2026年10月8日(木)、恵比寿のNa Team Labで、南ローヌのドメーヌ「ラ・バスティード・サン・ドミニク(La Bastide Saint Dominique)」のメーカーズディナーを開きました。フランスから来日したヴェロニク・ボネさんを迎え、ゲストは8名。店の八席がちょうど埋まる、一卓だけの夜です。

この記事は、その夜の記録です。どんな造り手で、どの5本を、どの料理と合わせたのか。そして、ふだんは市場に出ないマグナムボトルを開けたときに何が起きたのか。料理を組んだシェフの立場から、残しておきたいと思います。

SUMMARY

結論:造り手のヴェロニク・ボネさんを迎え、シャトーヌフ・デュ・パプを中心とした5本に合わせた5皿とデザートを、8名限定・会費22,000円でお出ししました。 白はコート・デュ・ローヌとシャトーヌフ・デュ・パプ、赤はケランヌとシャトーヌフ・デュ・パプ。締めくくりは、樹齢100年を超える古木から造られる「スクレ・ド・ピニャン」2022を、通常は販売されていないマグナムで。料理はワイン1本1本に合わせて組み、当日のテイスティングで最終調整。お客様からは「ペアリングが完璧だった」、造り手からも「特別なディナーだった」とのお言葉をいただきました。

ラ・バスティード・サン・ドミニクとは

ラ・バスティード・サン・ドミニクは、南ローヌのクルテゾン(Courthézon)にある家族経営のドメーヌです。アヴィニョンとオランジュのちょうど中間あたり。1976年、ジェラールさんとマリー=クロードさんのボネ夫妻が、わずかな区画から始めました。

1999年からは息子のエリック・ボネさんが醸造を担い、現在は妹のヴェロニク・ボネさんとともに、兄妹でドメーヌを率いています。畑は今では約50ヘクタールに広がり、シャトーヌフ・デュ・パプ、ケランヌ、コート・デュ・ローヌなど、南ローヌの5つのアペラシオンにまたがっています。

日本では、フランス・ボルドーを拠点とするインポーター、セパージュ株式会社(Cépages Wines)が輸入しています。今回のディナーも、セパージュの皆さまのご協力で実現しました。

項目内容
ドメーヌ名ラ・バスティード・サン・ドミニク(La Bastide Saint Dominique)
所在地フランス・ローヌ地方 クルテゾン(南ローヌ)
創設1976年(ジェラール&マリー=クロード・ボネ夫妻)
現在の造り手エリック・ボネ(兄・醸造)、ヴェロニク・ボネ(妹)
畑約50ヘクタール、南ローヌの5つのアペラシオン

南ローヌは、グルナッシュを軸に複数の品種を組み合わせて造る土地です。品種をどう組み合わせるかという考え方はセパージュの記事に、フランスの産地全体の中での位置づけはフランスワインの産地の記事にまとめています。

ラ・バスティード・サン・ドミニクのヴェロニク・ボネさん、輸入元セパージュの方、シェフ川原壯太
左から、輸入元セパージュの方、ヴェロニク・ボネさん、シェフの川原壯太。ドメーヌのワインを手に

当日の5本とコース

メニューは次のとおりです。ワインは軽いものから重いものへ、白から赤へ、若いヴィンテージから順に。料理はその流れに一皿ずつ添わせました。

ワイン料理
Iコート・デュ・ローヌ ブラン 2025ホタテのカルパッチョ サラダ仕立て
IIシャトーヌフ・デュ・パプ ブラン 2023大王イワナのポワレ
IIIケランヌ「レ・ドゥ・ザルブル」2022鶏肉のソテー 焼き茄子のピューレ
IVシャトーヌフ・デュ・パプ ルージュ 2022美崎牛のステーキ
Vシャトーヌフ・デュ・パプ「スクレ・ド・ピニャン」2022(マグナム)美崎牛のラグーパスタ
Dessert—王のティラミス
ラ・バスティード・サン・ドミニクの5本(コート・デュ・ローヌ ブラン、シャトーヌフ・デュ・パプ ブラン、ケランヌ、シャトーヌフ・デュ・パプ ルージュ、スクレ・ド・ピニャン マグナム)
当日の5本。右端がマグナムのスクレ・ド・ピニャン 2022
メーカーズディナーのメニューと生産者紹介
当日のメニュー(右)と、生産者紹介の資料(左)

