結論:ボジョレー・ヴィラージュは、ボジョレー地区の北側にある、決められた38の村のぶどうだけで造るワインです。 ヴィラージュはフランス語で「村々」を意味します。 普通のボジョレーが地区全体のぶどうを使えるのに対し、ヴィラージュは産地が限られます。 花崗岩や片岩の多い丘の斜面で育つため、果実味が濃く、骨格がしっかりします。 新酒にも「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー」があります。
あわせて、ボジョレー・ヌーヴォーは、その年の答え合わせとクリュ・ボジョレーは、村の名前で選ぶボジョレーもご覧ください。

新酒の季節、売り場に同じような顔のボトルが並びます。片方には「Beaujolais」、もう片方には「Beaujolais-Villages」。値段は少し違う。けれど、何が違うのかは、ラベルを見ても書いてありません。
ボジョレー・ヴィラージュの「ヴィラージュ」は、味の説明ではなく、産地の範囲を示す言葉です。 フランス語で「村々」を意味し、この一語が足されると、ぶどうを採ってよい土地が狭くなります。
範囲が狭くなると、なぜ味が変わるのか。その理屈が分かると、売り場での選び方が決まります。この記事では、ヴィラージュの意味、ボジョレーの3段階の格付け、普通のボジョレーとの味の違い、そして「ヴィラージュ・ヌーヴォー」という表記の意味を順に整理します。
ヌーヴォーそのものの解禁日や飲み方はボジョレー・ヌーヴォーの記事にまとめていますので、ここでは格付けに絞ってお伝えします。
ヴィラージュの意味 「村々」という一語
ヴィラージュ(Villages)は、フランス語で「村々」です。単数の village が複数形になっているところに、意味があります。
ひとつの村ではありません。ボジョレー地区の中から選ばれた、複数の村の集まりを指しています。ボジョレーワイン委員会の公表では、この呼称を名乗れるのは38の村です。該当する村で収穫されたぶどうであれば、村の名前ではなく「ボジョレー・ヴィラージュ」としてまとめて名乗ります。
ここで、ワインのラベルの基本的な約束ごとが顔を出します。フランスのワインでは、ラベルに書かれた地名が指す範囲が狭くなるほど、格が上がります。
地区全体 → 選ばれた村々 → ひとつの村。範囲が絞られるにつれ、名乗るための条件も厳しくなります。収穫量の上限、ぶどうの熟度、栽培できる場所。すべてがその呼称ごとに定められています。
ヴィラージュは、この並びのちょうど真ん中にあたります。地区全体を名乗るボジョレーより狭く、ひとつの村を名乗るクリュよりは広い。だから「一段上がる」という言い方がしっくりきます。 ラベルの読み方そのものはワインラベルの読み方の記事で詳しくお伝えしています。
ボジョレーの3段階 範囲と土壌と、価格の目安
ボジョレーの呼称は、全体で12あります。それを3つの段にまとめると、全体像がつかめます。
| ボジョレー | ボジョレー・ヴィラージュ | クリュ・ボジョレー | |
|---|---|---|---|
| 名乗る範囲 | 地区全体(72の村) | 北側の38の村 | 特に優れた10の村のいずれか |
| ラベルの表記 | Beaujolais | Beaujolais-Villages | 村の名前(Morgon など) |
| 畑の面積 | 約3,930ha | 約3,390ha | 10の村の合計 |
| 地形 | 南側の平地と、なだらかな丘 | 標高190〜550mの丘の斜面 | 丘の中でも条件のよい斜面 |
| 土壌の傾向 | 粘土、石灰、砂、ピンク花崗岩など | 花崗岩、片岩、片麻岩(グナイス)など | 村ごとに大きく異なる |
| 味の傾向 | 軽やかで、果実味がまっすぐ | 果実味が濃く、骨格が出る | 骨格があり、熟成する |
| 新酒を名乗れるか | 名乗れる | 名乗れる | 名乗れない |
