「会長が、秋の叙勲を受けられる」。社内にその一報が回った数日後、祝賀会の発起人、あるいは幹事という役が、誰かの机の上に静かに置かれます。
受章そのものは慶事です。けれど会を開く側に回った方から見れば、分からないことばかりが並びます。誰の名前で開くのか。いつ開くのか。何人を招き、いくら集め、当日は何をどの順で進めるのか。
この記事では、叙勲の祝賀会の形式を整理したうえで、人数から会を設計するという考え方をお伝えします。書いているのは、出張料理人として年間200件を超える食卓に伺ってきた者です。祝いの席を用意する側の立場から、順に見ていきます。
結論:叙勲の祝賀会は、受章者本人ではなく発起人が主催し、受章から3〜6か月後に開くのが一般的です。 発起人は会社や団体の代表、あるいは親しい友人が務め、案内や集金といった実務は幹事が担います。 100名を超える会ならホテルの宴会場、30名までなら貸切レストランや出張料理という形が向いています。 会費はお一人1万円から2万円のあたりが目安とされ、記念品代を含めるかどうかを先に決めておくと、その後の計算が静かに進みます。 この記事では、叙勲の祝賀会を人数から設計していく考え方をお伝えします。
あわせて、貸切の人数を考えると卓を囲む会の目的を考えるもご覧ください。
叙勲の祝賀会とは|受章者本人ではなく、発起人が開く会
叙勲は、長年の功績に対して国から贈られる栄典です。受章者ご本人が「自分を祝う会」を企画するのは、形として据わりが悪い。だからこそ、周囲が発起人を立てて会を開きます。
叙勲の祝賀会を、受章者が主催する会だと思って準備を始めると、費用の持ち方から招待状の差出人まで、すべてが噛み合わなくなります。最初に押さえるのは、ここです。
| 立場 | 誰が務めるか | 主な役割 |
|---|---|---|
| 発起人 | 会社や団体の代表、業界の先輩、親しい友人 | 会を開くことを決め、名前を出して招く。当日の挨拶 |
| 幹事 | 社内の総務・秘書室、発起人に近い実務担当 | 日程と会場、料理、会費、招待状、当日の進行 |
| 受章者 | 主役 | 当日の謝辞。費用と運営には関わらないのが基本 |
発起人は、おひとりでなくてもかまいません。複数名が名を連ね、その中から発起人代表を置く形も広く取られています。関係先が広い方の受章では、むしろそのほうが自然に収まります。
そして幹事は、できるだけ早い段階で決めておくことをおすすめします。発起人が決まっても、幹事が決まらないまま日が過ぎてしまう会は、少なくありません。
いつ開くか|春と秋の叙勲から、祝賀会までの道のり

叙勲は、春と秋の二度、定期的に発表されます。春の叙勲は4月29日、秋の叙勲は11月3日。褒章も同じ日に発表されます。
発表のあとには、伝達式と拝謁が控えています。受章者ご本人にとって、この時期はもっとも慌ただしい数週間です。そこへ祝賀会を重ねると、主役の体力が先に尽きてしまいます。
ですから叙勲の祝賀会の時期は、受章から3〜6か月後に置かれることが多い。秋の叙勲であれば、年明けから春にかけてということになります。
準備の順序は、おおむね次のように進みます。
- 発表の直後:発起人を決め、幹事を立てる
- 3か月前:招く範囲と人数を決め、日程と会場を押さえる
- 1か月半前:招待状を発送する
- 3週間前:出欠を締め切る
- 2週間前:料理、席次、進行表を確定する
- 当日
いちばん先に決まるべきものは、日程でも会場でもなく、招く範囲です。範囲が決まれば人数が決まり、人数が決まれば会の形が決まります。会場から探し始めると、人数に会場を合わせるのではなく、会場に人数を合わせることになってしまいます。
なお、料理のご相談は2週間前までにいただけると、当日まで仕込みを重ねられます。早く決まっているほど、お応えできる幅は広がります。
規模の決め方|人数が、会の形をほとんど決めてしまう
叙勲の祝賀会を調べると、ホテルの大宴会場の事例が先に並びます。100名、200名という規模で、円卓が整列している写真です。
それはひとつの正解です。ただ、すべての受章がその形を必要とするわけではありません。
| 人数 | 向いている会場 | 料理の形 | 受章者が一人ひとりと話せるか |
|---|---|---|---|
| 〜30名 | 貸切レストラン、会社や自宅への出張料理、タワーレジデンスのパーティールーム | 着席コース、またはビュッフェ | 話せる |
