結論:クロアチアワインは、アドリア海の魚介に寄り添う白と、強い日差しを受けた骨太の赤でできています。 この国には、海沿いのダルマチア・イストラと、内陸のスラヴォニアというふたつの顔があります。 海沿いでは塩気を思わせる白と色の濃い赤が、内陸では酸のきれいな軽やかな白が中心です。 赤の代表はプラヴァッツ・マリ、白はマルヴァジヤ・イスタルスカやグラシェヴィナ。 アメリカで知られるジンファンデルが、この国の土着品種と遺伝的に同じだと分かっている点も、見どころのひとつです。
あわせて、カリフォルニアワインを品種と産地で選ぶと刺身に合わせるワインの選び方もご覧ください。

ワインリストをめくっていて、見慣れない国名のところを、そのまま先に送ってしまう。気づくと、いつも同じ国のワインを選んでいる。そんな覚えはないでしょうか。
クロアチアは、その「読み飛ばされる側」に置かれがちな国です。品種名が長く、産地名も耳慣れない。けれどクロアチアのワインは、味の方向そのものは驚くほど素直です。 この記事では、産地と土着品種、ジンファンデルの故郷として語られる理由、日本の食卓での合わせ方を順に整理します。
クロアチアワインとは 海と内陸、ふたつの顔
クロアチアは、ヨーロッパの南東部にあります。アドリア海に沿って長い海岸線が伸び、その内側に平らな内陸が広がる。この地形が、ワインのふたつの顔になっています。
ひとつは、海沿いの顔です。北西のイストラ半島から、南のダルマチア沿岸と島々まで。日照が強く、夏は乾き、海からの風と照り返しがぶどうに届きます。白は酸がきりっと立ち、かすかに塩気を思わせ、赤は色が濃くアルコールにも力が出ます。もうひとつは、内陸の顔です。東部のスラヴォニアは海から離れ、寒暖差のある気候。ここでは軽やかで酸のきれいな白が中心です。
つまりクロアチアは、ひとつの国として覚えるより、海と内陸という二軸で覚えたほうが早い産地です。 ラベルの地名が海沿いか内陸かが分かれば、味の方向は見えてきます。
クロアチアワインの歴史 古代から、途切れながら続いてきた
クロアチアのぶどう栽培は、古代ギリシャの人々が島々にぶどうを持ち込み、ローマの時代を通じて広がったと伝えられています。
20世紀の後半は大きな組織による量の生産が中心でしたが、1990年代以降は小規模な生産者が土着品種を見直す動きが広がったと言われています。長い歴史を持ちながら、世界の市場で名前が通るようになったのは比較的最近です。
クロアチアの主な産地 海沿いと内陸で、味が分かれる
代表的な産地を、気候と品種、味の傾向とあわせて並べます。
| 産地 | 気候 | 主な品種 | 味の傾向 |
|---|---|---|---|
| イストラ(北西の半島) | アドリア海に面し、夏は乾いて暑い。冬は穏やか | マルヴァジヤ・イスタルスカ、テラン | 白い花と洋梨を思わせる白。酸がきりっと立つ |
| ダルマチア沿岸(ペリェシャツ半島のディンガチ、ポストゥプ) | 日照が強く、海からの照り返しと乾いた風が当たる急斜面 | プラヴァッツ・マリ | 色が濃く、黒い果実とハーブ。渋みに力がある赤 |
| ダルマチアの島々(フヴァル、コルチュラなど) | 海に囲まれ、石灰質の土壌が多い | ポシップ、プラヴァッツ・マリ | 厚みのある白と、凝縮した赤 |
| スラヴォニア(東部の内陸) | 海から離れた大陸性の気候。昼夜と季節の寒暖差がある | グラシェヴィナ、白の国際品種 | 軽やかで酸のきれいな白が中心 |
表を縦に見ると、ひとつの流れが見えます。海に近いほど赤は濃く力強くなり、海から離れるほど白は軽く酸がきれいになる。 とくにペリェシャツ半島の南向きの急斜面は、日差しと海からの照り返しを同時に受ける場所として語られます。糖度が上がりやすく、赤はアルコールも高めになります。
世界のワイン生産国の中での位置
「世界三大ワインの国は?」という問いをよく見かけます。生産量の上位は、一般にイタリア・フランス・スペインの三か国が挙げられます。年によって順位は入れ替わります。
クロアチアは、その上位とは規模が大きく違います。生産の多くは国内で消費されると説明されます。日本の棚に並ぶ本数も限られています。位置関係は世界のワイン生産量ランキングの記事に整理しました。量の少なさは、品質の低さを意味しません。小さな産地が土着品種を守り続けていることが、いまの価値です。

クロアチアの土着品種 名前は難しく、味は素直
名前は読みにくいのですが、味の説明に進めば、どれも素直な性格です。代表的な土着品種を、色と味、合う料理の順に並べます。
