結論:ブルゴーニュの地図は、北のシャブリから南のマコネまで、ほぼ一本の線として読めます。 中心にあるのは「コート・ドール」と呼ばれる細い帯で、ここが北半分のコート・ド・ニュイと、南半分のコート・ド・ボーヌに分かれます。 ニュイは赤、ボーヌは白に名声があり、この並びを覚えるだけで棚の見え方が変わります。 そして地図に載っている村の名前が、そのままラベルに書かれる名前になります。 この記事では、5地区の順番と有名な村の位置を、北から南へ並べて整理します。
あわせて、ブルゴーニュは、ぶどうより畑の名前で選ぶとシャブリがシャルドネであることの意味もご覧ください。

ブルゴーニュのワインは、ラベルに地名が並びます。ジュヴレ・シャンベルタン、ムルソー、ニュイ・サン・ジョルジュ。どれも一度は聞いたことがあるのに、それがどこにあるのかは、なかなか結びつきません。
ブルゴーニュの地図を一度ご覧いただくと、この分かりにくさの正体が見えてきます。この産地は南北に細長く伸びていて、北から南へ順に並べれば、主な地区は5つに収まります。有名な村の名前も、その線のどこかに置かれています。つまりブルゴーニュは、暗記するより、並べ替えるほうが早く頭に入る産地です。
この記事では、北から南への順番、地区ごとの性格、コート・ドールに並ぶ村の位置、そして地図とラベルの関係を順に整理します。格付けの詳しい仕組みや価格帯、ボルドーとの違いはブルゴーニュを畑の名前で選ぶという記事にまとめていますので、ここでは位置関係に絞ってお伝えします。
ブルゴーニュの全体図 北から南へ5地区
ブルゴーニュは、フランス東部にあります。パリから見れば南東、リヨンから見れば北。地図の上では、北のディジョンの町から南のマコンの町まで、細長い帯のように続いています。
北から南へ、主な地区は5つです。
- シャブリ:いちばん北。ほかの地区から北西へ離れた、飛び地のような位置にあります
- コート・ド・ニュイ:コート・ドールの北半分。ディジョンの南から、ニュイ・サン・ジョルジュの町まで
- コート・ド・ボーヌ:コート・ドールの南半分。ボーヌの町を中心に、南北へ広がります
- コート・シャロネーズ:ボーヌよりさらに南。シャロン・シュル・ソーヌの西側の丘
- マコネ:いちばん南。マコンの町の周辺に広がります
この5つのうち、2と3を合わせた細い帯がコート・ドールです。「黄金の丘」という意味で、ディジョンから南へ、幅のごく狭い斜面が一列に続きます。ブルゴーニュの特級畑の多くは、この帯の中に集まっています。地図の上では短い線にしか見えない場所に、世界中で名前の知られた畑が詰まっているわけです。
大づかみには、北のシャブリは白、中央のコート・ドールが本丸、南の二地区は価格が落ち着いていて手が届きやすい。この三段が頭に入れば、ワインショップの棚のどのあたりを見ているのかが分かるようになります。
さらに南には、ボージョレが続きます。行政の区分ではブルゴーニュに含めて扱われることもありますが、主な品種はガメイです。地図の線はつながっていても、味わいは別の系統だと考えるほうが整理しやすくなります。
フランス全体のどこにこの帯があるのかは、フランスのワイン産地を地図で見る記事でご覧いただけます。

地区ごとの特徴 主な品種と代表的な村
5つの地区を、品種と代表的な村で並べると、性格の違いがはっきりします。
| 地区 | 主な品種 | 赤/白 | 代表的な村 | 味わいの方向 |
|---|---|---|---|---|
| シャブリ | シャルドネ | 白 | シャブリ(周辺の村を含む呼称) | 塩気を思わせる、透明な酸 |
| コート・ド・ニュイ | ピノ・ノワール | 赤が中心 | ジュヴレ・シャンベルタン、ヴォーヌ・ロマネ | 骨格があり、長く置ける繊細さ |
