知らない料理人を、自分の家の台所に入れる。

出張料理をご検討中の方から、この躊躇を打ち明けられることがあります。レストランであれば、店を構えている以上、それなりの手続きを踏んでいるのだろうと察しがつく。けれど出張となると、その手がかりがありません。

かといって、「営業許可はお持ちですか」「資格証を見せていただけますか」とは、なかなか切り出せないものです。失礼にあたるのではないか、疑っていると思われるのではないか。そう感じて、聞かないまま当日を迎える方が少なくありません。

ですからこの記事では、聞きにくいことを、料理人の側から先に開示します。出張料理における営業許可と資格の考え方、そして依頼する側が使える具体的な確認方法を、順にお伝えします。

SUMMARY

結論:出張料理そのものに営業許可が不要になるケースはありますが、事前の仕込みが発生するなら、その仕込み場所に営業許可が必要になります。 つまり判断の軸は「シェフが資格を持っているか」ではなく、「その料理が、どこで作られたか」です。 依頼する側が確認しやすいのは、実店舗を構えているかどうか。店舗があれば飲食店営業許可を取得している蓋然性が高く、費用を負って店を維持できていること自体が、品質と事業の実態を示す材料にもなります。 Na Team Lab は飲食店営業許可と菓子製造業許可を取得し、仕込みはすべて恵比寿の自社厨房で行っています。

出張料理に、営業許可は必要なのか

はじめに、いちばん誤解されやすいところから整理します。

営業許可は、料理人という「人」に対して与えられるものではなく、調理を行う「場所」に対して与えられるものです。ここを取り違えると、確認すべき先を見失います。

その前提に立つと、出張料理の答えは一つに定まりません。お客様のご自宅で、仕込みから調理までのすべてをその場で始める形であれば、営業許可が不要になるケースもあります。その日その場で作り、その場で召し上がっていただく。家庭の台所で誰かが料理を作ることと、構造としては地続きだからです。

一方で、事前の仕込みが発生する場合は、その仕込みを行った場所に営業許可が必要になります。下ごしらえをして、ソースを炊いて、それを現場へ運ぶ。この工程が挟まった時点で、料理はどこかの厨房で「作られた」ことになります。

判断の軸は「誰が」ではなく「どこで」

つまり、確かめるべきは資格証の有無ではありません。

その料理が、どこで作られたのか。

これが軸になります。なお、こうした運用は保健所によって判断が分かれる場合があります。厳密なところをお知りになりたい方は、管轄の保健所にご確認いただくのが確実です。

依頼する側から見た、たったひとつの確認軸

黒い手袋をした手が、まな板の上でサーモンを切り分けている
どこで、誰の手で作られたか。そこが判断の軸になります。

ここまでを踏まえると、依頼する側がすべきことは、ずいぶん単純になります。

「そのお料理は、どちらで仕込まれるのですか」

この一問で足ります。営業許可の話を持ち出さずとも、料理の流れを尋ねる自然な質問として成立しますし、返ってくる答えに必要な情報がすべて含まれています。

ひとくちに出張料理と呼ばれるものにも、設計にはかなりの幅があります。整理すると、おおむね三つに分かれます。

  • すべてを現場で仕立てる形。仕込みも火入れも、お客様の空間で行います
  • 厨房で仕込み、現場で仕上げる形。多くの出張シェフはこの形をとります
  • 完成した料理を届ける形。宅配のオードブルやケータリングに多い設計です

どれが優れているという話ではありません。人数や会の性質によって、適した形は変わります。ただ、後ろの二つには「厨房」が介在するという点だけは、共通しています。

だからこそ、その厨房がどこなのかを尋ねる意味があります。営業許可を取得した施設なのか、それとも別の場所なのか。答えを濁されることがなければ、それだけで判断材料としては十分です。

出張料理に、資格は必要か 食品衛生責任者という線

営業許可と並んでよく尋ねられるのが、資格の話です。

飲食を業として営むうえで基本になるのが、食品衛生責任者です。調理の技術を証明する資格ではなく、衛生の管理を担う者としての資格である、と理解していただくのが近いと思います。

Na Team Lab では、シェフである私と、スタッフの双方が食品衛生責任者の資格を保有しています。

ここで一つ、あえて申し添えます。有資格者が一人いれば、形式は整います。けれど出張の現場は、店の厨房とは違って目が行き届く範囲が限られます。その日その場に立つ人間が全員、同じ基準を共有していること。それが実務では意味を持ちます。

出張料理に必要な資格は何か。この問いへの答えとしては、食品衛生責任者を一つの線として見ていただくのがよいと考えています。それ以上の資格については料理人ごとに背景が異なりますので、気になる場合は個別にお尋ねください。

いちばん聞きやすい確認方法は、店舗の有無です

ここからは、私自身が「もし依頼する側だったら」という視点でお話しします。

許可も資格も、確認したほうがよいのは確かです。しかし現実には、初対面の料理人に書類の提示を求めるのは、気の重い作業です。関係の入り口としても、あまり心地よいものではありません。

そこで私がお勧めするのは、もっと簡単な問いです。

「お店は、構えていらっしゃるんですか」

これなら、雑談の延長で聞けます。そしてこの一問には、二つの意味があります。

一つは、許可の蓋然性

店舗を構えて営業しているなら、飲食店営業許可を取得している蓋然性が高いと考えられます。許可のないまま店を開き続けることは、現実的ではないからです。

また、店を持つ料理人であれば、多くの場合、仕込みはその厨房で行われています。先ほどの「どこで仕込まれたか」という問いの答えが、あらかじめ用意されている状態になります。

