名刺入れが少し重くなって帰る。翌日、いただいた名刺を並べて、顔が思い出せない方が半分いる。三日後には、案内メールが受信箱に並んでいる。

そういう夜を何度か過ごすと、経営者交流会は意味がないのではないか、という気持ちが芽生えます。「経営者交流会 意味ない」と検索窓に打ち込んだことがある方も、少なくないと思います。

私は東京・恵比寿で、一日ひと組・八席のレストランを営みながら、ワイン会という集まりを主催してきました。同時に、参加する側として交流会に足を運んできた人間でもあります。その両方の席に座ってきて、感じていることがあります。意味がないのは、交流会という形式そのものではありません。

SUMMARY

結論:経営者交流会に意味がないのではなく、初対面で仕事の話をする会に意味がありません。 時間の無駄だったと感じる会には、参加者に余裕がなく、営業が先に立つという共通点があります。 反対に行って良かった会には、その時間そのものを楽しんでいる方が集まっていました。 参加費の水準は、その会に流れる余裕をかなり正直に映します。趣味や食事を軸にした会ほど、仕事は後からついてくるように思います。

関連する基礎知識は、ワイン初心者が最初に持つ三つの軸ワインのテイスティング方法でも紹介しています。

結論|意味がないのは経営者交流会ではなく、初対面で売り込む会です

経営者交流会の価値は、初対面で仕事の話をする場ではなく、同じ顔ぶれと何度も会って信頼が積み上がる場にあります。趣味や食事を軸にした少人数の会ほど、後から仕事につながる関係が生まれやすい傾向があります。

名刺を交換した相手は、まだ何者でもありません。肩書きと社名は分かっても、その方が何を面白がり、何に困り、どう判断する人なのかは、一枚の紙からは読み取れません。そこへいきなり商品の話を差し込めば、相手にとっては商談の開始です。関係が始まる前に、取引の話が始まってしまう。 これが、多くの交流会が徒労に終わる理由だと考えています。

順番が逆なのだと思います。人として面白がり合い、その上に信頼が乗り、信頼の上にようやく仕事の話が乗る。この順番を飛ばそうとする会が、その夜のうちに終わっていきます。

時間の無駄だったと感じる会に、共通していること

料理とワインを囲む少人数の交流会
名刺交換よりも先に、同じ料理と一本のワインを囲みます。

私自身が参加してきて、時間の無駄だったと感じた会には、驚くほど似た空気がありました。

ひとことで言えば、参加者に余裕がないのです。

営業が第一の目的になっていて、今にでも商品を売らなければならない。そういう状態の方々が集まる会は、開始から十分ほどでそれと分かります。名刺を差し出す速度が速く、相手の話を聞く時間が短い。目線が、話している相手ではなく、その後ろの次の相手を探しています。

誤解のないように書いておきたいのですが、これは人の質の話ではなく、置かれている状態の話です。数字に追われていれば、どなたでもそうなります。私にもそういう時期がありました。その状態の方ばかりが一室に集まると、場は交換所になります。交換所では、関係は育ちません。

もうひとつの共通点は、顔ぶれが毎回入れ替わることです。今日会った方と、次に会う予定がありません。次がないと分かっていれば、その場で結論を出そうとするのは自然なことです。会の設計が、参加者を焦らせているとも言えます。

行って良かったと思える会に、共通していること

反対に、行って良かったと思える会もあります。こちらにも共通点がありました。

参加者に、余裕があるのです。

営業が第一ではなく、「いい人がいたらいいな」という程度の温度で来ている。仕事につながれば嬉しいけれど、つながらなくてもこの夜は楽しかった、と思える状態で座っています。その方が数人いるだけで、場の空気は変わります。

そして、そういう会には、その時間そのものを楽しんでいる方が何人かいます。料理の話、ワインの話、旅の話をして、気づけば三時間が経っている。仕事の話は、出る夜もあれば出ない夜もある。その揺らぎを許している会が、後から効いてきます。

面白いのは、こうした会のほうが結果として仕事につながりやすいことです。売り込まないほうが売れる、という逆説ではありません。人として信用できるかを相手が判断する時間が、確保されているというだけのことです。

