SUMMARY

結論:スロベニアワインは、イタリア国境に接した小さな産地から生まれる、質の高い白とオレンジワインです。 国の西側にあるゴリシュカ・ブルダは、イタリアのフリウリと同じ丘が続く土地で、厚みのある白を産みます。 白ぶどうを皮ごと発酵させるオレンジワインの名産地としても知られています。 国としての生産量は多くありませんが、魚介や生ハム、きのこに寄り添う一本が見つかります。 この記事では、産地と品種、合う料理、日本での選び方を順に整理します。

あわせて、オレンジワインという、第四の色とクロアチアワイン、アドリア海の白と骨太の赤もご覧ください。

ぶどう畑で掲げたスパークリングワインのグラス。丘の畑から生まれる白をイメージ
同じ丘の、こちら側の名前を知っているでしょうか(写真は国内のぶどう畑です)

ワインショップでイタリアの棚の端をたどっていくと、見慣れない国名の札が立っていることがあります。スロベニア。イタリアの北東、アドリア海の付け根にある小さな国です。名前は聞いたことがあるけれど、ワインの産地としては何も思い浮かばない。そんな場所のひとつではないでしょうか。

ところが、この国のワインは、イタリアの白が好きな方にとっては地続きの話です。スロベニアの西側とイタリアのフリウリは、ひとつの丘が国境線で分けられているだけの土地です。 片側では長く評価されてきた白が、もう片側では名前も知られていない。この非対称が、スロベニアワインのおもしろさをつくっています。

この記事では、産地と品種、オレンジワインとの関係、合う料理、そして日本での選び方を順にお伝えします。

スロベニアワインとは イタリア国境の、小さな白の名産地

スロベニアは、中央ヨーロッパの南側にある小さな国です。北にオーストリア、西にイタリア、北東にハンガリー、南と東にクロアチアが接し、南西にはアドリア海の短い海岸線を持ちます。

ひと言でいえば、スロベニアワインは「白が主役の、小さな産地のワイン」です。 国全体の生産量は多くありません。そのかわり、ひとつの丘ごとに造り手の名前が立っているような密度があります。大きな銘柄ではなく、小さな区画の集まりとして語られる産地です。

多くが国内で飲まれ、輸出に回る量が限られるため、日本の棚で見かける機会は少なくなります。名前を知らないのは、品質ではなく流通量の問題です。

隣のクロアチアも、白とロゼに力のある産地です。海を挟んだ二つの国の対比はクロアチアワインの記事にまとめました。

スロベニアのワインの歴史

ぶどう栽培は、古代からこの土地で続いてきたと伝えられています。ローマ時代にはすでにワインが造られ、修道院が栽培を引き継いだという流れも、ヨーロッパの他の産地と共通しています。北東部のマリボルには、樹齢400年を超え、世界最古の実をつけるぶどうの樹としてギネス世界記録に載る「老木(スタラ・トルタ)」が残り、町の象徴として知られています。

20世紀の長いあいだ、ワインは大きな組織でまとめて造られ、量を優先する時期が続きました。1990年代以降、小さな造り手が自分の名前でワインを出すようになり、いまの評価につながったと語られています。

つまりスロベニアは、歴史が新しい産地ではありません。古い土地が、新しい名前で出てきた産地です。

スロベニアの主な産地 三つの地域と、ゴリシュカ・ブルダ

スロベニアのワイン産地は、西のプリモルスカ、北東のポドラウイエ、南東のポサウイエの三つに分けて語られます。ラベルにはこの地域名か、その中の小さな産地名が書かれます。

産地気候主な品種味の傾向
ゴリシュカ・ブルダ(プリモルスカ)海からの風が届く温暖な丘。昼夜の寒暖差があるレブーラ、ソーヴィニヨナス、ソーヴィニヨン・ブラン、メルロー厚みと香りのある白。オレンジワインの中心地
ヴィパーヴァ(プリモルスカ)谷に強い風が吹き下ろす。温暖だが冷える日もあるソーヴィニヨナス、マルヴァジヤ、ゼレン、ピノ・グリ酸が立ち、輪郭のはっきりした白
カルスト(プリモルスカ)石灰質の台地。土は赤く薄いテラン(レフォシュク)、マルヴァジヤ酸と鉄を思わせる質感のある赤
ポドラウイエ内陸の大陸性気候。三つの中で最も冷涼ラシュキ・リズリング、シプォン、トラミネツ、ソーヴィニヨン・ブラン酸のきれいな白。香り高いもの、甘口も
ポサウイエ丘と川に沿った冷涼な地域モドラ・フランキンヤ、ジャメトフカ軽やかな赤とロゼ。淡い色合いのものが多い

この表を縦に読むと、国の中の方向が分かれます。西は海に向かって厚みのある白とオレンジワインに、北東は内陸に向かって酸のきれいな白に、南東は軽やかな赤とロゼに向かう。

