SUMMARY

結論:白ワインの作り方は、収穫したブドウを先に搾り、果汁だけを発酵させる造りです。 皮や種を漬け込んでから発酵させる赤ワインとは、搾る順番が逆になります。 この一手の違いが、色・渋み・香りのすべてを分けています。 工程は収穫・圧搾・発酵・熟成・瓶詰めの五つ。樽を使うかタンクを使うかで、同じ品種でも別の表情になります。 甘口と辛口が分かれるのも、発酵をどこで止めるかという造り手の選択です。

あわせて、ワインの種類は、造り方で分かれていると樽熟成は、ワインに何をしているのかもご覧ください。

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白ワインの作り方で発酵と熟成を担う、ワイナリーのステンレスタンクと醸造設備
白ワインの性格は、搾る順番と、入れる容器で決まります

ワインを飲むようになると、どこかで一度つまずく場所があります。「白ワインは白ブドウ、赤ワインは黒ブドウ」という説明です。おおむね合っているのに、少し調べるとシャンパーニュには黒ブドウが使われていると出てくる。すると、分類が崩れます。

この混乱は、見ている場所がずれているために起きます。色を分けているのは、ブドウの種類ではなく、造り方です。

私は店でワインをお出しするとき、ロゼやオレンジワインについてよく尋ねられます。そのとき私は、味わいの形容から入りません。赤と白の造り方を並べて、「だからこんな味わいになる」とお話しします。 造りの順番が分かると、味わいの理由まで一度に分かるからです。

この記事では、その説明をそのまま文字にします。白ワインの作り方を、収穫から瓶詰めまで順番に追いながら、赤ワインとの違いがどこで生まれるのかを見ていきます。

結論:白と赤の違いは「搾るのが先か、後か」

はじめに、全体の地図を置きます。

白ワイン赤ワイン
搾る順番発酵の前に搾る発酵の後に搾る
発酵するもの果汁だけ果汁+果皮+種
色淡い黄色〜黄金色赤紫〜濃い紫
渋みほとんどない果皮と種から移る
使うブドウ白ブドウが基本。黒ブドウも使える黒ブドウ

ブドウの果肉は、黒ブドウでも淡い色をしています。色素は、ほとんどが果皮に入っています。渋みのもとになるタンニンも、果皮と種に含まれています。

ということは、こうなります。果汁だけを早く取り出せば、色も渋みも移らない。 これが白ワインです。反対に、果皮と種を果汁に漬けたまま発酵させれば、色と渋みが移る。 これが赤ワインです。

ロゼは、その中間にあります。黒ブドウを漬け込む時間を短く切り上げ、色が薄く移った段階で果皮を引き上げる造りが代表的です。オレンジワインは逆で、白ブドウを果皮ごと漬け込みます。 白ブドウの皮から出る色と渋みが移るので、橙色に寄り、わずかな渋みが出ます。オレンジワインの記事で詳しく扱っています。

四色の違いは、品種の違いではありません。果皮をどれだけ果汁と一緒にいさせるかという、時間の設計です。 ワインの種類全体の整理はワインの種類にまとめました。

白ワインの工程を、順番に見る

ここから、白ワインの作り方を五つの工程で追います。

収穫 ― 酸を残して摘む

すべては畑から始まります。ブドウは熟すほど糖度が上がり、代わりに酸が落ちていきます。糖はアルコールになり、酸は味わいの輪郭になります。

白ワインでは、酸をどこまで残すかが収穫の判断になります。 渋みという骨格を持たない白は、酸が輪郭を担うからです。酸が抜けきったブドウから造ると、締まりのない味わいになります。

ですから、白ブドウは赤ワイン用のブドウより早めに摘まれることが多いのです。冷涼な産地の白に酸の高いものが多いのも、同じ理由からです。

圧搾 ― 皮と種を離す

収穫したブドウは、速やかに搾ります。ここが赤ワインとの分かれ道です。

房から果実を外し、優しく潰してから搾る。強く搾りすぎると、果皮や種から渋みと苦みが出てしまいます。白ワインの圧搾では、「どれだけ搾らないか」が問われます。

搾った果汁には、果肉の細かな粒や土ぼこりが混ざっています。これを低い温度で静かに置き、沈んだものを残して上の澄んだ果汁だけを取る。この一手で、発酵後の澄み方が変わります。

