SUMMARY

結論:ルーマニアワインは、ヨーロッパでも上位のぶどう栽培面積をもつ国で造られる、価格の手頃な土着品種のワインです。 赤の中心は「黒い乙女」を意味するフェテアスカ・ネアグラ、白はフェテアスカ・アルバ、甘口はタマイオアサ・ロマネアスカが知られています。 国名で選ばれる機会がまだ少ないため、同じ手のかけ方のワインと比べて価格が抑えられていることが多い産地です。 ピノ・ノワールやメルローも造られ、果実味の豊かさが素直に出ます。 この記事では、主な産地と品種の読み方、合う料理、日本での選び方を順に整理します。

あわせて、ブルガリアワインは、古代から続く土地の手頃な赤とハンガリーの甘口、トカイを知るもご覧ください。

畝が続くぶどう畑の風景。ルーマニアワインの産地の丘をイメージした一枚
畑の位置と気候が、味の方向を決めます(写真は国内のぶどう畑で、ルーマニアの畑ではありません)

ワインショップの棚を、国ごとに見ていくことがあります。ひと回りしたあと、見慣れない国名が並ぶ一角で足が止まる。ルーマニアと書かれたラベルを手に取り、裏を返して、品種の名前が読めずに棚へ戻した。そんな経験はないでしょうか。

ルーマニアのワインを前にしたときのつまずきは、味ではなく名前にあります。フェテアスカ・ネアグラ、タマイオアサ・ロマネアスカ。この二つを読めるようになるだけで、この国のワインは選びやすくなります。 畑の広さはヨーロッパでも上位にあり、価格は同じ造りの他国のワインより抑えられていることが多い。知らないままにしておくには、少し惜しい産地です。

この記事では、ルーマニアワインの成り立ち、四つの地方の性格、土着品種の読み方、合う料理、日本での選び方を順にお伝えします。東欧の甘口そのものの解説はハンガリー・トカイの記事に委ね、ここではルーマニアに絞ります。

ルーマニアワインとは 畑は広く、名前は知られていない国

ルーマニアは、東ヨーロッパの黒海に面した国です。国土の中央をカルパチア山脈が弧を描いて走り、その内側と外側で気候が分かれます。ぶどう畑は、山脈をはさんだ丘のふもとに広がっています。

ひと言でいえば、ルーマニアワインは「自国で飲むために造られてきたワイン」です。 栽培面積はヨーロッパの中でも上位に数えられますが、その多くが国内で消費されてきました。輸出で名前を売ってきた産地ではないため、日本の棚で見かける機会が少ない。これが「知られていない」ことの中身です。

名前が知られていないことは、価格に表れます。産地の名前に需要が集まれば値段は上がりますが、ルーマニアはその逆の位置にいます。手頃でおいしい、と言われるのはこのためです。

ルーマニアワインの歴史 古い土地に、新しい道具が入った

ぶどう栽培の歴史は古く、黒海沿岸の一帯は、紀元前6世紀ごろに古代ギリシャの人々がぶどうを持ち込んだとも伝えられ、古代から酒と結びついた土地として語られてきました。ただ、いま棚で見る姿は、ここ数十年のうちにつくられたものです。

20世紀の後半、畑は量を求める方向に整えられました。その後、1990年以降の民営化、そして2007年のEU加盟の前後から植え替えと設備の更新が進み、量から質へと軸が移ったと伝えられています。古い土地に、新しい道具が入った。 これが、この国のワインを読むときの軸です。

世界三大ワイン産地は? 生産量で見たルーマニアの位置

「世界三大ワイン産地は?」という問いには、生産量の上位がイタリア、フランス、スペインの3か国だと一般にいわれます(年によって順位は入れ替わります)。ルーマニアはこの3か国には届きませんが、ヨーロッパの中では確かな規模をもつ生産国です。

生産量と知名度は、同じ順番には並びません。詳しい順位はワインの生産量ランキングの記事に、新世界と旧世界という分け方は新世界ワインの記事に譲ります。ルーマニアは、旧世界の側に入ります。

ルーマニアの主な産地 四つの地方で、味の方向が分かれます

ラベルに書かれる産地名のうち、日本で目にする機会の多いものを並べます。

産地気候・位置主な品種味の傾向
ムンテニア/デアル・マーレ南部、カルパチア山脈の南斜面のふもとフェテアスカ・ネアグラ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール果実味に厚みのある赤。渋みはまるい
モルドヴァ地方/コトナリ北東部。内陸で、昼夜と季節の寒暖差が大きいグラサ・デ・コトナリ、タマイオアサ・ロマネアスカ甘口の白で知られる。甘みの奥に酸が残る
トランシルヴァニア山脈の内側。標高が高く冷涼フェテアスカ・アルバ、フェテアスカ・レガーラ酸のきれいな辛口の白。香りは軽やか
ドブロジャ/ムルファトラール南東部、黒海沿岸シャルドネ、ピノ・グリ、甘口の白日照が強く、熟した果実味が前に出る

