結論:ボジョレーには白ワインがあります。シャルドネで造る「ボジョレー・ブラン」です。 ただし生産量はボジョレー全体の3〜4%程度で、売り場で見つかる機会は限られます。 白の新酒(ヌーヴォー)は、呼称として認められていません。新酒は赤とロゼだけです。 一方で、黒ぶどうのガメイから白い泡を造る生産者もいます。果汁に色がないからです。 ボジョレーに泡のAOCはなく、ヴァン・ド・フランスなどとして瓶詰めされます。
あわせて、ガメイは、新酒の軽さと、熟成の深さの両方を持つ品種とボジョレー・ヌーヴォーは、その年の答え合わせもご覧ください。

ボジョレーといえば、赤。新酒の季節に出回るのも、赤です。
ところが、売り場でときおり白いラベルを見かけます。「Beaujolais Blanc」。赤が苦手な方、あるいは新酒の季節に白を飲みたい方にとって、これは気になる一本だと思います。
結論から申し上げると、ボジョレーの白は存在します。 品種はシャルドネで、呼称としては1930年代から認められてきました。ただし量が少なく、産地としてはずっと赤の陰にありました。
この記事では、ボジョレー・ブランの中身、隣のマコネの白との違い、白の新酒が存在しない理由、そしてガメイで造る白い泡という変わり種まで、順に整理します。
ボジョレーに白ワインはある? 結論と、その割合
あります。呼称としては「ボジョレー・ブラン(Beaujolais Blanc)」で、ボジョレー・ヴィラージュにも白があります。
ただし、量はごく限られます。ボジョレーの生産者団体が公表している数字をもとにすると、白はボジョレー全体の3〜4%程度です。残りのほとんどが赤で、わずかにロゼが加わります。
この比率が、売り場での見つけにくさの正体です。ボジョレーの白は、珍しいのではなく、単に少ないのです。 造っている生産者は確かにいて、呼称として100年近い歴史もあります。それでも100本のうち3〜4本という比率では、棚に並ぶ機会が限られます。
ひとつ、動きがあります。ボジョレーの生産者団体は、白の生産量を今後5〜10年で3倍に増やす方針を示しています。背景には、赤の需要が伸び悩んでいることと、白を求める市場があることがあるとされています。数年後には、売り場での見え方が変わっているかもしれません。
ボジョレー・ブランとは 品種はシャルドネ
ボジョレー・ブランの品種は、シャルドネです。これは一種類だけで、ほかの白ぶどうは使いません。
ここで、地理の話が効いてきます。ボジョレーは、ブルゴーニュの南に続く地区です。そしてブルゴーニュの白は、シャルドネで造られます。地図の上で線を引いても、ぶどうは線で止まりません。 ボジョレーの北端はブルゴーニュのマコネ地区と接していて、同じ品種が同じ土壌に植わっています。
シャルドネが植えられているのは、地区の端のほうです。ボジョレーワイン委員会の説明では、シャルドネの区画は地区の最北部と、南部に集まっています。真ん中ではなく、両端です。
- 最北部 … マコネに接する一帯。石灰質の土壌
- 南部 … 「ピエール・ドレ(黄金の石)」と呼ばれる、石灰質の豊かな一帯
どちらも石灰質です。シャルドネは石灰質の土壌で質が高くなる品種として知られており、その条件がある場所に植わっているという、素直な分布です。ボジョレーの赤を支える花崗岩の斜面とは、土の性格が違います。
味わいの方向をお伝えします。石灰質の土壌から生まれるシャルドネらしく、酸がきれいに伸び、果実は柑橘や白い花の方向です。樽を強く効かせた厚みのある造りより、素直で軽やかなものが多い印象です。樽の効果については樽熟成の記事に整理しました。
マコネの白との違い 同じ品種、違う呼称
ボジョレー・ブランを調べていくと、不思議な事実に行き当たります。同じ畑のシャルドネが、「ボジョレー・ブラン」ではなく「マコン・ブラン」として売られることがあるのです。