| 30〜100名 | ホテルの中宴会場、クラブラウンジ | 立食ビュッフェ | 半分ほど |
| 100名以上 | ホテルの大宴会場 | 立食ビュッフェ、円卓での供食 | 難しい |
いちばん右の列が、人数を決めるということの意味です。
私たちがこれまでに伺ってきた会でも、規模によって設計はまったく変わります。丸の内のクラブラウンジでの30名規模の会、六本木のタワーレジデンスのパーティールームでの20名の着席コース、タワーレジデンスのパーティールームでの70名規模の立食ビュッフェ。同じ祝いの会でも、人数が変われば料理の形も、出す順序も、サービスの入り方も変わります。
70名規模の会では、15種ほどを用意し、出席者が到着する前に料理が揃っている状態をつくりました。人数が多く、進行が読みにくい会では、先に出し切る設計が効きます。
一方で20名の会では、大皿のフルコースを着席でお出ししました。このとき起きたことは、あとの章でもう一度書きます。
会費と費用|記念品とお車代を、先に決めておく
叙勲の祝賀会の会費は、お一人1万円から2万円のあたりが目安として語られます。会場の格と料理の形で動くため、幅があるのは当然のことです。
ただ、会費で迷う方が本当に困っているのは、金額そのものではありません。どこまでを会費に含めるかが決まっていないことです。
| 項目 | 扱いの考え方 |
|---|---|
| 料理・飲みもの | 会費の中心。人数と形式で単価が決まる |
| 会場費 | 会場と日程で動く。見積の段階で確認しておく |
| 記念品・引き出物 | 会費に含めるか、発起人側で持つかを先に決める |
| お花・卓の設え | 会費に含めるのが一般的。当日ずっと目に入る部分 |
| 受章者からの返礼 | 受章者側の判断。発起人が立て替えない |
この表のうち、曖昧になりやすいのは三行目です。記念品代を会費に含めるかどうかを決めないまま案内を出すと、出席者ごとに受け取り方が分かれてしまいます。先に決めて、招待状に一行書いておく。それで済む話です。
費用の負担について、もうひとつ。受章者ご本人が費用を持たないのが基本の形です。会社の会長や創業者の受章であれば、会社が持つ形になることもあります。
その場合の実務として、Na Team Lab では見積書と請求書を発行しています。請求書の宛名を分けることもできます。お支払いは、初回は事前のお振込みまたは当日、二回目以降は月末締め・翌月末払いにも対応しています。なお、接待交際費として計上できるかどうかは税務上の判断になりますので、顧問の先生にご確認ください。
招待状と式次第|進行の型だけ押さえておく
招待状に入れる要素は、ほぼ決まっています。発起人の名前、受章された勲章の名称、日時、会場と地図、会費、服装の案内、返信の期限。文例そのものは、調べれば整ったものが見つかります。
服装は「平服で」と案内しても、実際には略礼装や落ち着いたスーツ、ワンピースの方が多く集まります。受章者が勲章を佩用される場合もありますので、その旨を一行添えておくと、出席者の判断が楽になります。
式次第は、次のような型で組まれることが多いです。
1. 開会の辞(幹事)
2. 発起人代表の挨拶
3. 受章の経緯の紹介
4. 乾杯
5. 会食・歓談
6. 祝辞、花束や記念品の贈呈
7. 受章者の謝辞
8. 記念撮影
9. 閉会の辞
ここで、料理をお出しする側から一点だけお伝えしたいことがあります。
この進行表の上では「会食・歓談」が一つの枠になっていますが、現場ではそうなりません。
祝辞も、贈呈も、余興も、食事の途中に差し込まれます。食事の時間と進行の時間は、分かれていない。重なっているのです。幹事が進行表を引くときには分けて考えますが、当日は混ざります。
ですから料理の側は、中断されることを前提に組みます。前半に多めにお出ししておき、挨拶や余興の進み具合をその場で見ながら、残りを出すタイミングを決めていく。進行表どおりに出すのではなく、会の呼吸に合わせて出す、という運び方です。
乾杯の時刻についても同じです。時計で決めるのではなく、人数の集まり具合で決める。開始の15分ほど前から入場できるようにして、受付を終えた方からウェルカムドリンクをお渡しし、ある程度揃ったところで発起人代表の挨拶、そして乾杯へ。この形が、もっとも滞りません。
三十名までの、内輪の祝賀会
ここからが、この記事の本題です。
ご家族と、親しい取引先と、社内の方だけ。招く範囲をそこまでに絞れば、叙勲の祝賀会は30名以内で収まります。そしてこの規模には、大宴会では手に入らないものがあります。
