披露宴をしない方向で考え始めると、最初に出てくるのは料金の話ではありません。「それで失礼にならないだろうか」という問いです。

親に相談すれば、しないのかと聞かれる。友人に話せば、呼ばれる側としては気楽でいいと言われる。どちらも本音だろうと感じながら、決めきれないまま日が過ぎていく。この記事を開いてくださった方の多くは、そのあたりにいらっしゃるのではないでしょうか。

私は恵比寿で一日ひと組・八席のレストランを営みながら、出張料理として年間200件を超える食卓に伺ってきました。結婚にまつわる席では、両家のご顔合わせのご相談をいただくことがあります。そこで見えてきたのは、少人数の会がうまくいくかどうかは、人数ではなく組み立て方で決まるということでした。

この記事では、披露宴なしの結婚式を三つの型に分けて整理します。当日の流れ、費用の目安、ゲストへの伝え方、そして食事会そのものの設計まで、順にお話しします。

SUMMARY

結論:披露宴なしの結婚式は、挙式のみ、または挙式のあとに家族と親しい人だけの食事会を開く形で組みます。 費用は挙式のみで10万円ほどから、食事会まで含めても80万円ほどまでが、一般的な目安とされています。 失礼にあたるかどうかを分けるのは、規模ではなく設計です。食事会を披露宴の縮小版として組むと、省いたものばかりが目につきます。 席次と乾杯と両家のご挨拶だけを残し、あとは会食として組み立てる。そうすると、ゲストは「省略された披露宴」ではなく「招かれた食卓」として受け取ります。

あわせて、家族だけの結婚式の費用とフォトウェディングのあとの食事会もご覧ください。

結論 披露宴なしの結婚式は「挙式+食事会」で組みます

披露宴なしの結婚式は、大きく三つの型に分かれます。挙式だけを行う形。挙式のあとに家族と親しい方だけの食事会を開く形。そして挙式も行わず、食事会だけを開く形です。

このうち多く選ばれているのは、二つ目の「挙式のみ+食事会」です。式としての区切りを残しながら、披露宴という進行の枠からは降りられるからです。

そして、この形が失礼にあたるかどうかを分けているのは、規模ではありません。設計です。食事会を披露宴の縮小版として組むと、省いたものばかりが目につきます。余興がない。スピーチがない。お色直しがない。ないものを数える会になってしまいます。

そうではなく、席次と乾杯と両家のご挨拶だけを残して、あとは会食として組み立てる。そうすると、ゲストの受け取り方が変わります。省略された披露宴ではなく、招かれた食卓として届きます。

披露宴をしない理由は、だいたい四つに分かれます

少人数で食事を囲める会食会場の一卓
挙式後に少人数で食事を囲む会場の形を考えます。

なぜ披露宴をしないのか。ご相談のなかで伺う理由は、おおむね四つに整理できます。

費用を、別のところに置きたい

もっともよく挙がる理由です。披露宴には、会場費・装花・演出・引出物・司会と、それぞれに費用がかかります。その総額を見たときに、住まいや新生活のほうへ回したい、あるいは同じ金額なら料理そのものに寄せたいと考える。

どちらも、削るという発想ではありません。置き場所を変えるという発想です。

呼びたい人が、そもそも少ない

次に多いのが、人数の理由です。呼びたい方を数えてみたら、両家のご家族と本当に近い友人だけで十数名だった。その人数に対して大広間と司会と進行表を用意すると、会場のほうが大きくなりすぎます。

人数が少ないことは、縮小ではありません。招く相手がはっきりしているということです。

二人とも、注目される時間が得意ではない

性格の理由も、決して少なくありません。高砂に座って、何時間も視線を受け続ける。その時間を想像しただけで気が重くなる、という方がいらっしゃいます。

このとき大切なのは、二人が主役でなくなる形を選ぶことではありません。主役のまま卓に混ざれる形を選ぶことです。

時期や事情が、大きな会に向かない

再婚のとき、妊娠中のとき、ご家族のご都合があるとき。事情はさまざまですが、大きな会の準備期間そのものが負担になる場合があります。周囲に細かく話さずに済む形を選ぶこと自体が、ひとつの選択です。