理由は、産地の境界が重なっているからです。ボジョレーの最北部とブルゴーニュのマコネ地区は接していて、一部の区画は両方の呼称を名乗れる条件を満たします。そして多くの生産者が、マコンの名前を選びます。
| ボジョレー・ブラン | マコン・ブラン(マコネ) | |
|---|---|---|
| 品種 | シャルドネ | シャルドネ |
| 産地 | ボジョレーの最北部と南部 | ブルゴーニュ南部のマコネ地区 |
| 土壌 | 石灰質 | 石灰質 |
| 味の方向 | 柑橘、白い花、きれいな酸 | 丸みのある果実感、ふくらみ |
| 知名度 | 低い。「ボジョレー=赤」の印象が強い | 白の産地として確立している |
| 売り場での扱い | 見つけにくい | 白のコーナーに並ぶ |
※ 同一の生産者・区画でも、呼称の選び方によって表記が変わる場合があります。
表の下から2行目が、生産者の判断を説明しています。「ボジョレー」という名前は、白を売るときに不利に働きます。 消費者の頭の中で、ボジョレーは赤の産地、しかも新酒の産地です。そこに白を置くと、説明のコストがかかります。
一方「マコン」は、白の産地として通っています。棚でも白のコーナーに置かれます。同じワインに二つの名前を選べるなら、売れる名前を選ぶ。 これは生産者の立場として、納得できる判断だと思います。
ですから、ボジョレー・ブランという表記を選んでいる生産者は、ある意味で意思を示しています。不利な名前を、あえて名乗っている。売り場でこの表記を見つけたら、それだけで一度試す理由になると私たちは考えています。
ブルゴーニュ全体の地区の並びはブルゴーニュの地図の記事でご覧いただけます。シャルドネという品種の性格そのものはソーヴィニヨン・ブランとシャルドネの記事に整理しました。

白のヌーヴォー(プリムール)はある?
新酒の季節になると、この問いをいただきます。「白のボジョレー・ヌーヴォーはありますか」。
ありません。制度の上で、認められていないからです。
ボジョレーの規定では、「ヌーヴォー」または「プリムール」という表記を使えるのは、赤とロゼだけと定められています。白の新酒という呼称は存在しません。ボジョレーワイン委員会も、新酒を造れるのはボジョレーとボジョレー・ヴィラージュの2つの呼称で、色は赤とロゼだと明記しています。
ですから、「ボジョレー・ブラン・ヌーヴォー」というラベルは、呼称としては成り立ちません。もし似た表記のものを見かけたら、それはAOCではなく、より広い区分(ヴァン・ド・フランスなど)のワインだと考えられます。
一方で、ロゼの新酒は認められています。 「ボジョレー・ロゼ・ヌーヴォー」は正式な呼称として登録されており、赤と同じく11月第3木曜日に解禁されます。ヴィラージュのロゼの新酒もあります。
整理すると、新酒の色は次のようになります。
| 色 | 新酒(ヌーヴォー/プリムール) |
|---|---|
| 赤 | あり。新酒の主役 |
| ロゼ | あり。呼称として登録されている |
| 白 | なし。制度上認められていない |
新酒そのものの解禁日やアルコール度数はボジョレー・ヌーヴォーの記事にまとめています。度数については、おおむね12〜13%程度とされていますが、法令上の下限として公表された数値は確認できていません。
ガメイで造る白い泡 果汁に色がないという性質
ここから、少し変わった話に入ります。黒ぶどうのガメイから、白い泡を造る生産者がいます。
なぜそれが可能なのか。答えは、ガメイという品種の性質にあります。
ガメイの伝統的なフルネームは、ガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブラン(Gamay Noir à Jus Blanc)。「果汁が白い、黒いガメイ」という意味です。果皮は黒いのに、しぼった果汁には色がありません。
赤ワインの色は、果汁ではなく果皮から出ます。つぶさずに房のまま優しく搾れば、果皮の色素が移る前に、透明な果汁だけを取り出せます。だから黒ぶどうから、白いワインを造れます。
