顔合わせの日取りが決まって、店を探し始めたところではないでしょうか。
料亭の個室、ホテルの和食店、駅の近くのレストラン。「個室あり」で絞り込んで、写真を眺め、口コミを読む。どれも悪くないのに、最後の一店に決めきれない。顔合わせの食事会の店選びは、たいていそこで止まります。
止まる理由は、候補が少ないからではありません。比べている項目が、当日いちばん困ることとつながっていないからです。
私は出張料理人として年間200件を超える食卓に立ち、そのなかには両家の顔合わせもありました。いまは恵比寿で一日ひと組の店を営んでいます。店の側から席を見てきた立場で、顔合わせの店をどう選ぶかを整理します。
結論:両家顔合わせの食事会の店は、料亭・個室レストラン・ホテル・貸切の四つから選びます。 決め手は格式ではなく「話が途切れない環境」です。店の方が席に入る回数が少なく、時間に追われない場所ほど、初対面の緊張はほぐれていきます。 実際、顔合わせを終えた方の感想でもっとも多いのは「会話に困った」というものです。 この記事では、四つの店の比べ方、当日の進行、費用を誰が払うかまでを、恵比寿で一日ひと組の店を営むシェフの視点で整理します。
あわせて、家族だけの結婚式の費用と少人数で店を貸し切るもご覧ください。
結論|顔合わせの店選びは「話が途切れない環境」で決まる
顔合わせの食事会を終えた方に感想をたずねた調査で、もっとも多かったのは「緊張していて覚えていない」「会話に困った」というものでした。
先輩花嫁の声として、こんな言葉が紹介されています。「進行のしおりを用意して話のネタになるよう工夫していたが、それでも沈黙の時間があった」(ゼクシィ/2023年11月・ゼクシィ花嫁会98人)。準備をした方でも、沈黙は起きています。
顔合わせで実際に起きているのは、料理が口に合わなかったことでも、格式が足りなかったことでもありません。話が続かなかったことです。
個室は前提です。ただし、それだけでは足りません
会場選びの記事の多くは「個室であること」を条件に挙げます。ゼクシィは個室を備えた会場であることをマストとし、ついたてで仕切っただけの半個室は話し声が漏れるため避けるべきとしています。
これは、その通りだと思います。個室は前提条件として押さえてください。
ただ、個室が遮るのは外からの視線と音です。席の内側で起きることには関与しません。話が途切れたとき、どちらかの家がずっと聞き役に回っているとき、誰かが時計を気にし始めたとき。個室という条件は、そのどれも動かしません。
見るべきは、この三つです
個室を前提としたうえで、私が店選びで見るべきだと考えているのは次の三つです。
- 店の方が席に入る回数:料理を出す、下げる、飲み物をうかがう。人が入るたびに、会話は一度止まります
- 時間の枠があるかどうか:話が弾むか、緊張が解けないまま終わるか。どちらに転ぶかは当日まで読めません
- 進行を自分たちで決められるか:挨拶と記念品交換をどこに置くかは、店の段取りに左右されます
いずれも、店の紹介ページには書かれていない項目です。だからこそ、予約の電話で確かめる価値があります。
店の四択 ― 料亭・個室レストラン・ホテル・貸切

まず、実際にどこで開かれているかを見ておきます。
| 会場 | 割合 |
|---|---|
| 料亭 | 42.9% |
| レストラン | 30.5% |
| ホテル | 14.9% |
| 自宅(両家いずれか) | 8.6% |
| 結婚式場 | 2.1% |
(ゼクシィ「顔合わせ食事会 準備ガイド」より。料亭については同社の別記事で「約5割」とされており、媒体や記事により幅があります)
店で開く方が、合計で約9割。顔合わせを店でするのは例外ではなく、むしろ標準的な選び方です。
この四つを、先ほどの三つの軸で比べ直します。
| 会場 | 格式 | 気疲れ | 時間の枠 | 進行の自由度 |
|---|---|---|---|---|
| 料亭 | 高い | 慣れていない側の家に偏りやすい | あり | 慶事のコースがあり、任せやすい |
| 個室レストラン | 選べる | 店による差が大きい | あり | 顔合わせに不慣れな店もある |
| ホテル | 高め | 規模の大きさが他人行儀を生むことも | あり | 応対は安定している |
| 貸切 | 店による | ほかのお客様がいない | 外れる | 自分たちで決められる |
料亭
慶事の対応に慣れており、顔合わせ用のコースを用意している店が多いのが利点です。手配の負担が少なく、格式のある和の料理は年配の方にも馴染みがあります。庭の眺め、季節の食材、器。会話のきっかけになるものが場そのものにあることも、沈黙が続きやすい席では効いてきます。
