作り置きは清潔な浅い容器に小分けし、速やかに冷却して冷蔵・冷凍します。室温に長く置かず、冷蔵分は早めに使い、温め直しは中心まで十分に。

ワインなどの液体を熱い鍋に注ぐときは一度火を止め、炎や顔から離して少しずつ加えます。油のはねや引火に注意し、液体を入れてから加熱を再開します。同じ品種を使う方法は組み合わせの出発点であり、加熱で酸やタンニンも変わるため、必ず合うという保証ではありません。

ステーキを焼いて、そのまま塩と胡椒で食べる。それでも十分においしいのですが、ソースが一つあると、同じ肉が別の料理になります。

そして赤ワインソースは、家でいちばん作りやすいソースのひとつです。必要なものは、肉を焼いたあとのフライパンと、赤ワインと、バター。それだけです。

迷いやすいのは二点だと思います。どのワインを使うのか、そしてどこまで煮詰めるのか。この記事では、その二つに答える形で、赤ワインソースの作り方を書きます。

加えて、料理人としていちばんお伝えしたいことがあります。ソースに使うワインと、食卓で飲むワインの関係です。ここを合わせると、一皿とグラスが別々のものではなくなります。

SUMMARY

結論:赤ワインソースの作り方は、デグラッセ、煮詰め、モンテという三つの動作に分けられます。 肉を焼いたフライパンに赤ワインを注いで鍋底のうまみを溶かし、3分の1ほどまで煮詰めます。 そこで火を止め、冷たいバターを溶かし込むと、つやのあるソースになります。 ソース用のワインは1,000円前後の果実味のあるもので十分です。食卓で飲むワインと同じ品種にすると、料理とグラスがつながります。

あわせて、火入れの基本と塩とうま味もご覧ください。

赤ワインソースの作り方は、三つの動作でできています

手順を長く覚える必要はありません。やっているのは三つの動作だけです。

一、デグラッセ ― 鍋底を溶かす

肉を焼くと、フライパンの底に茶色い焼き汁が残ります。これを液体で溶かしてうまみを取り出す技法を、デグラッセと呼びます。

ここで大事なことがひとつあります。黒く焦げた部分は苦みが出るので使いません。茶色いところだけを溶かします。 焦げまで一緒に溶かし込むと、苦みがソース全体を支配します。

私が教室でまず伝えているのは、フライパンにうま味が残っているという事実です。そこを理解していただくと、普段捨てていた部分が材料に変わります。ゼロから出汁を引かなくても、奥深いソースができる。ソースは、フライパンの底に残っているに、この考え方をまとめました。

二、煮詰める ― 水分を抜いて味を寄せる

赤ワインを注いだら、木べらで鍋底をこそげながら煮詰めます。水分が飛ぶにつれて、色は濃くなり、香りはワインの果実から焼き汁のうまみへ移っていきます。

三、モンテ ― 火を止めてバターを溶かし込む

煮詰まったら、火を止めて、冷たいバターを溶かし込みます。これをモンテと呼びます。火にかけたままでは温度が上がりすぎて、乳化が崩れて分離に向かうことがあります。

バターを入れると、表面につやが出て、口当たりが丸くなります。私はバターが溶け始めたくらいのタイミングで乳化させることが多いです。溶かしきってから混ぜるのではなく、溶け始めで動かす。ここが仕上がりの分かれ目です。

足すものは、多くありません

材料は次のとおりです。

  • 肉を焼いたあとのフライパン(焼き汁が残っているもの)
  • 赤ワイン
  • バター(私は料理には有塩を使います)
  • 塩

刻んだエシャロットや玉ねぎを、ワインを注ぐ前に軽く炒めておくと、香りに幅が出ます。砂糖やはちみつを少量加える手もありますが、これは後ほど触れます。

有塩バターを使う理由は、バターが連れてくる塩味を、塩味の総量の勘定に入れているからです。先に見込んでおけば、最後に足す塩を引けます。詳しくはバターの塩を、勘定に入れるに書きました。