受章者が、出席者の一人ひとりと言葉を交わせるということです。
勲章を飾る卓をつくる
受章者が勲章を身につけておられるのは、記念撮影の数分かもしれません。けれど勲章と賞状そのものは、会のあいだずっと置いておくことができます。
入口の近くに、小さな卓をひとつ。そこに勲章と賞状を据え、花を添える。出席者は会場に入った瞬間にそれを見て、何の会に来たのかを理解します。挨拶で説明するより早いのです。
花と設えを、贈り物ではなくその日の空間のほうに回すという考え方です。身につけるものは撮影で終わりますが、卓に置いたものは閉会まで全員の目に入り続けます。
受章者が疲れない時間配分
叙勲を受けられる方の多くは、70代以上です。会を設計する際に、この一行がもっとも重い前提になります。
私たちがご自宅や会社に伺う会で、なぜその場所を選んだのかを伺うと、まず返ってくるのが「移動しなくていいから」という答えです。年齢が上がるにつれて、移動そのものが負担になってきます。そして負担は往復です。
もうひとつのほうが、本質かもしれません。疲れたときにすぐ休める場所が、自分の建物にはあって、宴会場にはない。 会の途中で少し休みたくなったとき、自社の会議室やご自宅であれば、隣の部屋に移れば済みます。十五分ほど休んで、また卓に戻ってこられます。
時間については、2時間から2時間半で収めることをおすすめしています。提供のペースは、もっともゆっくり召し上がる方に合わせます。皿が続けて出てくると、主役だけが追いつけなくなるからです。
記念撮影は、皿が下がって全員の手が空いたときがいちばん撮りやすい。会の締めくくりに置くと、自然に収まります。私たちも、最後の撮影をお手伝いしています。
用意する側が、座っていられるか
もう一点、幹事の方にお伝えしておきたいことがあります。
これまでに伺ってきた会で、繰り返し見てきた風景があります。主催された方が、会場を回すためにあまり食べきれていない、という風景です。
叙勲の祝賀会は、受章を喜ぶために開かれます。けれど喜びを伝えるために動き続けている当人が、卓に座れていない。この構図は、規模が大きくなるほど強く出ます。
実際、主催される方が本当に望んでいるのは、料理を召し上がることよりも、出席者と話すことです。それなら、その場をつくることに専念していただいたほうがいいと私は考えています。
料理とドリンクが切れないようにする仕事、取り分けて配る仕事、片付ける仕事。それらはこちらで引き受けます。過去には、会場の手配から料理、ドリンク、当日のサービスまでを一括でお任せいただいた会もありました。手配先が分散すると、幹事の負担はそこで一気に増えます。
そして主役についても、同じことが言えます。六本木のタワーレジデンスで20名の会を請けたとき、大皿のフルコースを着席でお出ししました。すると出席者が自然に取り分けてくださり、主役にも他の方とまったく同じように料理が届いたのです。立食で主役が食べ損ねるのは、料理の内容の問題ではなく、提供形式が生む結果です。着席と大皿と取り分けという形が、主役を食卓に留めます。
乾杯酒と、料理の設計
乾杯には、シャンパーニュやスパークリングワインが選ばれることが多いです。音が立ち、泡が上がり、全員の視線が一点に集まる。祝賀会の最初の数十秒を預けるのに、向いた飲みものだと思います。
思い入れのある一本を持ち込みたい、というご相談もよくいただきます。Na Team Lab ではワインの持ち込み料をいただいておらず、本数の制限もありません。恵比寿の店で開く場合も、港区や丸の内の会場を手配する場合も、この条件は変わりません。ワイングラスは約100脚を揃えていますので、人数に合わせてご用意できます。
料理については、受章者の年齢を前提に設計を変えます。
Na Team には「塩は引き算で旨味を彫る」という考え方があります。塩が足りなければ素材の旨味は眠ったまま、過ぎれば旨味は塩辛さに溶けて消える。その狭間にあるピークを探る作業です。ご年配の方が主役の日は、このピークを少し手前に置きます。塩味を抑え、出汁や火入れの側で輪郭を立て直すという設計です。
量も、一皿を小さくして間を空けます。品数を削るのではなく、一度に運ぶ量を減らす。そして噛み切りやすいかたちに整えます。食べやすく整えることは、味を落とすこととは別のことです。
名刺が交わされる会であれば、設計はもうひとつ変わります。手が塞がることが最大の障害になるため、手で持てるフィンガーフードや、一口で食べきれる大きさに寄せます。取り皿に取りやすく、ひと口で完結する形にしておけば、会話と食事が両立します。