当日の流れは、三つの型で変わります

三つの型を、当日の動きで比べます。所要時間と移動、そして衣装は、選ぶ型によって変わります。

型所要時間の目安移動衣装
挙式のみ30分〜1時間なし挙式の衣装一着で完結
挙式+食事会3〜4時間挙式会場から食事会場への移動が入る挙式の衣装のまま移るか、軽やかな装いに替える
食事会のみ2〜3時間なしワンピースからドレスまで幅がある

挙式のみは、もっとも身軽な形です。ただし、ゲストをお招きした場合、式が終わったあとは解散という流れになります。遠方からお越しいただく方がいるなら、そのあとに何かしらの席を設けるほうが自然です。

挙式+食事会で、実務上いちばん効いてくるのは移動です。挙式会場と食事会場が離れていると、その移動時間のあいだに会の空気が一度切れます。ご年配の方がいらっしゃる場合は、そこが最も負担のかかる場面になります。

食事会のみは、移動も進行の切れ目もありません。そのぶん、会の輪郭をどこでつけるかを、自分たちで決める必要があります。

衣装については、挙式の衣装のまま食事会に移る形が最も身軽です。お色直しをしないという選択も、この規模ではよく取られます。会場に着替えの場所があるかどうかだけ、先に確かめておくと安心です。

費用は、どこまでを「式」と呼ぶかで決まります

費用の話に入ります。ここからお伝えする金額は、一般的な目安とされている数字です。私たちの料金ではありませんので、区別してお読みください。

型総額の目安費用の中心になるもの
挙式のみ10〜30万円挙式料、衣装、ヘアメイク、写真
挙式+食事会30〜80万円上記に、食事会の飲食費が加わる
食事会のみ10〜40万円飲食費と会場費が中心

幅が広いのは、会場の格と人数で大きく動くからです。挙式ひとつとっても、神社で行うか、チャペルで行うか、人前式にするかで金額は変わります。ですのでこの表は、金額の帯がどの順に動くかを見るためのものとお考えください。

そのうえで、披露宴をしない場合に見落とされやすい費用を、二つだけ挙げておきます。

ひとつは、写真です。披露宴がないぶん、当日の記録は挙式と食事会にしか残りません。別撮りを含めて、どこまで残すかを先に決めておくほうが、あとで悔いが残りにくくなります。

もうひとつは、ゲストの交通費と宿泊です。人数が少ない会ほど、遠方からお越しいただく比率が上がります。招待状を出す前に、この分を誰が持つかを決めておくと、ご祝儀の話とも噛み合います。

ご祝儀にするか、会費にするか

披露宴をしない場合、ご祝儀をいただくのか、会費制にするのかで迷われる方が多くいらっしゃいます。

一般に、ご祝儀はご友人で3万円、ご親族や上司の方で5〜10万円ほどが目安とされています。一方、会費制の会は1万円から2万円程度が多いとされています。どちらが正しいということはありません。

判断の軸は、ゲストの構成です。ご親族と職場の方が中心なら、ご祝儀制のほうが相手の作法と噛み合います。友人が中心の会なら、会費制のほうがお互いに気が楽です。

大切なのは、どちらかに決めて、招待状の段階で明記することです。会の当日まで分からないという状態が、ゲストにとってはいちばん困ります。

ゲストへの伝え方 「披露宴は行いません」をどう書くか

ここが、多くの方がつまずくところです。

結論から申し上げると、披露宴を行わない旨は、書かないほうが伝わります。正確には、「行いません」という否定形ではなく、「こういう会を開きます」という肯定形で書く、ということです。

「披露宴は行いません」と書くと、読んだ方の頭のなかに、まず披露宴の像が立ち上がります。そのうえで、それが消されます。残るのは、ないものの記憶です。

一方、「ささやかな食事の席を設けました」と書けば、立ち上がる像は最初から食事会です。同じ事実を伝えていても、受け取られ方が変わります。

招待状の文面の考え方

文例として、ひとつの形をお示しします。そのまま使うためではなく、どの要素が必要かを見ていただくためのものです。

このたび 私たちは ◯月◯日に挙式の運びとなりました

式のあと 日頃お世話になった皆さまをお招きして

ささやかな食事の席を設けたいと存じます

ご多用のところ恐縮ですが ご出席いただけましたら幸いです

この短い文面のなかに、必要な要素が四つ入っています。挙式を行うこと。そのあとに食事の席があること。規模が小さいこと。そして、来ていただきたいという意思です。

これに加えて、実務として必ず添えておきたいのが次の三点です。

  • 服装の目安(「平服でお越しください」と書き添えると、ゲストが迷いません)
  • ご祝儀制か会費制か(会費制なら金額まで明記します)
  • 食事会の所要時間と、終了予定の時刻

