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贈られた一本の栓が金属だったとき、少し身構えてしまうことがあります。あるいは外食の席で、ソムリエが抜栓ではなく手で回して開けた瞬間に、「この店のワインは」と思ってしまう。そういう気持ちは、よく分かります。

ワインのスクリューキャップは、長いあいだ安さの印として見られてきました。けれど現場にいると、まったく違う理由で選ばれていることが分かります。守りたいものがあるから、この栓なのです。

この記事では、コルクとの違い、採用が進んだ国と品種、熟成と開栓後の保存、そしてコルクの上にかぶさるキャップシールの役目までをお話しします。最後に、店と出張料理の現場でこの栓を選ぶ場面を添えます。

SUMMARY

結論:ワインのスクリューキャップは、安いワインの印ではありません。 コルク由来のカビ臭(ブショネ)を防ぎ、若いうちの香りの鮮度を守るために選ばれている栓です。 ニュージーランドではほぼすべてのワインがこの栓で、価格帯の高いワインにも使われています。 キャップの内側のライナーを選ぶことで通す酸素の量を調整でき、長期熟成を見込んだワインにも用いられています。 開けたあとに閉め直せるため、数日に分けて飲む家飲みにも向いています。

あわせて、ワイングラスを形から選ぶとワインペアリングの組み立て方もご覧ください。

スクリューキャップは安物なのか

結論から申し上げると、栓の種類と価格の高さには、直接の関係がありません。

誤解が生まれた背景はあります。スクリューキャップが日本の店頭に増えた時期、価格の手に取りやすいワインから採用が進みました。先に目にしたものが記憶に残るので、「回して開ける栓は安い」という印象が固まったわけです。

けれど、栓はもともとワインを運ぶための仕組みです。造り手が考えているのは、畑で手に入れた香りを、飲む方のグラスまでどう届けるか。その一点です。コルクで届けたいワインもあれば、金属の栓で届けたいワインもある。格づけの話ではなく、どう届けたいかの選択です。

ワインの欠陥の話はブショネなどワインの欠陥を扱った記事に整理しました。この記事では、その先の「では栓はどう選ばれているのか」を扱います。

コルクとスクリューキャップの違い

形の異なるワイングラスとデキャンタを並べた実写写真
味わいを確かめるための、形の異なるグラスとデキャンタ。

軸ごとに並べます。

軸コルクスクリューキャップ
酸素の通り方わずかに通す。1本ごとのばらつきがあるライナーで調整できる。ばらつきが小さい
熟成の向きゆっくり酸化が進む方向酸素の少ない方向に進みやすい
コルク由来の劣化ブショネが起きうる起きない
開栓道具が必要道具が不要
再栓しにくいできる
保管の向き横に寝かせてコルクの乾燥を防ぐ向きを選ばない
抜栓の所作場の一部になる所作がない

ライナーという、見えない部分

スクリューキャップで実際に封をしているのは、金属そのものではありません。キャップの内側に敷かれたライナーと呼ばれる内張りです。

このライナーには、酸素をほとんど通さないものと、わずかに通すものがあります。造り手は、そのワインをどう育てたいかに応じて種類を選びます。栓を選ぶという行為が、熟成の設計の一部になっているわけです。

コルクの場合、酸素の通り方は天然素材の個体差に委ねられます。1本ごとに性質が違うため、同じ年の同じワインでも、瓶によって少し違う育ち方をします。その揺らぎを味わいと見る立場もありますし、そろえたいと考える立場もあります。

還元のにおいについて

酸素をほとんど通さない封では、還元的なにおいが出ることがあると言われます。マッチを擦ったような、ゴムを思わせるような香りです。

出たときは、グラスの中で空気に触れさせると和らぐことが多いです。大きめのグラスに替える、しっかり回す、場合によってはデキャンタに移す。グラスの形がワインの出方をどう変えるかは、ワイングラスの種類の記事に書きました。

軽い還元香は空気に触れて和らぐことがありますが、強い硫黄臭が残る場合は欠陥の可能性もあります。開けてすぐに判断を下さず、少し待つ。それだけで印象が変わります。

スクリューキャップが多い国と品種

採用がもっとも進んだのは、ニュージーランドです。

2001年に造り手たちが共同の取り組みを立ち上げ、短い期間で切り替えが進みました。ニュージーランドやオーストラリアで広く採用されていて、きっかけは2000年のリースリングでの採用でした。

