SUMMARY

結論:ブラン・ド・ノワールとは「黒から造った白」という意味で、ピノ・ノワールやムニエといった黒ぶどうだけで造る白いシャンパンです。 黒ぶどうでも、果汁そのものは透明です。皮の色が移る前にゆるやかに搾るので、白い泡になります。 白ぶどうだけで造るブラン・ド・ブランと比べると、果実のふくらみとコクがあり、骨格がしっかりします。 ですから、乾杯の一杯で終わらせる必要はありません。鶏や豚、きのこのような料理にも合わせられます。

あわせて、シャンパンは、四つの言葉で選べます(種類の読み解き方)とロゼワインは、どうやって色をつけているのかもご覧ください。

ぶどう畑でスパークリングワインのグラスを掲げた手元。淡い黄金色の泡
黒ぶどうから造っても、グラスの中は淡い黄金色の泡になります

ワインリストに「ブラン・ド・ノワール」と書かれている。読むと「黒の白」。意味が取れないまま、なんとなく注文を避けてしまう。

そういう言葉だと思います。けれど中身が分かると、この一語は選ぶための手がかりとして、かなり役に立ちます。

表記は「ブランドノワール」と続けて書かれることもありますし、「ブラン・ド・ノワール」と区切られることもあります。どちらも同じものです。フランス語の Blanc de Noirs を写した言葉です。

この記事では、意味と造り、そしてブラン・ド・ブランやロゼとの違いをお話しします。甘辛・色・ぶどうの構成・年号という四つの軸をまとめて知りたい方は、シャンパンは、四つの言葉で選べますをあわせてご覧ください。

ブラン・ド・ノワールの意味

言葉のまま訳すと、「黒いぶどうから造った白」です。

シャンパーニュ委員会の公式な定義は、こうなっています。ブラン・ド・ノワールは、ピノ・ノワールやムニエといった黒ぶどうだけを使って造られるシャンパーニュ。 白ぶどうを混ぜていないもの、という意味です。

ここで、シャンパーニュに使われるぶどうを整理しておきます。主要な品種は三つです。

品種色栽培面積の割合性格
ピノ・ノワール黒約38%骨格と厚みを与える
シャルドネ白約31%酸と輪郭、ミネラル感
ムニエ黒約31%果実の豊かさ、早い成熟

主要3品種のうち、二つが黒ぶどうです。そして、シャンパーニュの多くは白い色をしています。ここに、ブラン・ド・ノワールを理解する鍵があります。

なお、認可されている品種はこの三つだけではありません。アルバンヌ、プチ・メリエ、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、そして2025年に加わったシャルドネ・ローズを含めて、現在は8品種が認められています。ただし主要3品種以外の栽培面積は、全体の0.3%ほどにとどまります。品種を定めたのは1927年7月22日の法律です。

なぜ黒ぶどうから、白い泡ができるのか

ここが、いちばん面白いところです。

果汁は、もともと透明です

答えは、意外なほど単純です。黒ぶどうでも、果汁は白いのです。

シャンパーニュ委員会も、この点をはっきり説明しています。皮が黒くても、その中身、つまりワインになる果汁は色を持っていません。色素は、果皮にだけ含まれています。

では、赤ワインの色はどこから来るのか。果汁を果皮と一緒に漬け込むからです。 漬けている時間のあいだに、皮の色素が果汁へ移っていきます。赤ワインの赤も、ロゼの淡い色も、すべてこの移動の結果です。

つまり、色は品種が決めているのではありません。造り手が、皮とどれだけ接触させたかが決めています。 これは白ワインの造りを理解する軸でもあり、白ワインはどう造られるのかという記事でも扱っている考え方です。

ゆるやかに搾り、速やかに流す

では、どうやって色を移さずに搾るのか。

委員会の説明によれば、房を除梗せず、房全体をできるだけゆるやかに搾ります。 そして、搾られた果汁が「ガトー」と呼ばれる果皮と果肉の塊を通って、速やかに流れ出るようにします。

ここは、よく誤解されるところです。「速く搾る」のではありません。圧搾そのものはゆるやかに、果汁の流下は速やかに。 この二つを同時に成立させることで、果汁が色素に染まる前に搾汁を終えられます。

