SUMMARY

結論:ボルドーの当たり年は、年号だけで決まるものではなく、「いつ飲むか」とセットで選ぶものです。 一般に評価が高いとされる年として、2000・2005・2009・2010・2015・2016・2018・2019・2020年などの名前が挙がります。 ただし評価の高い年ほど骨格が強く、飲み頃に入るまでに時間がかかる傾向があります。 いま開けて楽しみたいなら、評価が中くらいの年のほうが応えてくれることもあります。 評価はワイン委員会や販売店ごとに異なるため、買う前に最新のヴィンテージチャートでご確認ください。

あわせて、生まれ年のワインは、どう選ぶかとデキャンタージュは、何のために行うのかもご覧ください。

絵の前のテーブルに並べた白ワインと赤ワインのボトル5本。ヴィンテージを並べて比べるイメージ
ボトルを並べて比べると、一本では分からない違いが見えてきます

ボルドーの当たり年を調べると、年号がずらりと並んだ表が出てきます。ところが、その表を手に店へ行くと、別の迷いが生まれます。評価の高い年は値段も高い。そして、いざ開けてみると渋みが硬くて、思っていた味とは違う。

当たり年の表には、たいてい「いつ飲むか」が書かれていません。 ここが抜けていると、表は買い物の役に立ちません。評価の高い年は、長く置けるように生まれた年でもあるからです。

この記事では、当たり年がどう決まるのかから始めて、2000年以降のヴィンテージの目安、左岸と右岸で評価が分かれる理由、当たり年でない年の楽しみ方、古いボルドーの扱い、そして開けるときの手順までを順に整理します。最後に、年の違いをどう確かめるかという話をします。

当たり年とは その年の天候を記録したもの

当たり年、つまりグレート・ヴィンテージという言葉は、味の保証書ではありません。

ヴィンテージはぶどうの収穫年を指しますが、私たちはそれを「その年の気象条件を記録したもの」として読んでいます。同じ畑、同じ造り手、同じ品種でも、年が違えばまったく別のワインが生まれます。差を作っているのは、春の芽吹きから秋の収穫までに、その土地で起きた天候です。

傾向としては、こう分かれます。

  • 寒い年:酸が強く出やすい
  • 暖かい年:果実感が前に出やすい

そのうえで、一般に評価の高い年と呼ばれるのは、次の条件がそろった年です。

  1. 適度な雨:樹が水を欲しがらず、かつ果実が水っぽくならない量
  2. 十分な日照:皮が厚くなり、タンニンと色素が十分に育つ
  3. 成熟に必要な寒暖差:糖だけでなく香りと酸も残る
  4. 長期熟成の可能性:若いうちは硬く、年月で変わっていく構造を持つ

四つめが、この記事の鍵になります。評価が高い年は、「いま飲んでおいしい年」ではなく「これから長く変わっていける年」として選ばれていることが多いのです。

もうひとつ、収穫の日付も効いてきます。一日の違いで糖度と酸度が変わるため、早い収穫は酸が高く繊細なワインになり、遅い収穫はアルコールが高く果実感の強いワインになります。天候が崩れた年には、その一日の判断が、そのままワインの性格になります。

だからこそ、年号の評価と造り手の力は別の軸です。難しい年でも、優れた造り手は素晴らしいワインを造ります。むしろその年こそが、造り手の腕前を判断する試金石になります。

そしてヴィンテージの上には、造り手の選択が重なります。造り手は瓶の外から見えない存在ですが、ワイン造りのあらゆる段階で影響を及ぼしています。

  • 収穫のタイミング:早ければ酸が高く繊細に、遅ければアルコールが高く果実感が強くなります
  • 発酵のしかた:野生酵母は複雑で個性的に、培養酵母は安定した方向に。温度を低く保てば繊細に、高く取れば力強く仕上がります
  • 熟成に使う容器:新しい樽はバニラやスパイスの香りと力強さを、古い樽はミネラル感とすっきりした輪郭を与えます

ですからヴィンテージチャートは、その年の天候までしか教えてくれません。同じ年のボルドーが店に何十種類も並ぶのは、ここから先が造り手ごとに違うからです。チャートは出発点で、答えではない。そう捉えておくと、表に振り回されずに済みます。

