祝いの席のために、シャンパンを一本選ぶ。売り場に立って、ラベルを眺める。けれど書かれている文字の意味が分からず、結局は聞いたことのある銘柄か、予算に近い価格帯で決めてしまう。そんな経験はないでしょうか。

私も、ワインの世界に入る前は同じでした。手に取ったボトルに「ブリュット」と書いてあることには気づいていても、それが何を意味するのかは知らないままでした。

けれど、シャンパンの種類は、覚えるものではありません。ラベルの四か所を、決まった順序で見るだけです。この記事では、その四つの軸を、卓で実際に注いでいる立場から整理していきます。

SUMMARY

結論:シャンパンの種類は、甘辛・色・ぶどうの構成・年号の有無という四つの軸で分かれます。 甘辛は瓶詰め前に加える糖分の量で決まり、ブリュット・ナチュールからドゥーまで段階があります。市場で流通する多くは、辛口にあたるブリュットです。 色は白とロゼの二つ。ぶどうの構成では、白ぶどうだけのブラン・ド・ブラン、黒ぶどうだけのブラン・ド・ノワール、複数を混ぜるアッサンブラージュに分かれます。 そして、年号のないノン・ヴィンテージが基本で、良い年だけに造られるヴィンテージが例外です。この四つを順に見ていけば、ラベルから味の方向が読めます。

呼称そのものはシャンパンとスパークリングワインの違いで、食卓での組み合わせはワインペアリングの組み立て方で解説しています。

結論|シャンパンの種類は「甘辛」「色」「ぶどう」「年号」の四軸で分かれる

先に答えを置きます。シャンパンの種類は、次の四つの軸で分かれています。

  • 甘辛:ブリュット・ナチュールからドゥーまで。瓶詰め前に加える糖分の量で決まります
  • :白とロゼ。ロゼには二通りの造り方があります
  • ぶどうの構成:ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール、アッサンブラージュ
  • 年号の有無:ノン・ヴィンテージが基本で、ヴィンテージが例外です

大切なのは、この四つに優先順位があることです。私が卓で一本を決めるときは、まず甘辛を見て、次にぶどうの構成を見ます。色と年号は、その後です。格付けは、いちばん最後で構いません。

理由は単純で、料理との関係にいちばん強く効くのが、この二つだからです。甘辛は料理の重さを決め、ぶどうの構成は味わいの輪郭を決めます。

なお、この記事で扱うのは「選ぶところまで」です。瓶の中で二度目の発酵が起きる仕組みや、生産者ごとの個性には踏み込みません。

シャンパンとスパークリングワインは何が違うのか

シャンパンを注いで乾杯する二脚のフルートグラス
甘辛、色、ぶどう、年号の四つを見ると、味わいの方向が読めます。

四軸に入る前に、ひとつだけ整理しておきます。お客様からいちばん多く受ける質問が、これだからです。

「シャンパンって、そもそも何ですか」

答えは、産地と造り方です。フランスのシャンパーニュ地方で、定められた造り方によって造られた発泡性のワインだけが、シャンパーニュを名乗れます

そして造り方の要が、瓶内二次発酵です。瓶に詰めた状態でもう一度発酵させ、そこで生まれた炭酸ガスを閉じ込める。この工程が、きめ細かい泡と、長い余韻を生みます。

私がよくお伝えするのは、この先の話です。同じ品種を使っても、フランスの他の地方で造れば味は変わります。イタリアで造っても、スペインで造っても変わります。土地が違えば、酸の出方も果実の熟し方も変わるからです。フランス国内の他地方ではクレマン、スペインではカヴァ、イタリアではプロセッコと、それぞれ別の名前を持っています。

どれが上ということではありません。名前が分かれているのは、土地と造り方が違うものを、違うものとして扱うためです。ここを一度お話しすると、多くの方が「そういうことだったのか」という顔をされます。