搾ったあとの果汁は、ほぼ透明です。 黒ブドウを搾っても、同じように淡い色の果汁が出てきます。だからこそ、黒ブドウから白ワインが造れます。

発酵 ― 糖がアルコールに変わる

澄ませた果汁に酵母が働くと、糖がアルコールと炭酸ガスに変わります。これが発酵です。

白ワインの発酵は、低めの温度でゆっくり進めることが多いとされています。香りの成分は熱に弱く、高い温度では飛んでしまうからです。柑橘や白い花のような香りを残したいなら、ここで急がない。

発酵が終わると、辛口の白ワインになります。糖がアルコールに変わりきった状態です。

そのあと、造り手の選択でもうひとつの発酵を加える場合があります。マロラクティック発酵と呼ばれる乳酸発酵です。尖った酸がまろやかな酸に変わり、乳製品のような香りが生まれます。樽熟成のシャルドネに感じるバターの香りは、品種そのものの香りではなく、この発酵と樽によるものです。仕組みはマロラクティック発酵に書きました。

熟成 ― 待つ時間を設計する

発酵を終えたワインは、しばらく置かれます。

ここで、酵母の死んだ細胞が容器の底に沈みます。これを澱といいます。澱を取り除かず、一緒に置いておく造りがシュール・リーです。パンやナッツのような香りと、厚みが出ます。日本の甲州でも、この造りがよく使われます。シュール・リーで詳しく扱いました。

熟成の長さも、造り手が決めます。香りの若々しさを残したいなら短く、厚みを出したいなら長く。待つ時間そのものが、設計の一部です。

瓶詰め ― 澄ませて、封をする

最後に、濁りのもとを沈めて取り除き、瓶に詰めます。

ここで、どんな栓を選ぶかという判断が入ります。コルクはわずかに酸素を通し、ゆっくり熟成が進む方向へ。スクリューキャップは酸素の通り方を調整しやすく、個体差が小さい。どちらが上という話ではなく、そのワインをどう届けたいかという選択です。スクリューキャップのワインで両者を比べています。

瓶に詰められた時点で、造り手の仕事はいったん終わります。そこから先は、運ぶ人と、置く人、注ぐ人の仕事になります。

ぶどうの樹に実った白ブドウの青い房。果肉は淡く、色のもとは果皮にある
ブドウの果肉は淡い色。色は果皮にあります

樽とステンレスタンクで、何が変わるか

同じ果汁でも、どの容器で発酵・熟成させるかで、別のワインになります。

樽(オーク)ステンレスタンク
香り樽・ナッツ・バニラの香りが加わるブドウと発酵由来の香りが前に出る
口あたり厚みが増す輪郭が締まる
色黄金色に寄る黄色が中心
酸素わずかに通るほとんど通らない

白ワインは、樽の香りがつくとボディ感が増し、色も黄金色に寄ります。 樽を使わない造りでは、黄金まではいかない黄色が中心になります。グラスの色を見ると、樽を使っているかどうかの見当がつくのは、このためです。

ここが、シャルドネという品種の面白いところです。樽を使ったシャルドネと、樽を使わないシャルドネは、別のワインとして振る舞います。 診断の言葉でいえば、前者は「バターとコク」、後者は「ミネラルとキレ」です。同じ品種の名前で呼ばれているのに、合う料理も変わります。

厨房での使い分けはこうなります。

  • バター・クリームを使った皿 … 樽を使ったシャルドネ
  • 貝・牡蛎・塩気で後味を切りたい皿 … 樽を使わないシャルドネ
  • ハーブ・柑橘・青野菜の皿 … ソーヴィニヨン・ブラン