注意したいのは、正座が苦手な方がいらっしゃる場合です。椅子席があるかどうかを、予約の段階で確認してください。
個室レストラン
料理のジャンルを参加者の好みに合わせられ、雰囲気も価格帯も幅があります。一方で、弱点もはっきり指摘されています。顔合わせの対応に慣れていない店があること、個室がない店があること、慶事用のコースが少なくメニューを自分たちで選ばなければならないことの三つです(結婚スタイルマガジン)。
予約時に「両家の顔合わせで使います」と伝えることが勧められているのは、このためです。伝えたときの反応そのものが、その店が顔合わせに慣れているかどうかの判断材料になります。
ホテル
アクセスがよく、駐車場が広いことが多いため、遠方から親御さんが来られる場合に向いています。人数に合わせた個室のほか、館内の料亭やレストランから選べます。着付けやヘアメイクに対応している点も、当日の移動を減らします。
貸切
四つ目だけ、性質が違います。
顔合わせの会場を分類した大手メディアのデータに、「貸切」という項目は存在しません。 ゼクシィの分類は料亭・レストラン・ホテル・自宅・結婚式場で、貸切はそもそもカテゴリとして立っていない。つまり、選択肢として認識されていない状態です。
けれど条件で見れば、貸切は先ほどの三つをまとめて満たします。ほかのお客様がいないため店の方の出入りを最小にでき、次の予約がないため時間の枠が外れ、進行は自分たちで決められます。
データがないのは、需要がないからではなく、まだ選択肢として並べられていないからだと私は考えています。
当日の進行と、所要時間の目安
顔合わせの食事会の流れは、おおよそ次のように紹介されています。所要時間は2時間半から3時間が目安とされ、この点は複数の媒体で一致しています。
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| 入室・着席 | 手土産は着席の前に、親御さん同士で渡すのが最適とされます |
| 始まりの挨拶と家族紹介 | 参加者の一人が代表して挨拶し、各家族を紹介します |
| 婚約記念品のお披露目・交換 | 食事が運ばれる前に行います。記念品がなければ省いて構いません |
| 乾杯 | 新郎または新郎の父親が音頭を取るのが一般的ですが、決まりはありません |
| 食事・歓談 | ここがもっとも長くなります |
| 結びの挨拶 | 親御さんの挨拶のあと、おふたりからも言葉を添えます |
(ゼクシィ「進め方ガイド」より。マイナビウエディングは乾杯を家族紹介より先に置いており、乾杯と家族紹介の順序は媒体によって異なります)
ひとつ補足しておきます。各場面が何分ずつという目安は、どの媒体にも見当たりませんでした。 全体で2時間半から3時間という数字はあっても、その内訳に定まった型はない、ということです。つまり進行表は、埋めるべき枠ではなく、その日の空気に合わせて伸び縮みさせるものです。
席次は、作法より話しやすさで
席次の基本は、出入り口から遠い上座から「父・母・本人」の順とされています。ただしゼクシィは、これを動かせない決まりとはしていません。「両親の間に本人たちが座る」など、話が和やかに進みやすい席順でよいと明記しています。大手メディア自身が、作法より会話を優先してよいと言っているわけです。
むしろ効いてくるのは、途中で席を外しやすい導線があるかどうかです。「少し失礼します」と言いやすい席と、言いにくい席がある。緊張の続く3時間で、その差は小さくありません。上座の位置や入口からの動線は、会場のスタッフに早めに確認しておくことが勧められています。
費用は誰が払うか
一般的な目安は、料理と飲み物でお一人1万円前後。総額は媒体により幅があり、平均98,600円(ゼクシィ)、平均9.2万円(結婚スタイルマガジン)、6.4万円(ハナユメ)と数字が分かれます。なお、会場の種類ごとの単価データは、どの媒体にも公開されていません。 「料亭は高い」「レストランなら抑えられる」という感覚は広く共有されていますが、数字で確かめられてはいないということです。予算は会場の種類ではなく、個別の店で確認してください。
そのうえで、ここからが思い込みと実態のもっともずれる部分です。
| 誰が払うか | 割合 |
|---|---|
| ふたり(本人たち)が負担 | 65% |
| 新郎側の親が負担 | 約20% |
| 両家で折半 | 約10% |
(ゼクシィおよび結婚スタイルマガジン調べ。結婚スタイルマガジンでは「ふたりが負担」を約6割以上としています)
両家で折半するのが標準だと思われがちですが、実際には1割ほどです。もっとも多いのは、おふたりが親御さんを招く形で負担するというものでした。
