「出張料理人」と検索されて、ここにたどり着かれたのではないでしょうか。
検索結果には、似た言葉がいくつも並びます。出張料理人、出張シェフ、出張料理サービス、プライベートシェフ。どれも家に来て料理を作ってくれる人のことのようですが、何がどう違うのかは、どこにも書かれていません。
私は出張料理人として、年間200件を超える食卓に伺ってきました。その現場では、まったく同じ内容のご依頼が、お客様によって別々の名前で呼ばれます。
この記事では、呼び名の違い、頼めることと頼めないこと、料金の相場、東京で依頼するときの二つのルート、そして選ぶときに確認したい五点を、順に整理します。依頼を決める前の判断材料として、置いておきます。
結論:出張料理人と出張シェフは、同じ仕事を指す言葉です。 依頼者のご自宅や会場に出向いて調理をする料理人のことで、日本にはこの二つを区別する業界の定義がありません。「料理人」は和食や家庭料理、「シェフ」は洋食のコース料理という文脈で使われやすい、という語感の傾向があるだけです。 料金は形式で分かれます。一般的な目安は、配達型でお一人1,500円から、ビュッフェ型で5,000円から、着席コース型で15,000円からです。 この記事では、呼び名・頼めること・相場・東京での依頼ルート・確認したい五点を整理します。
料金に含まれる範囲は出張シェフの全込み一人当たり制で、実際の一日は到着から退出までの流れで紹介しています。
出張料理人と出張シェフは、呼び方が違うだけの同じ仕事です
先に結論をお伝えします。出張料理人と出張シェフの間に、仕事の違いはありません。どちらも、依頼者のご自宅や会場に出向いて調理をする料理人を指します。
違いが見つからないのには、理由があります。日本には、この職能を定義する業界団体が存在しないからです。調理師免許は料理人であることを示しますが、「出張料理人」を名乗ってよいかどうかを決める資格ではありません。名乗り方は、それぞれの事業者に委ねられたままになっています。
「料理人」と「シェフ」に分かれる理由
では、なぜ二つの言い方が生まれたのか。分けているのは仕事の中身ではなく、言葉の出自です。
「シェフ」はフランス語の chef de cuisine、厨房の長を指す言葉から来ています。そのため洋食のコース料理の文脈で使われやすい。いっぽう「料理人」は日本語で、和食や家庭料理を作る人を思い浮かべる方が多くいらっしゃいます。
この語感の差が、そのまま検索の言葉に出ています。同じサービスでも、和の献立を思い描いている方は「出張料理人」と打ち、コース料理を思い描いている方は「出張シェフ」と打つ。違いはそこまでです。
ですから、言葉から入るのはおすすめしません。どちらで検索しても、出てくるのは同じ事業者です。決めるべきは呼び名ではなく、その夜に何を、誰と食べたいかのほうにあります。
五つの呼び名を、一枚に並べます
検索でよく見かける五つの言葉を、使われ方で整理します。
| 呼び名 | 使われ方の傾向 | 関わり方 |
|---|---|---|
| 出張料理人 | 和食・家庭料理の文脈で使われやすい | 一回ごと |
| 出張シェフ | 洋食・コース料理の文脈で使われやすい | 一回ごと |
| プライベートシェフ | 個人のために料理をする人の総称 | 単発と継続の両方 |
| 専属シェフ | 特定のご家庭・企業と続けて関わる形 | 継続 |
| 出張料理サービス | 事業者がサービス名として使う呼び方 | 形式によって幅がある |
五つのうち、注意が要るのは最後の「出張料理サービス」です。この言葉には、料理を届けるだけの形から、現地で一皿ずつ仕上げる形まで入っています。サービス名だけでは中身が分かりません。この表記を見かけたら、料理がどこで仕上がるのかを一段掘って確かめてください。
出張料理人に頼めること、頼めないこと

呼び名の次に知りたいのは、実際にどこまでやってくれるのか、という点だと思います。私たちの運用を例に、両側を並べます。