私がワインを一本手に取るとき、ラベルで見るのは産地、品種、ヴィンテージ、アルコール度数の四つです。このうちヴィンテージを見る目的はひとつで、熟成感のイメージをつけるためです。良い年か悪い年かを判定するために見ているわけではありません。「この年なら、いまどのあたりだろう」と、時間の位置を測っています。

2000年以降のヴィンテージの目安

ここから表に入ります。ただし、先に大事な前置きをさせてください。

ヴィンテージの評価は、公表している主体ごとに違います。ボルドーワイン委員会(CIVB)が公表する情報、大手のワイン商が出すヴィンテージチャート、ワイン専門誌の評価は、同じ年に対して違う点のつけ方をすることがあります。左岸と右岸を分けて示すチャートもあり、まとめて一つの評価にしているチャートもあります。

ですから、下の表は「一般に評価が高いとされる年」の目安として見てください。

下の表は一般的な傾向をまとめた目安です。買う前に、ボルドーワイン委員会(CIVB)が公表する情報、または大手ワイン商・ワイン専門誌の最新のヴィンテージチャートでご確認ください。評価は公表主体によって異なります。

年評価の目安左岸/右岸の傾向飲み頃の目安
2000年高い両岸で評価が高いとされるすでに飲み頃。上質なものはまだ置ける
2003年評価が分かれる猛暑の年。果実感が強く、酸が穏やかとされるすでに飲み頃。早めに開けたい
2005年高い両岸で評価が高いとされる飲み頃に入ったあたり。長く置けるものも
2009年高い両岸。果実感の豊かさが語られる年飲み頃に入りつつある
2010年高い両岸。骨格とタンニンの強さが語られる年まだ硬いものがある。もう少し待てる
2013年低め収穫期の天候が難しく、全体に評価は低めとされる年すでに飲み頃。早めに開けたい
2015年高い右岸の評価がより高いとされることが多い飲み頃に入りはじめたあたり
2016年高い両岸、とくに左岸の評価が高いとされるいま開けるにはやや早い。数年先が本番
2018年高い両岸。凝縮感が語られる年まだ若い。もう少し先
2019年高い両岸で評価が高いとされるまだ若い。もう少し先
2020年やや高い〜高い両岸。年を追って評価が整理されつつあるまだ若い

表を縦に眺めると、ひとつの傾向が見えてきます。評価が高い年ほど、飲み頃の欄が後ろにずれています。

2016年や2018年、2019年は、多くのチャートで高く評価されています。けれども飲み頃としてはまだ前半です。渋みがきれいに溶けるまで、もうしばらく時間が要ります。逆に、評価が分かれる2003年や、評価が低めの2013年は、すでに飲み頃に入っています。

つまり当たり年の表は、買う年を決める表でもあり、開ける順番を決める表でもあるわけです。

評価が食い違うのは、おかしなことではありません

複数のチャートを見比べると、同じ年に違う評価がついていて戸惑うことがあります。これは、どちらかが間違っているという話ではありません。

評価がずれる理由は、いくつかあります。見ている対象が左岸か右岸か、赤だけか甘口も含むか。評価した時期が、ワインが若いうちか、ある程度育ってからか。そして、評価する側が何を良しとしているか。凝縮を高く買う立場と、酸と繊細さを高く買う立場では、同じ年の点が入れ替わります。

ですからチャートは、一つに絞らず二つか三つを見比べたほうが、かえって輪郭がはっきりします。複数のチャートが同じ方向を向いている年は、そのとおりに受け取ってよい年です。食い違っている年は、自分の好みで決めてよい年だと考えてください。

黒いテーブルに置いた赤ワインのグラスと小さな料理の皿。熟成したボルドーの色合いのイメージ
年号を見る目的は、熟成感のイメージをつけることです

左岸と右岸で評価が分かれる理由

同じボルドーなのに、チャートで左岸と右岸の評価が違う年があります。理由は、主役のぶどうが違うことにあります。

ボルドーはジロンド川とその支流で地域が分かれます。左岸はメドックやグラーヴなど、右岸はサンテミリオンやポムロールなどが並びます。

項目左岸右岸
主体となる品種カベルネ・ソーヴィニヨンメルロー
土壌の傾向砂利や砂の多い土地が中心粘土や石灰質の多い土地が中心
味わいの傾向タンニンがきめ細かく、口の奥で締まるタンニンが柔らかく、ふくらみがある
香りの方向カシスや杉を思わせるプラムやブルーベリーを思わせる
熟成に要する時間長くかかりやすい比較的早く飲み頃に入りやすい