支払いのタイミングは、約7割が当日。新郎が代表して支払うケースが多いとされます。席を立つ頃合いとして勧められているのは、デザートを食べ終わったあたり。追加の注文がもう出ないためです。
事前に決めておくことが、当日の気まずさを減らします
各社が共通して勧めているのは、誰が支払うかを事前に決め、参加する全員に知らせておくことです。決めないまま当日を迎えると、両家のあいだやおふたりのあいだで行き違いが生まれるとされています。
私がお客様からうかがってきたなかで角が立ちにくいのは、支払いの話を決定事項として、日取りの連絡と同じ便で伝えてしまう形です。相談のかたちにすると、双方が遠慮を返し合うことになります。
もうひとつ、店の側から言えることがあります。金額が事前に確定していると、この話し合いはずいぶん楽になります。 追加の注文で総額が動く席では、支払う側は当日ずっと金額を気にしながら過ごすことになるからです。
顔合わせが気まずくなる原因
失敗の原因として挙げられているものを見ていくと、会話や人柄の問題ではなく、会場と段取りの設計に由来するものが並びます。
店の方が、席に入る回数
料理を出す、皿を下げる、飲み物をうかがう。そのたびに、会話は一度止まります。
話が動き始めたところで人が入れば、そこで切れる。これは店の落ち度ではありません。複数の卓を同時に見ている店では、避けにくい構造です。
私が一日ひと組という形を選んでいる理由のひとつが、ここにあります。ほかのお客様がいなければ、皿を出すタイミングを、料理の都合ではなく席の都合で決められる。話が続いているときは下がり、間が空いたときに皿を出して場を動かす。この判断ができるかどうかで、3時間の空気はかなり変わります。
時間の枠
顔合わせの所要は2時間半から3時間が目安とされます。一方で、話が弾んで長くなるか、緊張が解けないまま早く終わるかは、当日にならないとわかりません。
枠の決まった席では、終盤を時計を見ながら進めることになります。ほぐれてきた空気を、店の都合で畳む。話が続かなかったことが最多の感想である会で、これはもったいない終わり方です。
料理そのもの
失敗の原因として、アレルギーや食べられない食材への対応不足が挙げられています。取り分けの要らないコース料理が勧められているのも、同じ理由です。
苦手な食材やアレルギーは、両家それぞれの分を事前にうかがっておくことをお勧めします。食べられないものを当日に申し出る役回りを、どなたにもつくらない。 これも席を整えることのひとつだと考えています。
話題の選び方
避けるよう挙げられているのは、宗教・政治・同居の話です。逆に勧められているのは、家族のプロフィールやなれそめを載せたしおり、子ども時代の写真、事前の家族構成や趣味のリサーチ。これだけ工夫が紹介されているということは、裏を返せば、工夫がなければ沈黙が起きる前提で語られているということです。
服装と手土産は、店が決めます
この二つは、店が決まってから動く項目です。順番を逆にすると、両家のあいだで足並みが揃わなくなります。
服装
新婦は上品なワンピースかフォーマルなスーツ、新郎はダークスーツが勧められています。親御さんを含め、スーツ、ワンピース、アンサンブル、着物などのきちんとした装いが一般的です。
大事なのは、両家で格を揃えること。親御さん同士の服装がちぐはぐだと、「相手のことを考えていなかった」ように映り、そこから気まずさが生まれるとされています。
そして、フォーマルにするかカジュアルにするかは、開催する店や食事の内容によって変わります。つまり、店が決まらないと服装は決まりません。店を押さえた時点で、両家の親御さんに「ネクタイとワンピースで」といった具体的な言葉で伝えておくのがよい、と案内されています。
手土産
用意する方の割合は、50.5%(ゼクシィ)から約8割(結婚スタイルマガジン)まで媒体により幅があり、用意しない選択も少数派ではありません。 金額の目安は3,000円から5,000円で、この数字は各社で一致しています。のしは蝶結びよりも結び切りが基本とされ、迷うならつけるほうが丁寧です。
ここでも要になるのは足並みです。両家で金額と内容を揃えておくこと。 失敗談として「手土産の重複」が挙がっているのは、値段やブランドが並んで見えてしまうためです。渡すのは着席の前、親御さん同士で、というのが最適とされています。
なお、私たちは手土産として「王のティラミス」をお出ししています。その日に召し上がった締めの一皿を、そのままお持ち帰りいただく形です。
一日ひと組なら、時間も進行も自由
ここまで挙げてきた条件を、店としてどう満たしているかをお伝えします。
Na Team Lab は、恵比寿一丁目にある一日ひと組・八席のプライベートレストランです。恵比寿駅から徒歩約8分、広尾駅からも徒歩約10分。6〜8名さまの完全貸切で、両家がそれぞれ3〜4名という顔合わせの人数に、ちょうど収まる規模です。
