「来年で、五十年になるの」。母から電話でそう聞かされて、はじめて指を折って数えた。そんな方は少なくないと思います。

まず確かめたくなるのが、金婚式とは何年目を指すのか、という点です。銀婚式は聞いたことがあるけれど、金婚式との差はすぐには出てこない。調べてみると、その先にも記念日が続いていることを知る。

定義が分かった瞬間に、次の問いが立ち上がります。では、何をすればいいのか。

この記事では、金婚式の定義を最初に閉じたうえで、誰が祝うのか、どこで席を設けるのかまでを整理します。書いているのは、出張料理人として年間200件を超える食卓に伺ってきた者です。ご夫婦ご自身が結婚記念日を過ごす話ではなく、親を祝う子世代の立場から書いていきます。

SUMMARY

結論:金婚式とは、結婚50周年を祝う記念日のことです。 25年目の銀婚式に対して、50年目が金婚式にあたります。その次は55年目のエメラルド婚式、60年目のダイヤモンド婚式と続きます。 主催されるのは、ご本人ではなくお子さま世代であることがほとんどです。そして贈り物を選ぶより先に決まるのが、どこで食事の席を設けるかという点です。 ご主役が70代を迎えている行事ですから、移動の負担と、疲れたときに休める場所があるかどうかが、会場を選ぶときの軸になります。

金婚式とは|結婚50年目を祝う記念日

金婚式とは、結婚50周年を祝う記念日のことです。読み方は「きんこんしき」といいます。

結婚記念日には、年数ごとに名前がついています。1年目の紙婚式から始まり、年を重ねるにつれて、贈られる素材が柔らかいものから硬く、価値の高いものへと移っていく。紙、綿、革、と続いた先の50年目に、金が置かれています。年月そのものを、素材の硬さで表そうとした呼び名です。

年数名称
10年錫婚式
15年水晶婚式
20年磁器婚式
25年銀婚式
30年真珠婚式
35年珊瑚婚式
40年ルビー婚式
45年サファイア婚式
50年金婚式
55年エメラルド婚式
60年ダイヤモンド婚式

銀婚式との関係

銀婚式は25年目です。金婚式は、ちょうどその倍にあたります。

25年ごとに大きな節目が置かれている、と覚えていただくと混同しにくくなります。間の年にも名前はありますが、実際に席を設けて祝われることが多いのは、この銀と金の二つです。

なぜ銀と金なのか。ここには諸説あり、由来を一つに絞ることはできません。ただ、どちらも時間をかけて磨かれることで輝きを増す金属である、という点は共通しています。

金婚式の次にくるもの

50年を越えると、節目の間隔は5年ごとになります。55年目がエメラルド婚式、60年目がダイヤモンド婚式です。

金婚式は終着点ではなく、その先へ続く道の途中にある節目です。祝う側としては、ここで一度きちんと形にしておくと、次の節目にも自然につながっていきます。

金婚式は誰が祝うのか

皿に盛りつけられた一品
五十年分の食卓のいちばん近くで、いちばん良い一食を。

金婚式を祝うのは、ご本人たちではありません。

五十年を連れ添ったご夫婦が、自分たちで店を予約して、自分たちで人を呼ぶ。そういう形をとられる方も、いないわけではないと思います。けれど多くの場合、席を設けるのはお子さま世代です。

私たちがご自宅に伺う会でも、ご依頼をくださるのはお子さん世代であることが大半です。当日の主役はご両親で、連絡をくださるのはその息子さん、娘さん。この形を、繰り返し見てきました。

育ててもらった側が、その節目に卓を用意する。順番が一度だけ入れ替わる日なのだと思います。

兄弟姉妹で開く場合

ご兄弟がいらっしゃる場合、費用と役割をどう分けるかが最初の相談事になります。

ここで押さえておきたいのは、幹事役をひとりに決めておくことです。会場の予約と当日の進行を同じ方が担えば、細かい判断がその場で下せます。複数人で分担すると、決めるたびに確認が挟まり、日程だけが後ろへずれていきます。