ここで効いてくるのが、熟すタイミングの差です。

メルローはカベルネ・ソーヴィニヨンより早く熟します。収穫も早い。ですからメルローを摘み終えたあとに雨が続いた年は、右岸は無事で、まだ畑に残っているカベルネが影響を受けます。逆に、メルローの収穫期に天候が崩れた年は、右岸の評価が下がり、左岸はあとから持ち直すことがあります。

同じ年の同じ天気が、品種によって違う意味を持つ。 これが、左岸と右岸で評価が分かれるいちばん大きな理由です。

土壌も、この差を広げます。土地そのものが味として表現されるのがワインの面白さで、粘土質の土地は重厚で複雑な方向に、砂質の土地は軽やかでエレガントな方向に出やすいとされています。水の抜け方が違えば、雨の年の影響も変わってきます。

ここで、ひとつ補っておきたいことがあります。左岸と右岸は、品種の「主体」が違うという話で、片方しか使っていないという話ではありません。左岸のワインにもメルローは混ざりますし、右岸にもカベルネ・フランなどが加わります。ボルドーは複数の品種を混ぜて仕上げる地方です。

そして混ぜる比率は、年ごとに動きます。ある品種が思うように熟さなかった年には、その比率を下げる判断が取られることもあります。つまり造り手は、天候に対してブレンドで応えているわけです。チャートの一行の裏側では、こうした調整が毎年行われています。

ですから、チャートを見るときは左岸と右岸が分けて書かれているかを確かめてください。分かれていないチャートは、どちらかに寄った評価になっている場合があります。右岸のワインを買おうとしているときに、左岸寄りの評価を見て判断してしまう。この取り違えは、わりと起きます。

なお、ボルドーには1855年に定められた格付けをはじめ、いくつかの等級の仕組みがあります。格付けとヴィンテージは別の軸なので、この記事では深入りしません。等級の全体像はボルドーを会食の視点から整理した記事にまとめています。

当たり年でない年の楽しみ方 早く開く

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

評価が中くらいの年には、はっきりした利点があります。早く飲み頃に入るということです。

天候に恵まれすぎなかった年は、皮が厚くなりきらず、タンニンの量も穏やかに収まります。酸がきれいに残ることもあります。結果として、構造が重くならず、数年で渋みが溶けてきます。買ってすぐ開けても、すでに表情が整っていることが多いのです。

一方、評価の高い年は逆です。皮が厚く、タンニンが豊か。長く置ける構造を持っているぶん、若いうちは硬く、口の中で締まって感じられます。評価の高い年を買って「思ったほどでもない」と感じるとき、ワインが悪いわけではなく、時間が足りていないことがよくあります。

ですから、買う目的で分けて考えるのがおすすめです。

  • 今夜から数年のうちに開ける一本:評価が中くらいの年、または飲み頃に入った古い当たり年
  • 何年か先の節目のために置く一本:評価が高く、まだ若い年

もうひとつ、年号と組み合わせて見ておきたいのが等級です。ボルドーには、地方名を名乗るもの、村や地区の名前を名乗るもの、等級に置かれているものがあります。一般に、上の段に置かれたワインは長く置ける造りになっており、飲み頃に入るまで時間がかかります。地方名のボルドーは、当たり年であっても比較的早く開いてきます。

ですから「評価の高い年を、手の届く等級で買う」という選び方は、わりに合うことが多いです。天候に恵まれた年の良さは、上の段だけに現れるわけではありません。年がよければ、下の段のワインも、その年らしい果実の充実を持っています。そして早く飲み頃に入る。今夜のための一本としては、こちらのほうが素直です。

そしてもうひとつ。難しい年こそ、造り手の差が出ます。天候に恵まれた年は、多くの造り手がそれなりの結果を出せます。けれども天候が崩れた年は、収穫の日をどこに置くか、どの区画を落とすか、どう選別するかという判断が、そのまま味に出ます。その年のワインが整っていたなら、それはその造り手の力です。

私は年間に約2,000種のワインを試飲しています。そのなかで印象に残るのは、評価の高い年の有名な一本よりも、難しい年に、きちんと整った一本に出会ったときです。気象という不可抗力と、造り手の選択が出会う場所に、その年の物語があります。

