ワインの紹介文に、こう書かれていることがあります。「カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロー35%、カベルネ・フラン5%」。数字まで丁寧に並んでいるのに、それを読んで味が想像できた経験は、あまり多くないのではないでしょうか。
品種名の羅列に見えるこの一行は、実のところそのワインをどう組み立てたかという設計の記録です。読み方を持てば、ここから味の方向が見えてきます。
セパージュという言葉は、その設計を指すために使われます。この記事では、セパージュの意味とアッサンブラージュとの違い、ブレンドが担う四つの役割、産地別の代表的な組み合わせ、単一品種との考え方の違い、そしてラベルでの読み方までを順に見ていきます。赤・白・ロゼといった分類から整理したい方は、ワインの種類をまとめた記事を先にご覧ください。
結論:セパージュとは、そのワインに使われているぶどう品種と、その比率のことです。 フランス語の「ぶどう品種」を語源とし、日本では品種構成を指す言葉として使われています。 ブレンドは、品種の長所を補い合うために行われます。ボルドーは骨格のカベルネに柔らかいメルローを合わせ、南ローヌは果実のグルナッシュに色と香りのシラーを加えます。 一方でブルゴーニュのように単一品種で仕立てる産地もあり、セパージュの考え方は産地によって異なります。
あわせて、造り方からワインを知るとラベルの読み方を知るもご覧ください。
セパージュとは 品種とその比率を指す言葉
セパージュは、フランス語で「ぶどう品種」を意味する語です。日本のワインの文脈では、もう少し狭い意味で使われます。そのワインに使われている品種と、その比率を指すのが一般的です。
よく似た言葉として、アッサンブラージュがあります。こちらは「組み合わせること」を意味し、造り手が複数の樽やタンクのワインを混ぜ合わせる作業そのものを指します。
二つの語は、こう使い分けられます。
- セパージュ … 結果として一本の中にある品種構成(設計図)
- アッサンブラージュ … その構成を作るために行う調合の作業(施工)
造り手は、収穫したぶどうを品種ごと、区画ごとに別々に発酵させることがあります。出来上がった複数のワインを並べて味を見て、どの比率で混ぜるかを決めます。この判断がアッサンブラージュであり、決まった答えがセパージュとして残ります。
つまりセパージュは、造り手がその年のぶどうに対して出した答えです。だからこそ、同じ生産者でも年によって比率が変わります。
なぜブレンドするのか 四つの役割

ブレンドは、量を増やすための操作ではありません。品種ごとの長所を持ち寄り、足りない部分を埋めるための設計です。役割は、おおよそ四つに分けられます。
ひとつめは、骨格です。渋みと酸で輪郭を作る役です。カベルネ・ソーヴィニヨンのように果皮が厚く渋みの多い品種が、この役を担います。骨格だけでは、口に含んだときの肉づきが足りません。
ふたつめは、果実と肉づきです。真ん中の厚みを満たす役です。メルローやグルナッシュのように、柔らかく丸い果実味を持つ品種が入ります。渋みの強いワインに加えると、締まった輪郭の内側が埋まります。
みっつめは、香りと彩りです。全体の印象を決める、少量で効く役です。シラーは色と黒胡椒のような香りを与え、カベルネ・フランはスミレや青い香りを添えます。比率が5%でも、香りの方向は変わります。
よっつめは、年ごとのぶれの吸収です。これは味の話ではなく、栽培の話です。晩熟の品種は日照の足りない年に熟しきらず、早熟の品種はその年でも十分に熟します。複数の品種を植えておけば、どちらに転んだ年でも使える実が残ります。ブレンドは、気候のぶれに対する備えでもあります。
四つのうち、どれを重く見るかは産地によって違います。そしてその違いが、産地ごとのセパージュの形になっています。
産地別の代表的なセパージュ
主要な産地の組み合わせを、役割の分担として並べます。
| 産地 | 主な品種 | 役割の分担 |
|---|---|---|