この造り方で生まれる白を、一般にブラン・ド・ノワール(blanc de noirs)と呼びます。「黒いぶどうから造った白」という意味で、シャンパーニュでピノ・ノワールから造る白にも使われる言葉です。泡の種類についてはシャンパーニュとスパークリングの違いの記事でお伝えしています。
ただし、呼称の整理は慎重にお伝えする必要があります。
- ボジョレーには、スパークリングのAOCがありません。 12の呼称はすべて、泡のないワインです
- ガメイ100%の白い泡は、ヴァン・ド・フランスなどの広い区分として瓶詰めされます
- 一方、クレマン・ド・ブルゴーニュの産地にはボジョレーの村々が含まれ、ボジョレーの生産者も造れます。ただしガメイの使用は最大20%までで、100%ガメイのクレマンは造れません
つまり、ガメイの白い泡は、AOCの枠の外で造られている、造り手の意思が濃い一本ということになります。ペティヤン・ナチュレル(瓶内で発酵を終わらせる、昔ながらの造りの泡)として仕上げられるものが多く、見かける機会も限られます。
合う料理は、魚介と鶏、そしてチーズ
ボジョレーの白とガメイの泡は、合わせ方が似ています。酸がきれいで、重さがないからです。
- 牡蠣、ホタテ:石灰質の土壌から生まれる白の、定番の相手です
- 白身魚のポワレ:レモンやハーブを添えた皿と、柑橘の香りが並びます
- 鶏のロースト:皮の香ばしさに、伸びのある酸が寄り添います
- シェーヴル(山羊のチーズ):酸と酸が響き合います
- 生ハム、サラミ:泡であれば、塩気と脂を軽く流してくれます
提供温度は、ボジョレーワイン委員会の目安で8〜10℃です。冷やしすぎると香りが閉じ、厚みが出なくなります。冷蔵庫から出して少し置くくらいが、ちょうどの帯です。ロゼは5〜8℃と、もう少し低めが示されています。温度の調整はワインの適温の記事にまとめました。
どこで買えるか
正直にお伝えすると、ボジョレー・ブランは、探して買うワインです。
- ワイン専門店:フランス・ブルゴーニュの棚を、ボジョレーの赤の隣まで見ます
- 輸入元のサイト:取扱銘柄の一覧から、Blanc の表記を探します
- ワインバー、レストラン:グラスで出ている店なら、まず一杯試せます
スーパーや量販店では、新酒の季節に赤が大量に並ぶ一方、白はほとんど見かけません。ガメイの白い泡は、さらに限られます。赤が苦手で白のボジョレーを探している方には、一度に見つかる場所をお伝えしにくいのが実情です。
だからこそ、並べて出ている場に行くのがいちばん早い道だと、私たちは考えています。
ボジョレーの色の幅を、一晩で通る
ボジョレーには、泡も、白も、ロゼも、赤も、甘口もあります。この記事をここまで読んでいただいた方には、それが情報として伝わったと思います。
ただ、情報として知ることと、舌で知ることは別です。
新酒と熟成したクリュは、隣に並べると、同じ品種とは思えないほど違います。 色の幅についても同じで、ガメイの白い泡とガメイの赤を同じ夜に飲むと、「これが同じぶどうなのか」という驚きが残ります。
飲み比べには設計があります。共通点をひとつ作り、そこだけを変える。ボジョレーでは、共通点を産地と品種が引き受けてくれます。変えるのは、色と時間です。
一杯ずつ別の日に飲んでいては、記憶の中で比べることになります。違いの輪郭は、そこでぼやけてしまいます。
ワインが先、料理が後
私は年間で約2,000種のワインを試飲し、その中から会ごとの一本を選んでいます。順番は、ワインが先、料理が後です。泡、白、ロゼ、赤、甘口というコースの流れを思い描いてワインを決め、それが確定してから皿を組みます。
ボジョレーの夜は、この組み方がよく働きます。色の幅と時間の幅が、どちらもひとつの産地の中に収まっているからです。
恵比寿の八席で、ボジョレーの6種を並べる夜をご用意しています。順番はこうです。
- ガメイの白い泡 … 黒ぶどうから造られた、色のない泡で乾杯します