古いボルドーは飲めるのか

「30年前のボルドーが家にある」「15年前の年号を見つけた」というご相談は、よくいただきます。

答えは、年数ではなく保管状態で決まります。

ボルドーの赤は、もともと長く置けるように造られています。ですから30年という年数そのものは、飲めない理由にはなりません。一方で、保管の条件が崩れていれば、15年でも疲れてしまいます。見るべき条件は、おおむね次の四つです。

  • 温度:高すぎないこと。そして、上下に振れ続けていないこと
  • 振動:動かし続けていないこと
  • 光:直射日光や強い照明に長くさらされていないこと
  • 湿度:コルクが乾ききっていないこと

とくに影響が大きいのは、温度の振れ幅です。夏と冬で大きく上下する場所に長く置かれていたボトルは、年数の割に進んでいることがあります。

開ける前に、外から得られる手がかりもあります。

  1. 液面の位置:肩より大きく下がっていれば、どこかで抜けている可能性があります
  2. コルクの頭:押し上げられていたり、濡れた跡が垂れていれば、温度が上がった履歴が疑われます
  3. 色:光に透かして、縁がレンガ色や琥珀色に寄っていれば、相応に進んでいます

ただし、これらは手がかりにすぎません。古いボトルが飲めるかどうかは、開けてみるまで分かりません。ですから古酒は、一本に期待を集めすぎないほうが穏やかに楽しめます。ほかに飲めるものを用意しておき、その一本は「どうなっているかを確かめる楽しみ」として開ける。そういう構えが向いています。

開けてみて、思ったより疲れていた。そういうときも、まだ手は残っています。温度を少し低めに取り、グラスを小さめのものに替えてください。温度が下がると輪郭が締まり、小さなグラスは香りを逃しにくくなります。開いてしまったワインを長く空気に当てるより、この二つで寄せたほうが、残っているものを拾えます。

逆に、まだ力が残っていると感じたら、そこからゆっくり時間を使えます。古いボトルは、抜栓してからの表情の変わり方そのものが見どころです。一杯目と三杯目で別のワインのように感じることもあります。急いで飲みきらず、変化を追ってみてください。

生まれ年のワインを探したい、贈りたいという場合は、産地ごとの事情も関わってきます。その話は生まれ年のワインの選び方にまとめました。この記事はボルドーに絞っています。

開けるときのコツ 澱とデキャンタージュ

年月を経たボルドーには、瓶の底に澱(おり)が沈んでいます。色素とタンニンが結びついて落ちたもので、品質が悪い証ではありません。ただ、口に入ると舌がざらつき、苦く感じられます。

ここで気をつけたいのは、熟成した赤と若い赤で、やることが逆向きになるという点です。

ワインの状態デキャンタージュの扱い理由
若い当たり年の赤(タンニンが強い)効果が大きい硬い渋みが丸くなり、閉じた香りが開く
熟成した赤澱を取る目的で、慎重に香りはすでに開いている。長時間の空気接触はむしろ劣化を早める

若くて硬い赤なら、空気に触れさせて開かせる操作が効きます。けれども熟成したボルドーは、すでに開いています。長く空気に当て続けると、せっかくの香りが先に飛んでしまいます。古いボトルのデキャンタージュは、開かせるためではなく、澱を分けるために行うと考えてください。

手順は、若い赤とは別です。

  1. 事前にボトルを立てておく:半日から1日かけて、澱を底に沈めます
  2. 光に透かしながら注ぐ:瓶の首の向こう側に光を置き、澱の動きを目で追います
  3. 澱が首まで来たら注ぎ止める:最後のひと口は無理に注がず、そこで止めます

時間の感覚も押さえておくと役に立ちます。ワインの表情を変える操作には、効き始めるまでの時間差があります。

操作効果が出るまでの時間
グラスを替える注いだ瞬間
温度を変える10〜15分
デキャンタージュ30分〜2時間

デキャンタージュは、いちばん効きがゆっくりです。飲む時刻から逆算して用意する操作で、食卓に着いてから慌ててやるものではありません。古いボトルなら、前日からボトルを立てる時間も必要です。