甘辛の分類|ブリュット・ナチュールからドゥーまで

四軸のひとつめ、甘辛です。ここがいちばん、味の印象を左右します。

シャンパーニュは、瓶内二次発酵を終えたあと、澱を取り除く工程で少量のワインを補います。このとき、糖分を加えるかどうか、どれだけ加えるかで甘辛が決まります。この糖分の添加をドザージュと呼びます。

残糖量による区分は、次のとおりです。数値はあくまで目安としてご覧ください。

区分残糖量の目安味の印象合う場面
ブリュット・ナチュール0〜3 g/L糖分を加えない。酸と塩気が前に出る生牡蠣、白身の刺身
エクストラ・ブリュット0〜6 g/L極辛口。輪郭がはっきりする前菜、貝類
ブリュット12 g/L 未満辛口。流通の多くがここ乾杯、コース全般
エクストラ・ドライ12〜17 g/Lごくわずかに甘みを感じる揚げ物、塩気のある料理
セック17〜32 g/L中口。果実の甘さが出る中華、スパイスのある料理
ドゥミ・セック32〜50 g/L甘口デザート、フルーツ
ドゥー50 g/L 以上甘口。現在はごく少数菓子と合わせる場面

ひとつ、直感に反する点があります。エクストラ・ドライは、ブリュットより甘いということです。「ドライ」という言葉が入っているため辛口に見えますが、区分としてはブリュットの一段甘い側にあります。売り場で迷いやすいところなので、覚えておくと役に立ちます。

ドザージュの差から、料理を逆算する

私がペアリングを組むとき、ドザージュの差は重要な判断材料です。品種と年代と並ぶ、三つの軸のひとつだと考えています。

考え方は、こうです。

  • 甘さのあるシャンパーニュになるほど、料理にもボリューム感を出したい。軽い前菜では、ワインの甘みが余ってしまいます
  • ドザージュを抑えた辛口には、二通りの合わせ方がある。酸味を効かせた料理を合わせて響かせるか、逆に甘さのある料理を合わせて対比させるか

後者は、実際によく使う手です。キリッとした辛口のシャンパーニュに、甘さのあるアップルパイを合わせる。互いの輪郭が立ち上がって、どちらの印象も強くなります。

色|白とロゼ、そしてロゼの二つの造り方

二つめの軸は、色です。白とロゼの二つに分かれます。

先に、よくある誤解をひとつ解いておきます。ロゼだから甘い、ということはありません。色と甘辛は、別の軸です。ロゼにもブリュットの表記があり、その多くは辛口です。

ロゼの造り方には、二通りあります。

  • 調合:白ワインに赤ワインを少量加えて色をつける方法
  • セニエ:黒ぶどうの果皮を果汁に浸し、色を移してから造る方法

興味深いのは、シャンパーニュが白に赤を混ぜる調合を例外的に認められている産地だという点です。多くの産地では、この方法はロゼの造り方として認められていません。

味わいの上では、赤い果実を思わせる印象がやや強く出ます。白より少しだけ、重心が下がる。その分、合わせられる料理の幅も変わります。

ロゼを卓に出す場面

私がロゼ・シャンパーニュを選ぶのは、たとえばこんなときです。

冬に向かう季節に、ボリューム感のある泡を楽しみたいというご要望があったとき。乾杯の一杯目からロゼで始めることがあります。白よりも厚みがあるぶん、寒い季節の卓に馴染みます。

使い方のパターンは、大きく二つです。

  • 乾杯の一杯目にロゼを出し、二杯目も続けて注ぐ
  • 一杯目は通常のシャンパーニュ、最後に締めの一杯としてロゼを出す

後者は、コースの終わりに余韻をもう一度立ち上げたいときに使います。デザートに寄り添う泡として、ロゼは静かに働いてくれます。

ぶどうの構成|ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール、アッサンブラージュ

三つめの軸です。私は甘辛の次に、ここを見ます。

シャンパーニュに主に使われるぶどうは、三品種です。シャルドネ(白ぶどう)、ピノ・ノワール(黒ぶどう)、ムニエ(黒ぶどう)。この三つをどう組み合わせるかで、呼び名が変わります。

