SUMMARY

結論:スープの飲み方は、すくう向きと飲み終わりの二つを押さえれば足ります。 スプーンは手前から奥へすくうのがフランス式、奥から手前へすくうのがイギリス式とされ、どちらでも失礼にはあたりません。 すすらず、スプーンを傾けて口に流し込むようにすると音は出ません。 残りが少なくなったら、皿の手前を持ち上げて奥へ傾けます。 飲み終わったら、スプーンは皿の中に置いてください。

あわせて、カトラリーの置き方は、お店への「下げてよい」の合図とナプキンのマナーは、お店への小さな合図もご覧ください。

コース料理で出される、白い器に注いだ白いポタージュの一皿
量も温度も、飲み切りやすさから決めています

コース料理でスープが出てくると、少し身構えます。どちらの向きにすくうのが正しいのか。音を立てていないか気になる。最後の一口が残ってしまったとき、皿を傾けてよいのか分からない。

ナイフとフォークの作法は本に書かれていますが、スープはなぜか曖昧なままです。

この記事では、スープの飲み方を順に整理します。すくう向き、音が出る理由、皿の傾け方、パンをひたしてよいか。そして、スープがコースのどこに置かれていて、量と味をどう決めているのか。スープを出す側から見えていることをお伝えします。

カトラリー全体の置き方はカトラリーの置き方の記事に、ナプキンの扱いはナプキンのマナーの記事に書きました。

すくう向きと、飲み終わり

まず、覚えることを二つに絞ります。

向きは二通りあります

スプーンを動かす向きには、二通りの説明があります。

  • 手前から奥へすくう ― フランス式として説明されます
  • 奥から手前へすくう ― イギリス式として説明されます

どちらでも失礼にはあたりません。同じ卓の方と揃える必要もありません。

ただ、ひとつだけ実務的な差があります。手前から奥へすくうと、スプーンの底についたスープが皿の中に落ちます。 奥から手前へすくうと、滴が自分の手前側に落ちることになります。服や卓の上に落とさないという点では、奥へ動かすほうが安全です。

日本の洋食店では、手前から奥へという説明を見かけることが多い印象です。どちらにしても、正解がひとつあるわけではありません。

スプーンの持ち方も、同じく二通りの説明があります。鉛筆のように持つ形と、柄の上から包むように持つ形です。安定するほうで構いません。

飲み終わりは、皿の中へ

飲み終わったら、スプーンを皿の中に置きます。 柄を右手前に向ける形が多く見られます。

受け皿のあるカップのスープは、受け皿にスプーンを置きます。 カップの中に立てたままにすると、倒れます。

この置き方が、合図になります。スプーンが皿の中に置かれていれば、サービスする側は「ひと区切りがついた」と読み、次の皿の支度に入ります。まだ飲まれる途中であれば、スプーンを持ったままにしておくか、皿の中に斜めに入れておけば伝わります。

カトラリー全般と同じで、角度や向きの細部より、置かれているか持たれているかのほうが読まれています。

音を立てない飲み方

もっとも気にされるのが、音です。

音が出るのは、すするからです

スープの音は、口と液体のあいだに空気が通ることで出ます。 つまり、すすると鳴ります。

ですから、音を消す方法はひとつです。すすらず、スプーンを傾けて口に流し込む。 スプーンの縁を下唇に当て、スプーン側を傾けて、液体のほうを口に入れます。自分の側が吸い込むのではなく、液体が落ちてくるのに任せる形です。

熱い場合は、この動作が難しくなります。熱いものは、反射的にすすって冷ましながら口に入れるためです。対処としては、次のどちらかになります。

  • スプーンの上で少し待ち、湯気が落ち着いてから口に運ぶ
  • 皿の縁のほうからすくう(中央より温度が下がっています)

猫舌の方は、縁から

熱いものが苦手な方には、皿の縁側からすくうことをおすすめしています。スープは中央がもっとも熱く、縁に近いほうから温度が下がっていきます。

スープを吹いて冷ます動作は、避けられることが多いです。音が出るためと、卓の上に飛ぶためです。かき混ぜて冷やすのも、澄んだスープでは濁りが出ます。縁からすくうほうが、静かに済みます。

もうひとつ。途中で席を立たないほうが、温度の面では得です。 戻ってきたときには、ちょうどよい温度を過ぎていることがあります。

皿を傾けるとき、カップのスープのとき

残りが少なくなったときの話です。

皿のスープと、カップのスープ

深いスープ皿で残りが少なくなったら、皿の手前を少し持ち上げて、奥へ傾けます。 手前に向かって傾けると、こちら側に流れてくるためです。奥に集めて、そこからすくいます。

