還暦祝いの食事の会場を探しはじめると、多くの方がまず「個室」で絞り込みます。周りに気を使わずに済む、という理由です。

けれど個室を予約したあとになって、もう一段深い不安が出てきます。下の子はまだ二歳で、途中で飽きるかもしれない。声を出したら、隣の卓に聞こえるのではないか。そして、主役である親の、そのまた親が来ます。八十代の足で、その店まで来られるだろうか。

還暦祝いの食事の会場選びが難しいのは、条件がひとつではないからです。いちばん動きにくい人と、いちばん小さい人が、同じ卓につきます。この記事では、費用の分け方から場所の比べ方、当日の進行までを順に整理していきます。

SUMMARY

結論:還暦祝いの食事は、満六十歳のご本人を主役に、子ども世代が主催して費用を分け合うのが一般的です。 ただし孫を含む三世代が集まる日は、個室を取っても声は隣の卓に届きます。 周囲への気兼ねと、主役の移動の負担。この二つをどちらも消したいのであれば、店の貸切か、ご自宅が選ばれています。 この記事では、費用を誰が持つかの整理から、個室・貸切・自宅の比べ方、乳幼児が同席する日の当日の流れまでを、出張料理人の視点でお伝えします。

あわせて、還暦祝いの食事を家族で整える金婚式で五十年の食卓を囲むもご覧ください。

還暦とは、満六十歳で暦がひとまわりする節目

還暦とは、満六十歳を迎えることを指します。干支は十干と十二支の組み合わせで六十年をひとまわりするため、六十年で生まれた年の干支に戻ります。暦が還る、というのが言葉の由来です。数え年でいえば六十一歳にあたります。

赤いものを贈る慣習も、ここから来ています。暦がひとまわりして生まれた年に還る、つまりもう一度赤子に戻るという考え方です。赤には魔除けの意味もあり、赤いちゃんちゃんこが定番とされてきました。

もっとも、いま六十歳を迎える方の多くは、まだ現役で働いています。長寿を祝うという原義よりも、家族が集まる口実としての節目という受け取られ方のほうが、現在は近いように思います。

還暦祝いの食事は、誰が払うのかを先に決める

還暦祝いで三世代が囲む食卓
いちばん小さい子どものペースまで含めて、家族の席を整えます。

会場を探す前に決めておくと、あとが楽になることがあります。誰が費用を持つか、です。

子ども世代で分け合うのが一般的

還暦祝いの食事会は、主役であるご本人ではなく、子ども世代が主催して費用を持つのが一般的です。私たちがご家族の記念の席に伺うときも、ご依頼をくださるのはお子さん世代であることがほとんどです。

きょうだいが複数いる場合は、その人数で分け合う形が多くなります。ここで迷いが出やすいのが、孫の世代の扱いです。孫はまだ学生であることも多く、通常は費用を出しません。会に参加すること自体が、還暦を迎える方への贈りものになります。

決め方そのものに正解はありません。ただ、当日までに決めておくという一点だけは、はっきりしています。

当日その場で会計しない、という方法

費用の話がこじれるのは、多くの場合「金額」ではなく「タイミング」です。祝いの席の終わりに、誰かが伝票を持って立ち上がる。その瞬間に、譲り合いが始まってしまいます。

これを避ける方法は単純で、当日その場で会計が発生しないようにしておくことです。Na Team Lab の出張料理では、お支払いを当日の現金か、事前のお振込かでお選びいただいています。事前にお振り込みいただければ、当日は一度も財布が出てきません。主役の目の前で、お金の話をしなくて済みます。

お店を選ぶ場合も、考え方は同じです。事前にカードを預けておく、幹事が先に立って精算を済ませておくなど、席を立たずに終われる形にしておくと、最後まで場の空気が変わりません。

個室・貸切・自宅|還暦祝いの食事の場所を比べる

ここからが本題です。還暦祝いの食事は、どこで開くのがよいのか。孫を含む三世代が集まる前提で、五つの選択肢を並べます。店と自宅とシェフを呼ぶ場合の、より基本的な比べ方については、「還暦祝いの食事はどこでするか」をまとめた記事でも整理しています。

場所費用の出しやすさ主役の移動子連れのしやすさ周囲への気兼ね
個室レストラン一人あたりが読めるあり席は確保できる声は漏れる
店の貸切総額で決まるあり動いても平気ない
自宅総額で決まるなし別の部屋が使えるない
ホテル高くなりやすいあり施設は整う共用部で気を使う
旅行を兼ねる最も大きい最も重い移動が長い宿による

表の読み方は、右の二列から

この表は、左から順に読まないほうが分かりやすくなります。右端の二列、つまり子連れのしやすさと周囲への気兼ねから読むと、選択肢が早く絞れます。

費用は、どの選択肢を選んでも後から調整できます。人数を減らす、コースの内容を変える、平日にする。けれど「声が漏れるかどうか」は、当日になって調整できません。会場の構造そのものが決めてしまうからです。