呼称使うぶどう味わいの傾向合う料理の方向
ブラン・ド・ブラン白ぶどうのみ(主にシャルドネ)酸が際立ち、フレッシュ。輪郭が細い前菜、白身魚、貝類
ブラン・ド・ノワール黒ぶどうのみ(ピノ・ノワール、ムニエ)ふくよかで、ボリュームがある火を入れた料理、鶏、きのこ
アッサンブラージュ複数品種を混ぜる均衡が取れ、幅が広い。最も一般的コース全般

※ブラン・ド・ブランは「白のなかの白」、ブラン・ド・ノワールは「黒からの白」という意味です。アッサンブラージュは、複数のワインを混ぜて組み立てることを指します。

九種類を並べて飲み比べたとき、この差ははっきり出ました。シャルドネの比率が上がるほど、酸味が際立ってフレッシュな味わいになります。反対に、ムニエやピノ・ノワールが増えていくと、ふくよかでボリュームのある味わいに変わります。同じシャンパーニュという枠のなかで、これほど印象が動くのかと驚かれる方が多い部分です。

コースの一杯目を、季節で変える

Na Team Lab のコースは、ウェルカムのシャンパーニュから始まります。軽い余韻で、感覚を整えるための一杯です。

その一杯目に何を選ぶか。アッサンブラージュを使うことが多いです。均衡が取れているぶん、どの季節でも、どんな前菜の前でも成立します。

ただ、季節によって変えることも少なくありません。

  • 暑い季節:ブラン・ド・ブラン。酸の立ち上がりが、最初の一口を軽くしてくれます
  • 寒い季節:ブラン・ド・ノワール。厚みのある泡が、卓の温度を上げてくれます

ノン・ヴィンテージとヴィンテージ|なぜ年号がないのが基本なのか

四つめの軸は、年号の有無です。

多くのシャンパーニュには、ラベルに年号が書かれていません。これをノン・ヴィンテージと呼びます。複数の年に収穫したぶどうのワインを混ぜて造られているためです。

年号がないと聞くと、質の劣るものだと感じる方がいらっしゃいます。けれど、そうではありません。年号がないのは、味を一定に保つための設計です。

シャンパーニュ地方は、フランスのなかでも北に位置します。年ごとの気候の差が大きく、その年のぶどうだけで造ると、味が年によって振れてしまいます。複数年を混ぜることで、造り手が意図した味を毎年届けられる。ノン・ヴィンテージは、その工夫の結果です。

対して、ヴィンテージ(ミレジメ)は、出来の良い年にだけ造られます。その年のぶどうだけを使い、熟成期間もノン・ヴィンテージより長く定められています。年ごとの個性がそのまま出るぶん、同じ造り手でも表情が変わります。

熟成が進むと、何が変わるか。泡がよりきめ細かくなり、パンやナッツを思わせる香りが立ち上がってきます。若いものは果実の印象が前に出ますが、時間を経たものは香りの層が増えていきます。

シャンパーニュ会では、ノン・ヴィンテージから年代物まで順に並べました。参加された方が、熟成という言葉を舌で理解される瞬間があります。文字で読んでいた「熟成の味わい」が、そこで初めて像を結びます。

グラン・クリュなどの格付け

シャンパーニュには、村単位の格付けがあります。グラン・クリュ(特級)とプルミエ・クリュ(一級)と呼ばれるものです。ぶどうの産地となる村ごとに評価が定められている、とされています。

私は卓で、この話をちらっとお伝えすることがあります。「今夜のシャンパーニュは、こういう格付けの村のものです」という一言を添える程度です。それ以上に踏み込むかどうかは、お客様の反応を見て決めています。

そのくらいの位置づけで構わない、というのが私の考えです。選ぶときの優先順位としては、いちばん最後で十分です。格付けは畑の評価であって、その一本が今夜の料理に合うかどうかを教えてくれるわけではありません。まずは甘辛と、ぶどうの構成。そこが決まってから、余力があれば格付けを見る。

