ワイン会に誘われた。あるいは、募集の告知を見つけた。行ってみたい気持ちはあるのに、指が止まる。
何をする会なのか。当日はどう進むのか。何を着ればいいのか。粗相をしないか。そして、ひとりで行って浮かないか。分からないことが積み重なって、申し込みのボタンを押せないままページを閉じた。そんな経験のある方に向けて、この記事を書いています。
私は東京・恵比寿で八席のレストランを営みながら、毎月ワイン会を企画しています。その現場から見えている「実際のところ」を、順にお伝えします。
結論:ワイン会とは、数種類のワインを飲み比べながら、料理と会話を楽しむ会のことです。 形式はテイスティング型・ペアリング型・持ち寄り型・交流型の4つに整理できます。会費は5,000〜20,000円が目安で、多くの会は一人での参加を前提に組まれています。Na Team Lab がこれまで開いてきた会でも、7割近くの方がおひとりでお越しです。 服装にドレスコードを設けない会がほとんどで、気をつけるのは香水を控えることくらいです。グラスの持ち方より、飲み残しを恥じないこと、知らない銘柄を聞けることのほうが、その夜を豊かにします。
初参加の前には、会の目的を見分ける五つの視点と、初心者が最初に持つ三つの軸も参考になります。
ワイン会とは|数種類のワインを飲み比べながら、料理と会話を楽しむ会
ワイン会とは、数種類のワインを飲み比べながら、料理と会話を楽しむ会のことです。
一本を長く飲むのではなく、複数を並べて比べる。ここが、通常の食事との最も大きな違いです。同じ白ワインでも、産地が変われば酸の輪郭が変わります。同じ品種でも、造り手が変われば別の人格が立ち上がります。その差は、説明を読むより、続けて口に含んだほうがはるかに速く体に入ります。
ひとくちに「ワイン会」といっても、目的によって進み方はずいぶん違います。大きく4つの型に整理できます。
| 型 | 主な目的 | 進み方 |
|---|---|---|
| テイスティング型 | 比べて知る | 少量ずつ複数を並べ、違いを確かめる |
| ペアリング型 | 料理と合わせる | コースに沿って、一皿ごとに一杯が供される |
| 持ち寄り型 | 持ち寄って開ける | 各自が一本を持参し、全員で分け合う |
| 交流型 | 人と会う | 立食で、飲みながらの会話が主目的 |
自分がどの型の会に申し込もうとしているかを知るだけで、当日の不安はかなり減ります。 テイスティング型で酔うまで飲めば目的を果たせませんし、交流型に「静かに味わうつもり」で行けば、想像と違う夜になります。
ワイン会当日の流れ

会によって差はありますが、Na Team Lab のワイン会は 19:00〜21:30 のパターンが多く、およそ2時間半です。土日の開催も、平日の開催もあります。
その2時間半は、おおむね次の順序で進みます。
1. 受付 名前を伝え、席または立ち位置を確認します
2. 乾杯 主催者の挨拶があり、一杯目が注がれます
3. 飲み比べ 順に注がれ、違いを確かめていきます
4. 料理 ワインに合わせた皿が供されます
5. 歓談 卓を囲んだ方々と話す時間です
6. 締め 最後の一杯、あるいはデザートで終わります
この順序は、型によって伸び縮みします。ペアリング型は着席でコースが進むため、飲み比べと料理が交互に、決まったリズムでやってきます。歓談は皿の合間に自然と生まれます。
交流型の立食では、この順序はもっとゆるやかです。乾杯のあとは各自のペースで、飲みながら話す時間が長く取られます。席が固定されないぶん、話す相手を自分で選べるのが立食の利点です。
途中入退場の可否は会ごとに異なります。ペアリング型は一杯目から順序が設計されているため、遅れると最初の一杯を逃すことがあります。予定が読めない日は、その点だけ主催者に確認しておくと安心です。
ワイン会の服装
多くのワイン会にドレスコードはありません。ジャケットを求められる会は、ごく限られています。Na Team Lab でもドレスコードは設けていません。そこまで気にせず、気軽にお越しいただければと思っています。
ただ、実際にお越しになる方を見ていると、少し綺麗目の装いが多いのも事実です。「決まりはないけれど、少しだけ整えて来る」。これが、ワイン会の服装のいちばん正確な説明かもしれません。
装い以上に大切なことが、ひとつあります。香水を控えることです。
ワインを味わう時間の半分以上は、香りが担っています。隣の方の香水が強いと、グラスから立ち上がる香りがかき消されます。作法というより、その場の全員の体験を守るための実務です。整髪料や柔軟剤も、同じ理由で控えめに。