| 品種 | 色 | 味の傾向 | 合う料理 |
|---|---|---|---|
| プラヴァッツ・マリ | 赤 | 黒い果実とドライハーブ。渋みとアルコールに力がある | 羊や牛のグリル、肉の煮込み、熟成した硬質チーズ |
| ツールイェナック・カシュテランスキ | 赤 | 煮詰めた果実のような濃さと、スパイスの印象 | 炭火で焼いた肉、スペアリブ、トマトの煮込み |
| マルヴァジヤ・イスタルスカ | 白 | 白い花と洋梨。酸がきりっと立ち、かすかな塩気 | 魚介のグリル、貝、生ハム |
| グラシェヴィナ | 白 | 青りんごと柑橘。軽やかで、酸のきれいな口当たり | 白身魚、鶏、野菜の前菜 |
| ポシップ | 白 | 熟した柑橘と黄色い果実。厚みのある口当たり | イカやタコの料理、オリーブオイルを使った皿 |
赤の顔は、プラヴァッツ・マリです。黒い果実に乾いたハーブの香りが重なり、渋みはしっかりと出る。力のある赤を好む方には、分かりやすい入り口です。
白の側は、産地で役割が分かれます。イストラのマルヴァジヤ・イスタルスカは酸と塩気、島のポシップは厚みと果実、内陸のグラシェヴィナは軽やかさ。同じ国の白でありながら、三つの入り口があります。
知っている品種の、クロアチアらしい味
クロアチアでも、国際品種は造られています。内陸のスラヴォニアには、シャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、リースリングが植えられていると説明されます。
同じ品種名でも、土地の条件で姿は変わります。寒暖差のある内陸のシャルドネは、樽の香りを強く効かせるより、酸をきれいに残す方向に寄りやすい。知らない国のワインは、知っている品種から入ると近道になります。
ジンファンデルの故郷探し DNA鑑定がたどり着いた場所
カリフォルニアを代表する赤の品種に、ジンファンデルがあります。果実をジャムのように煮詰めたような濃さと、スパイスの印象を持つ品種です。長いあいだ、その出どころは分かっていなかったと伝えられています。
その答えを出したのが、ぶどうのDNAを比べる研究でした。ジンファンデルは、クロアチアの沿岸部に古くから育つ土着品種と遺伝的に同じであることが、2001年、カリフォルニア大学デービス校とザグレブ大学の研究者による調査で確かめられました。クロアチアでの名前は、ツールイェナック・カシュテランスキ(Crljenak Kaštelanski)。
つまりジンファンデルは、新世界で名を上げた品種ではなく、海を渡って名を変えた古い品種だったということになります。 アメリカでは広く知られる名前になり、故郷では長く無名のままでした。品種そのものの性格やカリフォルニアでの造りはカリフォルニアワインを品種と産地で選ぶ記事に書きました。名前を知らない国のページに、知っている品種の元の姿が置かれています。この並び替えが、知らない国のワインを開けるときのおもしろさだと感じています。
クロアチアワインに合う料理と、日本での選び方
海沿いの定番は、魚介のグリルです。白身魚やエビを炭火で焼き、オリーブオイルとレモンをかける。この皿に、マルヴァジヤ・イスタルスカの酸と塩気が寄り添います。
イカ墨のリゾットのような黒く濃い皿には、ポシップのような厚みのある白が合います。酸だけの白では、墨の旨味に負けることがあるからです。生ハム(プルシュト)は、塩気を立たせたいなら白、脂をまるくしたいなら赤です。
日本の食卓に置き換えると、合わせ先は身近になります。
- 焼き魚:塩焼きの皮の香ばしさに、マルヴァジヤ・イスタルスカの酸が寄り添います
- イカやタコの料理:ポシップの厚みが、身の甘さを受け止めます
- 刺身:塩気を思わせる白は、醤油の塩味と並んでも崩れません。合わせ方は刺身とワインの合わせ方の記事にまとめました
- 炭火の肉、照り焼き:プラヴァッツ・マリの渋みと力が、焦げた香りと釣り合います
海の近くで育つワインは、海のものに合う。 アドリア海の斜面の白が日本の焼き魚に寄り添うのも、同じ理由からです。
日本でクロアチアワインを探すなら
日本でも、クロアチアのワインを扱う輸入元や専門店が増えてきました。価格は手頃な範囲に収まるものが多く、数千円台から選べることが少なくありません。
選ぶ順番は、ふたつだけで足ります。まず、魚介の皿か肉の皿かを決めます。魚介なら白、イストラかダルマチアの島の産地名を探す。肉なら赤、プラヴァッツ・マリの名前を探す。この二択で、おおむね方向は合います。
