結論:ベトナムワインは、標高1,500m前後の高原の町ダラットを中心に造られるワインです。 高温多湿の低地ではぶどうが育ちにくいため、ワインは涼しい高原の町で造られ、ぶどうは雨の少ない海沿いで育てられることが多い国です。 フランスの統治下にあった時期の影響で、ワインを飲む文化が早くから根づいた国でもあります。 お土産として手に取る機会が多い一方、ぶどう以外の果実を使うものもあるため、ラベルの見方を知っておくと選びやすくなります。 この記事では、主な産地と原料、お土産での選び方、ベトナム料理との相性を順に整理します。
あわせて、タイワインは、熱帯でワインを造るという挑戦とワインのラベルの読み方を覚えるもご覧ください。

ベトナム旅行のお土産を選ぶ売り場で、ワインの瓶が並んでいるのを見かけたことはないでしょうか。ラベルには見慣れない地名が書かれていて、値段は手頃。手に取って眺めたあと、結局コーヒーや乾物の棚に戻した。そんな覚えのある方は少なくないように思います。
ベトナムワインを前にしたときのつまずきは、味の好みではなく、その一本が何からできているのかが読み取りにくいことにあります。ぶどうだけで造られたものもあれば、ほかの果実を合わせたものもあり、甘口に寄せたものも少なくありません。選び方を先に知っておくと、外しにくくなる産地です。
この記事では、高原の町ダラットという土地の条件、産地と原料の見分け方、お土産で選ぶときの四つの見方、ベトナム料理との相性を順にお伝えします。ラベルの読み方そのものはワインラベルの読み方の記事に委ね、ここではベトナムに絞ります。
ベトナムワインとは 熱帯の国の、標高の高い場所から
ベトナムは、南北に細長く伸びる熱帯から亜熱帯の国です。ワインの産地といえば、ふつうは温帯の丘が思い浮かびます。ベトナムはその条件から外れていますが、ワインは造られています。
鍵になるのが標高です。低地が暑く湿っているなら、涼しい土地まで登ればよい。 中部高原にあるダラットは標高1,500m前後の町で、熱帯のなかでは涼しく、昼夜の気温差もある土地として知られています。ただし、ダラットのワインに使われるぶどうの多くは、山を下りた先の雨の少ない海沿い、ニントゥアンで育てられています。
ひと言でいえば、ベトナムワインは「自国で飲むために造られてきたワイン」です。 輸出で名前を売ってきた産地ではないため、日本の棚で国名から選ばれる機会はまだ少なく、旅先のお土産として出会うほうが先になります。
ベトナムワインの歴史 飲む文化が、先に根づいた国
この国のワインは、造る歴史より先に、飲む歴史が語られます。19世紀後半から1954年までフランスの統治下にあった時期に、1893年に見いだされた高原は20世紀前半に避暑地として整えられ、食卓にワインが並ぶ習慣も入ってきたと伝えられています。
パンとコーヒーが日々の食事に残っているのと同じ理由で、ワインも早くから身近なお酒になりました。飲む文化が先にあり、造る側があとから追いついてきた。 現在のかたちに整ってきたのは、1990年代の終わりごろからだと伝えられています。
世界のワイン生産国の中での位置と、ベトナムの代表的なお酒
「世界三大ワインの国は?」という問いには、生産量の上位がイタリア、フランス、スペインの3か国だと一般にいわれます(OIVの2024年の統計でもこの順です)。ベトナムはこの規模には届きません。数字の上での位置づけはワインの生産量ランキングの記事に、旧世界と新世界の分け方は新世界ワインの記事に譲ります。
お酒全体で見れば、ベトナムでいちばん身近なのはビールだと伝えられています。ほかに米を原料にした蒸留酒や、果実を漬けた酒も飲まれています。ワインは、そうした選択肢と並ぶ一本です。
ベトナムの主な産地 産地が、涼しい高地と乾いた海沿いに寄ります
ラベルや商品の説明で目にする機会の多い土地を並べます。
| 産地・土地 | 気候・位置 | 主な原料 | 味の傾向 |
|---|---|---|---|
| ダラット(ラムドン省) | 中部高原。標高1,500m前後で、熱帯のなかでは涼しく昼夜の寒暖差がある。醸造と熟成の拠点 | 主にニントゥアンから運んだぶどう、桑の実などほかの果実を合わせたもの | 果実味が前に出る赤が多い。甘みが残るものもある |
| ニントゥアン(2025年からカインホア省) | 南中部の海沿い。日照が強く、雨が少ない。乾季が長い | 現地で育つぶどう(カーディナル種が中心) | 熟した果実の香りが素直に出る |
| メコンデルタなどの南部低地 | 高温多湿で、雨の多い季節が長い | ワイン用のぶどう栽培はほとんど見られない | ― |
表を縦に見ると、ひとつの規則が見えてきます。涼しさと乾きのある土地に産地が寄り、暑くて湿った土地には寄らない。 ぶどうは、実が熟すまでの間に雨と高温が続くと病気が出やすく、酸も落ちやすい作物です。だから熱帯では、産地が高地や乾いた海沿いに集まります。