女性の服装
ワイン会の服装で女性が迷いやすいのは、色と靴です。
色は、白や淡い色が赤ワインと相性の悪いことが、現実問題としてあります。こぼす前提で考える必要はありませんが、隣の方の肘が当たることは起こり得ます。気に入っている一着ほど、その日は避けるという選び方もあります。
靴は会の型で決めるのが確実です。着席のペアリング型なら幅広く選べます。立食の交流型は2時間半ほど立ったままになるため、歩ける靴のほうが夜を楽しめます。立食ではバッグの置き場もありません。グラスと皿で手はふさがれるので、肩にかけられる小さめのものが向いています。
男性の服装
ジャケットは、多くの会で不要です。襟のあるシャツにきれいめのパンツ、という程度で十分に場に馴染みます。
迷ったときは、少しだけ整えるほうを選んでください。カジュアルすぎて浮くことはあっても、少し整えていて浮くことは、まずありません。
ワイン会のマナーで、本当に気にすべき3つ
グラスの持ち方をどうすべきか、という話をよく聞きます。脚を持つべきか、ボウルを持ってよいのか。
代わりに、本当に効いてくることが3つあります。
飲み残しは、恥ではありません
複数杯を比べる会は、そもそも全部を飲み干す設計になっていません。残すことは、失礼ではないのです。
比べるために注がれた一杯は、量を飲むためのものではありません。少し口に含んで、次に進む。無理に空けて後半の味が分からなくなるほうが、その夜を損ないます。水を挟むことにも遠慮はいりません。
知らない銘柄は、聞いていい
これがいちばん大切かもしれません。
知らないワインが出てきたとき、知っているふりで黙ってしまう方がいます。もったいないと感じています。主催者は、説明したくてその一本を選んでいるからです。
私がワイン会で何より深掘りするのは、「なぜこの料理とこのワインが合うのか」という理由です。感覚だけで語らず、言葉にできる地点まで掘り下げる。質問は歓迎されるどころか、会を面白くしてくれます。
酔い方は、自分で決める
比べるための会で、味が分からなくなるまで飲めば、目的そのものが消えます。
とはいえ堅苦しく構える必要もありません。自分がどのあたりで曖昧になるかを知り、その手前で止められれば十分です。ペースを落とすことも水を頼むことも、この場では自然な振る舞いです。
ワイン会に一人参加は浮くのか
いちばん多い不安に、はっきりお答えします。
Na Team Lab がこれまで開いてきたワイン会では、7割近くの方がおひとりでの参加です。
ふたり以上で来られる方のほうが少数派、ということになります。ですから「ひとりだけ浮く」という状況は、実際にはほとんど起こりません。
さらに申し上げれば、私たちは一人でお越しになる方を前提に会を組んでいます。
具体的には、自己紹介の時間を設けています。最初にお互いの名前と、ワインとの関わりを一言ずつ交わしておく。それだけで、その後の2時間半で話しかけるハードルがまったく変わります。誰とも話さないまま終わる夜にならないように、場のほうを設計しておく。これは会の運営として、意識してやっていることです。
年齢層についても触れておきます。30〜40代の方が多く、男女比はおよそ1対1です。ただし60代の方もいらっしゃいますから、年齢の幅はかなり広いと言えます。ワイン会は東京で50代の方が参加しづらい場ではないか、と気にされることがありますが、少なくとも私たちの会に関して、その心配は要りません。
年齢を重ねた方ほど、量ではなく質で満たされることを望まれる傾向があります。自宅にセラーを持ち、とっておきの一本を誰かと開けたいと考えている方も少なくありません。そういう方にとって、複数を並べて比べられる場は、ひとりで来る理由そのものになります。
ワイン会の会費の相場
ワイン会の費用は、一般に 5,000〜20,000円 が目安です。会によって、この幅のどこに着地するかが決まります。
内訳を分解すると、価格差の理由が見えてきます。
- ワインの本数とグレード 何杯出るか、どの価格帯の一本かで大きく動きます
- 料理の有無と形式 軽いつまみのみか、コースが組まれているか
- 着席かカジュアルか サービスの人数と、一人あたりの時間の掛け方が変わります
Na Team Lab のワイン会は、1回15,000〜30,000円です。目安として挙げたレンジより、上に位置しています。