工程の違いが、そのまま合わせ方に出る。 これが、造りを知っておく実利です。品種の比べ方はソーヴィニヨン・ブランとシャルドネの違いに、樽の働きは樽熟成に書きました。

辛口と甘口は、どこで分かれるのか

辛口と甘口の分かれ目も、工程の中にあります。

辛口は、糖がアルコールに変わりきった状態です。 発酵を最後まで進めると、残る糖はごくわずかになります。

甘口は、糖を残して仕上げたワインです。 方法は大きく二つに分かれます。

ひとつは、発酵を途中で止めること。冷やす、濾すなどして酵母の働きを終わらせると、変わりきっていない糖が残ります。

もうひとつは、もともとの糖度を高くしておくことです。こちらにはいくつかの道があります。

  • 収穫を遅らせて、樹の上で糖度を上げる
  • 摘んだブドウを陰干しして、水分を抜く
  • 貴腐菌がついたブドウを使い、水分が抜けて凝縮したものを搾る
  • 凍ったブドウを搾り、糖の濃い部分だけを取る

糖が多いほど、酵母が働きにくくなります。ですから、高い糖度から造ると、アルコールになりきらない糖が自然に残ります。貴腐ワインの仕組みは貴腐ワインに、甘口全体の整理は甘口ワインのガイドにまとめました。

甘口は「砂糖を足したワイン」ではありません。 ブドウの糖を、どこまでアルコールに変えるかという選択の結果です。店では甘口を、デザートに合わせてお出しすることが多くあります。

黒ブドウから造る白 ― ブラン・ド・ノワール

最後に、冒頭の混乱に戻ります。黒ブドウから造る白ワインです。

ブラン・ド・ノワールは、黒ブドウだけから造られた白を指す言葉です。「黒から造った白」という意味で、シャンパーニュなどの泡でよく見かけます。

造り方は、これまでお話ししたことの応用です。黒ブドウを色が移る前に、優しく搾る。 果肉は淡い色なので、皮と早く離せば白い液体が取れます。搾りを急がず、強く押さない。工程の丁寧さがそのまま品質になる造りです。

反対に、ブラン・ド・ブランは白ブドウだけから造った白を指します。シャンパーニュでは、その多くがシャルドネのみで造られています。

ここまで来ると、最初の分類が整理できます。

  • 白ブドウ × 果汁だけ発酵 … ふつうの白ワイン
  • 黒ブドウ × 果汁だけ発酵 … ブラン・ド・ノワール
  • 黒ブドウ × 短く漬け込む … ロゼ
  • 黒ブドウ × 漬け込んで発酵 … 赤ワイン
  • 白ブドウ × 漬け込んで発酵 … オレンジワイン

五つとも、違うのはブドウと果皮の距離だけです。 泡の造りの違いはシャンパンとスパークリングワインの違いにまとめました。

造り手と同じ卓に立つ夜に

ここからは、料理人としての話をします。

Na Team Labでは、山梨のワイナリーと組んだメーカーズディナーやランチを頻繁に行ってきました。これまでにペアリングを組んだのは、マルスワイナリーとルミエールです。いずれも甲州を含んだ構成にしました。

造り手が同じ場所にいる夜は、ワインの説明の仕方が変わります。味わいの形容ではなく、その一本がどう造られたかから話が始まるからです。 そして造りの話が出ると、私の側の仕事もはっきりします。

メーカーズディナーでは、甲州が何種類も並びました。同じ品種なのに、造りが違えば別の顔をしています。シュール・リーで厚みを持たせたもの、果皮に触れさせて橙色に寄ったもの。甲州は、いろいろなスタイルのワインになる品種です。

そこで私は、前菜から軽めの魚料理、カルパッチョあたりまでを甲州に合わせました。 甲州は軽やかで飲みやすいのが持ち味です。その持ち味を生かすには、合わせる皿も軽くしておく必要があります。

逆のことも、はっきり分かっています。バター感の強い魚料理や、肉料理に甲州を合わせると、甲州の良さが消えます。 料理の厚みがワインを覆ってしまうからです。これは品種の弱さではなく、造りの選択と料理の選択が噛み合っていないだけです。

