スモークサーモンを買ったときに、一緒に小さな瓶を買った。あるいは、人からいただいた。緑の粒が酢に浸かっていて、名前はケッパー。

一度サーモンに散らしたあと、冷蔵庫の奥に残っている。そういう瓶を持っている方は多いと思います。

ケッパーの使い方が分からなくなるのは、何をしている調味料なのかが説明されていないからです。塩なら塩味、砂糖なら甘味と分かります。ケッパーは酸味と塩気の両方を持っていて、しかも粒です。どこに使うのかが見えにくい。

この記事では、ケッパーを脂を軽くする小さな酸と位置づけて、使いどころを整理します。酢漬けと塩漬けの扱いの違い、スモークサーモン以外に合う料理、量の決め方、開封後の置き方まで書きました。

SUMMARY

結論:ケッパーの使い方は、脂のある料理に少量加えて後味を軽くする、と覚えると迷いません。 ケッパーは、花のつぼみを酢または塩に漬けた保存食で、ぴりっとした酸味と塩気を持っています。 脂のある魚や肉に少量加えると味が締まり、後味が軽くなります。酢漬けはそのまま、塩漬けは水に10分ほど浸して塩抜きしてから使ってください。 開封後は製品表示どおりに保管し、表示された使用期限を守って早めに使い切ります。

あわせて、火入れの基本と塩とうま味もご覧ください。

ケッパーとは、つぼみの漬けものです

ケッパーは、フウチョウボク科のケッパー(Capparis spinosa)という植物のつぼみを、酢または塩で漬けたものです。地中海沿岸でよく使われてきた保存食です。

つぼみですから、咲く前の状態で摘まれています。開いてしまう前に摘んで漬ける。粒の表面に細かいしわがあるのは、つぼみの形がそのまま残っているからです。

味は、酸味と塩気が同時に来ます。そして、わずかな苦味があります。この三つが小さな粒に詰まっているので、少量でも料理の方向を動かします。

苦味というと避けたくなりますが、料理では役に立つ要素です。苦味は料理に深さと大人っぽさを与え、複雑さを生みます。ケッパーの苦味も、酸と塩を支える土台として働いています。五つの味の関係については9つの原則の五味バランスにまとめています。

酢漬けと塩漬けは、使う前の手が違います

白い器に盛ったケッパーの実写写真
ケッパーの参考写真(当店の仕込みではありません)。小さなつぼみの形が見えます。 Photo: CNEcija12345 / CC BY-SA 4.0(加工なし)。

瓶を見て、まず確かめていただきたいのが漬け方です。扱いが変わります。

種類見分け方使う前の手
酢漬け液体に浸かっているそのまま使える。汁気を軽く切る
塩漬け粗い塩に埋まっている水に10分ほど浸して塩抜きする

酢漬けはそのまま使えます。 瓶から取り出して、汁気を軽く切るだけです。漬け汁に酸が入っているので、粒だけでなく汁も料理に使えます。

塩漬けは、水に10分ほど浸して塩抜きしてから使ってください。塩に埋まった状態で売られているものは、そのまま入れると塩味が勝ちます。水に放して、途中で一粒食べてみる。塩気が落ちて、酸と香りが前に出てきたら引き上げます。

塩抜きの時間は目安です。粒の大きさや漬かり具合で変わります。長く浸しすぎると、酸味と香りも抜けていきます。味を見ながら決めてください。

ちなみに、塩漬けのほうが香りが濃く残っているものが多いとされています。手間はかかりますが、塩抜きの加減を自分で決められるぶん、仕上がりを狙いやすくなります。

ケッパーが効く料理

ここが本題です。ケッパーは、脂のある料理に少量加えると味が締まり、後味が軽くなります。

料理入れ方何が起きるか
魚のムニエル仕上げのソースに粒ごと加えるバターの重さが抜けて、後味が軽くなる
タルタルソース刻んで混ぜ込む酸と塩が立ち、揚げ物に対して輪郭が出る
トマトソース煮上がりに粒ごと加える塩気と酸が足され、味が引き締まる
ポテトサラダ刻んで混ぜるマヨネーズの重さが切れる
肉のソテー焼き汁のソースに加える脂の後味がすっきり収まる

