会場のご案内をされている方から、こんな話を聞くことがあります。建物も庭も気に入っていただけた。写真も撮っていただいた。それなのに、最後の打合せで料理の話になった途端、返事が鈍る。

その原因が、味の良し悪しであることは案外少ないものです。多くの場合、選べる幅そのものが狭い。厨房で作れる数に上限があり、そこから逆算してメニューが決まっているからです。

私は恵比寿で一日ひと組・八席のレストランを営みながら、出張料理として年間200件を超える食卓に伺ってきました。その経験から申し上げると、料理の幅を決めているのは会場の格ではありません。厨房の条件です。そして厨房の条件は、外から人と道具を持ち込むことで、動かせる部分があります。

この記事では、邸宅ウェディング・ゲストハウスウェディングの会場を運営される方と、そこを使うプランナーの方に向けて、外部のシェフを入れるという選択肢を整理します。

SUMMARY

結論:邸宅ウェディングやゲストハウスウェディングの料理は、会場の格ではなく、厨房の条件で決まります。 雰囲気で選ばれる会場ほど、厨房は住宅の設備に近づきます。その結果、建物と庭には申し分がないのに、出せる料理の幅だけが狭いという状態が起こります。 その場合、外部のシェフが会場に入って仕上げる出張料理という組み方があります。器もグラスも調理器具も持参できるため、厨房のない会場でも成立する範囲があります。 費用は人数ではなく形式で決まります。東京では立食・ビュッフェでお一人8,000円から、着席のコースで15,000円からが目安です。

あわせて、ケータリング料金の内訳を知る立食パーティーの料理を設計するもご覧ください。

結論 料理の幅を決めているのは、会場の格ではなく厨房の条件です

はじめにお伝えしておきます。Na Team Lab は、ウェディングのご相談やお問い合わせをいただくことはありますが、挙式・披露宴そのものを担当した実績はまだありません。ご相談の入り口は、その大半が会場かプランナーの方からです。

ですのでこの記事に、当日の様子を語る体験談は書きません。書けるのは、お引き受けできる形はこうなります、という設計の話だけです。そのかわり、隣接する現場の経験からお話しできることはあります。

たとえば、鉄板焼きのお店から「箱はあるがシェフがいない」というご相談をいただき、鉄板という設備を使ってフレンチのコースを組み立てたことがあります。バーでフルコースをお出ししたこともあります。どちらも、その場所が本来そういう料理を出す設計になっていない箱でした。

設備は、ジャンルではなく手段として見ると、意味が変わります。鉄板は鉄板焼きのための道具ではなく、面で火を入れられる装置です。その見方に切り替えると、邸宅やゲストハウスの厨房も、別のものに見えてきます。

邸宅ウェディングとゲストハウスウェディングとは

邸宅ウェディングで外部シェフが仕上げる料理
会場の設備を確認し、その場所だけの一皿へ組み立てます。

言葉の整理から入ります。邸宅ウェディングは、一軒の邸宅を貸し切って行う結婚式のことです。ゲストハウスウェディングは、そのために設計された一軒家型の会場で行う形式を指します。どちらも、建物ごと使えることが最大の魅力です。

会場の型ごとに、料理の自由度は次のように変わります。

会場の型料理の自由度人数の幅雰囲気
ホテル低い大人数まで格式が整っている
専門式場低い中〜大人数進行が確立している
邸宅会場による少〜中人数建物そのものが主役
ゲストハウス中程度中人数貸切の一体感がある
レストラン高い少人数料理が中心にある

ホテルや専門式場は、大規模な厨房と調理スタッフを内側に抱えています。そのぶん品質は安定しますが、献立の枠は決まっています。一方、邸宅やゲストハウスは建物の個性で選ばれるため、厨房は仕上げのための場所として設計されていることが多くあります。

つまり、雰囲気の自由度と料理の自由度は、必ずしも同じ方向を向いていません。ここに、外部のシェフが入る余地があります。

会場の厨房には、三つのパターンがあります

現地を拝見すると、厨房はおおむね三つに分かれます。それぞれで組める料理と、こちらが持ち込むものが変わります。

厨房の型組める料理こちらが持ち込むもの事前に確かめること
フル厨房着席のフルコースまで食材と仕込み、足りない器具何人前まで一度に作れるか
簡易キッチン仕上げ中心のコース、立食調理器具、器、グラス、電気式の鉄板など電源の容量と、作業台の広さ
厨房なし立食・ビュッフェ、構成を組み替えたコース調理から配膳まで、ひととおり水場と、搬入から片付けまでの動線

フル厨房であれば、着席のフルコースまで組めます。ただ、「厨房がある」ことと「その人数分を一度に出せる」ことは別の話です。ここを混同すると、当日に料理が止まります。

簡易キッチンの会場は、実際にはいちばん多い型です。この場合は、店の厨房で仕込みを済ませ、現地では仕上げに集中する組み方をします。持ち運びのできる電気式の鉄板を使うこともあります。

厨房のない会場でも、一律に不可とは考えていません。器もグラスもカトラリーも調理器具も持参できますし、ワイングラスは約100脚あります。ただし、水場と動線だけは事前の確認が要ります。ここは持参で補えない部分です。