ちなみに、シャンパーニュの圧搾は段階に分かれています。最初に流れ出る上質な部分を「キュヴェ」、その後の部分を「タイユ」と呼びます。そして、ぶどうを房のまま圧搾所へ届けるために、シャンパーニュでは収穫が手摘みと定められています。 房を傷めずに運ぶための規定です。

色を移さないという一点のために、収穫の方法まで決まっている。 ブラン・ド・ノワールは、その設計の上に成り立っています。

ワイナリーの醸造設備。ステンレスタンクと機械が並ぶ醸造所の内部
色は皮にしかありません。搾り方ひとつで、果汁は白いまま残ります(写真は国内のワイナリーの醸造設備です)

ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール、ロゼ ― 三つの比較

同じ「白い泡」や「色のついた泡」でも、入口が違います。並べて整理します。

ブラン・ド・ブランブラン・ド・ノワールロゼ
ぶどう白ぶどうのみ黒ぶどうのみ黒ぶどうを使う/赤ワインを加える
色淡い緑がかった黄色やや濃い黄金色淡い銅色〜サーモンピンク
味わい酸が際立ち、フレッシュふくよかで、ボリュームがある赤い果実の香り、骨格がある
向く料理貝、白身の魚、生のもの鶏、豚、きのこ、出汁の料理鴨や羊、赤い果実を使った皿

ブラン・ド・ブランについて、ひとつ補足があります。 「シャルドネ100%」と説明されることが多いのですが、公式の定義は少し違います。委員会の定義は「黒ぶどう品種を含まないもの」で、認可された白品種だけで造られていれば該当します。実際にはシャルドネが大半ですが、ピノ・ブランやピノ・グリ、アルバンヌ、プチ・メリエが使われることもあります。

ロゼとの違い ― 造り方が二通りあります

ブラン・ド・ノワールとロゼは、どちらも黒ぶどうを使います。では何が違うのか。皮の色を、移すか移さないかです。

ロゼ・シャンパーニュの造り方は、公式には二つに分けられます。

ひとつは、アサンブラージュ(調合)です。 ベースとなる白ワインに、シャンパーニュ産の赤ワインを5〜20%ほど加えます。加えるのは、二度目の発酵に入る前です。色を「混ぜて」つくる方法といえます。

もうひとつは、マセラシオン(浸漬)です。 黒ぶどうを果皮とともに漬け込み、色素を果汁へ移します。公式の目安は36時間ほど。このうち、短い時間で果汁を抜き取る手法を「セニエ」と呼び、8〜12時間とされます。色を「移して」つくる方法です。

なお、「アサンブラージュとセニエの二方式」という説明をよく見かけますが、公式の分類では、セニエはマセラシオンの一形態です。 対になっているのはアサンブラージュとマセラシオンのほうです。

ブラン・ド・ノワールは、このどちらもしません。黒ぶどうを使いながら、色だけを徹底して避ける。 それがロゼとの決定的な違いです。

ロゼワイン全般の造りと選び方は、ロゼワインの記事にまとめています。

味わいは、どう変わるのか

ここから、実際に飲んだときの話をします。

私たちがシャンパーニュだけを並べる会を開いたとき、ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール、そして両者を混ぜたアサンブラージュを、比率を変えて並べました。 9種類を順に出し、違いを追っていただく構成です。