品数の目安としては、30名規模で10品ほどをお出しすることが多いです。ただしこれは目安で、固定のメニューというものは私たちにはありません。出席者の構成と会の性格を伺って、その会のために組み直します。
もし可能であれば、ひとつだけ事前に伺いたいことがあります。受章者が昔から好んで召し上がっていたものを、ひとつ教えていただきたいのです。それが分かれば、コースのどこかに、その記憶に触れる一皿を置くことができます。長年の功績に対して贈られた勲章の会なのですから、料理のほうも、その長さのどこかに触れていたいと思うのです。
まとめ
叙勲の祝賀会について、この記事でお伝えしたことを整理します。
- 叙勲の祝賀会は受章者本人ではなく、発起人が名前を出して開く会
- 発起人は代表や友人、実務は幹事が担う。受章者は費用と運営に関わらない
- 春の叙勲は4月29日、秋の叙勲は11月3日に発表。祝賀会は受章から3〜6か月後が多い
- 先に決めるべきは会場ではなく招く範囲。範囲が人数を決め、人数が会の形を決める
- 会費はお一人1万円から2万円が目安。記念品代を含めるかを先に決めて招待状に書く
- 進行表の「会食・歓談」は現実には進行と混ざる。料理は中断を前提に出す
- 30名までなら、受章者が出席者の一人ひとりと話せる会になる
勲章は、長い年月のあとに届きます。その年月を知っている方ばかりが集まる会なら、形式よりも、誰と誰が話せたかのほうが残るのではないかと思います。人数を決めるという作業は、その日の距離を決めるという作業でもあります。
次のステップ
叙勲の祝賀会は、受章された方の長い年月に対して開かれる会です。その日の主役が、移動と気づかいだけで体力を使い果たしてしまうのは、できれば避けたいところだと思います。
人数を絞れば、会の形は選べます。
Na Team Lab は、恵比寿で6〜8名さまの完全貸切のレストランを一日ひと組で営みながら、ご自宅や会社、タワーレジデンスのパーティールームへ伺う出張料理も承っています。食材も器もグラスもカトラリーも携えて伺い、後片付けまで引き受けます。ご用意いただくのはキッチンだけで、お客様の手は、ひと指も汚れません。
着席のコースはお一人15,000円から、ワインのペアリングをつける場合は22,000円。いずれも6〜16名さま、税・サービス料・出張費込みです。1回のご依頼につき90,000円からで、17名さま以上はビュッフェ形式となり、お一人8,000円からでお受けしています。20名から30名が入る会場の手配もご相談いただけます。対応エリアは基本的に東京都内で、ご相談は2週間前までにいただけると、当日まで仕込みを重ねられます。
叙勲の祝賀会のご相談や、Na Team Lab の出張料理・レストランの詳細は、公式LINEにてご案内しています。ご検討の節は、こちらからお声がけください。
よくある質問
叙勲の祝賀会の費用は、受章者本人が出すべきですか?
受章者ご本人が費用を負担しないのが基本の形です。発起人が会費を集めて運営し、不足分を発起人側で持つという組み立てが一般的です。会社の会長や創業者の受章では、会社が費用を持つ形になることもあります。その場合は見積書と請求書の発行で対応できます。
褒章の祝賀会も、叙勲と同じ形で開いてよいのでしょうか?
進め方はほぼ同じと考えて差し支えありません。褒章も春と秋の同じ日に発表され、発起人を立てて受章から数か月後に開く流れが取られます。招待状に記す名称が勲章名から褒章名に変わる点だけ、間違えないようご確認ください。
家族だけで叙勲をお祝いしてもよいのでしょうか?
差し支えありません。関係先への祝賀会とは別に、ご家族だけの食事会を設ける方もいらっしゃいます。受章者の体力を考えると、むしろこの形のほうが落ち着いて過ごせることもあります。6名さま以上でしたら、ご自宅へ伺う形でもお受けしています。
ご依頼の前に、料理を確かめる体験ランチ。
法人ケータリングをご検討中の方へ、恵比寿の店舗で料理をご体験いただけます。担当者様・役員の方々もご一緒に。1〜8名様 / お一人様15,000円(税込)・ドリンク込み / 約2時間・完全予約制。完全予約制・開始時間はご都合に合わせて調整。
法人ケータリングの体験ランチ
ご依頼前に、担当者様・役員の方を交えて。
1〜8名様・お一人様15,000円(税込)・ドリンク込み体験ランチの詳細を見る