表を縦に見ると、ひとつの規則が見えてきます。山脈の内側と高いところは白に、南の斜面のふもとは赤に、黒海沿岸は熟した味わいに向かう。 国の中央に山脈が走っているため、ひとつの国の中で冷涼と温暖が分かれるのです。ラベルに「コトナリ」のように産地名まで書かれているものは、その土地の性格が前に出やすくなります。

樹に実った白ぶどうの房。フェテアスカ・アルバなど白の土着品種をイメージ
品種の名前を知ると、ラベルが読めるようになります(写真はイメージです)

ルーマニアの土着品種 「フェテアスカ」と名のつく一族

ルーマニアのラベルで何度も目にするのが、フェテアスカという言葉です。後ろに続く言葉によって、色や性格が分かれます。

品種色味の傾向合う料理
フェテアスカ・ネアグラ赤熟したプラムとスパイスの香り。渋みはまるく、酸は穏やか煮込み、ロールキャベツ、豚の料理
フェテアスカ・アルバ白白い花と洋梨の香り。酸は穏やかで、口当たりが柔らかい鶏肉、白身魚、クリームを使った料理
フェテアスカ・レガーラ白柑橘と青りんごの香り。酸がきれいに立つサラダ、ヤギのチーズ、揚げ物
グラサ・デ・コトナリ白甘口に向かう品種。蜜と乾いた果実の香りブルーチーズ、焼き菓子
タマイオアサ・ロマネアスカ白(甘口)マスカットを思わせる華やかな香りと、丸い甘みデザート、フルーツ、フォアグラ

名前の意味を知ると、覚えやすくなります。フェテアスカは「乙女」、ネアグラは「黒」。フェテアスカ・ネアグラは「黒い乙女」という意味だと伝えられています。アルバは「白」、レガーラは「王の」。色と格を、そのまま名前に入れているわけです。

この国の赤を一本選ぶなら、まずフェテアスカ・ネアグラです。濃さで押す赤ではなく、料理の隣に座る赤です。

甘口のタマイオアサ・ロマネアスカ

甘口の白では、タマイオアサ・ロマネアスカの名前が挙がります。マスカット(ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン)と同じ系統とされる、香りの高い品種です。「タマイオアサ」はお香(乳香)を意味する言葉から来ていると伝えられています。コトナリでは、グラサ・デ・コトナリと並ぶ代表的な品種です。

甘口のワインは、甘さだけでは成り立ちません。酸が残っているかどうかで、後味が重くなるか、軽く引いていくかが分かれます。コトナリは内陸で寒暖差が大きく、酸が残りやすい土地だといわれています。

東欧の甘口といえばハンガリーのトカイが先に挙がりますが、造りも土地も別の話です。詳しくはハンガリー・トカイの記事をご覧ください。

ピノ・ノワールとメルローは、ルーマニアだとどう見えるか

土着品種の名前が頭に入るまでは、知っている品種から入るのも手です。ルーマニアでは、ピノ・ノワールとメルローが広く造られています。

ピノ・ノワールは産地によって姿がよく変わる品種で、ブルゴーニュの繊細さを基準に置くと、ルーマニアのものは果実味が前に出て、渋みが柔らかい方向に寄るといわれます。メルローは、熟したプラムの香りと丸い口当たりが素直に出ます。

同じ品種を別の国で飲むと、その土地の気候がそのまま味に出ます。 いつも飲んでいる国の同じ品種と並べる。それだけで、この国の輪郭がはっきりしてきます。

隣国のブルガリアにも、同じ構図があります。ブルガリアワインの記事と読み比べていただくと、東欧のワインの見取り図ができてきます。

ルーマニアワインの選び方と、合う料理

サルマーレと、豚の生姜焼き

ルーマニアの食卓でよく語られる料理に、サルマーレがあります。ぶどうやキャベツの葉で肉を巻いて煮込んだもので、日本のロールキャベツに近い料理です。ここにフェテアスカ・ネアグラを合わせるのが、この国の定番とされています。

理由は、味の構造を見ると分かります。煮汁に出た出汁と、トマトの酸、巻いた肉の脂。この三つに、渋みがまるく酸の穏やかな赤が寄り添います。

豚肉とチーズも、この国のワインとよく並びます。日本の食卓なら、ロールキャベツ、豚の生姜焼き、肉じゃが。醤油と砂糖でまるくなった料理は、果実味のある穏やかな赤と響き合います。 白なら、フェテアスカ・アルバを鶏肉やクリームの料理に。

日本でルーマニアワインは手に入るか

結論から言えば、手に入ります。ただ、大きな売り場の棚にいつも並んでいるとは限りません。東欧のワインを扱う輸入元や、品揃えの広いオンラインの店で見つかります。

選ぶときの手がかりは、三つあります。

  • 赤なら、まずフェテアスカ・ネアグラと書かれたものを選ぶ
  • 白の辛口なら、トランシルヴァニアという産地名か、フェテアスカ・アルバ、レガーラの表記を見る
  • 甘口なら、コトナリとタマイオアサ・ロマネアスカの組み合わせを探す