この時間差を知っていると、一本の使い方が変わります。デキャンタージュ、温度、グラスの三つを動かせば、ボトルを替えずにワインの表情を変えられます。前半は締まった表情で酸とタンニンを立て、後半は開いた表情で丸く甘く。同じ一本が、前半と後半で別の料理に寄り添ってくれます。

温度については、少し低めから始めて、上がっていくのに任せるのが扱いやすいやり方です。冷えた状態では酸とタンニンが立ち、輪郭が締まって感じられます。手の中とグラスの中で温度が上がるにつれて、果実と甘さが前に出てきます。はじめから温い状態で注いでしまうと、この道筋がなくなり、最初から最後まで同じ表情になります。

当たり年の若いボルドーを今夜開けるなら、この三つを使うのが現実的な手です。たとえば抜栓してすぐの一杯を少し低い温度で、食事が進んだころの一杯を温度が上がった状態で。ボトルを増やさずに、二本分の表情を使えることになります。手順の全体像はデキャンタージュの記事に整理しました。

デキャンタやワインクーラー、グラス類を並べたテーブルウェア。古いボルドーのデキャンタージュの道具
古いボトルは、開かせるためではなく澱を分けるために移します

年の違いは、並べないと分からない

ここまで、年号と飲み頃の話をしてきました。最後に、残っている問題をひとつ。

年の違いは、一本ずつ別の日に飲んでいては分かりません。

2016年を今夜、2013年を来月に飲んだとしても、比べているのは記憶です。前に飲んだ一本の輪郭は、一ヶ月あればぼやけます。「当たり年のほうが良かった気がする」という感想にはなりますが、どこがどう違ったのかは残りません。

私たちが飲み比べを設計するとき、いつも置いている約束がひとつあります。共通点を作って、変える要素を一つだけにすることです。品種別、産地別、年代別。どれも同じ考え方です。ほかを揃えて年だけを変えれば、違いは年のものだと分かります。揃えずに並べると、何が違いを作ったのか分からなくなります。

切り口は、大きく三つに分けられます。

  • 年代別:産地と品種を揃えて、年だけを変える。この記事の主題そのものです
  • 品種別:年と産地を揃えて、品種を変える。味わいの人格の違いが出ます
  • 産地別:年と品種を揃えて、土地を変える。土地が味として表れることが分かります

レストランのコースのなかでも、同じやり方をお使いいただくことがあります。たとえば樽の効いたワインと、樽の弱いワインを並べて飲み比べていただく。一本だけ出すと「樽の香り」という説明が言葉のままで終わりますが、並べると一口で分かります。そして、そこで生まれるのは理解より先に驚きです。「ここまで味わいが違うのか」と。その驚きが、知識を自分のものに変えてくれます。

一杯ずつでは分からない違いも、隣に並べればはっきりします。飲み比べの組み立て方そのものはワインの飲み比べの記事にまとめました。

そして、年の話をしていると、たいていもうひとつの疑問が出てきます。「高いワインと安いワイン、違いがよく分からない」というものです。

これは、恥ずかしい話ではありません。むしろ当然のことだと思います。価格は、評価の高さや希少性、取引の歴史を映した数字です。それが自分の舌の好みと一致するかどうかは、別の問題です。一致しない人がいるのではなく、並べて確かめた経験がないだけです。

ラベルを見ずに、番号だけのグラスで飲む。そして最後に答え合わせをする。この順番でやると、自分がどこに反応しているのかがはっきりします。値段を知ってから飲むと、どうしても高いほうを探してしまいますから。

これは、当たり年の話と同じ構造をしています。年号も価格も、ワインの外側についている情報です。外側の情報は、選ぶときの手がかりとしてはよく働きます。けれども、それを先に知ってから飲むと、舌がその情報に引っ張られます。順番を入れ替えて、先に飲み、あとで知る。そうすると、自分の好みが先に立ちます。

そこで分かった好みは、次にチャートを見るときの物差しになります。酸が好きだと分かった方なら、涼しい年の評価が高いチャートを選べばよい。果実の充実が好きだと分かった方なら、暖かい年を探せばよい。表の読み方は、自分の舌が決めてくれます。