下見でまず確かめるのは、何人前作れるかということです

現地を拝見するとき、私が最初に見るのは三つです。

  • その厨房で、一度に何人前まで作れるか
  • 当日のオペレーションが、その動線で回るか
  • 皿・グラス・カトラリー・調理器具が会場にあるのか、持ち込むのか

順番にも意味があります。設備の写真を見ても、何人前作れるかは分かりません。コンロの口数と作業台の広さ、そして冷やしておく場所の有無を合わせて、はじめて数字が出ます。

三つ目の備品は、見落とされやすい項目です。会場に備えがある場合はそれをお借りし、ない場合は当日持参します。どちらでも構いませんが、決めておかないと当日に重なります。

オリジナルウェディングで、料理がいちばん効く理由

オリジナルウェディングという言葉は、決まった型を使わず、二人に合わせて会を組み立てる考え方を指します。会場も進行も衣装も自由に選べる形です。

そのなかで、料理はやや特殊な位置にあります。会場や装花は、ゲストが目で受け取るものです。料理は、口に入れて、時間をかけて受け取るものです。ゲストが会場で過ごす時間の大半は、食べている時間だからです。

ですから、二人の物語をコースに翻訳する余地は、思っているより大きくあります。出会った土地の食材を一皿に置く。ご家族の記憶にある料理を、コースの文脈に組み直す。季節の一皿を、その日の空の色に合わせる。どれも、献立の枠が決まっている会場では組みにくいことです。

実例として書けることを、正直に申し上げます。私たちにウェディングの実績はまだありません。ただ、記念日や顔合わせ、レセプションといった隣接する場では、こうした組み立てを重ねてきました。会の主旨を伺い、そこから逆算してコースの起伏を設計する。軽いところから重いところへ、変化と余韻を置きながら進める。この作り方自体は、会の名前が変わっても同じです。

会場が外部のシェフを入れるときに、決めておくこと

ここからは、会場を運営される方に向けた実務の話です。

許可と衛生

私たちは、恵比寿の店舗で飲食店営業許可を取得しています。出張の際は、この営業許可のもとで伺います。仕込みは自社の厨房で行い、当日は手洗いを徹底し、食品添加物のアルコール製剤を持参して消毒しながら調理します。食品衛生責任者は、私を含めスタッフ全員が保有しています。

屋外に台を出して調理するような形が必要な場合や、現地の保健所の許可が別途必要になる場合は、その都度対応します。会場の側で判断に迷うところがあれば、先に共有していただけると確実です。

搬入は、規模に合わせて動かします

搬入の時間は、規模によって変えています。10名さま程度の会であれば、開始時間の1時間前に入れば間に合うことが多くあります。人数と形式が大きくなれば、そのぶん前に入ります。

会場の側で決めておいていただきたいのは、時間そのものよりも、どの動線を使ってよいかという点です。搬入口と、当日ゲストが通る動線が重なると、開始前の空気が変わってしまいます。

当日、会場担当者にお願いしたいこと

料理からサービスまで、私たちの側で対応することが多くなります。ですので会場のご担当者には、確認役として立っていただくくらいの想定です。

そのうえで、二つだけお願いがあります。ひとつは、現地内見のときにお立ち会いいただくこと。もうひとつは、当日その場で判断が要る場面での、臨機応変な対応です。会場のことをいちばんよくご存じなのは、運営されている方だからです。

もっとも、この分担は会場の設備と人数規模によって変わります。設営から入るのか、料理の提供だけなのか、ドリンクもお出しするのか。そこを最初に決めておけば、当日の境界線は自然に定まります。

提携は、定期利用を前提に組みます

単発でお受けすることもできますが、会場との関係は、定期的に使っていただく前提で組むほうが噛み合うと考えています。

理由は単純です。初回は、確認事項が多くなります。厨房で何人前作れるか、動線はどうか、備品は何があるか。一度ひととおり把握してしまえば、二度目からの立ち上がりは目に見えて速くなります。会場の側にとっても、料理の選択肢が常設でひとつ増えます。

具体的な条件は、会場ごとに個別のご相談です。会場にとってもきちんと利のある形にしたいと考えていますので、まずは条件を教えていただくところから始めさせてください。

費用は人数ではなく、形式で決まります

ご質問をいただくたびに、いちばん誤解のあるところです。人数が増えれば単価が上がると思われがちですが、私たちはそうしていません。

形式お一人あたり対応人数
着席コース15,000円〜6〜16名さま
着席コース+ワインペアリング22,000円6〜16名さま
立食・ビュッフェ形式8,000円〜17名さま〜
会場手配を含む形個別のお見積り20〜30名

基本となるのは、お一人8,000円からという価格帯です。30名でも50名でも80名でも、この基本の帯は変えない方針です。会場の条件によってどうしても難しい場合のみ、個別にご相談いただく形になります。

単価が変わるのは、人数ではなく形式です。着席のフルコースは、一皿ずつ組み立てて、一皿ずつお出しします。料理の工数もサービスの人数も増えるため、そのぶん単価が上がります。立食やビュッフェは、その工数が別の形に置き換わります。