| 価格の目安 | いちばん手に取りやすい | ボジョレーより少し上 | 段が上がる |
※ 面積と村の数はボジョレーワイン委員会の公表値。年によって変動します。価格は市場の目安です。
この表のいちばん大事な行は、下から2番目です。新酒を名乗れるのは、ボジョレーとヴィラージュの2つだけです。この点は後ほど詳しくお伝えします。
数字を見ると、もうひとつ気づくことがあります。ヴィラージュの畑の面積は、地区全体を名乗るボジョレーとほとんど変わりません。ヴィラージュは「少量の特別なもの」ではなく、ボジョレーの柱のひとつです。 売り場で見つけにくいわけではなく、普通に並んでいます。
普通のボジョレーとの味の違い 南の土と、北の岩
では、範囲が狭くなると、なぜ味が変わるのでしょうか。答えは、土と地形にあります。
ボジョレー地区は、南北に長く伸びています。そして南と北で、土の性格が違います。
- 南側:平地とゆるやかな丘。粘土や砂、石灰を含んだ、比較的豊かな土。南部には「ピエール・ドレ(黄金の石)」と呼ばれる石灰質の一帯があります
- 北側:標高190〜550メートルの丘の斜面。花崗岩や片岩、片麻岩といった古い岩が崩れた、やせて水はけのよい土
ヴィラージュを名乗れる38の村は、北側に集まっています。 そして10のクリュを、外側から取り囲むように分布しています。つまりヴィラージュは、クリュと同じ丘の斜面を共有している呼称です。
やせた土で水はけがよい斜面では、ぶどうの木が楽をできません。根は水を探して深く伸び、実は数を増やさずに中身を詰めます。その結果、果実味が濃く、骨格のあるワインになります。
一方、豊かな土の平地では、木はよく育ち、実もよく実ります。できあがるのは、軽やかで果実味がまっすぐな、日常の一本です。これは劣っているという話ではありません。役割が違うだけです。
ひとつ、慎重に書いておきたいことがあります。「南は粘土石灰、北は花崗岩」という整理は、大づかみの目安です。 ボジョレーワイン委員会の説明を見ると、どちらの呼称の土壌にも複数の種類が並んでいます。南側にもピンク花崗岩があり、北側にも砂や堆積した土があります。土と味の関係は、線を引いて説明できるほど単純ではありません。
「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー」とは
新酒の売り場で、長い名前のボトルを見かけることがあります。「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー」。これは、二つの情報が重なった表記です。
- ボジョレー・ヴィラージュ … 北側の38の村のぶどうで造った、という産地の情報
- ヌーヴォー … その年のぶどうを、その年のうちに瓶詰めした新酒、という造りの情報
つまり「一段上の産地で造られた新酒」です。解禁日は普通のヌーヴォーと同じ、11月第3木曜日です。
量としても、脇役ではありません。ボジョレーワイン委員会によれば、売られている新酒の赤とロゼのうち、およそ4割がヴィラージュのヌーヴォーです。新酒の棚の、かなりの部分をこの呼称が占めています。
「ヌーヴォーでいちばん良いのはどれ?」への答え
よく検索される問いに、正面から答えておきます。
格付けの上で言えば、ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーが、新酒の中の上位です。 理由は単純で、それより上のクリュには、新酒が認められていないからです。
ボジョレーワイン委員会は、新酒を造れるのはボジョレーとボジョレー・ヴィラージュの2つの呼称だけだと明記しています。10のクリュのぶどうは、数週間で仕上げる新酒には回せません。時間をかけて育てる前提の畑として扱われています。