なぜ脂に合うのか

理由は、味の構造にあります。脂は酸でリセットされ、次の一口が新鮮に感じられます。これは単なる相殺ではなく、互いを引き立たせる関係です。

揚げ物に酸の高い白ワインを合わせる。バターの料理に透明感のある白を合わせる。ペアリングで使っている考え方と、まったく同じ構造です。ケッパーは、それを皿の中でやる道具です。グラスを用意しなくても、粒を数個落とすだけで後味が切れます。

この関係については対比のペアリング|違うからこそ、一つになるに詳しく書きました。

ムニエルに使うときのこつ

魚のムニエルは、ケッパーといちばん相性のよい料理のひとつです。小麦粉をまとわせてバターで焼く技法ですから、仕上がりは脂を含んでいます。

焼き上げた魚を皿に移したあと、フライパンに残ったバターと焼き汁にケッパーを落としてください。レモンを少し絞って、火を止めてから回しかける。それだけで、バターの重さに輪郭が出ます。

ここでひとつ覚えておくと便利なのが、レモンの酸味に対してバターを入れると、まろやかになるという関係です。酸を立てたいのか、丸めたいのか。それを先に決めてから、バターの量を決めます。ムニエルの技法そのものはムニエルとは|ソテー・ポワレとの違いに書きました。

なお、タルタルソースに使う場合は、加熱済みの魚や揚げ物に添える前提で考えてください。生の魚に使う場合は、生食用として売られているものをお選びください。

刻むか、そのままか

粒のまま使うか、刻んで使うか。ここは狙いで分かれます。

そのまま使うと、点で来ます。 食べ進めるうちに、ときどき粒に当たる。そのたびに酸と塩が立って、口がリセットされます。ソースに粒ごと落とす使い方は、この効果を狙っています。

刻むと、面で広がります。 タルタルソースやポテトサラダのように、全体に混ぜ込むものは刻んでください。粒のままだと当たり方が偏って、味がまとまりません。

迷ったら、料理の食べ方で決めてください。ひと口ずつ切り分けて食べるものは粒のまま。スプーンでまとめて取るものは刻む。その基準で、おおむね外れません。

入れる量は、塩の総量から逆算します

量の話をします。ここが、ケッパーでいちばん失敗しやすいところです。

ケッパーは、塩を連れてくる素材です。粒そのものに塩気があります。ですから「酸味を足そう」と思って入れると、気づかないうちに塩味も上がっています。

私が料理をするときに置いている軸は、ここです。塩の入れ方には二通りあります。塩そのものを入れて塩味を加える方法と、アンチョビや有塩バターのように、すでに塩味がついているものを使う方法です。

そして何より重要なのは、合計の塩味の総量を理解し、そこから逆算して塩味を加えることです。フレンチはバター、アンチョビ、チーズのように、塩を連れてくる素材を多用します。だからこの逆算が効きます。

ケッパーを使う日は、先に入れる塩を減らしてください。ケッパーを数個落としてから、味を見て、足りなければ塩を足す。この順序にすると、戻せない失敗を避けられます。

というのも、一度過剰になった塩は戻すことができません。塩と美味しさの関係は、量に比例して上がる線ではなく、鋭い山を描きます。足りなければ素材の味が立ち上がらず、散漫に終わる。ちょうどよければ素材の輪郭が立ち上がる。過ぎればすべてが塩に支配されて、素材の個性が消えます。塩とうま味の関係は塩は、うま味を彫る道具ですに詳しく書きました。

酸についても、ひとつ付け加えます。酸はいろいろな酸をブレンドすると、複雑さが出ます。 ケッパーの酸だけに頼らず、レモンやワインビネガーを少し重ねる。そうすると、酸の層が厚くなって、塩気に頼らず味を締められます。