一日ひと組ですので、スタート時刻をお客様に合わせて動かせます。 19時開始が多いのですが、18時から始める方も、20時に集まる方もいらっしゃいます。遠方から親御さんが来られる場合、到着の時刻から逆算して決められるのは、実務としてかなり効きます。
コースは前菜からデザートまでの7皿構成で、所要は約3時間。顔合わせの目安とされる2時間半から3時間と、ほぼ重なる長さです。ただし、この3時間を固定はしません。
私が厨房から見ていること
出張でも店でも、私が席について最初に確かめるのは料理のことではありません。会話がどこで動き、どこで止まるかです。
コースは「リズム」で組み立てます。軽いものから重いものへ、変化と起伏をつけて夜を進める設計です。顔合わせの席では、この起伏が会話の起伏と重なります。序盤の張りつめた空気、中盤でほぐれる瞬間、終盤の落ち着き。料理の設計は、そのまま席の設計になります。
ほかのお客様がいないということは、その起伏に合わせて自分の動きを変えられるということです。話が続いているあいだは、厨房で待つ。間が空いたら、次の皿で場を動かす。私は、それを厨房から見ています。席にいるどなたよりも、その日の空気の変わり目がよく見える場所です。
費用と、ご相談の時期
- コース:お一人 15,000円(税・サービス料込)。ドリンクの持ち込みは無料で、本数の制限もありません
- ワインペアリング付き:お一人 22,000円(税・サービス料込)
- 6名さまでご利用の場合、90,000円からという計算になります
苦手な食材やアレルギーは、事前の打合せで両家それぞれの分をうかがいます。挨拶や記念品の交換をどこに置くかも、この打合せで一緒に決められます。
ご相談の時期については、一般に結婚式の5〜8ヶ月前に日取りを決め、遅くとも1ヶ月前には会場を押さえるのが目安とされています。ただ、当店は一日ひと組のため、直近1ヶ月は予約が埋まりやすい状態です。日程の候補が見えた段階でご連絡いただけると、選べる日が多くなります。なお、開催日の7日前からのキャンセルは、料金の100%を頂戴しています。
会のあとについても、恵比寿は歩ける範囲に落ち着いた店が多く、二次会の行き先で困ることは少ない場所です。
Na Team Lab の世界観や、顔合わせでのご利用については、公式LINEにてご案内しています。日取りが決まる前のご相談でも構いません。
まとめ
顔合わせの食事会の店選びについて、要点を整理します。
- 顔合わせは店で開くのが主流です。料亭・レストラン・ホテル・式場で約9割を占めます
- 個室は前提条件。 ただし個室が遮るのは外からの音で、席の内側で話が途切れることには関与しません
- 見るべきは三つ。 店の方が席に入る回数、時間の枠、進行を自分たちで決められるかどうか
- 「両家で折半」は標準ではありません。 最多はおふたりが負担する形で65%、折半は約1割。誰が払うかを事前に決め、全員に伝えておいてください
- 服装と手土産は、店が決まってから動かします。 服装の格は店の格に連動し、手土産は両家で金額と内容を揃えます
- 所要の目安は2時間半から3時間。 ただし各場面の分数に型はなく、進行はその日の空気に合わせて伸び縮みさせるものです
顔合わせは、料理を味わう会である前に、両家が初めて言葉を交わす会です。だからこそ選ぶべきは、格式の高い店ではなく、話が続く店だと考えています。
店を決めかねていらっしゃるなら、ご家族の顔ぶれと、当日の顔合わせの食事会で何を心配していらっしゃるかをお聞かせください。そこから、その日にふさわしい形を一緒に考えます。
よくある質問
顔合わせの食事会と結納は、何が違うのですか?
結納は結納品や結納金を納める伝統的な儀式で、口上など決まった流れがあります。顔合わせの食事会には儀式がなく、進行を自由に組み立てられます。近年は顔合わせのみを行う方が59〜69.5%と多数派で、割合は調査により幅があります。
顔合わせの食事会は、何日前に予約すればよいですか?
一般には結婚式の5〜8ヶ月前に日取りを決め、遅くとも1ヶ月前には会場を押さえるのが目安とされています。両家全員の予定を合わせる必要があるため、早めの確認をお勧めします。当店は一日ひと組のため、直近1ヶ月は埋まりやすい状態です。
当日になって人数が増えた場合、対応できますか?
恵比寿の店は6〜8名さまの貸切のため、8名さまを超える場合はご自宅などへの出張料理をご案内しています。出張であれば16名さままで着席のコースでお受けしており、人数が増える場合は前日のご連絡でも対応できます。
一組で店を貸し切る夜へ。
恵比寿の八席を貸し切り、持ち込みの一本や会の目的に合わせてコースを組み立てます。