同じ構図は、熱帯のタイにもあります。タイワインの記事と読み比べると、アジアのワインの見取り図ができてきます。

ベトナムワインの品種と原料 ぶどう以外が入ることもあります
ベトナムのワインで、品種名より先に押さえておきたいのが原料の種類です。ラベルの表記から次のように分けて考えると、味の方向に見当がつきます。
| ラベルで見かける種類 | 色 | 味の傾向 | 合う料理 |
|---|---|---|---|
| ぶどうだけで造られた赤 | 赤 | 果実味が前に出て、渋みは穏やか。甘みが残るものもある | 揚げ春巻き、焼いた豚肉 |
| ぶどうだけで造られた白 | 白 | 柑橘を思わせる香り。酸はおとなしい | 生春巻き、白身魚 |
| ロゼ | ロゼ | 果実の甘い香りと、きれいな酸 | フォー、ハーブを使った和え物 |
| ぶどう以外の果実を合わせたもの | 赤・ロゼが多い | 甘口に寄る。果実の香りがはっきり出る | デザート、乾いた果実、チーズ |
品種では、生食用としても知られるカーディナル種が多く使われていると伝えられています。覚えておきたいのは、ベトナムのワインは「ぶどう100%かどうか」で味の方向がはっきり分かれる、という一点です。
ぶどう以外の果実が入ると、香りは華やかになり、甘みが前に出ます。これは欠点ではなく性格で、食後の一杯にはむしろ向きます。辛口を探している方は、原料の表記を先にご確認ください。
お土産でベトナムワインを選ぶときの、四つの見方
旅先の売り場には、同じような瓶が何本も並んでいます。見る場所を四つに絞ると、短い時間でも決められます。
一つめ ラベルの表記を、甘辛と原料の順で見る
最初に探すのは、辛口か甘口かの表記です。英語表記なら dry と sweet、現地語の表記のものもあります。次に、ぶどう以外の果実の名前が書かれていないかを見ます。甘辛と原料。この二つが分かれば、味の見当は半分つきます。
二つめ ぶどう100%かどうかを確かめる
辛口のワインとして飲みたいのか、甘い果実酒として楽しみたいのか。目的によって、選ぶ棚が変わります。ぶどうだけで造られたものを探すなら、原料の表示に果実の名前が並んでいないものを選びます。表示が読み取れないときは、店の方に確かめるのが早いです。
三つめ 保存状態と、置かれていた温度を見る
ワインは、温度の変化に弱いお酒です。直射日光の当たる棚や、冷房の届かない場所に長く置かれていた瓶は、中身が本来の姿から離れている可能性があります。見るべきは三点です。瓶が熱を帯びていないか。コルクが押し上げられていないか。ラベルに濡れた跡や変色がないか。同じ銘柄が複数あるなら、棚の奥、光の当たらない側から取る。
四つめ 持ち帰るときの扱いを決めておく
瓶は重く、割れます。衣類などの柔らかいもので包み、スーツケースの中央に寝かせて入れます。機内に持ち込める液体の量には決まりがあるため、瓶は預け荷物に入れるのが基本です。買ったあと丁寧に扱うところまでが、選び方の続きです。
ベトナム料理に合うワイン ハーブと魚醤を、どう受けるか
ベトナム料理の輪郭をつくるのは、二つの要素です。パクチー、ミント、バジルといったハーブの青い香り。そしてヌクマム(魚醤)の塩気とうま味です。
- ハーブの青い香りには、同じ方向の香りをもつ白を合わせて同調させる
- 魚醤の塩気とうま味には、酸のきれいな辛口を合わせて輪郭を立たせる
- 甘めのたれや揚げ物には、果実味のある軽い赤かロゼを合わせる
ハーブと魚醤には、辛口の白かロゼ。 これが、ベトナム料理に合わせるときの基本の形です。青い香りでいえば、ソーヴィニヨン・ブランは分かりやすい一本です。品種の性格はソーヴィニヨン・ブランの記事に、ロゼの選び方はロゼワインの記事に委ねます。
料理ごとに見ていきます。フォーは、うま味とハーブの両方を受ける酸が要ります。生春巻きは素材が淡いので、香りの軽い白が向きます。バインミーは肉の脂となますの酸が重なるので、ロゼか軽い赤が収まります。揚げ春巻きは、衣の油を酸で切るか、果実味のある赤で受けるか、どちらでも成り立ちます。
日本の食卓なら、ハーブを使う料理と並べて
日本でベトナムワインを開けるなら、エスニック料理の夜が合います。ハーブを使った和え物、魚醤で味を決めた炒めもの、生春巻き。香りの強い料理ほど、ワインも香りで迎えたほうが釣り合います。 甘みの残るタイプなら、辛味のある料理に合わせてみてください。わずかな甘みは、舌に残る辛さをやわらげます。
日本でベトナムワインは手に入るか
結論から言えば、手に入ります。ただ、大きな売り場の棚にいつも並んでいるとは限りません。アジアの食材を扱う店や、品揃えの広いオンラインの店で見つかります。手がかりは、旅先の売り場と同じです。
- 辛口を飲みたいなら、ぶどうだけで造られたと分かる表記のものを選ぶ