開封後の置き方

保存は難しくありません。開封後は製品表示どおりに保管し、表示された使用期限を守って早めに使い切ります。

気をつけるのは、粒を液体から出したままにしないことです。使うときは清潔なスプーンで取り出し、残った粒が汁から顔を出していたら、液面の下に戻してください。漬け汁を足しても期限が延びるわけではありません。

塩漬けのものは、塩に埋まった状態のまま置いてください。塩抜きしたものを戻すと傷みやすくなります。使う量だけ取り出して塩抜きする、という手順にしてください。

なお、もつ期間は保存の条件で変わります。瓶の表示を確かめて、においや見た目に変化があれば使わないでください。

味を締める調味は、味見の順番で覚えます

ケッパーのような素材は、入れる前と入れた後を比べると、働きがすぐ分かります。そしてそれは、文章より舌のほうが速く覚えます。

私が教室でお伝えしているのは、レシピに書かれていない工程、つまり味見の話です。塩を入れる前の味。塩を入れた瞬間の変化。そして完成形。この三つの変わり目を、全員で味見して確かめます。足りないものが塩なのか、酸なのか、うま味なのかを言葉にできるようになると、レシピに縛られなくなります。

各回8名、1回6,000〜12,000円(税込・ドリンク込み)、入会金なしの1回完結です。基本は12時から約2時間。開催日時・テーマ・料金は回ごとに予約ページでご確認ください。スーパーで手に入る食材と家庭のIHを基本に、季節の特別な食材を使う回もあります。

フレンチの会で扱っているのは、ソースと火入れです。これまではイタリアン寄りの会が多くなっていました。家で再現しやすいからです。今後はフレンチの会を増やしていく予定です。単発ですので、順番に縛られることはありません。惹かれた回にいらしてください。

開催日程とお申し込みは料理教室のページにございます。ご質問やご相談は公式LINEでも承っております。

まとめ

ケッパーの使い方は、脂を軽くする役割から考えると決まります。

  • ケッパーは、フウチョウボクのつぼみを酢または塩で漬けたものです
  • 酸味と塩気、そしてわずかな苦味を持っています
  • 脂のある料理に少量加えると味が締まり、後味が軽くなります
  • 酢漬けはそのまま、塩漬けは水に10分ほど浸して塩抜きします
  • 合う料理は魚のムニエル、タルタルソース、トマトソース、ポテトサラダ、肉のソテー
  • ひと口ずつ食べるものは粒のまま、混ぜ込むものは刻んで使います
  • 量は塩の総量から逆算し、先に入れる塩を減らしてください
  • 開封後は漬け汁に浸したまま冷蔵。もつ期間は保存の条件で変わります

冷蔵庫に瓶が残っている方は、次に魚を焼いたときにフライパンへ数粒落としてみてください。後味の変わり方で、この粒が何をしているのか分かります。

よくある質問

ケッパーとケッパーベリーの違いは何ですか?

一般には、ケッパーがつぼみ、ケッパーベリーが花のあとにできる実とされています。ベリーのほうが大きく、種のような食感があります。酸味と塩気の働きは近いので、刻んで使えば似た役割を果たします。粒の小ささを活かす料理には、つぼみのほうが向きます。

ケッパーの酸味が苦手な人がいるときはどうすればよいですか?

刻まずに粒のまま入れて、取り分けられる形にしてください。点で当たる使い方なら、避けて食べられます。ソースに混ぜ込む場合は、量を半分に減らし、バターを少し足すと酸がまろやかになります。酸を立てるか丸めるかは、バターの量で調整できます。

ケッパーがないときに代用できるものはありますか?

完全に同じものはありませんが、役割で補う方法があります。酸はレモンやワインビネガーで、塩気と粒の食感はオリーブの実を刻んだもので近づきます。ただしオリーブは油分を持っていますので、脂を切る働きは弱くなります。酸を少し多めに足してください。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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