| ボルドー左岸 | カベルネ・ソーヴィニヨン主体、メルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド | 骨格をカベルネが作り、メルローが肉づきを足す。プティ・ヴェルドは色と香りを少量で |
| ボルドー右岸 | メルロー主体、カベルネ・フラン | 果実の丸さを主役に置き、カベルネ・フランが香りと締まりを添える |
| 南ローヌ | グルナッシュ、シラー、ムールヴェードル | 果実のグルナッシュに、シラーが色と香り、ムールヴェードルが渋みと土の要素を加える |
| シャンパーニュ | シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ | シャルドネが酸と伸び、ピノ・ノワールが骨格、ピノ・ムニエが果実と早い飲みごろを担う |
| リオハ | テンプラニーリョ主体、ガルナッチャ | テンプラニーリョが骨格と熟成の力、ガルナッチャが果実の甘やかさを足す |
ボルドーは、左岸と右岸で主役が入れ替わります。左岸は砂利質の土壌が晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンに向き、右岸は粘土質の土壌が早熟のメルローに向きます。同じ地方で主役が違うのは、好みの違いではなく土の違いです。 各品種の掘り下げは、カベルネ・ソーヴィニヨンの記事とメルローの記事にまとめています。
南ローヌは、三品種の頭文字からGSMと呼ばれる組み合わせで知られます。暖かい土地で果実味が豊かに乗る産地であり、グルナッシュだけでは色も渋みも軽くなります。そこへシラーとムールヴェードルが入ります。シラーが何を与える品種かは、シラーの記事で扱っています。
シャンパーニュは、白ぶどうと黒ぶどうを混ぜる産地です。北の冷涼な土地のため、単独では酸が立ちすぎる年もあります。複数の品種、複数の区画、さらに複数の年のワインを混ぜることで、味の形を毎年同じところに置いています。分類や造りの違いは、シャンパーニュの種類をまとめた記事をご覧ください。
地方ごとの品種の対応を地図として押さえたい方は、フランスワインの産地の記事が全体の見取り図になります。リオハについては、スペインワインの記事で扱っています。
単一品種のワインとの違い
セパージュという言葉は、品種が一つのワインにも使えます。「セパージュはピノ・ノワール100%」という書き方です。
単一品種で仕立てる代表が、ブルゴーニュです。赤はピノ・ノワール、白はシャルドネ。品種を一つに決めているからこそ、比べる軸が畑に移ります。 同じ品種、同じ造り手でも、隣の区画で味が変わる。その差を読むための産地です。畑の名前で選ぶという考え方は、ブルゴーニュの記事にまとめました。
アルザスも、単一品種を基本にする産地です。フランスでは珍しく、ラベルに品種名を表示します。品種から味を選べる地方として、アルザスの記事で扱っています。
新世界と呼ばれる産地でも、単一品種の表示が多く見られます。気候が安定していて、一つの品種で一本を完成させられるためです。チリのカベルネ・ソーヴィニヨンのように、年ごとのぶれが小さければ、ぶれを吸収するためのブレンドを必要としません。
ここで押さえておきたいのは、ブレンドと単一品種は優劣ではないということです。どちらも、その土地と気候に対する答え方の違いです。ぶれる土地はブレンドで備え、安定した土地は単一品種で品種の輪郭を見せる。産地の条件が違えば、答えも違ってきます。
ラベルでのセパージュの読み方
セパージュは、表のラベルではなく裏のラベルに書かれていることが多いものです。読むときの手順は、二つあります。
ひとつめは、比率の順を見ることです。最初に書かれた品種が主役です。ボルドーのワインで最初にメルローが来ていれば右岸寄りの設計、カベルネ・ソーヴィニヨンが来ていれば左岸寄りの設計と見当がつきます。
ふたつめは、少量の品種を見落とさないことです。5%のカベルネ・フランや、3%のプティ・ヴェルドは、量としては端です。けれども香りの方向を決める役として入っています。端の品種が、そのワインの顔を作っていることがあります。
品種名が表のラベルに書かれている場合には、表示の規定があります。