- ボジョレーで造られるシャルドネの白 … この記事の主役、ボジョレーの白です
- ロゼの新酒 … その年のぶどうのロゼ
- 赤の新酒 … 解禁から4日後のもの
- 8年熟成(2018年)のクリュ … 村の名前を名乗る、時間を重ねた赤
- 甘口のロゼ … 最後を締めます
この6杯で、ボジョレーという産地の色と時間を、ひと続きに通ることになります。 目玉として、ブルゴーニュの名手ティボー・リジェ・ベレールが手がけるボジョレーも入ります。
料理は、ゲストシェフがつくります。6種それぞれに皿を合わせる、ペアリングのフルコースです。
まとめ
ボジョレーの白について、要点を整理します。
- ボジョレーには白があります。呼称は「ボジョレー・ブラン」、品種はシャルドネです
- 生産量はボジョレー全体の3〜4%程度。珍しいのではなく、単に少ないワインです
- 生産者団体は、白の生産量を今後5〜10年で3倍に増やす方針を示しています
- シャルドネの区画は地区の最北部と南部にあり、どちらも石灰質の土壌です
- 最北部はブルゴーニュのマコネと接し、同じ畑のシャルドネがマコン・ブランとして売られることもあります
- 白の新酒(ヌーヴォー/プリムール)は、制度上認められていません。新酒は赤とロゼだけです
- ロゼの新酒は正式な呼称として登録されています
- ガメイは果汁に色がないため、黒ぶどうから白い泡を造れます。ボジョレーに泡のAOCはなく、ヴァン・ド・フランスなどとして瓶詰めされます
- 提供温度の目安は白が8〜10℃、ロゼが5〜8℃です
次にワイン専門店に行かれたら、ボジョレーの棚で「Blanc」の表記を探してみてください。少ないからこそ、見つけたときに持ち帰る価値のある一本です。
「ボジョレーは、新酒でしょ」と思っている方へ。恵比寿の八席で、ボジョレーの6種を料理とともにお出しする夜をご用意しました。ガメイの白い泡から、白、ロゼの新酒、赤の新酒、8年熟成のクリュ、甘口のロゼまで。着席8名、会費は16,500円、ご予約はTableCheckにて承っており、満席の回から締め切ります。開催7日前までなら、別の日に振り替えていただけます。
好みの方向がまだ定まっていない方は、無料のワイン診断から始めていただくこともできます。
よくある質問
ボジョレー・ヌーヴォーの白はありますか?
ありません。ボジョレーの規定では、「ヌーヴォー」や「プリムール」という表記を使えるのは赤とロゼだけです。白の新酒という呼称は存在しません。ロゼの新酒は正式に登録されており、赤と同じく11月第3木曜日に解禁されます。
ボジョレー・ブランはどこで買えますか?
ワイン専門店のブルゴーニュの棚、または輸入元のサイトで探すのが確実です。生産量が全体の3〜4%程度のため、スーパーや量販店ではほとんど見かけません。グラスで出しているワインバーやレストランで、まず一杯試す方法もあります。
ワインに詳しくなくても、ひとりで参加できますか?
ワイン会はこれまで100回以上開いてきましたが、参加者の半数以上はおひとりでのご参加です。知識は要りません。席は8つだけで、一本ずつご説明しながら進めます。日程はワイン会のご案内にまとめています。
ボジョレー・ブランの品種は何ですか?
シャルドネです。シャルドネの区画は、マコネに接する地区の最北部と、「ピエール・ドレ」と呼ばれる南部に集まっていて、どちらも石灰質の土壌です。酸がきれいに伸び、柑橘や白い花の方向の味わいになります。
黒ぶどうのガメイから白い泡が造れるのはなぜですか?
ガメイは果皮が黒くても、しぼった果汁には色がないからです。房のまま優しく搾れば、色素が移る前に透明な果汁だけを取り出せます。ボジョレーには泡のAOCがないため、ガメイ100%の白い泡はヴァン・ド・フランスなどとして瓶詰めされます。
一杯の違いを、料理とともに確かめる。
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