま候補にしているその集まりに、次回があるかどうか。答えが「はい」なら、それだけで条件の半分は満たしています。
よくある質問
人見知りでも、社会人から友達はできますか?
できます。人見知りが不利になるのは、初対面同士がその場かぎりで話す場です。同じ人と何度も会う場であれば、一度で打ち解ける必要がありません。三回目に少し話せれば十分です。話す量よりも、通い続けることのほうが効きます。
お金をかけずに友達を作る方法はありますか?
費用の多い少ないより、続けられるかどうかで選んでください。無料でも足が遠のく場より、月に一度の負担で通える場のほうが関係は育ちます。地域の活動や読書会など、費用のかからない選択肢もあります。
社会人になってから、異性の友達はできますか?
できます。ただし恋愛を目的に掲げた場を選ぶと、友人にはなりにくくなります。目的が交際に置かれた場では、相手を候補として見る前提が働くためです。共通の目的が先にある場のほうが、性別を意識しない関係になりやすいと感じています。
友達作りではなく、ワインを目的に。
共通の話題があるから、会話が自然に始まります。