これは失礼な動作ではありません。残して下げられるよりも、飲み切っていただけるほうが、出す側としては嬉しいところです。ただし、持ち上げるのは片手で、ほんの少しです。両手で抱えて飲む形は、洋食の卓では避けられます。

カップで出されたスープは、扱いが変わります。

スープ皿カップのスープ
スプーン使います途中から持ち上げて飲んで構いません
傾け方手前を持ち上げて奥へカップを持ち上げます
持ち方皿ごと持ち上げない(手前を少し上げて傾けるのみ)取っ手を持つ
飲み終わりスプーンは皿の中へスプーンは受け皿へ

取っ手が付いているかどうかが、持ち上げてよいかの目印になります。取っ手が付いていれば、持ち上げて飲む想定で作られた器です。付いていなければ、スプーンで飲む器です。

両手に取っ手が付いた器は、両手で持って構いません。ポタージュやブイヨンを温かいまま飲んでいただくための形です。

具の多いスープのとき

ミネストローネやブイヤベースのように、具の入ったスープもあります。このときは、具をすくってから汁を含める順にすると食べやすくなります。スプーン一杯に具と汁を同時に乗せようとすると、こぼれやすくなります。

大きな具が入っている場合は、スプーンの縁で切って構いません。ナイフが添えられていないのは、スプーンで切れる硬さに仕上げてあるという意味です。切り分けづらいものが入っていたら、遠慮なくおっしゃってください。

殻付きの貝や骨付きの身が入っている場合は、専用の器具が添えられます。使い方が分からないときは、サービスをしている人の手元を見るか、尋ねていただくのが早いです。殻や骨を置く小皿も、たいてい一緒に出ています。

白い器のオレンジ色のポタージュをスプーンですくう手元
スプーンを傾けて口に流し込めば、音は出ません

パンをひたしてよいか

これは、場によって分かれます。

格式のある席では、パンをスープにひたす動作は避けられるのが一般的な説明です。パンは、スープとは別に、ちぎって口に運ぶものとされています。

一方で、家庭の食卓や気軽な店では、ひたして食べる形が広く行われています。フランスやイタリアの家庭料理では、皿に残ったソースをパンで拭う動作に名前が付いているほどです。

ですから、同席している方や店の空気で判断するのが現実的だと思います。周りの方がひたしていなければ合わせる、というだけで足ります。

出す側としての本音を申し上げると、ひたして召し上がる姿を、否定的に見ることはありません。 スープに合わせてパンを選んでいる場合もありますし、皿を綺麗にして返していただくのは、作った側として嫌なことではありません。

ただ、スープの中にパンを長く入れたままにしないほうが、見た目は整います。ひと口ずつ、ちぎってひたす形にしていただくと、皿の中が濁りません。

コースの中で、スープが置かれている場所

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

当店の7皿のコースでは、スープは前菜に続く三番目に出ます。19時のご来店から始まり、19時30分ごろの位置です。

この位置には理由があります。コースは、軽いものから重いものへ、余韻の短い料理から余韻の長い料理へと進みます。スープは繊細で透明感のある一皿として、その前半に置いています。空腹のときは感覚が繊細ですから、最初は軽やかに始める必要があります。

そして、スープは次の皿への準備でもあります。ここから魚料理、肉料理へと向かっていきます。だから、スープの段階で重くしすぎません。すべての料理が重くなりすぎないよう、コースにはメリハリをつけています。

量も、飲み切りやすさから決めています。 多すぎれば後半に響きますし、少なすぎれば一皿として成り立ちません。前半に置く一皿としての位置が、器と量を決めています。コースの順番の考え方そのものは、コース料理の順番の記事に書きました。所要時間についてはコース料理の時間の記事にまとめています。

スープは、塩の判断がいちばん出る一皿です

スープは、料理のなかでも塩のピークが露わになる一皿です。

私たちは、塩の量と美味しさの関係を、線形ではなく鋭い山として考えています。足りなければ素材の輪郭がぼやけ、全体がのっぺりとした印象になります。過ぎれば、すべての味が塩に支配されて、素材の個性が消えます。そのあいだにある一点が、ピークです。

厄介なのは、一度過剰になった塩は戻せないということです。固形の料理であれば、ソースの量や付け合わせで調整の余地があります。液体はそれができません。入れた塩は、液体全体に広がります。