煮詰める目安は、量で見ます

肉料理に茶色いソースを注ぐ実写写真
肉の焼き汁を活かして仕上げたソースの盛り付け例です。

「何分煮詰めるか」で覚えると、火力と鍋の大きさで答えが変わってしまいます。ですから、量で見てください。

目安は、3分の1ほどまでです。注いだ赤ワインが、おおよそ3分の1の高さになるまで煮詰める。少なくとも半量以下にはしてください。

煮詰めが足りないと、アルコールと酸が残って、とがった味になります。逆に煮詰めすぎると苦みが立ち、バターを入れても戻りません。

ゆるいと感じたときの手は、煮詰めるだけではありません。ソースの濃度をつける手段は四通りあります。乳化、バター、糖分、そして温度帯です。 温かい状態より、冷やしたほうが濃度がつきます。煮詰めるのが怖いときは、バターを少し足す、あるいは一度火から外して落ち着かせる。そういう選び方ができます。

フォンドボーがないときの考え方

レシピには「フォンドボーを加える」と書かれていることがあります。家にない場合、どうするか。

結論から書くと、なくても赤ワインソースは成立します。 理由は、フライパンに残った焼き汁が、すでにうまみの役割を果たしているからです。デグラッセという技法は、もともと「手元にあるうまみを使う」という発想の上にあります。

それでも物足りないと感じるときは、役割を分けて考えてください。 フォンドボーには、ソースにとろみを与えるゼラチンと、焼いた骨や香味野菜のコクという二つの役割があります。コンソメやブイヨンで置き換えようとしてもしっくりこないのは、片方だけしか補えていないからです。

家でできることとしては、焼き色をつけた玉ねぎやトマトペーストを少量加えてコクを足す、という手があります。とろみは、バターの量と煮詰め方で作れます。

ステーキ・鴨・ハンバーグで、変えるところ

同じ赤ワインソースでも、合わせる料理によって調整を変えています。

料理焼き汁の性格調整するところ
ステーキ肉のうまみが強く、香ばしさが出る煮詰めを深めに。バターは控えめでも立つ
鴨脂が多く、香りに個性がある酸をやや残す。煮詰めすぎない
ハンバーグ玉ねぎやつなぎの甘みが出る甘みが足りているので、糖分は足さない

鴨は脂が多いので、ソース側の酸を少し残しておくと、口の中が重くなりません。ハンバーグはすでに甘みが入っていますから、そこにはちみつを足すと甘い方向に寄りすぎます。

もうひとつ、焼き方そのものについて。表面の香ばしさは、ソースの土台になります。 焼き色をしっかりつけてから中へ火を入れる段取りにすると、鍋底に残る焼き汁が濃くなります。火入れの考え方は「何分焼くか」をやめると、火入れは決まるにまとめました。

ソースに使うワインと、飲むワインの関係

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

ソースに使うワインは、高くなくてよい

赤ワインソースのために、よいワインを開ける必要はありません。1,000円前後の、果実味のあるもので十分です。

理由は、煮詰める工程でワインの繊細な香りがほとんど飛んでしまうからです。残るのは果実の濃さと酸、そして色です。熟成した香りや樽のニュアンスは、3分の1まで煮詰めたあとには、ほぼ判別できません。

ただし、酸化してしまったワインは使わないでください。 煮詰めると、その嫌な香りだけが濃くなります。

飲むワインと、同じ品種にする

そのうえで、選び方にひとつ軸を入れてみてください。食卓で飲むワインと同じ品種で、ソースを作るのです。

メルローを飲む夜なら、ソースもメルローで。カベルネ・ソーヴィニヨンを開けるなら、ソースもカベルネで。同じ品種を使うと、皿の中の香りとグラスの香りが同じ方向を向きます。 料理とワインが別々のものではなく、ひと続きのものとして感じられます。