親御さまへの伝え方は、順番が違います

ゲストへの案内とは別に、親御さまへの説明には、別の順番が要ります。

親御さまが気にされているのは、多くの場合、規模ではありません。誰にどう挨拶するのか、という点です。ご親族や、これまでお世話になった方々に対して、けじめのつく形になっているかどうかを見ていらっしゃいます。

ですので、省く理由から話すと噛み合いません。残す理由から話すほうが伝わります。両家のご挨拶は行うこと。席次は決めること。乾杯の発声はどなたにお願いするか。この三つが決まっていれば、けじめの部分は成立します。

そのうえで、余興と司会とお色直しは行わない、と添える。この順番であれば、話が形式論になりにくくなります。

食事会の会場は、三つの選び方があります

会場の選び方を整理します。披露宴をしない場合、選択肢はおおむね三つです。

会場の型向いている点先に確かめること
式場に併設されたレストランや個室移動がなく、進行に慣れている献立の枠が決まっていることが多い
レストランの貸切料理が会の中心になる貸切の最低人数と、上限の人数
ご自宅や邸宅に、シェフを呼ぶ移動も、他のお客様もいない厨房の設備と、当日の動線

式場に併設された会場は、いちばん手間の少ない形です。挙式から移動せずに済み、段取りも会場の側が把握しています。そのかわり、料理の選択肢は、用意されたプランの範囲に収まることが多くあります。

レストランの貸切は、料理を会の中心に置きたい場合に向きます。人数の上限があるぶん、招く相手が絞られている会と相性の良い形です。

三つ目が、ご自宅や邸宅にシェフを呼ぶ形です。移動もなく、他のお客様の目もありません。確かめておくのは、厨房の設備と当日の動線です。器もグラスもカトラリーも調理道具も持参しますので、住宅の設備でも成立する範囲があります。ただし、水場と搬入の経路だけは、持参では補えません。

食事会を「披露宴の縮小版」にしないこと

この記事でいちばんお伝えしたいのが、この章です。

食事会が寂しい会になってしまう原因は、人数の少なさではありません。披露宴の進行表を、そのまま縮めて持ってくることです。

披露宴の進行は、80名の視線を一方向に集めるために設計されています。司会が場を仕切り、演出が間をつなぎ、お色直しが時間を区切る。それは、卓と卓のあいだが遠い会でこそ機能する仕組みです。

同じ設計を12名の卓に持ち込むと、間が余ります。司会が「続きまして」と言うたびに、会話が止まります。止まった会話は、人数が少ないほど再開しにくくなります。

残すのは、三つだけで足ります

では、何を残すか。私たちは、次の三つで十分だと考えています。

  • 席次 どなたをどこにお座りいただくか。これは規模に関係なく、会の敬意そのものです
  • 乾杯 会の始まりに、はっきりと区切りをつけるための一点です
  • 両家のご挨拶 けじめの部分を担います。長さは要りません

この三つを残せば、式としての輪郭は立ちます。あとは会食です。司会を置かず、演出を入れず、料理の進行そのものを会の時間軸にする。コースが一皿ずつ運ばれること自体が、会の区切りになります。

主催する側は、食べられないものです

隣接する場での経験から、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。

私たちは、30名規模のローンチパーティーのように、主催者がいらっしゃる会の料理を担当することがあります。そうした会で必ずと言っていいほど起きるのが、主催者だけが食べられないという事態です。挨拶をし、席を回り、料理の残りを気にしているうちに、皿が下がっていきます。結婚の食事会でも、同じ構造が起きます。おそらく、より強く起きます。

このとき、主催される方が本当に望んでいるのは、料理を口に運ぶことそのものではないと感じています。招いた方と話すことです。ですから私たちは、料理とドリンクが途切れないようにするところまで、こちらでお預かりする形を取っています。補充や配膳に気を取られずに済む状態をつくる。それが、少人数の会でいちばん効く支え方だと考えています。