価格は数千円台から見つかることが多く、為替や輸送の条件で動きます。

名前を知らなかった国のワインは、隣に並べると分かります

名前を覚えても、好きかどうかは飲んでみないと決まりません。

名前を知らなかった国のワインも、隣に並べて飲むと、好きかどうかがすぐに分かります。 一本だけで飲むと、感想は「おいしい」か「よく分からない」のどちらかに寄りがちです。ところが横に並べた瞬間に、人は違いを言葉にし始めます。比べることは、味を覚えるいちばん早い道です。

正直に申し上げると、ルーマニアのワインを巡る会は、私たちはまだ開いていません。けれど「知らない国のワインを、料理と並べて飲み比べる」という形の会は、1月16日(土)にご用意しています。南アフリカワインを巡る会です。

南アフリカの11種を、泡、白4、ロゼ1、赤5の構成で、各約45mlずつお出しします。シュナン・ブラン、ピノタージュ、ケープ・ブレンド。名前を聞いたことはあっても、横に並べて飲んだことのある方は少ない品種です。この会のあと、ワインリストの「知らない国のページ」を読み飛ばさなくなる。それが、会を続けている理由です。

ワインが先、料理が後

私は年間で約2,000種のワインを試飲し、その中から会ごとの一本を選んでいます。順番は、ワインが先、料理が後です。コースの流れを思い描いてワインを決め、それが確定してから皿を組みます。恵比寿のこの場所は、ふだんは一日ひと組の貸切のレストランで、席は八つだけ。ハウスワインを置かず、その日限りのペアリングとしてお出ししています。

グラスだけなら2番目だった一本が、料理と合わせると1番に入れ替わることがあります。 渋みは脂で和らぎ、酸は塩で立ち上がる。だから「このワインが好き」という答えは、皿と一緒に出てきます。

ワイン会の日の恵比寿の店内。長いテーブルに並んだたくさんのワイングラス
横に並んだ瞬間に、好みは言葉になります

まとめ

ルーマニアワインは、名前の読み方が分かると、選び方が決まります。

  • ルーマニアはヨーロッパでも上位の栽培面積をもつ産地国で、その多くを自国で飲んできました
  • 国の中央を走る山脈をはさみ、内側と高地は白、南の斜面は赤、黒海沿岸は熟した味わいに向かいます
  • 赤の中心はフェテアスカ・ネアグラ。渋みがまるく酸が穏やかで、煮込みや豚の料理に寄り添います
  • 白はフェテアスカ・アルバとレガーラ、甘口はコトナリのタマイオアサ・ロマネアスカが知られます
  • ピノ・ノワールやメルローも手頃な価格で造られ、同じ品種を別の国と比べる定規になります

棚の前で見慣れない国名に出会ったとき、品種名の意味をひとつ知っているだけで、手に取る理由ができます。

そのうえで、好きかどうかは並べて飲んでみないと分かりません。1月16日(土)に「南アフリカワインを巡る会」をご用意しました。昼の部12:00〜、夜の部18:00〜、各部8席。会費は14,800円(税込)、ご予約はTableCheckにて承っており、開催7日前までなら別の日に振り替えできます。満席の回から締め切ります。

→ ワイン会の日程と空席を見る

次に飲んでみたい国が決まっている方は、次に飲みたい国をLINEで教えてください。会を開く順番の参考にいたします。好みの方向がまだ定まっていない方は、無料のワイン診断から始めていただくこともできます。

よくある質問

ルーマニアで有名なワインは?

赤のフェテアスカ・ネアグラと、コトナリの甘口のタマイオアサ・ロマネアスカがよく挙がります。白ではフェテアスカ・アルバやフェテアスカ・レガーラ、グラサ・デ・コトナリが知られています。

フェテアスカ・ネアグラとは?

ルーマニアの土着の黒ぶどうで、名前は「黒い乙女」を意味すると伝えられています。熟したプラムとスパイスの香りがあり、渋みはまるく酸は穏やか。煮込みや豚の料理に寄り添います。

ワインに詳しくなくても、ひとりで参加できますか?

ワイン会はこれまで100回以上開いてきましたが、参加者の半数以上はおひとりでのご参加です。知識は要りません。席は8つだけで、一本ずつご説明しながら進めます。日程はワイン会のご案内にまとめています。

ルーマニアワインに合う料理は?

ロールキャベツに近いサルマーレにフェテアスカ・ネアグラを合わせるのが定番とされています。日本の食卓なら豚の生姜焼きや肉じゃがなど、醤油と砂糖でまるくなった料理が果実味のある穏やかな赤と響き合います。白ならフェテアスカ・アルバを鶏肉やクリームの料理に。

日本でルーマニアワインは買えますか?

手に入ります。東欧のワインを扱う輸入元や、品揃えの広いオンラインの店で見つかり、価格は数千円台から見つかることが多いです。赤ならフェテアスカ・ネアグラ、甘口ならコトナリとタマイオアサ・ロマネアスカの組み合わせを探すのが手がかりです。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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