そこで、はっきりと出た傾向があります。

シャルドネの比率が上がると、酸味が際立って、フレッシュな味わいになります。 輪郭が細く、まっすぐになる感覚です。

ムニエやピノ・ノワールが増えると、ふくよかで、ボリュームのある味わいになります。 果実のふくらみが前に出て、口の中に残る量が増えます。

ですから、ブラン・ド・ノワールは夜の始まりに置くと、少し重く感じることがあります。 乾杯の一杯としては、立ち上がりが強すぎる場合がある。そういう性格です。

逆に言えば、食事と一緒に飲む泡としては、この厚みが効いてきます。 乾杯で一杯だけ飲んで赤に移る、という進め方をしなくても済むのです。

季節で、一杯目を変えています

実務の話をひとつ。

コースの一杯目に何を出すかは、季節によって変えることが多いです。

  • 暑い季節 … ブラン・ド・ブラン。酸とキレが、暑さのなかで効きます
  • 寒い季節 … ブラン・ド・ノワール。ふくよかさが、冷えた体に合います

一年を通していちばん使いやすいのは、両方を混ぜたアサンブラージュです。どの季節でも収まりがよいので、一杯目に選ぶことが多くなります。

ロゼの使い方も、同じ季節の考え方で動きます。冬に向かってボリューム感のある泡を楽しみたいとき、乾杯からロゼで入ることがあります。あるいは逆に、一杯目は通常のシャンパーニュで始め、最後に「締めのシャンパン」としてロゼを出す。 そのどちらかです。

合わせる料理の考え方

ブラン・ド・ノワールに何を合わせるか。私たちは、ふくらみを受け止められる素材を選びます。

  • 鶏、豚 … 脂と旨味に対して、泡の厚みが並びます
  • きのこ … 土の香りと、黒ぶどうの果実感が響き合います
  • 出汁を使った和の料理 … 旨味の層に、ふくよかさが寄り添います

酸とキレが持ち味のブラン・ド・ブランなら、貝や白身の魚、生のものへ向かいます。同じ「白い泡」でも、行き先が違う。 そこが、この言葉を覚えておく実利です。

さらに言えば、泡は肉料理まで受けられます。私たちは、とっておきの古酒があるときには、メインの肉料理に泡を合わせることがあります。「泡は乾杯だけ」という前提は、必ずしも守らなくてよいものです。

三つを並べて飲むと、分かること

ここまで言葉で説明してきましたが、限界があります。

「ふくよか」と「フレッシュ」の差を、文章から想像するのは難しいのです。 読んで納得しても、売り場に立つと手が止まります。

一杯ずつでは分からない違いも、隣に並べればはっきりします。 ブラン・ド・ブランとブラン・ド・ノワールを同時に口にすると、色の濃さも、香りの立ち上がり方も、飲み込んだあとに残る量も、ぜんぶ違うことが分かります。言葉を介さずに分かります。

会に参加された方からは、「一気にそれだけの種類のシャンパンを飲む経験をすることが少ないので、すごく嬉しかった」という声をいただきました。一度に並べることの価値は、そこにあります。

11月17日の[シャンパーニュと泡を巡る夜]では、ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール、ロゼを含む泡6種を並べます。2007年の古酒、やや甘口も入ります。それぞれにペアリングの皿を合わせてお出しします。

乾杯の一杯を、いつも「泡で」とだけ頼んでいる方にこそ、来ていただきたい夜です。

ワイン会の日程と空席を見る

暗い背景に並べたスパークリングワインと白ワインのボトル5本
同じ泡でも、ぶどうの入口が違えば色も味わいも違います。並べて飲むと分かります

あなたの好みなら、どれから入るか

三つのうちどれが合うかは、好みの方向で見当がつきます。5分のワイン診断で出る品種タイプと重ねてみます。

  • ミネラルとキレが好きな方 … ブラン・ド・ブラン。酸と輪郭がまっすぐ出ます
  • 柑橘とハーブが好きな方 … ブラン・ド・ブラン。香りの方向が近いです
  • キリッとした酸と花が好きな方 … ブラン・ド・ブラン、または辛口のアサンブラージュ
  • バターとコクが好きな方 … ブラン・ド・ノワール。厚みが応えます
  • 赤い果実と軽やかさが好きな方 … ロゼ。香りがそのまま重なります
  • カシスと力強さが好きな方 … ブラン・ド・ノワール。骨格がはっきりします