| 頼めること | 頼めないこと・お願いすること |
|---|---|
| ご自宅・別荘・パーティールーム等への出張 | 6名さま未満の着席コース |
| 食材・器・グラス・カトラリー・調理道具の持参 | 当日その場で食器を増やすこと |
| 当日その場での火入れと仕上げ | 宗教上の食事対応(ハラール等) |
| アレルギー・苦手な食材への配慮 | 食事のために設えたレストランと同じ空間 |
| 持ち込みのワインに合わせたコース設計 | キッチン周り以外の生活空間への立ち入り |
| シンク・コンロ・排水口までの片付け | 冷蔵庫の空き場所(これだけはお願いします) |
いくつか、補足させてください。
持参するものの範囲が、事業者によっていちばん違います。私たちは食材から器、グラス、カトラリー、調理道具まで一式を携えて伺います。現地でお借りするのはキッチン設備だけで、足りないものは持ち込みます。IHが1口あれば、コースは成立します。
ジャンルは、フレンチとイタリアンを基軸にしています。ジャンルを先に決めたわけではありません。ワインとの対話が成立する形を探した結果、この二つに行き着きました。和の献立をご希望の場合は、出汁や昆布、味噌を取り入れた和モダンという形でお応えしています。完全な和食をお求めのときは、Na Team の和食スタッフに引き継ぐ流れです。これは対応の幅であって、格の差ではありません。
実際に多いのは、ジャンルの指定ではなくワインの指定です。「このワインに合わせた料理を作ってほしい」というご依頼が、頻繁にあります。そのときは、テイスティングコメントから香りと味わいを読み取り、その要素を料理のなかに取り込みます。ブルゴーニュのピノ・ノワールに合わせてほしい、というご依頼には、トマトの酸味を生かしたパスタでお応えしました。
頼めない側についても、正直に書きます。食器類は、当日その場では増やせません。料理は現地で仕立てるので人数の変動に融通が利きますが、器とグラスとカトラリーは持参品です。当日1〜2名増えることは日常的にありますので、午前中までにご連絡いただければ、食器も含めて対応できることがほとんどです。
そして、空間の完成度については、レストランに分があります。店は食事をするためだけに設えた場所で、設備も照明も、その一点のために組んでいます。出張ではその状態に近づけて伺いますが、同じにはなりません。空間ごと日常から離れたい夜は、店にいらしていただくほうが良い、とお伝えしています。
料金の相場は、料理の「形式」で分かれます
出張料理人はいくらか、と調べると、金額の幅の広さに戸惑われるかもしれません。ただ、これは相場が定まっていないという話ではありません。ひとつの言葉のなかに、性格の違う形式が同居しているだけです。
一般的な目安として、次の三つに分かれます。
| 形式 | お一人あたりの目安 | 料理の状態 |
|---|---|---|
| 配達型(オードブル・デリバリー) | 1,500〜3,000円 | 仕上げた料理が届く |
| 会場仕上げ型(ビュッフェ) | 5,000〜10,000円 | 現地で仕上げ・盛り付け |
| 着席コース型 | 15,000円〜 | 一皿ずつその場で提供 |
金額の差は、料理がどこで仕上がるかの差です。届いた時点で完成している料理と、目の前で火を入れて仕上げる料理とでは、必要な人手も時間も、そもそも設計思想も違います。単価だけを並べて比べるものではない、と考えています。
この三つに加えて、回数で数える四つ目の形式があります。作り置き型と呼ばれるもので、日常の食卓を軽くするためのサービスです。私たちの Home Cooking は、1回15,000円からという体系です。内訳は、人件費10,000円に材料代5,000円または10,000円、それに交通費の実費を加えたものになります。1回で5〜10品をお作りし、真空パックやお弁当箱でお届けします。
Na Team Lab の料金