参加費は、その会に流れる余裕を映します

では、参加する前にその会の温度をどう見分けるのか。

私が使う判断材料は、実にそっけないものです。参加費の価格を見て、行くかどうかをある程度決めています。

経験上、参加費が安い会ほど営業感が強くなります。高い会ほど、参加者に余裕が出てきます。身も蓋もない話に聞こえるかもしれませんが、これは会の善し悪しというより、集まる方の状態を価格が選別している、ということだと考えています。

会費が数千円なら、参加のハードルは下がります。下がれば、その場で成果を回収しようとする動きが生まれやすくなる。一晩に相応の金額を払える状態の方は、その夜に成果を出さなくても構わないと思って座っています。価格は、その場に流れる時間の速度を決めているのです。

もちろん、高ければ良い会だと申し上げるつもりはありません。高額でも中身が伴わない会はありますし、安価でも主催者の設計が行き届いた会もあります。それでも、初めて名前を聞いた会について事前に得られる情報が限られているとき、参加費はいちばん正直な手がかりになります。

経営者が探しているのは、案件よりも相談できる相手

経営者の孤独、という言い方があります。決めるのは自分ひとりで、判断の重さを分かち合える相手が社内にいない。そういう側面は、確かにあると思います。

ただ、お客様と接していて感じるのは、それより一段手前のニーズです。経営者を通して、相談も遊びも仕事も一緒にできる相手を作りたい。 そう考えている方が、とても多いのです。

相談だけの相手でも、遊びだけの相手でもありません。その両方ができて、必要があれば仕事も一緒にできる。そういう関係は、何度か時間を共にして、この方はこういうときにこう考えるのか、と分かってきてから、ようやく形になります。

だからこそ、趣味からつながる交流会が良いと私は考えています。ワインでも、器でも、山でも構いません。共通の何かがあれば、仕事以外の話ができます。仕事以外の話ができる相手は、仕事の話もしやすい相手になります。

交流会を「案件を取りに行く場所」と定義してしまうと、この道筋は見えなくなります。探していたのは案件ではなく、案件を一緒に運べる相手だった。そう気づいてから会を選び直すと、行き先はかなり変わってきます。

東京で経営者交流会を探すときに、私が見ているところ

東京には、経営者交流会と名のつく集まりが数えきれないほどあります。東京で経営者交流会を探すとき、私が見ているのは次の四つです。特定の団体名は挙げません。どの会にも当てはめられる軸としてお使いください。

見る軸意味を持ちにくい会意味を持ちやすい会
参加費安い相応に高い
参加者の温度今日中に売らなければならないいい人がいたらいい、くらい
会の中心にあるもの名刺交換と自己PR食事・ワイン・趣味
顔ぶれ毎回入れ替わる積み重なっていく

参加費は、先ほど書いた通りです。安いか高いかより、その価格がどういう状態の方を集めるかを考えると判断しやすくなります。

参加者の温度は、事前の案内文から読み取れます。「人脈を広げる」「ビジネスチャンス」が前面に出ている会と、その日に何を飲み、何を食べるのかが書かれている会とでは、集まる方が変わります。

会の中心にあるものは、主催者が何を用意しているかを見ます。会場と名札だけの会と、料理とワインを設計している会。後者のほうが、参加者は自分を売り込まなくてよくなります。

顔ぶれは、参加してみないと分かりません。もっとも、同じ主催者が継続して開いている会かどうかは事前に分かります。継続している会には、二度目、三度目の方がいます。三度目の相手は、初対面の相手とはまったく別の存在です。

ワインから始まった、経営者同士の関係

ここからは、主催する側に立ってきた私自身の話です。

仲良くなる、信頼される、相談される。そして一緒に仕事をする

Na Team Lab では、ワイン会という集まりを続けてきました。そして、この会をきっかけに始まった経営者同士の関係が、いくつも生まれています。

流れは、驚くほど同じ形をたどります。

まず、ワインという共通の趣味を通して仲良くなります。この銘柄が好きだ、この造り手は面白い、去年のあの一本はどうだった。そんな話を重ねるうちに、席が近くなります。

次に、信頼されて、仕事の話になります。仕事の話を「する」のではなく「なる」のです。趣味の話の延長で、最近こういうことで困っていて、という言葉がこぼれる。それを聞いた相手が、それならこういうやり方がある、と返す。商談ではなく、相談です。