ですから、「ボジョレーの頂点を新酒で飲む」ことはできません。新酒の中での上位がヴィラージュで、ボジョレーの頂点であるクリュは、新酒とは別の棚にあります。 この構造を知っておくと、11月の売り場で迷いません。
もうひとつ、規定上の細かい点に触れておきます。新酒(ヌーヴォー/プリムール)を名乗れるのは、赤とロゼだけです。白の新酒は、呼称として認められていません。この点はボジョレーの白ワインの記事で詳しくお伝えしています。

選び方と価格帯 どこで一段上げるか
ヴィラージュを選ぶ場面は、だいたい次の三つです。
① 新酒の季節に、少し良いものを一本
普通のヌーヴォーに物足りなさを感じた年に、ヴィラージュのヌーヴォーへ移る。同じ年、同じ品種、同じ造り方で、産地だけが変わります。差が分かりやすい比べ方です。
② 新酒ではないボジョレーを試したい
ヴィラージュには、新酒でない通常のものもあります。こちらは春以降に出回り、果実味に骨格が加わります。「ボジョレーは新酒だけ」という思い込みを外す、最初の一本に向きます。
③ クリュに進む前の足がかり
10のクリュは村ごとに個性が強く、最初から選ぶのは難しいものです。ヴィラージュで北側の丘の味を覚えてから、クリュに進むと、違いの基準ができます。
価格については、目安としてお伝えします。ボジョレーより少し上、クリュよりは手に取りやすいという位置です。具体的な金額は、造り手、年、仕入れ先で動きますので、ここでは段の順序だけ覚えていただくのが確実です。
ラベルで見分けるときは、「Beaujolais」の後ろに「-Villages」が続いているかを見ます。村の名前が単独で大きく書かれていれば、それはクリュです。 クリュの選び方はクリュ・ボジョレーの記事に、10の村の一覧で整理しました。
合う料理と、出す温度
ヴィラージュは、普通のボジョレーより骨格があります。合わせる料理も、少し厚みのあるほうへ動きます。
- 豚の塊肉:ローストや煮込み。果実味が脂を受けとめます
- 鶏のロースト:皮の香ばしさに、濃くなった果実味が並びます
- パテ・ド・カンパーニュ:定番の組み合わせ。塩気と酸が釣り合います
- きのこ:新酒では軽すぎる相手ですが、ヴィラージュなら受けとめます
- すき焼き、牛肉のたたき:醤油の旨味と、明るい酸が響き合います
提供温度は、新酒より少し上げます。ボジョレーワイン委員会の目安では、ボジョレーとボジョレー・ヴィラージュの赤は12〜14℃。新酒は12℃前後、クリュは15〜17℃です。
格付けが上がるほど、出す温度も上がる。 ボジョレーはこの関係がきれいに並ぶ産地です。温度の考え方そのものはワインの適温の記事にまとめました。
三つの段を、同じ夜に並べる
ヴィラージュの意味は分かった。格付けの順番も頭に入った。それでも、売り場に立つと手が止まる。
そういうお話を、よくうかがいます。知識と体験の間には、まだ一歩あります。
その一歩を埋める方法は、ひとつです。並べて飲むことです。
新酒と熟成したクリュは、隣に並べると、同じ品種とは思えないほど違います。 そしてその間にヴィラージュを置くと、段差の意味がはじめて体で分かります。果実味がどこで濃くなるのか、骨格がどこから出てくるのか。三つの段を同じ夜に通ると、それが順番として記憶に残ります。
一杯ずつ別の日に飲んでいては、記憶の中で比べることになります。違いの輪郭は、そこでぼやけてしまいます。
ワインが先、料理が後
私は年間で約2,000種のワインを試飲し、その中から会ごとの一本を選んでいます。順番は、ワインが先、料理が後です。泡、白、ロゼ、赤、甘口というコースの流れを思い描いてワインを決め、それが確定してから皿を組みます。
ボジョレーの夜は、この組み方がよく働きます。同じガメイで段と年が違うのなら、グラスの順番そのものが説明になるからです。
恵比寿の八席で、ボジョレーの6種を並べる夜をご用意しています。乾杯はガメイの白い泡から。次にボジョレーで造られるシャルドネの白、ロゼの新酒、赤の新酒。そこから8年熟成(2018年)のクリュへ進み、最後は甘口のロゼで締めます。新酒は、解禁から4日後のものを2種お出しします。