| コート・ド・ボーヌ | シャルドネとピノ・ノワール | 白と赤の両方 | ムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、ポマール | 厚みのある白と、軽やかな赤 |
| コート・シャロネーズ | ピノ・ノワールとシャルドネ | 赤と白の両方 | メルキュレ、リュリー、ジヴリ、モンタニー | 果実味が親しみやすい |
| マコネ | シャルドネ | 白 | プイイ・フュイッセ、ヴィレ・クレッセ | 丸みのある、豊かな果実感 |
この表を縦に見ていただくと、ひとつの流れが浮かび上がります。北から南へ下るにつれて、酸の鋭さから果実の丸みへと、味わいの軸が移っていきます。
理由は気候です。冷涼な土地では酸が高く繊細なワインが生まれ、温暖な土地では果実感が前面に出て骨格が強くなります。南北に細長い産地では、その差がそのまま地図の上下に並びます。シャブリの白とマコネの白は、どちらもシャルドネです。それでも別人のような顔をしているのは、立っている緯度が違うからです。
いちばん北のシャブリは、石灰質の土壌が持ち味を決めています。土壌の塩気がワインに刻まれ、同じ土地で育つカキと響き合います。この土地とシャルドネの関係は、シャブリがシャルドネであることの意味で詳しくお伝えしています。
コート・ド・ニュイの村 北から南へ並べて覚える
コート・ド・ニュイは、コート・ドールの北半分です。赤のピノ・ノワールが主役で、長く置ける赤の名前がここに集まっています。
主な村を、北から南へ並べます。
- マルサネ
- フィサン
- ジュヴレ・シャンベルタン
- モレ・サン・ドニ
- シャンボール・ミュジニー
- ヴージョ
- ヴォーヌ・ロマネ
- ニュイ・サン・ジョルジュ
この順番には、意味があります。ジュヴレ・シャンベルタンは北寄りにあり、この地区でも面積の大きな村です。力のある、肩幅の広い赤として語られることが多い土地です。そこから南へ下ると、シャンボール・ミュジニーに入ります。同じ品種、ごく近い距離にありながら、香りの繊細さで名前が挙がる村です。
さらに南がヴォーヌ・ロマネです。特級畑が密に並ぶ一帯で、ブルゴーニュの名前を聞いたことがある方なら、この村名もどこかで目にしているはずです。そして地区の南端が、ニュイ・サン・ジョルジュ。町の名前が、そのまま地区の名前になりました。地図を北から南へたどると、地区名の由来が最後に出てくる構造になっています。
村の名前が長いのは、元の村の名前に、その村でいちばん有名な畑の名前を足しているからです。読みにくい地名の後半は、たいてい畑の名前にあたります。この仕組みはブルゴーニュを畑の名前で選ぶという記事に詳しく書きました。
ピノ・ノワールは冷涼な土地で質が高くなる品種で、繊細さと力強さを両立させます。鴨、きのこ、鶏に寄り添うのも、この性質があるからです。産地ごとの合わせ方はピノ・ノワールを産地ごとに合わせる記事にまとめています。
コート・ド・ボーヌの村 白の名声が集まる南半分
ボーヌの町を境に、コート・ドールの南半分がコート・ド・ボーヌです。白と赤の両方を造りますが、名声の中心は白のシャルドネにあります。
こちらも、北から南へ並べます。
- ラドワ・セリニー
- アロース・コルトン
- ペルナン・ヴェルジュレス
- サヴィニー・レ・ボーヌ
- ボーヌ
- ポマール
- ヴォルネイ
- ムルソー
- ピュリニー・モンラッシェ
- シャサーニュ・モンラッシェ
- サントネー
ここに、この地区を読むうえでの手がかりがあります。赤で名前の挙がる村は北寄りに、白で名前の挙がる村は南寄りに並んでいます。
北側では、アロース・コルトンの背後にコルトンの丘が立っています。赤の特級畑は、この丘の斜面に集まります。さらに南へ下るとポマール、続いてヴォルネイ。ポマールはしっかりした骨格、ヴォルネイは柔らかく香り高い赤として語られることの多い村です。隣り合っているのに、表情が違う。斜面の向きと土の違いが、そのまま出てきます。