ラベルから味を予想する

ここまでの四軸を、ラベルの上に戻してみます。読む順序は、次のとおりです。

1. 甘辛の表記を探す:ブリュット、エクストラ・ブリュット、セックなど。ここで料理の重さが決まります

2. 白かロゼかを見る:ロゼと書かれていなければ白です。ロゼなら、少し厚みがあると考えます

3. ブラン・ド・◯◯の表記を探す:ブラン・ド・ブランなら酸が立つ方向、ブラン・ド・ノワールならふくよかな方向。表記がなければ、複数品種のアッサンブラージュです

4. 年号があるかを見る:あればヴィンテージ、なければノン・ヴィンテージ

この四つを順に追うだけで、開ける前に味の方向がおおよそ読めます。銘柄を知らなくても、価格を見なくても、その一本が今夜の卓に合うかどうかは判断できます。

違いは、並べて飲むといちばん早く分かる

ここまで言葉で整理してきましたが、正直に申し上げると、シャンパンの種類の違いは、並べて飲むのがいちばん早いです。

Na Team Lab では、シャンパーニュだけを出すワイン会を開いたことがあります。そのとき並べたのは、九種類でした。ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワール、そしてシャルドネとムニエとピノ・ノワールのブレンド。ブレンドの比率が違うものも用意しました。ノン・ヴィンテージから年代物まで、年号の軸も並べました。

順番は、キリッとすっきりした酸のあるものから始めて、少しずつボリューム感を上げていく配置にしました。これは、コースの設計とまったく同じ考え方です。軽いところから始めて、徐々に重心を下げていく。

印象的だったのは、参加された方の一言でした。

「一度にこれだけの種類のシャンパンを飲む機会は、なかなかありません。とても嬉しかったです」

もうひとつ、面白いことが起きました。参加者のなかに、好きな造り手をお持ちの方がいらっしゃいました。その一本を出したところ、周りの方々からも「これが美味しい」という声が上がったのです。好みというのは、卓の上で伝わっていくものなのだと感じた瞬間でした。

九つのグラスを前にすると、四つの軸がそのまま舌の上に並びます。酸が立つとはどういうことか。ふくよかとはどういう感覚か。言葉で読んでいたことが、輪郭を持ち始めます。

Na Team Lab の出張料理・レストラン・ワイン会の詳細については、公式LINEにてご案内しています。シャンパーニュの選び方についてのご相談も、こちらから承っております。

まとめ

シャンパンの種類を、四つの軸で整理してきました。要点を振り返ります。

  • 軸は四つ。甘辛、色、ぶどうの構成、年号の有無。この順に見ていけば味の方向が読める
  • 甘辛はドザージュ(瓶詰め前に加える糖分)で決まる。エクストラ・ドライはブリュットより甘い側にある
  • ロゼだから甘いということはない。色と甘辛は別の軸
  • ブラン・ド・ブランは酸が立ち、ブラン・ド・ノワールはふくよか。アッサンブラージュは幅が広く、最も一般的
  • 年号がないのは手抜きではなく、味を一定に保つための設計
  • 格付けは、選ぶときの優先順位としてはいちばん最後で十分

次にシャンパンを選ぶとき、銘柄を見る前に、ラベルの四か所を順に追ってみてください。読める文字が四つ増えるだけで、売り場の景色は変わります。

よくある質問

シャンパンは辛口が一般的なのはなぜですか?

瓶詰めの前に加える糖分を控える造りが主流になったためです。シャンパーニュは酸がしっかりしているため、糖分を抑えたほうが料理に寄り添いやすくなります。現在流通する多くは、辛口にあたるブリュットです。

ロゼのシャンパンは甘いのですか?

色と甘辛は別の軸なので、ロゼだから甘いということはありません。ロゼにもブリュットの表記があり、その多くは辛口です。色は黒ぶどうの果皮に由来するもので、味わいは赤い果実の印象がやや強く出る程度の違いです。

熟成年数が長いと、何が変わりますか?

泡がきめ細かくなり、パンやナッツを思わせる香りが出てきます。果実の印象が前に出る若いものに対し、熟成したものは香りの層が増えます。年号のあるヴィンテージは、熟成期間が長く定められています。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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