日程の候補を二つか三つに絞ってから声をかけると、話がまとまりやすくなります。全員に白紙で相談すると、決まらないまま時間だけが過ぎていきます。

何をするか|贈り物より席を設けること

「金婚式に何を贈ればいいか」。おそらく、多くの方が最初に検索される問いです。

金製品、名入れの品、花。選択肢はいくらでも見つかりますし、贈り物を否定するつもりはありません。形に残るものが、あとから効いてくることもあります。

ただ、70代のご夫婦にとって、家に置くものを増やす時期ではなくなっている。そういう現実もあります。

五十年目に手に入りにくいもの

五十年連れ添った二人にとって、いちばん手に入りにくいものは何でしょうか。

私は、家族が同じ卓に揃っている時間だと思っています。

子どもは独立し、孫は学校や仕事で忙しい。全員の予定が合う日は、一年に何度もありません。その一日を作ること自体が、じつはもっとも贈りにくい贈り物です。

だから金婚式は、何を渡すかより、どこにどう集まるかのほうが本題になります。

写真と花は食卓と相性がよい

贈り物を考えるなら、その日の食卓と組み合わせられるものが向いています。

花は卓に置けますし、写真はその場で撮れます。どちらも、集まった時間そのものを残す方向にはたらきます。

旅行を贈られる方もいらっしゃいます。喜ばれることも多いのですが、移動の負担という一点だけは、あらかじめ考えておいたほうがよいと思います。その理由を、次にお話しします。

会場は「疲れたときに休めるか」で決まる

席を設けると決めたら、次は場所です。

選択肢は三つあります。レストランや料亭に行く。自宅に集まって、家族が料理を用意する。そして、自宅にシェフを呼ぶ。費用や手間を並べた比較は「還暦祝いの食事をどこでするか」の記事で表にまとめていますので、迷われている方はそちらもご覧ください。

ここでお伝えしたいのは、金婚式にだけあてはまる、もう一つの軸です。

主役が70代であるということ

還暦のお祝いであれば、主役はまだ60歳です。高齢という言葉が似合う年齢ではありません。

けれど金婚式は違います。20代半ばでご結婚された場合、50年目のご本人は70代後半にさしかかっています。その席でいちばん動きにくいのが、その日の主役なのです。長寿のお祝いのなかでも、この構図は金婚式に特有のものだと思います。

年齢が上がるにつれて、移動すること自体が負担になっていきます。会場までの距離、乗り換え、駅からの徒歩。当日の疲れは、席に着いた時点ですでに始まっています。

家にあって店にないもの

ただ、移動距離の話だけであれば、近い店を選べば済みます。私が会場選びでもっと大きいと感じているのは、別のことです。

疲れたときに、すぐ休める環境があるかどうかです。

家には、それがあります。少し横になって、また卓に戻る。この往復ができます。店には、ほとんどの場合それがありません。

三時間の会食を、一度も休まずに座り続ける。70代の方にとって、これは想像以上の負担です。逃げ場があるかどうかで、その日の体力の使い方が変わってきます。

実際、ご自宅に伺った会のあとにいただく感想で、くり返し聞こえてくるのが「家でゆっくりできた」という一言です。料理の話より先に、この言葉が出てくることも少なくありません。

70代の食卓で変えていること

ここからは、実際にどう組み立てているかをお話しします。

金婚式そのものを承った経験は、まだありません。けれど70代の方が主役となる会には、いくつも伺ってきました。そのときに変えていることが、いくつかあります。

塩味を抑える

まず、塩の量です。

Na Team では、塩は引き算で旨味を彫るものだと考えています。足りなければ素材の味は眠ったまま、過ぎれば旨味は塩辛さに溶けて消える。その狭間にある一点を、私たちは「ピーク」と呼んでいます。

70代の方に出すコースでは、このピークをやや手前に置きます。塩味を抑える、という言い方をしていますが、味を薄くするのとは違います。輪郭は残したまま、その輪郭を強く押し出しすぎないという調整です。

量と出す速さ

次に、量です。

たくさんは召し上がらない、という前提で組み立てます。一皿の分量を落とし、そのぶん一皿ごとの密度を上げる。品数で満たすのではなく、一皿の質で満たす考え方です。

そして、出す速さも変えます。

コースは、皿と皿の間隔で流れが決まります。速すぎれば追われ、遅すぎれば間延びする。70代の卓では、この間隔を広めにとります。会話が途切れてから次を出すのではなく、話がひと巡りしたころに、静かに次が置かれている。そういう速さです。

お孫さんが同席するとき

三世代が揃う席では、お子さまへの対応も必要になります。

このとき、コースの全体像は変えません。大人用と子ども用で、まったく別のものをお出しすることはしていません。年齢によって食べられるものに置き換えながら、同じ流れを通します。

同じコースを、三世代が同じ速さで進んでいく。前菜が出れば全員に前菜が出て、次の皿も一緒に来る。卓の上の景色が、途中で分断されないということです。五十年の節目にご家族が揃う席では、これが意外と効いてきます。