そしてムルソーから先が、白の一帯です。ムルソーは樽と溶け合う厚みのある白で知られ、村の名前に畑の名前を足していない例でもあります。その南にピュリニー・モンラッシェ、さらに南にシャサーニュ・モンラッシェが続きます。
この二つの村には、面白い関係があります。モンラッシェという特級畑は、ピュリニーとシャサーニュの境界にまたがっています。 だから両方の村が、同じ畑の名前を自分の村名に足しました。地図の上で一本の境界線を引いたとき、その線の上に名高い畑があった。ラベルの名前がよく似ている理由は、地図を見ると一度で納得できます。

地図とラベルの関係 範囲が狭くなるほど格が上がる
ここまで村の位置を見てきましたが、地図を覚える目的は、地名を言えるようになることではありません。ラベルが読めるようになることです。
ブルゴーニュのラベルには、品種ではなく地名が書かれます。そしてその地名が指している範囲の広さが、そのまま格付けになります。
- 地方名:地方全体を指します。ラベルには Bourgogne(ブルゴーニュ)と書かれます
- 村名:ひとつの村に限られます。ジュヴレ・シャンベルタンやムルソーなど、本記事で並べた名前です
- 1級畑:村の中の、特定の区画です。村名に 1er Cru と畑の名前が足されます
- 特級畑:限られた単一の畑です。畑の名前だけが書かれます
段が上がるごとに、名乗れる土地が狭くなっていきます。言い換えれば、ラベルを読むという作業は、地図を少しずつ拡大していく作業です。 地方全体から、ひとつの村へ。村から、斜面のひと区画へ。
ただし、範囲が狭いことは、ご自身の好みに近いことを意味しません。格付けは品質の保証書ではなく、土地の狭さを示す記号です。4段階それぞれの中身や価格の目安は、ブルゴーニュを畑の名前で選ぶという記事に整理しました。
地図の村を、グラスで確かめる
ブルゴーニュが好き。でも、ラベルが読めない。
そう感じている方に、よくお会いします。地図を見て、村の名前を並べ、格付けの仕組みも分かりました。それでも棚の前に立つと、どれを選べばよいのかが決まりません。知識と体験の間には、まだ一歩あります。
その一歩を埋める方法は、ひとつだけです。並べて飲むことです。
飲み比べには設計があります。品種別、年代別、産地別。共通点をひとつ作り、そこだけを変える。すると「ここまで味わいが違うのか」という驚きが生まれます。一杯ずつ別の日に飲んでいては、記憶の中で比べることになり、違いの輪郭がぼやけてしまいます。
ブルゴーニュは、その共通点を品種が引き受けてくれる産地です。赤はピノ・ノワール、白はシャルドネ。だから地図の上で動かす方向は、二つしかありません。
地図の上を、南北に動かす
ひとつは、格付けを揃えて村だけを変える方法です。たとえば村名のブルゴーニュを3本、北から南へ並べます。ジュヴレ・シャンベルタンからシャンボール・ミュジニーへ、さらに南の村へ。同じ品種、同じ段、違う村。すると残る変数は、立っている場所だけになります。
地図で見た位置関係が、このとき味として戻ってきます。北のほうが締まっている。南のほうが丸い。文章で読んだ気候の話が、自分の舌の記憶に置き換わります。
地図の範囲を、狭くしていく
もうひとつは、造り手を揃えて範囲を変える方法です。同じ造り手の地方名、村名、1級畑を続けて飲みます。地方全体から、ひとつの村へ、ひと区画へ。範囲が狭くなると味わいはどう変わるのかを、一夜で確かめられます。
この並べ方には、もうひとつ効き目があります。次に棚でラベルを見たとき、その一行が地方名なのか村名なのかで、ボトルの立ち位置が見えるようになります。地図とラベルがつながる瞬間は、だいたいこの飲み比べの最中に訪れます。
ワインが先、料理が後