もう一つは、事業として続いているという事実

こちらのほうが、私は本質的だと考えています。

一定の品質を保てなければ、費用の面で店を構え続けることはできません。 家賃があり、設備があり、人がいる。その負担を背負ったまま営業が続いているという事実は、単発の実績よりも雄弁です。

出張だけであれば、極端な話、明日から名乗ることもできます。けれど店は、そうはいきません。店舗の存在そのものが、継続的な品質と事業の実態を示す証明になる。だから一度、確かめてみてもよいと思うのです。

Na Team Lab は、東京・恵比寿に一日ひと組・八席の店を構えています。飲食店営業許可と菓子製造業許可を取得し、出張の仕込みも、そのすべてを自社の厨房で行っています。出張料理は、店の厨房から飛び出したもう一つの恵比寿である。それが私たちの位置づけです。

他人の台所で、衛生をどう保つか

最後に、当日の話をします。

出張料理の現場は、私にとって自分の厨房ではありません。設備の配置も、シンクの深さも、作業台の広さも、伺うまでわかりません。自分の場所ではないところで、店と同じ衛生の基準を保つ。これが出張という仕事の、地味ですが最も重要な条件です。

そのために、いくつか決めていることがあります。

まず、手洗いを徹底すること。工程が変わるたびに手を洗います。当たり前のことですが、他人の家の台所では、この当たり前を意識して繰り返す必要があります。

そして、アルコールを持参し、消毒をしながら調理を進めること。器具や作業面を、その都度整えながら進行します。現場に何が備わっているかを前提にせず、必要なものは持ち込む。それが結果として、いちばん確実です。

この考え方は、道具全般にも及びます。食材、器、グラス、カトラリー、必要な調理道具。そのすべてをこちらで携えて伺います。ご自宅の食器をお借りすることはありません。お客様の手をわずらわせないためでもありますが、同時に、衛生の管理を自分たちの手の内に収めておくためでもあります。

まとめ

出張料理の営業許可と資格について、要点を整理します。

  • 営業許可は「人」ではなく「場所」に与えられるものです。確認すべき先を取り違えないことが出発点になります
  • お客様宅で仕込みから始める形なら、営業許可が不要になるケースもあります。 一方で事前の仕込みがあるなら、その厨房に許可が必要になります
  • 依頼する側が使える問いは一つ、「そのお料理は、どちらで仕込まれるのですか」。この答えに、必要な情報が含まれています
  • 資格の線は食品衛生責任者です。Na Team Lab では、シェフとスタッフの双方が保有しています
  • いちばん聞きやすい確認方法は、実店舗を構えているかどうか。 許可の蓋然性に加えて、費用を負って店が続いていること自体が、品質と事業の実態を示します
  • 当日の衛生は、手洗いの徹底と、食品にかけてよいアルコールでの消毒、そして器や道具を持参することで担保しています

台所を預けるというのは、決して軽い判断ではありません。だからこそ、確認していただいて構いません。むしろ、確認された料理人のほうが、気持ちよく仕事に入れるものです。

Na Team Lab の出張料理は、6〜16名さまのコース形式で、お一人 15,000円〜(税・サービス料・出張費込)。ワインペアリングを添える場合は、お一人 22,000円。17名さま以上は、ビュッフェ形式でお一人 8,000円〜を目安にしています。

出張料理の詳細や、当日の設備に関するご相談は、公式LINEにてご案内しています。

よくある質問

出張料理を頼むとき、営業許可の確認は必要ですか?

料理をどこで仕込むかによって、許可の要否が変わります。事前の仕込みがある場合は、その厨房に営業許可が必要です。実店舗を構えているかどうかを伺うのが、依頼する側にとっていちばん確認しやすい方法だと考えています。

出張シェフに必要な資格はありますか?

食品衛生責任者が基本の線になります。Na Team Lab では、シェフ川原壯太とスタッフがともに、この資格を保有しています。あわせて飲食店営業許可と菓子製造業許可を取得したうえで営業しています。

自宅のキッチンで調理する際、衛生面はどうしていますか?

手洗いを徹底し、食品に直接かけてよいアルコールを持参して、器具や作業面を消毒しながら調理を進めます。器やグラス、カトラリーも当日すべて持参しますので、ご自宅の道具に頼らない設計になっています。

川原壯太(Na Team Lab シェフ)
AUTHOR 川原 壯太 Na Team Lab シェフ

恵比寿のレストランを拠点に、年間200件を超える出張料理・会食を手がける。5味のバランスやペアリングなど「9つの原則」に基づいて食卓を設計し、料理教室・ワイン会も主宰。

Instagram @nateam.kawahara


仕込みは、恵比寿の自社厨房で。

Na Team Lab は恵比寿に実店舗を構え、飲食店営業許可と菓子製造業許可を取得しています。出張の仕込みも、そのすべてを自社の厨房で行っています。シェフとスタッフの双方が食品衛生責任者の資格を保有しています。「そのお料理は、どちらで仕込まれるのですか」という一問に、そのままお答えできる形で営業しています。

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