そしてスープには、噛む工程がありません。口に入れた瞬間から、味が完成した状態で届きます。ピークに当たっていれば、塩そのものは目立ちません。 塩を感じないのに素材の輪郭が立っている状態が、狙っている地点です。

だから私たちは、スープの味を最後に決めます。火を止める直前、器に注ぐ直前に、もう一度見ます。

当店では、お客様ごとの好みに応じて、塩を卓にお出しすることもあります。 一皿の中で0.1グラムを探すのと同じことを、召し上がる方の側でもできるようにしておく、という考え方です。スープを召し上がって「少し足したい」と感じられたら、遠慮なくおっしゃってください。

求めていない注意は、しないようにしています

最後に、ひとつだけ。

当店では、お客様の所作を見て、こちらから指摘することはありません。 スプーンの向きも、音も、皿の傾け方も、何も申し上げません。作法を尋ねられたときだけ、「こうすると良いですよ」とお伝えしています。

作法は、押し付けるものではなく、求められたときに渡すものだと思っています。

ですから、この記事に書いたことも、守らなければならない規則ではありません。スープの一皿で本当に大事なのは、温かいうちに召し上がっていただくことです。向きを気にして冷ましてしまうほうが、作った側としては残念です。

7皿、約3時間。前菜からデザートまで、時間軸で組み立てた一夜を、恵比寿の八席でお出ししています。六名さまから八名さま・一日ひと組の完全貸切です。コースはお一人15,000円〜(税・サービス料込)、ワインペアリングをお付けする場合はお一人22,000円〜です。席料・チャージ料・貸切料はいただかず、お通しもありません。一皿目から始まります。

塩のピークや一皿の設計を自分の手で確かめたい方には、料理&ワイン教室もあります。ご相談は貸切レストランのページと公式LINEから承っています。

スープスプーンを含む、銀のナイフ・フォーク・スプーンのカトラリー一式
飲み終わったスプーンの置き場所が、次の皿への合図になります

まとめ

スープの飲み方は、覚えることの少ない作法です。

  • すくう向きは、手前から奥へ(フランス式)と奥から手前へ(イギリス式)の二通り。どちらでも構いません
  • 音が出るのは、すするからです。スプーンを傾けて口に流し込めば鳴りません
  • 熱いときは、皿の縁のほうからすくってください。中央より温度が下がっています
  • 残りが少なくなったら、皿の手前を片手で少し持ち上げて、奥へ傾けます
  • 取っ手が付いた器は、持ち上げて飲む想定で作られています
  • 飲み終わったら、スプーンは皿の中へ。カップのスープは受け皿へ置きます
  • パンをひたすかどうかは場によります。周りの方に合わせれば足ります

次にスープが出てきたときは、向きよりも温度を優先してください。温かいうちに召し上がることが、スープのいちばんの作法です。

よくある質問

スープの正式な飲み方はどちらですか?

手前から奥へすくうフランス式と、奥から手前へすくうイギリス式があり、どちらでも失礼にはあたりません。同じ卓の方と揃える必要もありません。音を立てないことと、飲み終わりにスプーンを皿の中へ置くことのほうが大切です。

イタリアンのスープはどう飲みますか?

フレンチと分けて考える必要はありません。スプーンを傾けて口に流し込む形は同じです。ミネストローネのように具の多いスープは、具をすくってから汁を含めると食べやすくなります。皿が深いときは縁を持ち上げて構いません。

飲み終わったらスプーンはどうしますか?

皿の中に、柄を右手前に向けて置いてください。受け皿のあるカップのスープは、スプーンを受け皿に置きます。スプーンが皿の中に置かれていれば、サービスする側はひと区切りがついたと読み、次の皿の支度に入ります。

スープを飲むとき、音を立てないコツはありますか?

音はすすることで出ます。スプーンの縁を下唇に当て、スプーンを傾けて液体を口に流し込めば鳴りません。熱いときは、中央より温度が下がっている皿の縁のほうからすくってください。

パンをスープにひたしてもいいですか?

格式のある席では避けられるのが一般的ですが、家庭や気軽な店では広く行われています。同席している方や店の空気に合わせれば足ります。ひたす場合は、ひと口ずつちぎってひたすと皿の中が濁りません。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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一組で店を貸し切る夜へ。

恵比寿の八席を貸し切り、持ち込みの一本や会の目的に合わせてコースを組み立てます。

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