これは9つの原則でいう同調の設計です。ペアリング教室でもお伝えしている内容で、家でそのまま試せる数少ない方法のひとつです。

品種ごとの性格は、それぞれ別の記事に書きました。メルローは、渋みより果実で飲ませる赤は果実味が前に出る品種で、ハンバーグや鴨に向きます。カベルネ・ソーヴィニヨンは、渋みを料理で受け止める品種は骨格が強く、ステーキと組みやすい品種です。

もうひとつ。焼き色の香ばしさは、樽の香りと同じ帯域で共鳴します。 焼き色をしっかりつけた肉には、樽で熟成させた赤が重なります。この仕組みは焼き色の香りがワインを変えるで詳しく書きました。ペアリングの考え方そのものはワインペアリングは「対話」にまとめています。

ペアリングは、同じ卓で確かめると分かります

ソースとワインが同調するという話は、文章で読むより、同じ卓で飲み比べたほうが早く伝わります。 同じソースに別の品種を合わせて、口の中で何が変わるのかを確かめる。それが、ペアリングのいちばん短い学び方だと考えています。

Na Team Labの料理教室は、シェフの実演を見て味わう形式です。各回8名、1回6,000〜12,000円(税込・ドリンク込み)、入会金なしの1回完結です。基本は12時から約2時間。開催日時・テーマ・料金は回ごとに予約ページでご確認ください。スーパーで手に入る食材と家庭のIHを基本に、季節の特別な食材を使う回もあります。

手が空いているので、グラスを持ったままご参加いただけます。飲まない方にはノンアルコールドリンクをご用意しています。教室では、味が組み上がっていく変わり目を全員で味見します。塩を入れる前、入れた瞬間、そして完成形。この三段を舌で確かめると、レシピに書かれていない工程が見えてきます。

開催日程とお申し込みは料理教室のページにございます。ご質問やご相談は公式LINEでも承っております。

まとめ

赤ワインソースの作り方は、覚えることが少ないソースです。

  • 流れは三つ。デグラッセ → 煮詰め → モンテです
  • デグラッセでは茶色い焼き汁だけを溶かす。黒く焦げた部分は使いません
  • 煮詰める目安は時間ではなく量。3分の1ほどまでです
  • モンテは火を止めてから。冷たいバターを溶け始めで乳化させます
  • フォンドボーはなくても成立します。足すなら焼き色をつけた玉ねぎかトマトペーストで
  • 料理別に、ステーキは煮詰めを深め、鴨は酸を残し、ハンバーグには糖分を足さない
  • ソース用のワインは1,000円前後の果実味のあるもので十分です
  • 食卓で飲むワインと同じ品種にすると、皿とグラスがひと続きになります

次に肉を焼いたら、フライパンを洗う前に手を止めてみてください。ソースは、もうそこにあります。

よくある質問

赤ワインソースにアルコールは残りますか?

煮詰める工程で減りますが、残る量は加熱時間や鍋などで変わります。ただし完全になくなると言い切ることはできません。お子様、妊娠中の方、飲酒を避ける方には、ワインを使わず水やブイヨンなどで別のソースを作ります。煮詰め量や時間だけでアルコールがゼロになったとは判断できません。

赤ワインソースが酸っぱいときは、どう甘くすればよいですか?

まず煮詰めが足りていないかを確かめてください。水分が減ると酸も濃くなるので、味見を優先します。必要ならブイヨンや水で薄め、バターや少量の甘みでバランスを整えます。そのうえで、はちみつや砂糖をごく少量、または炒めた玉ねぎの甘みを足します。糖分には濃度を上げる働きもあるため、入れすぎると重くなります。

赤ワインソースは作り置きできますか?

煮詰めた段階までは作っておけます。冷やすと濃度が上がるので、使うときに温めて調整してください。バターを溶かし込むモンテは、再加熱で分離に向かうため、食べる直前に行うほうが仕上がりが安定します。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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