その理由を、正直にお伝えします。私たちは、料理とワインの質のほうに配分しているからです。「安い会に2回行くなら、良い会に1回行くほうがいい」という考え方で組んでいます。回数ではなく、その一夜に残るものを基準にしている、ということです。
ここには、同じ関心を持つ方が集まりやすいという副次的な効果もあります。比べることに時間を使いたい方どうしで、会話が続きやすくなります。
なお、価格が高いことと、ワインを高く売ることは別の話です。私たちは卸売価格でまとまった数を仕入れ、セラーには常時200本ほどがあります。その中から、その回のテーマに合う一本を選ぶ。仕入れの構造があるからこそ、価格の中で質に寄せられます。
恵比寿の、少人数のワイン会という選択
Na Team Lab は、東京・恵比寿にある一日ひと組・八席のプライベートレストランです。そこで毎月、テーマを変えてワイン会を企画しています。
形式は2つあります。
- コース形式 ペアリングを中心にした少人数の会。コースと共に6杯をお出しします
- 立食形式 人数が多く、そのぶんワインも10〜15本と多めになります。料理はビュッフェ形式です
選び方は単純です。しっかり料理を食べたい方はコース、交流もたくさんしたい方は立食。
実例をひとつ。フランスのワインだけに絞った回では、シャンパーニュに始まり、ボルドーのソーヴィニヨン・ブラン、ブルゴーニュのシャルドネと白の厚みを増していきました。赤はブルゴーニュのピノ・ノワールからボルドーのカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローのブレンドへ。締めはソーテルヌです。泡から甘口へ向かう大きなリズムの中に、白と赤それぞれの小さなリズムが入れ子になっている。「フランスだけ」という縛り自体が、その回のテーマでした。
会の企画は、オーガニックソムリエ協会の会長と定期的に組んでいます。ワイングラスは約100脚を備え、人数や形式に合わせて用意します。
八席という規模を続けている理由は、距離にあります。知らない銘柄が出てきたとき、その場で聞ける。なぜこの皿とこの一杯なのかを、卓越しに交わせる。人数が増えるほど、この距離は失われます。ワイン会でいちばん豊かなのは、飲んだ本数ではなく、その夜に交わした問いの数だと考えています。
開催中のテーマと日程は、ワイン会のページでご案内しています。
- ワイン会ページ:https://nateamlab.jp/wine-club/
- 公式LINE:https://lin.ee/OsQpplY(ご質問・ご相談はこちらから)
まとめ
ワイン会について、この記事でお伝えしたことを整理します。
- ワイン会とは、数種類のワインを飲み比べながら、料理と会話を楽しむ会です
- 形式は4つ。テイスティング型・ペアリング型・持ち寄り型・交流型
- 当日はおよそ2時間半。受付、乾杯、飲み比べ、料理、歓談を経て締めへ
- ドレスコードのない会がほとんど。気をつけるのは香水を控えることだけ
- マナーの要点は3つ。飲み残しは恥ではなく、知らない銘柄は聞いてよく、酔い方は自分で決める
- 一人参加は浮きません。私たちの会では7割近くがおひとりでのご参加です
- 会費は5,000〜20,000円が目安。杯数と料理の組み方で変わります
分からないことが多いから足が止まる、というのは自然なことです。けれど、ワイン会に必要な予備知識は、思っているよりずっと少ないものです。香水を控えて、聞きたいことを聞く。それだけで、その夜は十分に成立します。
よくある質問
お酒に弱くてもワイン会に参加できますか?
参加できます。ワイン会は飲む量を競う場ではなく、複数の味わいを比べる場です。一杯ずつを少量にとどめ、途中で水を挟んでも問題ありません。飲み残しても失礼にはあたりませんので、ご自身のペースで進めてください。
ワイン会に遅刻しそうなときはどうすればよいですか?
分かった時点で主催者にご連絡ください。ペアリング型のようにコースが進む会では、開始後の合流だと最初の一杯を逃すことがあります。立食形式の会は途中から加わりやすいので、形式を確認したうえでご相談いただくのが確実です。
ワイン会で写真を撮ってもよいですか?
ボトルやグラスの撮影は歓迎される会が多いですが、他の参加者が写り込む撮影は事前に一声かけてください。会場によっては撮影を控える方針の場合もあります。判断に迷うときは、主催者に確認するのが安心です。
ひとりで来て、同じ一本を囲む。
料理との組み合わせを味わいながら、少人数でワインを楽しむ会です。初めての方も、お一人で自然にご参加いただけます。
