法要の日取りだけが、先に決まっている。お寺との調整も、親族への連絡も済んだ。それなのに、そのあとの食事だけが決まらない。
決めなければならないことが、いくつも重なっているからだと思います。どこで食べるのか。いくらかかるのか。僧侶が会食を辞退されたら、いくら包めばよいのか。献杯は誰が言うのか。そもそも、家族だけなのに会食は必要なのか。
そのすべてを、施主がひとりで抱えています。この記事では、その一つひとつを順に整理していきます。
結論:法事のあとの食事は「お斎(おとき)」と呼ばれ、施主が用意するのが通例です。 現代では精進料理に限らず、和食に寄せた献立が選ばれることが多くなっています(宗派や地域により考え方は異なります)。 家族だけで行う場合は、周囲の目を気にせず静かに過ごせる場所が選ばれています。 費用は一人あたりの会食費のほか、会食を辞退された僧侶へお渡しする御膳料が別に必要です。 この記事では、場所の選び方、費用の目安、食事代のやりとり、そして献杯の作法までを順に整理します。
あわせて、家族が集まる日の食卓と自宅で開く食事会の三つの形もご覧ください。
法事のあとの食事は「お斎(おとき)」と呼ばれます
法事のあとの食事は「お斎(おとき)」と呼ばれ、僧侶や参列者への感謝として施主が用意します。現代では精進料理に限らず、和食に寄せた献立が選ばれることが多くなっています。家族だけで行う場合は、周囲を気にせず静かに過ごせる場所が選ばれています。
「斎」という字は、もともと「斎食(さいじき)」に由来すると言われています。僧侶が正午までにとる、正式な食事を指す言葉でした。それがやがて、仏事のあとの食事全般を指すようになったとされています。地域によっては「おとぎ」と読む場合もあります。
精進落とし、直会との違い
似た言葉がいくつかあるため、ここで整理しておきます。
お斎は、仏事のあとの食事の総称として説明されることが多い言葉です。通夜振る舞いや精進落としも、その中に含めて語られます。
精進落としは、本来は四十九日の忌明けに通常の食事へ戻すことを指していました。現在では葬儀当日に行われるのが一般的とされています。関西では「精進上げ」と呼ばれることもあるようです。
直会(なおらい)は、仏教ではなく神道のものです。神社本庁は、お祭りのあとに神前へ供えたものを神職と参列者でいただくことと説明しています。仏事のお斎とは、そもそも由来が異なります。
ただし、これらの区分は情報源によって揺れがあります。厳密な線引きよりも、「法要のあとの会食をお斎と呼ぶ」という一点を押さえておけば、実務の上では困ることは少ないと思います。
精進料理でなくてよい、とされている理由
かつてのお斎は精進料理と決まっていました。現在は、忌明け前であっても通常の食事をとることが一般的になったため、お斎も精進料理ではなくなっている、と複数の葬祭事業者が説明しています。ある寺院も、精進の意味が希薄になり、お斎に肉料理が出ることも多くなったと書いています。
ただし、これを一般化しすぎないほうがよいと考えています。
浄土真宗では、お斎を仏事のひとつとして位置づけてきました。真宗大谷派・東本願寺が案内しているお斎は、現在も精進料理です。宗派や地域によって、考え方は明確に異なります。
迷われる場合は、菩提寺に一度伺うのがいちばん確実です。「このような料理を考えているのですが」と相談すれば、その家とその寺にとっての正解が返ってきます。
どこで開くか ― 四つの選択肢

お斎の場所は、大きく四つに分かれます。まず全体を並べて比べてみます。
| 仕出し・折詰を取る | 料亭・レストランの個室 | 店ごと貸し切る | 自宅に呼ぶ | |
|---|---|---|---|---|
| 移動 | なし | 法要のあとにもう一度 | 法要のあとにもう一度 | なし |
| 人数の幅 | 広い | 広い | 少人数向き | 少人数向き |
| 周囲の目 | 気にならない | 隣席の気配が残る | 気にならない | 気にならない |
| 主催者の手間 | 受け取り・片付け | 予約・席次・会計 | 予約・席次 | 事前の打合せ |
仕出し・折詰は、もっとも広く選ばれている形です。法要を営んだその場所に届けてもらえるため、移動が発生しません。人数が二十名、三十名と増えたときに、無理なく成立するのもこの形です。人数が読めない段階で押さえられる点も、施主にとっては現実的な利点だと思います。