とくに覚えておきたいのがゴリシュカ・ブルダです。この丘は国境をまたいでイタリア側に続き、向こう側はコッリオと呼ばれています。土も気候もほとんど同じで、分かれているのは呼び名だけです。フリウリの白に親しんでいる方なら、初めてでも遠くない味に感じられると思います。

ワイナリーのステンレスタンクと醸造設備。白ぶどうを皮ごと発酵させる造りをイメージ
皮ごと発酵させるかどうかで、同じ白ぶどうの色と味が変わります(写真は国内のワイナリーです)

スロベニアの品種とオレンジワイン レブーラを軸に見る

入口になる品種はレブーラです。イタリア側ではリボッラ・ジャッラと呼ばれる同じ白ぶどうで、ゴリシュカ・ブルダを代表する品種として語られます。

レブーラは、皮が厚く、果実の香りで押してくる品種ではありません。かりんや干した果実を思わせる落ち着いた香りに、はっきりとした骨格があります。皮ごと時間をかけて発酵させると、色が濃くなり、渋みが出て、お茶に近い質感に変わります。

品種色味の傾向合う料理
レブーラ白/オレンジ落ち着いた香りと硬い骨格。皮ごと造ると渋みと厚みが出る生ハム、きのこのソテー、だしの効いた煮物
ソーヴィニヨナス(フリウラーノ)白白い花とアーモンドを思わせる香り。やや丸い口当たり白身魚のグリル、鶏のロースト
ピノ・グリ白洋梨と蜜の印象。厚みがあり、わずかに苦味が残る帆立、クリームを使った料理
ソーヴィニヨン・ブラン白青い草と柑橘の香り。酸がはっきりしている貝類、ハーブを使った前菜
テラン赤高い酸と鉄を思わせる質感。色は濃く、渋みは細い生ハム、豚の炭火焼き、血の滴る赤身
メルロー赤プラムの果実味に、酸が残る。渋みはやわらかい牛の煮込み、きのこの入ったパスタ

知っている品種の、スロベニアらしい味

スロベニアでは、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリ、シャルドネ、メルローといった見慣れた品種も造られています。共通しているのは、酸が残ることです。緯度が高く、夜が冷えるため、果実味が前に出すぎません。ソーヴィニヨン・ブランは柑橘よりも草と石の印象が強く、メルローは果実の甘さよりも酸と土の印象で終わります。

知っている品種を手がかりにしながら、味の着地がずれる。 それが、産地を変えて飲むことのおもしろさだと私たちは考えています。

オレンジワインとスロベニアの関係

オレンジワインは、白ぶどうを皮ごと発酵させて造る、琥珀色のワインです。スロベニアの西部とイタリアのフリウリにまたがる地域が、この造り方が広く知られるきっかけになった場所として語られています。レブーラは、その代表的な品種です。

造り方や味わいの幅はオレンジワインの記事に、土地の個性をそのまま瓶に入れようとする造りの考え方は自然派ワインの記事にまとめました。

世界のワイン生産国の中での、スロベニアの位置

「世界三大ワインの国は?」という問いには、生産量の上位がイタリア、フランス、スペインと一般にいわれる、という答えが置かれることが多いです。

スロベニアは、この並びには入りません。国土が小さく、生産量も多くありません。ひとりあたりの消費量が多く、地元で飲まれるぶんが大きい産地は、量の順位の外側に置かれがちです。

国ごとの生産量の順位と、その読み方はワイン生産量ランキングの記事にまとめています。量の大小と味の良さが別の軸だと知っておくと、棚の前での選び方が変わります。

スロベニアワインに合う料理 魚介、生ハム、きのこ

産地の料理から考えると、合わせ方は素直に決まります。スロベニアの食卓によく登場するのは、アドリア海の魚介、塩と風で乾かした生ハム、そして森のきのこです。

  • 魚介:白身魚のグリルやいかの料理には、ヴィパーヴァの酸のはっきりした白が寄り添います
  • 生ハム:塩気と脂の乾いた旨味には、皮ごと造ったレブーラか、酸の高いテランが合います
  • きのこ:土を思わせる香りは、軽い白より、厚みのある白が受け止めてくれます

日本の食卓に話を移すと、スロベニアの白、とくに皮ごと発酵させたものは、だしの料理と相性が良いと私たちは考えています。鍋、おでん、炊き合わせ、茶碗蒸し。

理由は二つあります。ひとつは、厚みのある白が、だしの余韻を押し流さないこと。軽い白では香りが消え、重い赤ではだしが負けます。もうひとつは、皮ごと発酵させたワインの乾いた渋みが、かつおぶしや干ししいたけの旨味と同じ方向を向いていることです。

赤か白かという分け方だけでは、和食との組み合わせは行き詰まります。そこに「皮ごと造られたかどうか」という軸が入ると、選べるものが一段増えます。

日本でスロベニアワインを手に入れる、選び方

結論から言うと、手に入ります。数は多くありませんが、輸入元が継続して扱っており、自然派ワインを置く専門店やオンラインの店で見つかります。価格は数千円台から選べるものもあります。