これはあくまで出発点です。同じ夜に並べて飲んでみて、はじめて自分の方向が分かります。

まとめ

ブラン・ド・ノワールは、覚えておくと選択肢が広がる一語です。

  • 意味は「黒から造った白」。ピノ・ノワールやムニエなど、黒ぶどうだけで造る白いシャンパン
  • 黒ぶどうでも、果汁はもともと透明です。色は果皮にしかありません
  • 房を除梗せずゆるやかに搾り、果汁を速やかに流すことで、色が移る前に搾り終えます
  • そのために、シャンパーニュでは収穫が手摘みと定められています
  • ブラン・ド・ブランは「黒ぶどう品種を含まないもの」。シャルドネ100%とは限りません
  • ロゼの造りは、アサンブラージュ(赤ワインを5〜20%加える)とマセラシオン(皮と漬け込む)の二通り
  • セニエは、マセラシオンの一形態です。アサンブラージュと対になる分類ではありません
  • シャルドネが増えると酸が際立ち、ムニエやピノ・ノワールが増えるとふくよかになります
  • 夜の始まりには少し重いことがあります。むしろ食事と一緒に飲むと厚みが効きます
  • 暑い季節はブラン・ド・ブラン、寒い季節はブラン・ド・ノワール。私たちは季節で一杯目を変えています
  • 鶏、豚、きのこ、出汁の料理に向きます。泡は肉料理まで受けられます

次にワインリストでこの言葉を見つけたら、避けずに頼んでみてください。「黒の白」という一語が、その夜の料理の選び方まで変えてくれます。

次のアクション

ブラン・ド・ノワールの意味が分かると、次に気になるのは「ブラン・ド・ブランと並べたら、どのくらい違うのか」だと思います。

その答えは、並べて飲むのがいちばん早い道です。 Na Team Lab は、恵比寿駅から徒歩8分、ふだんは1日1組の貸切レストランです。その卓を使って、テーマを立てたワイン会を開いています。基本は8席で、満席の回から締め切ります。

ワインを選び、料理をつくるのは、オーナーシェフの川原壯太です。年間約2,000種のワインを試飲し、毎回の構成を組み立てています。

11月17日(火)20:00 の[シャンパーニュと泡を巡る夜]では、ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール、ロゼ、2007年の古酒、やや甘口など、泡6種をペアリングのフルコースとともにお出しします。会費は17,800円(税込)です。ご予約は TableCheck で承っており、開催7日前までなら別の日に振り替えていただけます。

飲み放題の飲み会でも、出会いを目的にした会でもありません。ワインと料理が好きな方が、ひとつのテーブルを囲む夜です。

ワイン会の日程と空席を見る

この回の詳細は、シャンパーニュと泡を巡る夜(11月17日)にまとめています。

まず自分の好みを知りたい方は、無料のワイン診断から始めてみてください。酸が好きか、果実味が好きか。全30問、5分ほどで合う品種が出ます。

よくある質問

ブラン・ド・ノワールとは、どういう意味ですか?

フランス語で「黒から造った白」という意味です。シャンパーニュ委員会の定義では、ピノ・ノワールやムニエといった黒ぶどうだけを使って造られる白いシャンパーニュを指します。黒ぶどうでも果汁は透明なので、皮の色を移さずに搾れば白い泡になります。

ロゼとの違いは何ですか?

どちらも黒ぶどうを使いますが、皮の色を移すかどうかが違います。ロゼは果皮と漬け込んで色を移すか、赤ワインを5〜20%ほど加えて色をつけます。ブラン・ド・ノワールは、そのどちらもせず、色を移さないように搾ります。

ワインに詳しくなくても、ひとりで参加できますか?

参加者は半数以上がおひとりです。知識は要りません。これまで100回以上開いてきましたが、「参加するのは初めてで緊張していたのですが、とても楽しいお時間過ごすことができました」という声をいただいています。会費は予約時のお支払いなので、当日は手ぶらでお越しいただけます。

ブラン・ド・ブランとの違いは何ですか?

ブラン・ド・ブランは黒ぶどう品種を含まない、白ぶどうだけで造るシャンパーニュで、酸が際立ちフレッシュな味わいになります。ブラン・ド・ノワールは黒ぶどうだけで造り、ふくよかでボリュームのある味わいになります。シャルドネ100%とは限らない点にも注意が必要です。

ブラン・ド・ノワールにはどんな料理が合いますか?

ふくらみを受け止められる素材が向きます。鶏や豚、きのこ、出汁を使った和の料理によく合い、乾杯だけでなく食事と一緒に飲む泡として厚みが効いてきます。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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