料亭やレストランの個室は、準備がいらない点が大きな利点です。ただし、法要を終えたあとにもう一度移動することになります。そして個室とはいえ、扉の外は通常の営業です。隣の席の気配や、店員の出入りまでは消せません。
店ごと貸し切る形は、その気配がなくなります。ほかのお客様はいらっしゃいません。故人の話を、声の大きさを気にせずにできます。一方で、貸し切れる店の多くは席数が限られるため、少人数向きの選択肢になります。
自宅に呼ぶ形は、移動がなく、周囲の目もありません。高齢の親族が多い場合には、この「移動しない」という条件が効いてきます。ただし人数には上限があり、キッチンなどの設備を事前に確認しておく必要があります。
四つを並べると、移動の有無と、周囲の目の有無という二つの軸で分かれていることが分かります。どれが優れているという話ではありません。人数が多ければ仕出しが合理的ですし、少人数で静かに過ごしたいなら貸切や自宅が向いています。
家族だけで行う法事が増えています
近年は、法要そのものを家族だけで営む方が増えています。親族の高齢化、遠方からの参列の負担、そして規模を小さくしたいという意向が重なっているためです。
それにともなって、お斎を設けないという選択も、実際に選ばれるようになりました。 法要では必ずしもお斎を設ける必要はなく、近年はお斎のない法要も増えている、と複数の事業者が説明しています。
会食を行わない場合は、折詰やお菓子、カタログギフトなどをお渡しして解散する形が取られます。持ち帰り用のお弁当の費用は、一人あたり3,000円から5,000円程度が目安とされています。
この形を選ぶ場合、案内の段階でその旨を伝えておくほうが親切です。「法要後の食事の席は設けておりませんが、ささやかながら折詰を用意しております」といった一文を案内状に添えておけば、参列される方も予定を立てやすくなります。
もうひとつ、忘れやすい点があります。会食を行わない場合でも、僧侶には御膳料をご用意しておく、という作法です。これについては次の章で詳しく触れます。
会食をしないことは、手を抜くことではありません。集まる方の負担を減らし、法要を滞りなく終えることのほうが大切だという考え方は、広く共有されつつあるように見えます。
費用の目安と、食事代のやりとり
ここからは、お金の話を整理します。法事の費用は、聞ける相手が少ない領域です。
一人あたりの目安と、誰が負担するか
お斎の費用は、一人あたり3,000円から10,000円程度が目安とされています。幅があるのは、会場によって単価が変わるためです。
ある葬祭事業者は、斎場やお寺で3,000円から8,000円、料亭やレストランで5,000円から10,000円と整理しています。別の事業者は、家族のみなら3,000円から5,000円、親族を含むなら5,000円から7,000円という内訳を示しています。三回忌以降は規模とともに縮小され、3,000円から5,000円程度になることも多いようです。
負担するのは、施主です。お斎は、施主が参列者と僧侶をもてなすために用意するものとされているためです。参列される方は、香典とは別に食事代を用意する必要はない、というのが一般的な説明になっています。
会場は2週間前までに押さえておくと安心だ、とも案内されています。
僧侶が会食を辞退された場合 ―「御膳料」
僧侶が会食に同席されない場合、食事に代えてお渡しするのが「御膳料(おぜんりょう)」です。相場は5,000円から10,000円を目安とする説明が多く、会食の内容によってはそれ以上になることもあるとされています。
作法の要点を整理します。
| 内容 | |
|---|---|
| 封筒 | 白い無地の封筒(郵便番号欄なし・一重)。二重封筒は避ける。水引は基本的に不要 |
| 表書き | 中央上部に「御膳料」、その真下に施主名。濃墨で書く(薄墨ではありません) |
| 渡すタイミング | 法要が始まる前のご挨拶の際が推奨されます。お布施・御車代とは別の封筒に分け、お布施を一番上に |
二重封筒を避けるのは、不幸が重なることを連想させるためと説明されています。表書きを濃墨にするのは、葬儀の際の薄墨とは扱いが異なるためです。ここは間違えやすい点だと思います。
なお、地域によっては「膳部料」「粗飯料」、あるいは「お斎料」という表記が使われることもあるようです。地域の習わしがある場合は、そちらに合わせるのが自然です。