造りを知ることの意味は、ここにあります。工程を知ると、そのワインが得意な皿の重さが見えてきます。 「白だから魚」ではなく、「この白は、この重さまで」という判断ができるようになる。甲州については甲州の記事に詳しく書きました。

絵の前のテーブルに並べた、造りの違う白ワインと赤ワインのボトル5本
同じ品種でも、造りが違えば合う皿の重さが変わります

あなたのタイプなら、白はこの造りから

造りの知識は、自分の好みと結びつけて初めて使えるものになります。5分のワイン診断で出る白の5タイプを、造りの側から並べます。

  • 柑橘とハーブが好きな方 … ソーヴィニヨン・ブランのタイプ。樽を使わず、低い温度で香りを守った造りへ
  • キリッとした酸と花が好きな方 … リースリングのタイプ。冷涼な産地と、酸を残す収穫の判断が効いています
  • ミネラルとキレが好きな方 … シャブリのタイプ。ステンレスタンクで輪郭を締めた造り
  • バターとコクが好きな方 … 樽熟成シャルドネのタイプ。樽とマロラクティック発酵が生む香り
  • ライチとバラが好きな方 … ゲヴュルツトラミネールのタイプ。品種の香りが主役になる造り

白の選び方そのものは白ワインを飲み始める方へにまとめました。

ただし、これはまだ仮説です。グラスを並べて飲み比べて、はじめて分かります。Na Team Labでは毎月テーマを立ててワイン会を開いています。樽を使った白と使わない白を並べると、工程の違いが味としてどう出るかは一口で分かります。コース料理とともに6杯を合わせる会と、10〜15本を並べて立食で楽しむ会の2つの形式があります。これまでの会では、7割近くの方がお一人で参加されています。診断の結果に合わせた品種ガイドは公式LINEでご案内しています。

まとめ

白ワインの作り方は、一つの判断から始まっています。

  • 白ワインは、収穫したブドウを先に搾り、果汁だけを発酵させます
  • 赤ワインは果皮と種を漬け込んで発酵させるので、色と渋みが移ります
  • 工程は収穫・圧搾・発酵・熟成・瓶詰めの五つ。白では酸を残すことと、強く搾らないことが要になります
  • 樽を使うと香りと厚みが増し、色も黄金色に寄ります。タンクでは輪郭が締まります
  • 辛口は糖が変わりきった状態、甘口は糖を残して仕上げたもの
  • 黒ブドウを色が移る前に搾れば、白ワインになります。これがブラン・ド・ノワールです
  • 造りが分かると、そのワインが得意な皿の重さが見えてきます

次に白ワインを開けるとき、グラスの色を一度見てみてください。黄金に寄っているか、淡い黄色のままか。それだけで、その一本がどんな容器で待っていたかが見えてきます。

よくある質問

赤ワインと白ワインの作り方の違いは何ですか?

搾る順番が逆です。白は収穫したブドウを先に搾り、皮と種を取り除いた果汁だけを発酵させます。赤は皮と種を果汁に漬け込んだまま発酵させるため、色と渋みが移ります。この一手が両者を分けています。

白ワインは何から作られていますか?

原料はブドウだけです。白ブドウが基本ですが、黒ブドウを優しく搾って果汁だけを使えば白ワインになります。果肉はどちらも淡い色なので、皮の色を移さなければ白く仕上がります。

白ワインは家で作ってもいいのですか?

日本では酒類の製造に免許が必要で、免許のない醸造はできません。工程を知るために読む分には役に立ちますが、自家醸造は試さないでください。造りを味わいで確かめるなら、飲み比べのほうが確実です。

白ワインの辛口と甘口は、どこで分かれるのですか?

発酵をどこまで進めるかで分かれます。辛口は糖がアルコールに変わりきった状態で、甘口は発酵を途中で止めるか、もともとの糖度を高くしておくことで糖を残して仕上げます。砂糖を足したワインではなく、ブドウの糖をどこまでアルコールに変えるかという選択の結果です。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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