距離ではなく、休める場所があるかどうか

主役の移動についても、見るべき点があります。私たちがご年配の方の会に伺うなかで感じているのは、距離そのものより、疲れたときにすぐ休める環境があるかどうかのほうが大きい、ということです。

年齢が上がるにつれて、移動すること自体が負担になっていきます。そのうえで、会の途中で体力が尽きたとき、家には横になれる部屋がありますが、店にはありません。還暦を迎える六十代のご本人はまだ動けても、その親御さまが同席される場合、この差がそのまま会場選びの結論になります。

実際、ご自宅での会のあとにいただく感想として多いのは、「家でゆっくりできた」という一言です。

個室を取っても、子連れの不安は消えない

還暦祝いの食事で「個室」が真っ先に検索される理由は、子連れだからです。ところが、個室を確保しても不安が残ります。理由を分けて考えてみます。

主催者が本当に気にしているのは、隣の卓

私たちがご相談をいただくなかで、実際に多く聞こえてくる懸念があります。お店だと細かな対応ができないのではないか。子どもが騒いだらどうしよう。この二つです。

個室は、視線を遮ります。けれど音までは遮りません。壁一枚、あるいは引き戸一枚を隔てた向こうに、別のお客様の卓があります。乳幼児が声を上げたとき、主催者は反射的に廊下側を見ます。その一瞬のたびに、祝いの席から意識が離れていきます。

気にしているのは子どもの声そのものではなく、その声が誰に届いているかです。そしてこれは、個室では構造的に解けません。解けるのは、その空間に自分たちしかいない場合、つまり貸切か自宅のときだけです。

だからこそ「家でゆっくり、気にせず企画したい」という方が多くなります。私は、そのための出張料理だと思っています。

食べ終わった子どもが、動ける場所があるか

もうひとつ、当日の実際についてお伝えします。

以前、千代田区のタワーレジデンスのパーティールームで、ご両親とお子さまを含むご家族の昼の会を担当しました。そのパーティールームには、キッズルームが併設されていました。当日どうなったかというと、お子さまはご飯を食べ終えるとキッズルームで遊びはじめ、大人はその間、フルコースを最後まで召し上がっていました。

このとき起きたのは「進行が止まる」ことではありません。子どもだけが先に食事を離れるという分岐です。大人の会は、そこで終わらずに続きました。

成立の条件はひとつだけです。食べ終わった子どもが移動できる、別の場所があること。ご自宅であれば、子ども部屋やリビングの一角が、そのまま同じ役割を果たします。個室レストランで難しいのは、席を離れた子どもの行き先が、廊下しかないことです。

三世代の卓で、料理の側が引き受けること

会場が決まったら、次は料理です。三世代の卓では、料理の側でできる調整がいくつかあります。

塩味・量・出す速さは、料理の側で先に落とす

ご年配の方が同席される席では、私たちは三つを調整しています。塩味を抑えること、量を控えること、出す速さをゆるめることです。あわせて、食べやすく、噛み切りやすい仕立てにしておきます。

塩は、引き算で旨味を彫るものです。塩味を落としても、素材の輪郭が消えてしまっては意味がありません。だしや香りの層を重ねて、ピークの位置を少し手前に置き直します。この設計を先に済ませておけば、卓に出てからご本人に気を使わせずに済みます。

八十代の方が同席する日は、たくさん召し上がることが目的ではなくなります。同じ場の空気を、ほかの家族と同じように味わいたいという感覚のほうが強くなります。だからこそ、量を落としても、皿数と出るタイミングは他の方と揃えます。

お子さまには、年齢に応じたものを

お子さまに対しても、考え方は同じです。コースの全体像は変えません。年齢によって食べられるものに変えて、同じ流れのなかでお出しします。別立ての子ども用コースにしてしまうと、その席だけが会から切り離されてしまうからです。

これまでお子さま用のメニューを組んだ席で、いちばん小さかったのは二歳のお子さまでした。料理の内容も量も、それぞれの方に合わせて用意しています。

正直に申し上げると、この調整はいちばん手のかかる部分です。出すスピードを世代ごとに変えること、一人ひとりで内容を変えること。どちらも簡単ではありません。それでも、三世代が同じコースを同じ順番で味わうためには、ここを引き受ける必要があると考えています。

子どもがいる日の、当日の流れとプレゼントの渡しどき

還暦祝いの食事会は、乾杯から始まり、食事、プレゼント、写真という順に進みます。所要時間は、二時間半から三時間ほどをみておくと余裕があります。

ただし、子どもが同席する日は、この順番をそのまま当てはめないほうがうまくいきます。子どもの集中は、大人の食事より先に切れるからです。

順序を組み替えるなら、こうなります。

  • 乾杯は全員が揃った直後に。遅れて来る方を待つと、子どもの体力から先に削れていく
  • プレゼントは、中盤より少し前に渡す。子どもが席にいるうちなら、孫から手渡す場面をつくれる
  • 記念撮影も、同じ理由で早めに。全員が揃って座っている時間は、思っているより短い
  • 子どもが食べ終えて席を離れたあとが、大人がゆっくり過ごせる時間になる