一皿ずつ ワインから料理を組み立てた理由

メーカーズディナーでは、ふだんのコースと主従が入れ替わります。料理にワインを合わせるのではなく、ワインの側から料理を決めていく。その考え方はメーカーズディナーという設計の記事に書きましたが、今回はそれを5本ぶん、実際に積み上げた形です。

Na Team Labのペアリングは「ワイン1本1本に、料理を合わせる」

一般的なペアリングは、料理を先に決めて、そこにワインを合わせるのが王道です。Na Team Labでは、その逆をとっています。ワイン1本1本に対して、料理を合わせるスタイルです。

メニューを組む段階でワインに合わせるのはもちろんですが、それで終わりにはしません。当日、現場でワインをテイスティングしてから、最後の微調整をしてコースを完成させます。調整するのは、たとえば次のようなところです。

  • 塩味のバランス:ワインの酸やミネラル感に合わせて、塩の量を決め直す
  • バターの利かせ方:白の厚みや樽の印象に合わせて、ソースのコクを足したり引いたりする
  • 余韻の伸ばし方:皿の後味とワインの余韻が同じ長さで続くように、香りや油脂の量を整える
  • 果実味のコントロール:赤の果実の濃さに合わせて、付け合わせの甘みや酸を調整する

同じヴィンテージのワインでも、ボトルや開けてからの時間で表情は変わります。だからこそ、最後の一手はその日のグラスを飲んでから決めています。以下は、そうして仕上げた一皿ずつの記録です。

I コート・デュ・ローヌ ブラン 2025 × ホタテのカルパッチョ

一杯目は、いちばん若い2025年の白。果実の明るさをそのまま受け止めるために、火を入れないホタテを選びました。甘みのある貝に、サラダの酸と青さを重ねて、乾杯からの数分間を軽く始めます。

II シャトーヌフ・デュ・パプ ブラン 2023 × 大王イワナのポワレ

シャトーヌフ・デュ・パプの白は、生産量の少ない、厚みのある白です。一杯目より一段重くなる分、皿にも焼き目の香ばしさを足しました。皮目をしっかり焼いた大王イワナの脂が、白の厚みと同じ重さで並ぶように。

III ケランヌ「レ・ドゥ・ザルブル」2022 × 鶏肉のソテー 焼き茄子のピューレ

ここで赤に移ります。いきなり牛には行かず、鶏で一度つなぎました。焼き茄子の燻したような香りが、南ローヌの赤の温かさとよく重なります。ケランヌは、シャトーヌフ・デュ・パプの少し北にある村のワインです。

IV シャトーヌフ・デュ・パプ ルージュ 2022 × 美崎牛のステーキ

ドメーヌの看板である赤には、石垣島の美崎牛をステーキで。肉そのものの力で受け止める一皿です。ソースで味を足しすぎず、ワインのほうに語らせることを意識しました。

V スクレ・ド・ピニャン 2022(マグナム) × 美崎牛のラグーパスタ

最後の一本は、同じ美崎牛を今度は煮込みにして、パスタで。ステーキの直後に同じ牛を違う火の入れ方で出すことで、IVとVのワインの違いが、皿の違いと一緒に伝わるようにしました。

Dessert 王のティラミス

締めは、Na Team Labの王のティラミスです。5本を飲み終えたあとの、静かな時間のために。

マグナムで開けた「スクレ・ド・ピニャン」

この夜のいちばんの出来事は、5本目でした。「スクレ・ド・ピニャン(Secrets de Pignan)」は、樹齢100年を超える古木(ヴィーニュ・サンテネール)のぶどうから造られる、ドメーヌの特別なキュヴェです。今回はそれを、ふだんは販売されていないマグナムボトル(1.5L、通常のボトル2本分)で特別に用意していただきました。

マグナムは、同じワインでも中のワインに触れる空気の割合が小さく、ゆっくり熟成すると言われます。そして何より、8人の卓に1本のマグナムがあると、全員が同じボトルから注がれた一杯を同時に飲むことになる。造り手を囲む会には、ちょうどいい大きさでした。1本で何杯取れるかはグラスワイン1杯の量の記事を参考にしてください。