もうひとつは、同じ日に二本を並べることです。一本だけでは、その国のワインがどういうものかはつかめません。慣れた産地の一本と並べると、違いのほうから教えてくれます。隣の国のスロベニアのワインの白も、近い位置にあります。
名前を知らなかった国のワインも、隣に並べると分かる
では、クロアチアのワインが自分の好みに合うかどうかは、どこで分かるのでしょうか。名前を知らなかった国のワインも、隣に並べて飲むと、好きかどうかがすぐに分かります。 一本だけを開けると判断に迷いますが、二本、三本を横に並べると、舌は勝手に比べはじめます。
クロアチアの会は、まだ開いていません。けれど「名前を知らない国のワインを、料理と並べて飲む」という場は、1月16日(土)にご用意しています。南アフリカワインを巡る会です。泡、白4、ロゼ1、赤5の計11種を、各約45mlずつ。昼の部12:00、夜の部18:00、それぞれ8席です。この会のあとには、ワインリストの「知らない国のページ」を読み飛ばさなくなります。産地の名前が、意味を持った言葉に変わるからです。
ワインが先、料理が後
もうひとつ、会で確かめていただきたいことがあります。グラスだけなら1位だった一本が、料理と合わせると入れ替わることがあるという点です。
私は年間で約2,000種のワインを試飲し、その中から会ごとの一本を選んでいます。順番は、ワインが先、料理が後です。コースの流れを思い描いてワインを決め、それが確定してから皿を組みます。ハウスワインを置かず、その日限りのペアリングとしてご用意しているのも、同じ理由からです。
ワインは単体の採点表の上にあるものではなく、料理と並んだときに姿を変えます。渋みは脂で和らぎ、酸は塩で立ち上がる。だから「このワインが好き」という答えは、皿と一緒に出てきます。恵比寿の八席、一日ひと組の場で、十一のグラスと料理を順に並べていきます。
次に飲んでみたい国があれば、公式LINEで教えてください。クロアチアの名前が集まれば、会として組み立てることもできます。

まとめ
クロアチアワインは、海と内陸というふたつの顔で覚えると、選び方が決まります。
- 海沿いのダルマチア・イストラと内陸のスラヴォニアで性格が分かれ、海に近いほど赤は濃く、離れるほど白は軽やかになります
- 赤の代表はプラヴァッツ・マリ。黒い果実とドライハーブに、しっかりとした渋みが出ます
- 白はマルヴァジヤ・イスタルスカ(酸と塩気)、ポシップ(厚み)、グラシェヴィナ(軽やかさ)
- ジンファンデルは、クロアチアの土着品種と遺伝的に同じだと、DNAの研究で確かめられています
- 合う料理は魚介のグリル、イカ墨のリゾット、生ハム。日本では焼き魚、イカ、刺身、炭火の肉です
産地の名前が海沿いか内陸かを見る。それだけで、棚の前の時間はずいぶん短くなります。
ご自身の好みがどちらに寄っているかは、並べて飲んでみないと分かりません。1月16日(土)に「南アフリカワインを巡る会」をご用意しました。昼の部12:00・夜の部18:00、各部8席、会費14,800円(税込)。ご予約はTableCheck、開催7日前までなら別の日に振り替えていただけます。満席の回から締め切ります。
好みの方向がまだ定まっていない方は、無料のワイン診断もご用意しています。
よくある質問
クロアチアで有名なワインは?
赤ではプラヴァッツ・マリが代表格で、ダルマチア沿岸のディンガチやポストゥプといった産地の名前とともに語られます。白はイストラのマルヴァジヤ・イスタルスカ、島のポシップ、内陸のグラシェヴィナが知られています。
ジンファンデルはクロアチアの品種?
カリフォルニアで知られるジンファンデルは、クロアチア沿岸部の土着品種ツールイェナック・カシュテランスキと遺伝的に同じだと確認されていると伝えられています。産地としての知名度と、品種の古さは別のものだという例です。
ワインに詳しくなくても、ひとりで参加できますか?
ワイン会はこれまで100回以上開いてきましたが、参加者の半数以上はおひとりでのご参加です。知識は要りません。席は8つだけで、一本ずつご説明しながら進めます。日程はワイン会のご案内にまとめています。
クロアチアワインはどんな料理に合いますか?
海沿いの白は、魚介のグリルや焼き魚、イカやタコの料理、刺身に寄り添います。プラヴァッツ・マリの赤は、炭火の肉や照り焼きのような焦げた香りのある皿と釣り合います。
一杯の違いを、料理とともに確かめる。
少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