私は年間で約2,000種のワインを試飲し、その中から会ごとの一本を選んでいます。順番は、ワインが先、料理が後です。泡、白、赤、甘口というコースの流れを思い描いてワインを決め、それが確定してから皿を組みます。
地図の話も、同じ構造をしています。位置が決まれば、合わせる料理の方向も決まってきます。同じ土地で育つものは自然に合う。ブルゴーニュの赤とブルゴーニュ産の牛肉、シャブリとカキ。語り継がれてきた組み合わせが残っているのは、偶然ではありません。
一杯ずつでは分からない違いも、隣に並べればはっきりします。恵比寿の八席で、地方名・村名・1級のブルゴーニュを並べる夜を12月18日(金)と19日(土)にご用意しています。8種を各約45mlずつ、私の料理とともにお出しします。
まとめ
ブルゴーニュの地図は、覚える対象ではなく、読む順番です。
- 主な地区は5つ。北から順にシャブリ、コート・ド・ニュイ、コート・ド・ボーヌ、コート・シャロネーズ、マコネ
- 中央のコート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌを合わせた細い帯が、コート・ドールです
- ニュイは赤、ボーヌは白。この二語で、コート・ドールの半分は読めます
- 北から南へ下るにつれ、酸の鋭さから果実の丸みへと味わいの軸が移ります
- コート・ド・ボーヌは、赤の村が北寄り、ムルソーから南が白の一帯です
- 地名が指す範囲が狭くなるほど、格が上がります。ラベルは、地図の拡大率です
地図を見たあとは、同じ品種で範囲を変えて並べてみてください。北と南、広い範囲と狭い範囲。そこだけを変えて飲むと、地図の線が味の記憶に変わります。
ブルゴーニュが好き。でも、ラベルが読めない。そう感じている方へ、12月18日(金)と19日(土)に「ラベルの格付けがわかるブルゴーニュ」をご用意しました。地方名・村名・1級のブルゴーニュ8種を各約45mlずつ、恵比寿の八席で、シェフの料理とともに。会費は17,800円(税込)、ご予約はTableCheckにて承っており、満席の回から締め切ります。
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よくある質問
コート・ドールとは何ですか?
「黄金の丘」という意味で、ブルゴーニュの中央を南北に走る細い丘の帯を指します。北半分がコート・ド・ニュイ、南半分がコート・ド・ボーヌで、特級畑の多くがこの斜面に集まっています。行政上の県の名前としても使われています。
シャブリはブルゴーニュに含まれますか?
含まれます。ブルゴーニュの最北にある地区で、ほかの地区からは北西へ離れた位置にあります。品種はシャルドネで、造るのは白のみです。石灰質の土壌から来る塩気を思わせる酸が持ち味で、地図の上では飛び地のように見えます。
ワインに詳しくなくても、ひとりで参加できますか?
ワイン会はこれまで100回以上開いてきましたが、参加者の半数以上はおひとりでのご参加です。知識は要りません。席は8つだけで、一本ずつご説明しながら進めます。日程はワイン会のご案内にまとめています。
ブルゴーニュの村の名前が長いのはなぜですか?
元の村の名前に、その村でいちばん有名な畑の名前を足しているからです。ジュヴレ・シャンベルタンやピュリニー・モンラッシェのように、読みにくい地名の後半はたいてい畑の名前にあたります。ムルソーのように、畑の名前を足していない村もあります。
地図とラベルの格付けはどう関係していますか?
ブルゴーニュのラベルには地名が書かれ、その地名が指す範囲が狭くなるほど格が上がります。地方名、村名、1級畑、特級畑の順に、名乗れる土地が狭くなります。ただし格付けは土地の狭さを示す記号で、ご自身の好みに近いことを意味するわけではありません。
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