最低料金は、1回のご依頼につき90,000円からです。表示の金額には、税・サービス料・出張費・食材費、そして器や道具を持参する分まで含んでいます。持ち込み料はいただかず、本数の制限もありません。

なお、100名さまを超える完全着席のご依頼は、正直に申し上げてお受けできません。上限の人数はご相談としか申し上げられませんが、形式によって変わるということだけ、先にお伝えしておきます。

サービススタッフの人数の目安

見積りの前に、体制の目安をお伝えしておきます。

  • 着席の場合:10名増えるごとに、サービススタッフを1名追加
  • 立食の場合:15名増えるごとに、1名追加

ただし、これはあくまで目安です。実際には会場の動線によって変わります。厨房から卓までの距離、階段の有無、控えのスペースの位置。どれも人数の計算に影響します。

さらに、料理の提供だけを担うのか、ドリンクもお出しするのか、会場の設営から入るのかによっても変わります。ですので、一概に何名体制ですとは申し上げにくいところです。現地を拝見したうえで、そのつどお出しします。

東京の邸宅・ゲストハウスの傾向 港区・渋谷区・世田谷区

東京で邸宅ウェディングやゲストハウスウェディングの会場を探すと、いくつかの区に集まる傾向があります。あくまで会場の型としての一般的な傾向と、私たちの稼働の実感を、分けてお伝えします。

港区は、Na Team Lab の出張料理・ケータリングでもっとも案件数の多いエリアです。レジデンスの上階や、貸切の空間からのご依頼が中心になります。設備は整っていることが多い一方、搬入経路の管理が厳格な建物も多くあります。

渋谷区は、私たちの拠点である恵比寿を含む区です。広尾や代官山を含めて、住宅と店舗が近い距離で混ざっている地域が多く、規模の小さな貸切邸宅が点在しています。

世田谷区は、私たちの対応エリアのなかでは最も遠いエリアにあたります。それでも区の全域が、おおむね30分圏に収まります。戸建てのご自宅からのご依頼が多いのも、この区の特徴です。庭を使える会場も、他の区より見つけやすい地域だと感じています。

いずれの区でも、確認する順番は変わりません。厨房で何人前作れるか、動線が回るか、備品は何があるか。この三つです。

厨房を見せていただくところから始まります

会場の格に、料理を並べる。それがこの記事でお伝えしたかったことのすべてです。

建物と庭が完成しているのに、料理だけが枠の中にある。その状態は、会場にとってもお客様にとっても、もったいないものだと感じています。厨房の条件が分かれば、組める形は、いくつか見えてきます。

Na Team Lab は、恵比寿で一日ひと組・八席のレストランを営みながら、出張料理として年間200件を超える食卓に伺ってきました。邸宅やゲストハウスを運営される方、そこを使うプランナーの方からのご相談も承っています。

ご相談は、公式LINEにて承っております。厨房の写真と、想定人数、会の形式だけでも構いません。実際に拝見できるようでしたら、現地の内見からご一緒します。

まとめ

  • 邸宅ウェディング・ゲストハウスウェディングの料理の幅は、会場の格ではなく厨房の条件で決まります
  • 厨房はフル厨房・簡易キッチン・厨房なしの三つに分かれ、それぞれで組める料理が変わります
  • 下見で確かめるのは、何人前作れるか、動線が回るか、備品は何があるかの三点です
  • オリジナルウェディングでは、ゲストが最も長く時間を使う料理に、二人の物語を翻訳する余地があります
  • 費用は人数ではなく形式で決まり、立食・ビュッフェはお一人8,000円から、着席コースは15,000円からです
  • サービススタッフは着席で10名ごと、立食で15名ごとに1名を目安としますが、会場の動線によって変わります
  • 会場との提携は、定期的にご利用いただく前提で組むほうが噛み合います

よくある質問

会場の提携先でなくても、外部のシェフを入れられますか?

会場のご許可があれば可能です。まず厨房で何人前作れるか、皿やグラスなどの備品が会場にあるかを確認させていただきます。器も調理器具も持参できますので、簡易キッチンの会場でも組める形はあります。

試食会はできますか?

恵比寿のレストランのランチにて、お一人15,000円で試食していただけます。1名さまからご利用いただけますので、会場のご担当者だけで先に味の方向を確かめていただいても構いません。有料でのご案内となります。

人数の上限はどのくらいですか?

形式によって変わるため、上限はご相談とさせてください。着席のフルコースは工数とサービス人数が増えるぶん、立食やビュッフェより上限が下がります。100名さまを超える完全着席は、お受けできません。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

私たちの理念・会社情報を見る →
掲載実績・参加者の声を見る →


ご依頼の前に、料理を確かめる体験ランチ。

法人ケータリングをご検討中の方へ、恵比寿の店舗で料理をご体験いただけます。担当者様・役員の方々もご一緒に。1〜8名様 / お一人様15,000円(税込)・ドリンク込み / 約2時間・完全予約制。完全予約制・開始時間はご都合に合わせて調整。

出張料理を頼む前に読む(一覧)

TOP

Na Team Lab|東京・恵比寿

Na Team Labをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

0