当日は、お客様から「料理とワインのペアリングが完璧だった」と直接お声をいただきました。コースが進むにつれてテーブルの会話が増え、最後のマグナムが注がれるころには、8人全員が同じ一本の話をしていました。

ヴェロニクさんからも、「特別なディナーだった」と満足のお言葉をいただきました。造り手本人に、自分のワインのための料理として受け取ってもらえたことが、料理人としていちばんの手応えです。

造り手が同じ卓にいるということ

メーカーズディナーの価値は、ワインそのものだけではありません。グラスを手にしたまま、畑のこと、ヴィンテージのこと、家族で続けてきたドメーヌのことを、造った本人に聞けること。8席という小ささは、そのためにあります。大きな会場では、造り手の言葉はマイク越しの説明になってしまいますが、一卓なら会話になります。

料理人にとっても、ふだんとは逆の夜です。自分の皿がワインの説明役になるので、造り手が目の前にいる緊張感があります。そのぶん、皿とグラスが噛み合ったときに、テーブルの空気が変わるのがはっきりわかります。

開催概要

項目内容
開催日2026年10月8日(木)
会場Na Team Lab(東京・恵比寿)
ゲストヴェロニク・ボネ(ラ・バスティード・サン・ドミニク)
人数8名
会費22,000円
ワイン5種(うち1本はマグナム)
料理5皿+デザート

次回のメーカーズディナーと、貸切での開催

Na Team Labでは、国内外の造り手を迎えるメーカーズディナーや、テーマを決めたワイン会を開いています。次回の日程は、決まり次第ワイン会のページと公式LINEでお知らせします。

また、会社の会食やご友人同士の集まりなど、貸切でのご相談も承っています。造り手のご予定が合えば、貸切の会に生産者をお招きする形もご相談いただけます。

セパージュ株式会社とは、2026年4月にもスペイン・ラ・マンチャのボデガス・ヴェルムのメーカーズディナーを開いています。

まとめ

ラ・バスティード・サン・ドミニクのメーカーズディナーは、南ローヌの家族のドメーヌの5本を、8人の卓で、造り手と一緒に味わう夜になりました。白から赤へ、若いものから古木のマグナムへ。ワインの順番から料理を組むと、コース全体がひとつの物語として流れます。来日してくださったヴェロニク・ボネさん、ボトルを手配してくださった輸入元のセパージュの皆さま、そしてご参加いただいた8名のゲストの皆さまに、心から感謝しています。

Na Team Labのペアリングはどんなスタイルですか?

料理にワインを合わせるのではなく、ワイン1本1本に料理を合わせるスタイルです。メニューの段階でワインに合わせたうえで、当日に現場でテイスティングし、塩味のバランス、バターの利かせ方、余韻の伸ばし方、果実味などを微調整してコースを仕上げています。

メーカーズディナーとは何ですか?

ワインの造り手(生産者)を招き、その銘柄を主役にして料理人がコースを組む食事会です。造り手から直接ワインの背景を聞きながら食事ができます。詳しくは「メーカーズディナーという設計」の記事で解説しています。

ラ・バスティード・サン・ドミニクはどんな造り手ですか?

南ローヌのクルテゾンにある家族経営のドメーヌです。1976年にボネ夫妻が創設し、現在は兄のエリック・ボネさんと妹のヴェロニク・ボネさんが率いています。シャトーヌフ・デュ・パプやケランヌなど、南ローヌの5つのアペラシオンでワインを造っています。

今回の会費と人数はどのくらいでしたか?

8名限定、会費22,000円で開催しました。5種のワインに合わせた5皿とデザートのコースです。

次回のメーカーズディナーに参加するにはどうすればいいですか?

日程が決まり次第、Na Team Labのワイン会のページと公式LINEでお知らせします。少人数のため、早めに満席になることがあります。

貸切の会に生産者を招くことはできますか?

造り手のご予定が合えば承っております。通常の貸切に、生産者の同席とその銘柄を組み合わせる形です。日程の調整にお時間をいただくため、早めにご相談ください。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

私たちの理念・会社情報を見る →
掲載実績・参加者の声を見る →


造り手の背景まで味わう夜へ。

Na Team Labでは、国内外の生産者を迎え、ワインや日本酒を主役にした少人数の食事会を企画しています。

TOP

Na Team Lab|東京・恵比寿

Na Team Labをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

0