親族との食事代のやりとりについて
「法事の食事代を親族に渡す」という言葉で調べる方が、少なくありません。ここについては、調べた結果を正直にお伝えします。
施主から親族へ、食事代を現金でお渡しするという慣習は、確認できる範囲では一般的ではありませんでした。 御膳料は一貫して、僧侶に対してお渡しするものとして説明されています。
実際に行われているのは、むしろ逆方向のやりとりです。
- 参列される方が、香典に食事代を上乗せして包むという慣習があるとされています
- 表書きは、四十九日までは「御霊前」、それ以降は「御仏前」とされるのが一般的です(宗派により異なります)
- 会食を行わない場合は、お斎の予算の範囲で折詰や消え物をお渡しする形が取られます
- 返礼品には、金券のように金額がそのまま分かる品はふさわしくないとされています
つまり、施主の側が用意するのは「現金」ではなく「席」か「品」です。そう整理しておけば、迷う場面は減るのではないかと思います。
当日の作法 ― 献杯、席次、お開き
お斎の席で、多くの方が気にされるのが献杯です。ここを押さえておけば、当日の緊張はかなり減ると思います。
献杯は、乾杯とは別のものです
献杯は、故人への敬意を込めて杯を捧げる行為です。祝いの席で喜びを分かち合う乾杯とは、意味が異なります。ある寺院は、ふだんの会食で使う「乾杯」という言葉と拍手は避け、「献杯いたします」と言うように、と書いています。
作法の要点は次のとおりです。
- グラスは胸の高さまで、静かに持ち上げます。高く掲げません
- 隣の方とグラスを合わせて音を立てません
- 拍手はしません
- 発声は、落ち着いた低めの声で
- 献杯のあとに一気に飲み干すことも避けます
- 挨拶は1分程度にまとめます
発声する方に、決まりはありません。親族の代表格にあたる方や故人のご兄弟が務めることが多いとされますが、喪主ご自身が音頭をとっても問題ないと複数の事業者が説明しています。誰が言うべきかで悩む必要は、それほどないのだと思います。
献杯の挨拶、二つの例
短い例を挙げておきます。そのまま使えるというより、長さの目安としてご覧ください。
施主が述べる場合。
本日はお忙しいなか、亡き母の一周忌にお集まりいただき、ありがとうございます。おかげさまで、無事に一周忌を迎えることができました。ささやかではございますが、お食事をご用意いたしました。母の思い出などを伺いながら、ごゆっくりお過ごしください。それでは、献杯いたします。献杯。
親族の代表が述べる場合。
ご紹介にあずかりました、故人の甥にあたります〇〇でございます。叔父には生前、公私にわたりお世話になりました。僭越ではございますが、献杯の音頭をとらせていただきます。皆さま、ご唱和をお願いいたします。献杯。
なお、地域や宗派によっては、献杯の方法に決まりがあったり、そもそも献杯を行わなかったりする場合があります。菩提寺や年長の方に一言確認しておくと安心です。
席次は、僧侶を上座に
席次については、情報源によって説明が分かれています。施主・遺族は末席とするもの、僧侶の次に施主が座るとするもの、法要の種類によって変わるとするもの。調べるほど、統一された正解がないことが見えてきます。
共通しているのは、僧侶を最上座にするという一点です。 それ以外は地域や家によって異なり、近年は家族的な雰囲気を重んじて、厳密にこだわらない傾向も見られます。
お開きの挨拶も、長くする必要はありません。集まっていただいたことへの感謝と、これからも変わらぬお付き合いをお願いする旨を、短く述べれば十分です。
避けたい料理と、控えたい設え
お斎の献立では、祝いを連想させるものを避けるのが通例です。複数の事業者が共通して挙げているのは、次のものです。
- 鯛、伊勢海老(祝いの席の食材とされるため)
- 紅白のもの、松竹梅をかたどった飾り
- 金箔(盛り付けが華やかになりすぎるため)
このほかに昆布や赤飯を挙げる説明もありますが、情報源が限られるため、地域の習わしに従うのが確実だと思います。
大切なのは、個々の食材を禁じることよりも、献立全体の印象を華やかにしすぎないという一点です。同じ食材でも、盛り付けと設え次第で印象は変わります。
服装については、法要のときのままで問題ないとされています。上着を脱いだり、ネクタイを外したりといった程度に和らげる方もいらっしゃいます。光沢のある小物は控えるほうがよい、という説明が一般的です。