まとめ

ボルドーの当たり年は、表の上の年号ではなく、自分がいつ開けるかとセットで選ぶものです。

  • ヴィンテージは、その年の気象条件を記録したものです。寒い年は酸が強く、暖かい年は果実感が前に出やすくなります
  • 一般に評価が高いとされる年として、2000・2005・2009・2010・2015・2016・2018・2019・2020年などの名前が挙がります
  • 評価は公表主体ごとに違います。ボルドーワイン委員会(CIVB)の情報や、大手ワイン商・専門誌の最新チャートでご確認ください
  • 評価の高い年ほど飲み頃は後ろにずれます。2016年以降の高評価の年は、いま開けるにはまだ早いものが多いです
  • 左岸はカベルネ・ソーヴィニヨン主体、右岸はメルロー主体。熟す時期が違うため、同じ年の天候が別の意味を持ちます
  • 当たり年でない年は、早く飲み頃に入ります。今夜から数年で開けるなら、むしろ応えてくれることがあります
  • 難しい年でも優れた造り手は素晴らしいワインを造ります。その年こそが、造り手の腕前を判断する試金石です
  • 古いボルドーが飲めるかどうかは、年数ではなく保管状態で決まります。温度の振れ幅がいちばん効きます
  • 熟成した赤のデキャンタージュは、開かせるためではなく澱を分けるために行います。前日からボトルを立てておきます
  • 効き始めるまでの時間は、グラスが注いだ瞬間、温度が10〜15分、デキャンタージュが30分〜2時間です

当たり年の表を手にしたら、年号の隣に「いつ開けるか」を書き足してみてください。それだけで、表が買い物の役に立ち始めます。

当たり年の表を読めるようになると、次に気になるのは「では、違いはどのくらい分かるものなのか」だと思います。その答えは、並べて飲むのがいちばん早い道です。 Na Team Lab は、恵比寿駅から徒歩8分、ふだんは1日1組の貸切レストランです。その卓を使って、テーマを立てたワイン会を開いています。基本は8席で、満席の回から締め切ります。ワインを選び、料理をつくるのは、オーナーシェフの川原壯太です。年間約2,000種のワインを試飲し、毎回の構成を組み立てています。

12月4日(金)・12月5日(土)の[値段を隠して飲み比べる夜]では、カリフォルニアのカベルネ4本を、番号だけのグラスでお出しします。ラベルも値段も伏せたまま飲んでいただき、最後に答え合わせをします。会費は14,800円(税込)です。ご予約は TableCheck で承っており、開催7日前までなら別の日に振り替えていただけます。飲み放題の飲み会でも、出会いを目的にした会でもありません。ワインと料理が好きな方が、ひとつのテーブルを囲む夜です。

ワイン会の日程と空席を見る

まず自分の好みを知りたい方は、無料のワイン診断から始めてみてください。酸が好きか、果実味が好きか。全30問、5分ほどで合う品種が出ます。

よくある質問

2016年のボルドーは当たり年ですか?

多くのヴィンテージチャートで評価の高い年として扱われており、とくに左岸の評価が高いとされます。ただし飲み頃としてはまだ前半で、いま開けると渋みが硬く感じられることがあります。評価は公表主体ごとに違うため、最新のチャートでご確認ください。

30年前のボルドーは飲めますか?

年数ではなく、保管状態で決まります。温度の振れ幅が小さく、振動や強い光を避けて置かれていたボトルなら、30年経っていても楽しめることがあります。液面の下がり方とコルクの状態が手がかりになりますが、最終的には開けてみないと分かりません。

ワインに詳しくなくても、ひとりで参加できますか?

参加者は半数以上がおひとりです。知識は要りません。これまで100回以上開いてきましたが、「参加するのは初めてで緊張していたのですが、とても楽しいお時間過ごすことができました」という声をいただいています。会費は予約時のお支払いなので、当日は手ぶらでお越しいただけます。

ボルドーで評価の高い年はいつですか?

2000年以降では、2000・2005・2009・2010・2015・2016・2018・2019・2020年などが、一般に評価の高い年として名前が挙がります。ただし評価は公表主体ごとに違い、左岸と右岸で分かれる年もあります。買う前に最新のヴィンテージチャートを二つか三つ見比べてください。

当たり年でない年のボルドーは、選ばないほうがいいですか?

そうとは限りません。評価が中くらいの年はタンニンが穏やかで、早く飲み頃に入るため、今夜から数年のうちに開けるならむしろ応えてくれることがあります。難しい年こそ造り手の差が出るので、造り手で選ぶのもひとつの方法です。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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