初夏のある日、茨城県つくば市栗原のワイナリー「つくばヴィンヤード 栗原醸造所」を訪ねました。オーナーに案内していただき、畑から醸造所までを歩き、その年にできたワインを味わい、最後は畑の中で、造り手の皆さんと一緒にバーベキューを囲みました。
恵比寿でレストランを営む料理人として、ふだんはグラスの中のワインから料理を考えています。そのワインが、どんな畑で、どんな人の手で生まれているのか。それを自分の目で確かめたくて、勉強と交流のために足を運んだ一日の記録です。
結論:つくばヴィンヤードは、筑波山を望むつくば市栗原で、耕作放棄地を畑に変えてワインを造るワイナリーです。 訪問では、オーナーの案内で畑と醸造所を見学し、その年のワインを味わい、畑の中で造り手と一緒にバーベキューを楽しみました。ワインの説明を聞きながら、畑とぶどうを目の前に味わえたのが、何よりの体験です。畑に立って感じたのは、一本のワインの裏にある、土地を借りて耕し、木を植え、何年も待つという時間の長さです。

つくばヴィンヤードとは
つくばヴィンヤード 栗原醸造所は、茨城県つくば市の栗原地区にあるワイナリーです。筑波山を正面に望むこの土地で、ワイン用のぶどうの栽培から醸造までを手がけています。
始まりは、使われなくなっていた農地でした。オーナーの高橋学さんは、もとは研究者。市役所に相談して耕作放棄地を借り受け、2014年からワイン用ぶどうの栽培を始めました。最初の畑に植えたのは、プティ・マンサンという白ぶどう。高橋さんが「うちのフラッグシップ」と話す品種です。その後も耕作放棄地を借り増やし、畑を広げてきました(ウォーカープラスのインタビューより)。
ぶどうの搾りかすを地元の養鶏場で鶏の餌として活用したり、市民が栽培から醸造までを体験できるオーナー制度を取り入れたりと、地域とつながりながらワインを造っているのも、このワイナリーの特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | つくばヴィンヤード 栗原醸造所(Tsukuba Vineyard) |
| 所在地 | 茨城県つくば市栗原 |
| オーナー | 高橋学さん |
| 栽培開始 | 2014年 |
| 特徴 | 耕作放棄地を再生した畑、プティ・マンサンがフラッグシップ、オーナー制度 |
なお、つくば市には「つくばワイナリー」という別のワイナリーもあります。名前が似ていますが、別の造り手です。
畑を歩く 初夏のぶどうの姿
案内していただいた季節は、花が終わり、小さな果粒がつき始めたころでした。まだ固く青い粒が、房の形になり始めています。収穫の秋に向けて、ここから粒が大きくなり、色づき、糖度を上げていきます。



レストランでワインを開けるとき、私たちが見ているのは、ボトルに詰められた「結果」です。けれど畑に立つと、その手前にある一年の長さが見えてきます。植えたぶどうがワインになるまでには、数年かかります。草を刈り、枝を整え、天気と向き合う時間の積み重ねが、一杯のワインの中にあります。
醸造所へ ぶどうがワインになる場所
畑のあとは、醸造所の中も見せていただきました。並んでいるのは、ステンレスのタンクと、ぶどうを搾るプレス機。収穫したぶどうはここで搾られ、タンクの中で発酵し、ワインへと変わっていきます。

大きなワイナリーの設備とは違う、手の届く規模の醸造所です。だからこそ、どのタンクにどの畑のぶどうが入っているのか、造り手の頭の中にすべて入っている。その距離の近さが印象に残りました。
その年のワインを、畑を前に
見学のあとは、その年にできたワインをいただきました。目の前には、さっきまで歩いていた畑。ぶどうが育つ場所を見ながら、そのぶどうから生まれたワインを飲むのは、レストランではできない体験です。

畑の土の感じや、風の通り方を知ったうえで飲むと、同じワインでも受け取り方が変わります。どんな料理に合わせたいか、自然と考えが広がっていきました。
造り手と囲んだバーベキュー
最後は、造り手の皆さんと一緒にバーベキューを楽しみました。会場は、なんと畑の中。ぶどうの木に囲まれ、さっき見たばかりの房を目の前にしながら、火を囲みます。
グラスにワインが注がれるたびに、そのワインの説明を造り手から一緒に聞きました。どの畑のぶどうで、どう仕込んだのか。説明を聞いて、目の前の畑とぶどうを見て、グラスを口に運ぶ。ワインが生まれる場所の中で、そのワインを味わうという、ここでしかできない体験でした。
料理人とワインの造り手は、ふだんは別々の場所で仕事をしています。けれど、同じ火を囲んで食べて飲むと、ワインの話も料理の話も、ずっと近いものに感じられます。造り手が何を大切にしてワインを造っているのかを直接聞けたことは、これからワインに料理を合わせていくうえで、大きな財産になりました。
料理人がワイナリーを訪ねる理由
Na Team Labでは、料理にワインを合わせるのではなく、ワイン1本1本に料理を合わせるスタイルをとっています。メニューを組むときも、当日に現場でテイスティングして塩味や余韻を調整するときも、手がかりになるのは、そのワインがどんな土地で、どんな人の手で造られたかという背景です。
畑を歩き、醸造所を見て、造り手と話す。そうして得たものは、皿の上の小さな判断に表れます。造り手を店にお迎えするメーカーズディナーも、こうした産地への訪問も、根っこは同じです。最近の開催例はラ・バスティード・サン・ドミニクやボデガス・ヴェルムのレポートをご覧ください。
日本ワインの産地の全体像は日本ワインの産地の記事にまとめています。
まとめ
つくばヴィンヤードは、筑波山のふもとの耕作放棄地を畑に変え、地域とつながりながらワインを造るワイナリーです。畑から醸造所まで案内してくださり、その年のワインとバーベキューの時間を一緒に過ごしてくださったオーナーと造り手の皆さんに、心から感謝しています。畑で見たこと、聞いたことを、これからの料理とワインの合わせ方に生かしていきます。
つくばヴィンヤードはどこにありますか?
茨城県つくば市の栗原地区にあります。筑波山を正面に望む場所で、ワイン用ぶどうの栽培から醸造までを行っています。
つくばヴィンヤードの主な品種は何ですか?
オーナーの高橋学さんがフラッグシップと話すのは、白ぶどうのプティ・マンサンです。最初の畑にこの品種を植えたところからワイナリーが始まりました。
つくばワイナリーとは違うのですか?
別のワイナリーです。つくば市には「つくばワイナリー」もありますが、つくばヴィンヤード 栗原醸造所とは別の造り手です。
見学やイベントはありますか?
見学やイベント、オーナー制度の最新情報は、つくばヴィンヤードの公式ブログでご確認ください。今回の訪問では、オーナーの案内で畑と醸造所を見学させていただきました。
なぜ料理人がワイナリーを訪問するのですか?
Na Team Labでは、ワイン1本1本に料理を合わせるスタイルをとっているためです。ワインがどんな土地で、どんな人の手で造られたかを知ることが、料理の味つけや余韻の調整の手がかりになります。
造り手の背景まで味わう夜へ。
Na Team Labでは、国内外の生産者を迎え、ワインや日本酒を主役にした少人数の食事会を企画しています。