そこから、一緒にできるところ、依頼できるところが見つかります。互いの事業の輪郭が見えているので、どこが噛み合うかが具体的に分かる。そして、一緒に仕事をするようになる。

仲良くなる、信頼される、相談される、一緒に仕事をする。この四つの段階を飛ばした関係を、私は見たことがありません。初対面で四段目から入ろうとするのが、意味を持てない交流会の正体だと思います。

主催する側として、自己紹介に時間をかける理由

私が会を組むときに置いている軸は、ふたつだけです。

ひとつは、どの会でも食事とワインを第一に考えること。その上で、つながった方々が仲良くなってくださればよい、と思っています。交流を目的に据えると、参加者は交流を「しなければならない」と感じます。食事とワインを目的に据えれば、交流は勝手に起きます。

もうひとつは、自己紹介をしっかりしてもらうことです。これは意識的に行っています。

理由は単純で、人数が多い場合、どの方に声をかけたら仲良くなれそうかを、参加者が最初に把握できるからです。自己紹介がないまま乾杯に入ると、隣の席の方としか話せません。一人ひとりが何をしていて何を面白がっているかを最初に共有しておけば、その後の数時間で、誰と話すかを自分で選べます。場の設計とは、そういうことだと考えています。

Na Team Lab のワイン会は、7〜8割ほどの方がお一人でお越しになります。会費は、料理とワインの内容に応じて会ごとに設定し、開催ページで事前にお伝えしています。中心は30〜40代で、男女比はおおむね半々です。不動産、ネットワークビジネス、保険など、明らかな営業目的でのご参加はお断りしています。会ごとに案内ページを作り、その回のコンセプトを事前に公開しているのも、来ていただく方の温度を揃えるためです。

まとめ

経営者交流会について、この記事でお伝えしたことを整理します。

  • 意味がないのは交流会ではなく、初対面で売り込む会。関係より先に取引が始まると、その夜で終わります
  • 無駄だった会と良かった会を分けるのは「余裕」。営業が第一になると場は交換所になり、その時間を楽しんでいる方がいる会は後から効いてきます
  • 参加費は、その会に流れる余裕を映します。安いほど営業感が強まり、相応に高いほど余裕が生まれます
  • 経営者が探しているのは案件ではなく、相談も遊びも仕事も一緒にできる相手。だからこそ趣味を軸にした会が向いています
  • 仕事は、仲良くなる・信頼される・相談される、の後に来ます。この順番を飛ばせる会を、私は見たことがありません

行くかどうか迷ったときは、その会の中心に何が置かれているかを見てください。名札と会場だけなのか、料理とワインなのか。卓の中心にあるものが、その夜に何が起きるかを決めています。

よくある質問

経営者交流会に一人で参加しても浮きませんか?

Na Team Lab のワイン会では、7〜8割ほどの方がお一人でお越しになります。お一人での参加を前提に会を組んでいますので、連れ立って来なければ居場所がない、ということは起きにくい設計です。むしろお一人のほうが、その場の方々と話す時間は長くなります。

20代や30代の若手が参加しても大丈夫でしょうか?

中心となるのは30〜40代で、20代の方は少なめです。60代の方までいらっしゃいますので、年齢の幅は広いほうだと思います。男女比もおおむね半々です。年齢よりも、ワインを楽しみたいという動機をお持ちかどうかが、なじめるかどうかを分けています。

経営者交流会の会費は、どのくらいが相場ですか?

会の形式によって幅が大きく、相場を一律には申し上げられません。Na Team Lab のワイン会も、料理とワインの内容に応じて会ごとに参加費を設定し、開催ページで事前にお伝えしています。価格だけでなく、何に費用が使われているかまで確認して選ぶことをおすすめします。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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肩書きより先に、同じ一本を囲む。

売り込みを目的にせず、料理とワインを共通の話題にして過ごす少人数の会です。

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