八名までなら、店ごと静かに
ここまで整理してきて、ひとつ見えてくることがあります。
場所を決め、費用を用意し、僧侶に御膳料を包み、献杯の段取りを組み、挨拶を述べる。その全部を担っている施主が、いちばん料理に手をつけられません。 法要のあとの席で、いちばん気を張り続けているのは主催した方です。
料理と設えの部分だけを、外に預けてしまうという考え方があります。
私たちは、東京・恵比寿で一日ひと組・八席の完全貸切のレストランを営んでいます。6名さまから8名さままで。ほかのお客様はいらっしゃいません。故人の話を、声の大きさを気にせずにしていただけます。コースはお一人 15,000円(ドリンク持ち込み無料・税・サービス料込)、ワインペアリングをつける場合は 22,000円です。恵比寿駅から徒歩約8分、広尾駅から徒歩約10分。開始の時刻は、法要の終わりに合わせて調整できます。完全紹介制・完全予約制で営んでおります。
ご自宅や会場に伺う形もあります。6名さまから16名さままで、一皿ずつお出しするコース形式です。お一人 15,000円〜(ワインペアリング付 22,000円)、1回のご依頼につき 90,000円〜で、税・サービス料・出張費はすべて込みです。食材も器もグラスもカトラリーも、調理道具まですべて持参します。片付けは、シンク・コンロ・排水口まで済ませて引き上げます。ご相談は2週間前までにいただければ幸いです。対応エリアは基本的に東京都内で、都外・遠方は別途ご相談ください。
法事の席として、お受けできることを整理しておきます。
- 和食に寄せた構成で組み立てられます
- 献杯のタイミングに合わせてコースを組めます。ご挨拶と献杯のあとに、一皿目をお出しする形です
- 照明や音など、設えを静かにできます
進行そのものは、施主の皆さまのお手にあります。私たちがお引き受けするのは、料理と設えまでです。ただ、その部分が整っていれば、施主の方が席に座っていられる時間は確実に増えます。
なお、法要のあとの会食としてのご依頼実績は、まだございません。お盆の時期に、ご家族の集まりに伺ったことはあります。同じ設計で、静かな席としてお受けすることはできます。
ご相談は、公式LINEにて承っております。
まとめ
法事のあとの食事について、押さえておきたい点を整理します。
- 法事のあとの食事は「お斎(おとき)」と呼ばれ、施主が用意するのが通例です
- 場所は仕出し・個室・貸切・自宅の四つ。移動の有無と周囲の目の有無で分かれます
- 費用は一人あたり3,000円から10,000円程度が目安で、施主が負担します
- 僧侶が会食を辞退された場合は、5,000円から10,000円を目安に御膳料をお渡しします。白い一重の封筒に、濃墨で表書きを
- 献杯は、グラスを胸の高さまで。合わせず、拍手もしません
- 会食を行わないという選択も、否定されるものではありません。折詰をお渡しする形が広く取られています
決めることの多い日です。すべてをひとりで抱えなくてよい、という前提から始めていただければと思います。
よくある質問
家族だけで法事を行う場合、食事はどうすればよいですか?
決まった形はありません。会食を設ける場合は、周囲を気にせず過ごせる場所が選ばれています。会食を行わず、折詰やお菓子をお渡しして解散する形も実際に選ばれています。いずれの場合も、案内の段階で参列される方にお伝えしておくと当日が円滑です。
法事のあとの食事は、必ず行わなければいけませんか?
必ずしも行わなければならないものではないとされています。近年は参列者の負担や日程の都合から、会食を設けない法要も増えています。行わない場合は、案内状にその旨を記しておき、僧侶には御膳料をご用意しておくと丁寧です。
法事のあとの食事の服装は、喪服のままでよいですか?
法要のときの服装のままで問題ないとされています。上着を脱いだり、ネクタイを外したりといった程度に和らげる方もいらっしゃいます。華やかな装飾や光沢のある小物は控えるほうがよいとされています。地域や家によって考え方が異なるため、迷う場合は年長の方に伺うのが確実です。
ご家族のお祝いの前に、料理を確かめる体験ランチ。
お食い初めや記念日など、ご自宅での出張料理をご検討中の方へ。1〜8名様で料理とシェフの対応をご体験いただけます。1〜8名様 / お一人様15,000円(税込)・ドリンク込み / 約2時間・完全予約制。完全予約制・開始時間はご都合に合わせて調整。