棚の前で迷ったときの見方を、三つに整理します。

  • 産地名を見る:「ブルダ」や「プリモルスカ」とあれば厚みのある白かオレンジワイン、「ポドラウイエ」とあれば酸のきれいな白に寄ります
  • 品種名を見る:レブーラなら骨格のある白、ソーヴィニヨナスなら丸い白、テランなら酸の高い赤が目安になります
  • 色を見る:琥珀色なら皮ごと発酵させたもの。透明に近ければ、ふつうの白として扱って差し支えありません

はじめの一本は、皮ごと造っていない白から入るのが無理のない順番だと思います。なお、この国の白は冷やしすぎないほうが持ち味が出ます。

名前を知らなかった国も、隣に並べれば分かる

ここまでの話は、文字で読んだ味であって、想像のままです。

名前を知らなかった国のワインも、隣に並べて飲むと、好きかどうかがすぐに分かります。 一本だけで飲むと、判断は知識に引っぱられます。横に並べると比べる相手ができるので、舌が先に答えを出します。

私は年間で約2,000種のワインを試飲し、その中から会ごとの一本を選んでいます。順番は、ワインが先、料理が後です。コースの流れを思い描いてワインを決め、それが確定してから皿を組みます。ハウスワインを置かず、その日限りのペアリングとしてご用意しているのも、同じ理由からです。恵比寿の八席、一日ひと組。開催は100回以上を数え、参加される方の半数以上はおひとりです。

スロベニアのワインで会を開いたことは、まだありません。ですので今日は、同じ「名前で選んだことのない国」を並べる会をご案内します。1月16日(土)の「南アフリカワインを巡る会」です。昼の部12:00、夜の部18:00。南アフリカの11種を、泡、白4、ロゼ1、赤5の順に、各約45mlのグラスで。各部8席、会費は14,800円(税込)です。

この会のあとに起きることは、ワインリストの「知らない国のページ」を読み飛ばさなくなる、ということだと思います。スロベニアの札の前で足が止まるのは、そのあとの話です。

長いテーブルにワイングラスと皿を並べた恵比寿の店内。壁に大きな絵
並べると、色の差がそのまま味の差になります(写真は会の開始前のテーブルです)

まとめ

スロベニアワインは、小さな産地であることを知ったうえで見ると、輪郭がはっきりします。

  • スロベニアは、イタリア・オーストリア・ハンガリー・クロアチアに囲まれた小さな国で、白が主役のワインを産みます
  • 産地は西のプリモルスカ、北東のポドラウイエ、南東のポサウイエの三つに分かれます
  • ゴリシュカ・ブルダは、イタリア側のコッリオと同じ丘が続く土地で、厚みのある白の中心です
  • レブーラが代表品種です。透明な白にも、皮ごと発酵させた琥珀色のワインにもなります
  • 合うのは魚介、生ハム、きのこ。日本では鍋やおでん、だしの効いた料理に寄り添います
  • 選ぶときは、産地名、品種名、色の三つを順に見ると迷いません

量の順位の外側にある産地を一本選ぶ。それだけで、棚の見え方が少し変わります。

そのうえで、ご自身がどの国の味を好むのかは、並べて飲んでみないと分かりません。1月16日(土)に「南アフリカワインを巡る会」をご用意しました。昼の部12:00、夜の部18:00、各部8席。恵比寿の八席で、私の料理とともに11種をお出しします。会費は14,800円(税込)、ご予約はTableCheckにて承っており、満席の回から締め切ります。開催7日前までであれば、別の日に振り替えていただけます。

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好みの方向がまだ定まっていない方は、無料のワイン診断から始めていただくこともできます。

よくある質問

スロベニアワインの特徴は?

白が主役の小さな産地です。イタリア国境に接した西部のプリモルスカでは厚みのある白、北東部のポドラウイエでは酸のきれいな白が生まれます。白ぶどうを皮ごと発酵させた琥珀色のワインの産地としても知られています。

オレンジワインとスロベニアの関係は?

白ぶどうを皮ごと発酵させる造り方が、スロベニア西部とイタリアのフリウリにまたがる地域から広く知られるようになったと語られています。代表的な品種はレブーラで、同じぶどうから透明な白も造られます。

ワインに詳しくなくても、ひとりで参加できますか?

ワイン会はこれまで100回以上開いてきましたが、参加される方の半数以上はおひとりです。知識は要りません。席は8つだけで、一本ずつご説明しながら進めます。日程はワイン会のご案内にまとめています。

スロベニアワインに合う料理は?

産地の食卓に並ぶ魚介、生ハム、きのこが素直に合います。白身魚のグリルにはヴィパーヴァの酸のはっきりした白、生ハムには皮ごと造ったレブーラか酸の高いテラン。日本の食卓なら、鍋やおでん、茶碗蒸しなどだしの料理に、厚みのある白が寄り添います。

日本でスロベニアワインは買えますか?

手に入ります。数は多くありませんが、輸入元が継続して扱っており、自然派ワインを置く専門店やオンラインの店で見つかります。選ぶときは産地名、品種名、色の三つを順に見ると迷いません。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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