自社の価格も、あわせて置いておきます。上の一般的な目安とは別のものとして、ご覧ください。
| プラン | お一人あたり | 対応人数 |
|---|---|---|
| コースのみ | 15,000円〜 | 6〜16名さま |
| コース+ワインペアリング | 22,000円 | 6〜16名さま |
| ビュッフェ形式 | 8,000円〜 | 17名さま〜 |
最低料金は、1回のご依頼につき90,000円からです。お一人15,000円に6名さまを掛けると、この線に届きます。表示している金額には、税・サービス料・出張費がすべて含まれています。食材費も、機材費も、後片付けも同じです。別途になるのは、遠方への交通費と宿泊費、それに会場の手配までご依頼いただいた場合の実費だけです。
「出張料理なのに、店にお願いするのと金額があまり変わらない」と驚かれることがあります。それは、私たちが目指しているところでもあります。
東京で出張料理人に依頼する、二つのルート
依頼のしかたは、大きく二つに分かれます。マッチングサイトなどの仲介を介す形と、事業者へ直接連絡する形です。
どちらが優れているという話ではありません。確認しておくべき項目が変わる、という話として読んでください。
| 確認したい点 | 仲介を介す場合 | 直接依頼する場合 |
|---|---|---|
| 事前打合せ | 窓口を経由するため、細部が伝わりきらないことがある | 作る本人と直接詰められる |
| 誰が来るか | 仕組み上、当日伺う料理人が直前まで決まらないことがある | 伺う料理人が最初から決まっている |
| 料金の内訳 | 手数料・出張費・材料費が別建てになりやすい | お一人いくら、の全込みで提示できる |
| 器・道具の持参 | どこまで持参するかは案件ごとに幅がある | 持参と片付けの範囲を先に確定できる |
直接ご相談いただく場合、私たちは事前に四つのことを伺います。キッチンの設備、苦手な食材とアレルギー、当日のリクエスト、そしてお客様側でワインをご用意される場合はそのリストです。ワインが先にあれば、そのワインに合わせてコースを組み立て直します。「出てきた料理に手持ちのワインが合わなかった」という食い違いは、この一手で構造的に防げます。
仲介を介す場合でも、この四点を先に確認しておけば、同じところまで詰められます。大切なのはルートそのものではなく、当日までに何が決まっているかです。
選ぶときに確認したい、五つのこと
ここからは、事業者を選ぶときの物差しです。どこに頼む場合でも使える形にしました。
一つ目は、実店舗を構えているかどうかです。店を持っているなら、飲食店営業許可を取得している蓋然性が高くなります。それに、一定の水準を保てていなければ、費用のかかる店を構え続けることはできません。店舗があるという事実そのものが、事業の実態と継続的な品質の証明になります。「資格証を見せてください」とは言いにくいものですが、「お店はお持ちですか」なら聞けます。
二つ目は、事前の仕込みをどこの厨房で行っているかです。出張料理には、たいてい事前の仕込みがあります。その料理がどこで作られたのか。営業許可を持つ厨房で仕込んだものと、そうでない場所で仕込んだものとでは、意味が違います。許可の要否は保健所によって運用が異なりますが、依頼する側から見た軸は、どこで作られたかの一点に絞れます。
三つ目は、どれだけの現場を経験しているかです。出張料理は、キッチンが毎回変わります。IHの口数も、シンクの広さも、搬入の経路も、行ってみるまで分かりません。この不確実さを引き受けられるかどうかは、通ってきた現場の数に素直に表れます。
四つ目は、献立をどこまで動かせるかです。アレルギー、苦手な食材、持ち込みのワイン。ここに応じられるかどうかで、当日の満足度は大きく変わります。とくにアレルギーは、その食材を使わないだけでは足りません。重いアレルギーをお持ちの方がいらっしゃる場合、混入を避けるために調理器具や調理の順序まで設計を変えます。早めにお知らせいただきたいのは気遣いのためではなく、その方の安全のためです。