写真については、私たちも会の最後に記念撮影をお手伝いしています。ただ、お子さまが小さい会では、最後まで待たないほうが確実です。

親を動かさない、という祝い方

ここまで会場と料理の話をしてきましたが、いちばんお伝えしたいのは別のことです。

還暦祝いの食事の相談で、主催者の方が最後まで言葉にしないことがあります。親に、無理をさせたくない。慣れない店まで来てもらい、慣れない椅子に三時間座ってもらう。祝われる側が、いちばん疲れて帰ることになります。

私は、食事は体験価値だと考えています。物を受け取るのも嬉しいでしょう。けれど体験として受け取りたいという方は、年配になるほど多くなると、席で感じてきました。そしてその体験は、移動と気疲れで目減りします。

親を動かさずに祝う、という選び方があります。ご自宅であれば、主役は一歩も外に出ません。孫は隣の部屋で遊べます。八十代の方は、疲れたら部屋で少し休んで、また卓に戻ってこられます。ひと組の家族だけの卓が、その日だけそこに立ち上がります。

まとめ

還暦祝いの食事について、この記事でお伝えしたことを整理します。

  • 還暦は満六十歳。暦が生まれた年に還ることが由来で、赤いものを贈る慣習もここから来ている
  • 費用は子ども世代で分け合うのが一般的。孫の世代は出さないことが多い
  • 会計は当日その場で発生しない形にしておくと、席の空気が最後まで変わらない
  • 場所は費用から選ばず、子連れのしやすさと周囲への気兼ねから絞ると早い
  • 個室は視線を遮るが、音は遮らない。声の問題が解けるのは貸切か自宅のみ
  • 子どもが食べ終えて移動できる別の場所があれば、大人の会は最後まで続けられる
  • 三世代の卓では、塩味・量・出す速さを料理の側で先に落としておく
  • プレゼントと記念撮影は中盤より前に。全員が座っている時間は短い

還暦の食卓には、いちばん上の世代と、いちばん小さな人が同時に座ります。その両端に合う場所を選べば、真ん中の世代は何もしなくてよくなります。還暦祝いの食事の会場選びは、突きつめればそれだけのことなのだと思います。

次のステップ

還暦を迎える方のご両親が同席される席では、慣れないお店への移動そのものが負担になることがあります。そこにお孫さんが加われば、気を配る先はさらに増えます。

ご自宅であれば、そのどちらも消えます。

Na Team Lab は、食材も器もグラスもカトラリーも携えて伺います。ご用意いただくのはキッチンだけで、後片付けまで引き受けます。お客様の手は、ひと指も汚れません。ご年配の方には塩味と量を、お子さまには年齢に合わせた一皿を、同じコースの流れのなかでお出しします。

コースはお一人15,000円から、ワインのペアリングをつける場合は22,000円。いずれも6〜16名さま、税・サービス料・出張費込みです。1回のご依頼につき90,000円からで、ご家族の集まりは6名さま以上でお受けしています。対応エリアは基本的に東京都内、ご相談は2週間前までにいただけると、当日まで仕込みを重ねられます。お支払いは当日の現金、または事前のお振込からお選びいただけます。

還暦祝いの食事のご相談や、Na Team Lab の出張料理・レストランの詳細は、公式LINEにてご案内しています。ご検討の節は、こちらからお声がけください。

よくある質問

本人が「還暦祝いはしなくていい」と言う場合はどうすればよいですか?

お祝いは嬉しく受け取られる方が多い、というのが席で見てきた実感です。それでも気が進まないご様子であれば、「還暦祝い」と銘打たず、家族が集まる食事の日として設えると、ご本人が構えずに済みます。

遠方の親族が来る場合、還暦祝いの食事はどこで開くのがよいですか?

遠方から来る方ほど、当日の移動が二重になります。宿泊先か主役のご自宅の近くに会場を寄せると、全員の移動が一度で済みます。ご自宅で開けば、到着した方から順に休んでいただくこともできます。

還暦祝いの食事は、何日前までに決めておくとよいですか?

三世代の予定が揃う日を先に押さえるところから始まります。出張料理をご検討の場合は、2週間前までにご相談いただけると、当日まで仕込みを重ねられます。締切を設けているわけではありませんので、日程が決まりしだいご相談ください。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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ご家族のお祝いの前に、料理を確かめる体験ランチ。

お食い初めや記念日など、ご自宅での出張料理をご検討中の方へ。1〜8名様で料理とシェフの対応をご体験いただけます。1〜8名様 / お一人様15,000円(税込)・ドリンク込み / 約2時間・完全予約制。完全予約制・開始時間はご都合に合わせて調整。

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