- EUでは、単一の品種名を表示するために85%以上その品種であることが求められます(EU規則2019/33)
- 日本ワインも同様に、品種名を表示するには85%以上の使用が必要です
- 日本ワインで3品種以上を表示する場合は、それぞれの使用割合を併記し、合計が85%になるまで表示します
つまり「シャルドネ」と大きく書かれたボトルにも、残りの15%として別の品種が入っている場合があります。品種名の表示は、純度の宣言ではありません。
産地名や格付けの読み方を含めたラベル全体の読み方は、ワインのラベルの読み方をまとめた記事で扱っています。
単一品種とブレンドを並べた夜のこと
私は、香りを主要な三つに絞り、それぞれを実在の食材に置き換え、連想の共通項に出てきた食材を皿の主役に据える、という手順で料理を決めています。この手順を使っていると、セパージュの違いが皿の側にはっきり出てきます。
単一品種のワインは、香りの三つが同じ方向に揃いやすいものです。レモン、潮、青りんごのように、ひとつの系統で並びます。だから皿の主役も、すぐに一つに決まります。
ブレンドのワインでは、三つの香りが別の方向から出てくることがあります。黒い果実と、青い葉と、甘いスパイス。ひとつの食材で全部を受け止めるのは難しく、ソースや付け合わせに役を分けることになります。手間は増えますが、料理の幅はむしろ広がります。 皿の組み方の手順は、ペアリングの組み立て方をまとめた記事に書きました。
この違いは、読むよりも並べた方が速く分かります。レストランのペアリングでは、樽の強いワインと弱いワインを並べてお出しすることがあります。料理教室のペアリングの回では、同じ料理に二本を合わせ、どちらが合うかをお客様自身に確かめていただく形を取っています。
Na Team Labでは、毎月テーマを立ててワイン会を企画しています。1回あたり6本から15本を並べ、品種別・年代別・産地別のように共通点を作って飲み比べる形が基本です。持ち寄りの会では、参加される方がブルゴーニュ縛りのように自分でテーマを決めてこられることもあります。共通点を作って並べると、「ここまで味わいが違うのか」という驚きが生まれます。料理はコース形式で7品ほど、ビュッフェ形式では10品ほど。8名から30名ほどの規模で開いています。
まとめ
セパージュは、品種名の羅列ではありません。造り手がその年のぶどうに対して出した答えの記録です。
- セパージュとは、ワインに使われている品種とその比率を指す言葉です
- 調合の作業そのものはアッサンブラージュと呼び、結果の構成がセパージュになります
- ブレンドの役割は四つ。骨格、果実と肉づき、香りと彩り、年ごとのぶれの吸収です
- ボルドーは左岸と右岸で主役が入れ替わり、南ローヌはGSM、シャンパーニュは3品種で形を揃えます
- 単一品種とブレンドは優劣ではなく、土地と気候に対する答え方の違いです
次に裏ラベルを見たときは、最初に書かれた品種と、5%の品種の両方を確かめてみてください。そのワインの設計が見えてきます。
よくある質問
セパージュの比率はラベルに書いてありますか?
書かれている場合と、書かれていない場合があります。裏ラベルや輸入業者のシールに記載されることが多く、表のラベルには産地名だけという設計も一般的です。記載がないときは、産地名から主要な品種の組み合わせを推測する形になります。
単一品種と表示するためのルールはありますか?
あります。EUでは単一の品種名を表示するために85%以上その品種であることが求められ、日本ワインも品種名の表示に85%以上の使用が必要です。つまり品種名が書かれていても、残りに別の品種が入っていることがあります。
ワインエキスパートの試験では、セパージュはどのように問われますか?
産地と認可品種の対応関係が中心になります。ボルドーの左岸と右岸、南ローヌの主要品種、シャンパーニュの品種のように、産地ごとの組み合わせで覚えると整理しやすくなります。出題の範囲と学習の進め方は、受験ガイドの記事にまとめています。
一杯の違いを、料理とともに確かめる。
少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