挙式の後、家に帰って食卓に着く

披露宴をしないという選択の先に、静かな形がひとつあります。挙式を終えて、そのまま家に帰り、家族と食卓に着くという形です。

移動も、受付も、ほかのお客様の視線もありません。その日の主役が、自分の家の椅子に座ることになります。

Na Team Lab は、恵比寿で一日ひと組・八席のプライベートレストランを営みながら、出張料理としてご自宅やレジデンスに伺っています。お引き受けできる形を、正直にお伝えしておきます。

  • 6〜8名さま 恵比寿のレストランを完全貸切。お一人20,000円〜(コース+ドリンク・税サ込)、所要は約3時間
  • 6〜16名さま ご自宅やパーティールームへの出張料理。着席のコースでお一人15,000円〜、ワインペアリング付でお一人22,000円(税・サービス料・出張費込)
  • 17名さま〜 ビュッフェ形式で、お一人8,000円〜
  • 20〜30名さま 会場の手配も承ります(料金は場所代に応じて個別のご相談)

最低料金は、1回のご依頼につき90,000円からです。持ち込み料はいただかず、本数の制限もありません。ワイングラスは約100脚ございます。対応エリアは基本的に東京都内で、都外や遠方は別途ご相談ください。ご相談は、2週間前までを目安にお願いしています。

正直に申し上げておくと、Na Team Lab に挙式や披露宴そのものを担当した実績はまだありません。ご相談をいただくことはありますが、当日の様子を語れる立場にはない、ということです。

そのかわり、両家のご顔合わせや記念日、レセプションといった隣接する席では、会の主旨を伺い、そこから逆算してコースの起伏を設計することを重ねてきました。軽いところから重いところへ、変化と余韻を置きながら進める。この組み立て方自体は、会の名前が変わっても同じです。

ご相談は、公式LINEにて承っております。人数と日時、そして会場の候補だけでも構いません。披露宴をするかどうかを決めかねている段階でも、形のご相談からご一緒できます。

まとめ

  • 披露宴なしの結婚式は、挙式のみ、挙式+食事会、食事会のみの三つの型に分かれ、多く選ばれているのは挙式+食事会です
  • 費用は一般に、挙式のみで10〜30万円、挙式+食事会で30〜80万円、食事会のみで10〜40万円が目安とされています
  • 当日の負担を左右するのは、挙式会場から食事会場への移動です。ご年配の方がいらっしゃる場合はとくに影響します
  • 招待状は「披露宴は行いません」ではなく「食事の席を設けました」と、肯定形で書くほうが伝わります
  • 親御さまには、省く理由ではなく、残す理由から話すと噛み合います
  • 食事会は、席次と乾杯と両家のご挨拶の三つを残せば、式としての輪郭が立ちます
  • 司会と演出を入れず、料理の進行そのものを会の時間軸にすると、少人数でも間が空きません

よくある質問

披露宴をしない場合、ご祝儀や会費はどう考えればよいですか?

ご祝儀制のまま食事会を開く形と、会費制にする形の両方があります。一般にご祝儀はご友人で3万円、ご親族や上司の方で5〜10万円が目安とされ、会費制の会は1〜2万円程度が多いとされています。招待状の段階でどちらかを明記しておくと、ゲストが迷いません。

親から披露宴をするよう言われたときは、どうすればよいですか?

形式の話ではなく、目的の話として伝えると噛み合いやすくなります。親御さまが気にされているのは、多くの場合「誰にどう挨拶するか」です。両家のご挨拶と席次を残した食事会であれば、その目的は果たせます。省く理由ではなく、残す理由から話してみてください。

食事会だけでも、ウェディングドレスは着られますか?

着られます。挙式の衣装のまま食事会に移る形が最も身軽で、お色直しをしない選択もよく取られます。会場がレストランやご自宅の場合は、動きやすい丈や軽やかなドレスが選ばれることが多く、着替えの場所があるかどうかを先に確かめておくと安心です。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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恵比寿の八席を貸し切り、持ち込みの一本や会の目的に合わせてコースを組み立てます。

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