最後の一枚を撮る

会の終わりには、記念撮影のお手伝いをしています。

ご家族だけで撮ろうとすると、シャッターを押す方がどうしても一人、枠の外に出ることになります。そして多くの場合、それは当日ずっと動き回っていた主催者です。

私たちが撮れば、全員が入ります。席を用意したご本人も、その一枚の中にいられるということです。

こうした組み立て方や、料金の考え方については、「出張シェフの料金体系」の記事でもお伝えしています。

当日の進行|挨拶と写真の順番

会場が決まったら、当日の組み立てです。おおまかには、次の流れがおさまりやすいと感じています。

1. 全員が着席し、主催者が短く挨拶をする

2. 乾杯

3. 前半の料理を楽しみながら、近況を話す

4. 料理の合間に、贈り物を渡す

5. 途中で一度、休む時間をとる

6. デザートのあと、記念撮影で締める

休む時間をはじめから入れておく

ここで一つだけ加えておきたいのが、五番目です。

休憩を「必要になったら取るもの」として扱うと、主役は言い出しにくくなります。自分のために場を止めることを、ためらわれるからです。

はじめから進行に組み込んでおけば、その気遣いが要らなくなります。二時間を超える会であれば、料理の区切りに合わせて一度、席を立てる時間を作っておくと安心です。

写真は最後に置く

記念撮影を最後に置くのは、卓の上が片づいているからです。

皿が下がり、全員の手が空く。その状態がもっとも撮りやすく、会の締めくくりとしても自然に収まります。

まとめ

金婚式について、この記事でお伝えしたことを整理します。

  • 金婚式とは、結婚50周年を祝う記念日。25年目の銀婚式のちょうど倍にあたる
  • その次は55年目のエメラルド婚式、60年目のダイヤモンド婚式と続く
  • 席を設けるのは、ご本人ではなくお子さま世代であることが多い
  • 贈り物より、家族が同じ卓に揃う時間のほうが手に入りにくい
  • 主役が70代である以上、移動の負担が会場選びの前提になる
  • 決め手は距離よりも、疲れたときに休める場所があるかどうか
  • 70代の卓では、塩味と量と出す速さを調整している

五十年という年月は、数えれば一行で済みます。けれどその一行の下には、一万八千日ぶんの食卓が積み重なっています。金婚式とは、その積み重ねをもう一度、家族で囲み直す日なのだと思います。

よくある質問

次のステップ

結婚五十年の主役は、多くの場合70代を迎えていらっしゃいます。慣れないレストランへの移動そのものが、負担になることも珍しくありません。

ご自宅であれば、その心配は消えます。

Na Team Lab は、食材も器もグラスもカトラリーも携えて伺います。ご用意いただくのはキッチンだけで、後片付けまで引き受けます。お客様の手は、ひと指も汚れません。

コースはお一人15,000円から、ワインのペアリングをつける場合は22,000円。1回のご依頼につき90,000円からで、ご家族の集まりは6〜16名さまでお受けしています。

五十年間の食卓のいちばん近くで、いちばん良い一食を。器もグラスも、こちらで揃えて伺います。

金婚式のご相談や、Na Team Lab の出張料理・レストランの詳細は、公式LINEにてご案内しています。ご検討の際は、こちらからお声がけください。

金婚式とは何年目のことですか?銀婚式とはどう違いますか?

金婚式は結婚50周年、銀婚式は結婚25周年を指します。金婚式のほうが、ちょうど倍の年数にあたります。25年ごとに大きな節目が置かれている、という関係で覚えていただくと、迷いにくくなります。

金婚式の次にくる記念日は何ですか?

55年目のエメラルド婚式、60年目のダイヤモンド婚式と続きます。50年を越えると節目の間隔が5年ごとになり、それぞれに宝石の名が与えられています。金婚式は、その先へ続く道の途中にある節目です。

70代の両親を招いて食事会を開くとき、気をつけることはありますか?

移動の負担と、途中で休める場所があるかどうかを先に確かめておくと安心です。私たちがご自宅に伺うときは、塩味を控えめにし、量と提供のペースをその日の様子に合わせて調整しています。

川原壯太(Na Team Lab シェフ)
AUTHOR 川原 壯太 Na Team Lab シェフ

恵比寿のレストランを拠点に、年間200件を超える出張料理・会食を手がける。5味のバランスやペアリングなど「9つの原則」に基づいて食卓を設計し、料理教室・ワイン会も主宰。

Instagram @nateam.kawahara


移動のいらない席を、ご自宅に。

結婚五十年の主役は、多くの場合70代を迎えています。慣れないレストランへの移動そのものが負担になることもあります。食材も器もグラスもカトラリーも携えて伺い、後片付けまで引き受けます。ご用意いただくのはキッチンだけです。

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