- 甘口でよければ、果実を合わせたタイプを食後の一杯として選ぶ
- 料理と合わせる前提なら、白かロゼから始める
価格は手頃なものが多く、為替や輸送の条件で動きます。
名前を知らなかった国のワインは、隣に並べると分かります
原料の見分け方を覚えても、好きかどうかは飲んでみないと決まりません。
名前を知らなかった国のワインも、隣に並べて飲むと、好きかどうかがすぐに分かります。 一本だけで飲むと、感想は「おいしい」か「よく分からない」のどちらかに寄りがちです。ところが横に並べた瞬間に、人は違いを言葉にし始めます。比べることは、味を覚えるいちばん早い道です。
正直に申し上げると、ベトナムのワインを巡る会は、私たちはまだ開いていません。けれど「知らない国のワインを、料理と並べて飲み比べる」という形の会は、1月16日(土)にご用意しています。南アフリカワインを巡る会です。
南アフリカの11種を、泡、白4、ロゼ1、赤5の構成で、各約45mlずつお出しします。シュナン・ブラン、ピノタージュ、ケープ・ブレンド。名前を聞いたことはあっても、横に並べて飲んだことのある方は少ない品種です。産地の解説は南アフリカワインの記事にあります。この会のあと、ワインリストの「知らない国のページ」を読み飛ばさなくなる。それが、会を続けている理由です。
ワインが先、料理が後
私は年間で約2,000種のワインを試飲し、その中から会ごとの一本を選んでいます。順番は、ワインが先、料理が後です。コースの流れを思い描いてワインを決め、それが確定してから皿を組みます。恵比寿のこの場所は、ふだんは一日ひと組の貸切のレストランで、席は八つだけ。ハウスワインを置かず、その日限りのペアリングとしてお出ししています。
グラスだけなら2番目だった一本が、料理と合わせると1番に入れ替わることがあります。 渋みは脂で和らぎ、酸は塩で立ち上がる。だから「このワインが好き」という答えは、皿と一緒に出てきます。

まとめ
ベトナムワインは、土地の条件と原料の種類が分かると、選び方が決まります。
- 中心は標高1,500m前後の高原の町ダラット。ぶどうの多くは、雨の少ない海沿いのニントゥアンで育ちます
- フランスの統治下にあった時期の影響で、造る歴史より先に、飲む文化が根づきました
- 産地としてはダラットとニントゥアンの名前が挙がり、高温多湿の低地はぶどう栽培に向きません
- 味の方向は「ぶどう100%かどうか」で分かれ、果実を合わせたものは甘口に寄ります
- お土産なら、甘辛と原料の表記、ぶどう100%かどうか、保存状態と温度、持ち帰りの扱いの四点を見ます
- ハーブと魚醤の料理には、辛口の白かロゼ。甘みの残るタイプは、辛味のある料理に向きます
旅先の棚の前で瓶を手に取るかどうかを決めるのは、たいてい一つの手がかりです。原料の表記を見る習慣が、その手がかりになります。
そのうえで、好きかどうかは並べて飲んでみないと分かりません。1月16日(土)に「南アフリカワインを巡る会」をご用意しました。昼の部12:00〜、夜の部18:00〜、各部8席。会費は14,800円(税込)、ご予約はTableCheckにて承っており、開催7日前までなら別の日に振り替えできます。満席の回から締め切ります。
次に飲んでみたい国が決まっている方は、次に飲みたい国をLINEで教えてください。会を開く順番の参考にいたします。好みの方向がまだ定まっていない方は、無料のワイン診断から始めていただくこともできます。
よくある質問
ベトナムのワインでおすすめは?
銘柄より、選び方で絞るほうが確実です。高原の町ダラットの名を冠したワインが広く流通していると伝えられています。辛口ならぶどうだけで造られた赤か白を、甘口でよければ果実を合わせたものを選ぶと外しにくくなります。
ベトナムの代表的なお酒は?
いちばん身近なのはビールで、食堂でも広く飲まれていると伝えられています。ほかに米を原料にした蒸留酒や、果実を漬けた酒も飲まれています。ワインは、そうしたお酒と並ぶ一本という位置づけです。
ワインに詳しくなくても、ひとりで参加できますか?
ワイン会はこれまで100回以上開いてきましたが、参加者の半数以上はおひとりでのご参加です。知識は要りません。席は8つだけで、一本ずつご説明しながら進めます。日程はワイン会のご案内にまとめています。
ダラットのワインは、ダラットで育ったぶどうから造られていますか?
多くはそうではありません。ダラットは醸造と熟成の拠点で、ぶどうの多くは山を下りた先の雨の少ない海沿い、ニントゥアンで育てられています。桑の実などほかの果実を合わせたものもあるため、原料の表記を確かめてから選ぶと外しにくくなります。
一杯の違いを、料理とともに確かめる。
少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