五つ目は、片付けとゴミがどこまで含まれるかです。ここは事業者によっていちばん幅が出ます。盛り付けまでで帰るのか、洗い物まで含むのか、排水口まで見るのか。ゴミを置いていくのか、持ち帰るのか。見積もりの金額よりも先に、この範囲を確かめてください。当日の負担が、まるごと変わります。
私たちの答え
五つとも、自分たちに当てはめてお答えします。
恵比寿に一日ひと組・八席のレストランを構えており、飲食店営業許可と菓子製造業許可を取得しています。仕込みを行うのは、その店の厨房です。食品衛生責任者の資格は、私もスタッフも保有しています。現場では手洗いを徹底し、食品に直接使えるアルコール製剤を持参して、器具と作業面を消毒しながら進めます。
出張料理人としての経験は、年間200件を超えます。招かれた場所は、ご自宅、別荘、不動産会社のショールーム、会員制のバー、タワーレジデンスのパーティールーム。キッチンは、IHが1口あれば伺えます。
献立は、フレンチとイタリアンを基軸に、その日に合わせて組み直します。アレルギーと苦手な食材は事前に伺い、持ち込みのワインがあればリストをいただいて、そのワインに料理を寄せます。
片付けは、シンク・コンロ・排水口まで済ませて引き上げます。意識しているのは「来た時よりも美しく」ということです。お客様の手は、ひと指も汚れません。当日ご準備いただくのは、冷蔵庫の空き場所だけです。
料金は、コースがお一人15,000円から、ワインペアリング付きはお一人22,000円です。6〜16名さまで、1回のご依頼につき90,000円からお伺いしています。税・サービス料・出張費は、すべて含まれています。会が長引いても、延長料金はいただきません。
ご相談は、公式LINEにてご案内しています。人数と日取りだけお聞かせいただければ、その空間に合う形を一緒に組み立ててまいります。
まとめ
出張料理人について、要点を整理します。
- 出張料理人と出張シェフは、同じ仕事です。日本に両者を区別する業界の定義はなく、和食寄りか洋食寄りかという語感の傾向が違うだけです
- 料金の幅は、料理がどこで仕上がるかの差です。目安は配達型1,500円、ビュッフェ型5,000円、着席コース型15,000円から
- 持参と片付けの範囲は、事業者によっていちばん違います。見積もりを見る前に、ここを確かめてください
- 依頼ルートの優劣より、当日までに何が決まっているかが効きます。設備、アレルギー、リクエスト、ワインリストの四点です
- 選ぶ物差しは五つ。実店舗の有無、仕込みの厨房、現場の数、献立の柔軟性、片付けとゴミの範囲
呼び名を調べるところから始まった検索も、着地するのは同じ問いです。その夜を、誰と、どんなふうに過ごしたいか。そこさえ決まっていれば、出張料理人でも出張シェフでも、届く言葉は同じところに向かいます。
よくある質問
出張料理人は、一人分でも頼めますか?
着席のコース形式は、6名さまからお受けしています。お一人や少人数でしたら、作り置き型という別の形があります。人数を指定して5〜10品をまとめてお作りし、真空パックやお弁当箱でお届けする形で、1回15,000円からご用意しています。
材料は誰が買うのですか?
私たちの出張料理では、食材はすべてこちらで仕入れて持参します。料金にも含まれていますので、お客様に買い出しをお願いすることはありません。ただし、この扱いは事業者によって異なります。材料費が別建てかどうかは、見積もりの段階でご確認ください。
出張料理人にチップは必要ですか?
必要ではありません。表示している料金には、税・サービス料・出張費がすべて含まれています。ただ、お気持ちとしてお渡しくださることがあります。その場合は、満足いただけた証としてありがたく頂戴しています。
呼び方よりも、どんな時間をつくるか。
ご自宅や会場へ伺い、仕込み、調理、サービス、片付けまで一つのチームで担当します。