同じ夜に、その年の新酒と8年前のクリュが並びます。 ボジョレーという産地が、色と時間の両方で幅を持っていることが、順番に出てくる形です。目玉として、ブルゴーニュの名手ティボー・リジェ・ベレールが手がけるボジョレーも入ります。
料理は、ゲストシェフがつくります。6種それぞれに皿を合わせる、ペアリングのフルコースです。
まとめ
ボジョレー・ヴィラージュは、ラベルの一語で産地が絞られる呼称です。要点を整理します。
- ヴィラージュはフランス語で「村々」。ボジョレー地区の中の、決められた38の村を指します
- フランスのワインでは、ラベルの地名が指す範囲が狭くなるほど格が上がります
- ボジョレーの格付けは3段。ボジョレー → ボジョレー・ヴィラージュ → クリュ・ボジョレー(10の村)
- ヴィラージュを名乗れる村は北側に集まり、10のクリュを取り囲むように分布しています
- 北側は花崗岩や片岩のやせた斜面。果実味が濃く、骨格のあるワインになります
- 「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー」は、一段上の産地で造られた新酒です
- 新酒を名乗れるのはボジョレーとヴィラージュだけ。クリュに新酒はありません
- 提供温度の目安は12〜14℃。新酒12℃前後、クリュ15〜17℃と、段が上がるほど温度も上がります
次の新酒の季節には、普通のヌーヴォーとヴィラージュのヌーヴォーを、同じ日に並べてみてください。同じ年、同じ品種で、産地だけが違う。差が最もはっきり出る比べ方です。
「ボジョレーは、新酒でしょ」と思っている方へ。恵比寿の八席で、ボジョレーの6種を料理とともにお出しする夜をご用意しました。ガメイの白い泡から、白、ロゼの新酒、赤の新酒、8年熟成のクリュ、甘口のロゼまで。着席8名、会費は16,500円、ご予約はTableCheckにて承っており、満席の回から締め切ります。開催7日前までなら、別の日に振り替えていただけます。
好みの方向がまだ定まっていない方は、無料のワイン診断から始めていただくこともできます。
よくある質問
ボジョレーとヴィラージュの違いは?
産地の範囲が違います。ボジョレーは地区全体のぶどうを使えますが、ボジョレー・ヴィラージュは北側の決められた38の村に限られます。北側は花崗岩や片岩のやせた斜面が多く、果実味が濃く骨格のあるワインになります。
ヌーヴォーでいちばん良いのはどれ?
格付けの上では、ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーが新酒の上位です。それより上のクリュには新酒が認められていないためです。ボジョレーの頂点であるクリュは、新酒とは別の棚で探すことになります。
ワインに詳しくなくても、ひとりで参加できますか?
ワイン会はこれまで100回以上開いてきましたが、参加者の半数以上はおひとりでのご参加です。知識は要りません。席は8つだけで、一本ずつご説明しながら進めます。日程はワイン会のご案内にまとめています。
ボジョレー・ヴィラージュの「ヴィラージュ」とはどういう意味ですか?
フランス語で「村々」という意味で、味の説明ではなく産地の範囲を示す言葉です。ボジョレー地区の中から選ばれた38の村のぶどうだけで造ったワインが、この名前を名乗れます。
ボジョレー・ヴィラージュに合う料理は何ですか?
普通のボジョレーより骨格があるため、豚の塊肉のローストや煮込み、鶏のロースト、パテ・ド・カンパーニュ、きのこ料理などが合います。すき焼きや牛肉のたたきのように、醤油の旨味がある料理とも響き合います。
一杯の違いを、料理とともに確かめる。
少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