どちらの国でも、価格帯の高いワインにもこの栓が使われています。「安いから」という説明が成り立たない証拠が、産地の側にあるわけです。

品種では、リースリングとソーヴィニヨン・ブランとの相性がよいとされます。どちらも、若いうちの香りの鮮度が味わいの中心にある品種です。柑橘、ハーブ、白い花。畑で手に入れたその香りを減らさずに届けたいなら、酸素を厳しく管理する栓が合理的です。

ソーヴィニヨン・ブランという品種そのものについては、ソーヴィニヨン・ブランを扱った記事にまとめました。ニュージーランドのマールボロは、この品種の代表的な産地のひとつです。

ヨーロッパでも、辛口の白や早めに飲むワインで採用が広がっています。産地の新旧で分かれる話ではなくなってきました。

熟成と、開けたあとの保存

かつては「スクリューキャップは長期熟成に向かない」と言われました。酸素が入らないため、熟成が進まないという理屈です。

いまは、その前提が変わっています。ライナーの選択で酸素の量を調整できるため、長期熟成を見込んだワインにもこの栓が使われています。20年以上を経たスクリューキャップのワインの例も報告されています。

何年もつかという問いには、答えを持っていません。ワインの造り、保管の環境、置き場所の温度で変わります。家で置いておく場合の考え方はワインを家で熟成させる記事に、保管そのものの考え方はワインの保存方法の記事に整理しました。

開けたあとについては、閉め直せるという利点がはっきり効きます。コルクを押し戻すよりも、口元がしっかり閉じます。冷蔵庫に立てて置けるので、場所も取りません。数日に分けて飲む家飲みには、素直に向いた栓です。

開栓後にどのくらいもつかという話は、ワインの賞味期限を扱った記事にまとめています。栓の種類だけでなく、ワインの種類と保管の仕方で変わるためです。

キャップシールとは

ここで、もうひとつの「キャップ」の話をします。コルクのボトルの口にかぶさっている、金属やプラスチックのカバーです。キャップシールと呼びます。

もともとの役目は、栓を虫や鼠から守ることでした。コルクを食べる虫がいたため、上から覆っていたわけです。いまは、密閉の補助、見た目、偽造の防止、ブランドの表示といった役を担っています。

開けるときは、ソムリエナイフの刃で切り取ります。切れ味がよければ1周で切れます。2周するのは決まりごとではなく、道具の切れ味に不安があるときの保険です。目的は回数ではなく、切り口がきれいであることです。

ご家庭では、こだわらなくてよいと思います。カトラリーのナイフや調理用のはさみで切れ目を入れてもかまいませんし、キャップシールごと全部外してしまうのがいちばん楽です。

古酒のときは、私も全部はがします。コルクの状態を外から見たいからです。乾き、沈み、カビ、液漏れの痕跡。開ける前に見ることが、折らないための最初の工程になります。コルクが折れたときの対処はコルクが折れた・抜けないときの記事に書きました。

なお、スクリューキャップのボトルにキャップシールはありません。キャップそのものが外装を兼ねているためです。切る工程がないのは、現場では小さくない差です。

店と出張料理の現場で、この栓を選ぶ場面

ここからは、使う側の話をします。

店でスクリューキャップのワインを選ぶのは、まずグラスで数日に分けてお出しするときです。1本を一夜で空けない前提のワインは、閉め直せる栓のほうが扱いやすい。翌日、翌々日の一杯の状態を考えると、この選択になります。

もうひとつは、屋外や出張料理の現場です。ご自宅や別邸に伺って一夜のコースをお出しするとき、持ち込む道具はできるだけ少なくしたい。グラスは人数分お持ちしますが、それでも荷は重くなります。

その状況で、ソムリエナイフがなくても開けられる栓があることは、思っている以上にありがたいものです。道具を一つ忘れた日に救われたことがあります。栓の種類が、現場の成立条件を変えることがあるわけです。

一方で、コルクを下に見ているわけではありません。抜栓の所作そのものが、その場の一部になるという価値は、確かにあります。キャップシールを切り、スクリューの先端が中心に入る角度を探し、音を立てずに引き上げる。あの数十秒が、卓の空気を切り替えます。

だから私は、栓を優劣で見ていません。その夜に何を大事にするかで、選び分けるものだと考えています。

まとめ

スクリューキャップは、安さの印ではありません。

  • ブショネが起きない、道具が要らない、閉め直せる、という利点があります
  • 実際に封をしているのはキャップ内側のライナーで、通す酸素の量を造り手が選べます
  • ニュージーランドではほぼすべてのワインがこの栓で、価格帯の高いものにも使われています
  • リースリングやソーヴィニヨン・ブランのように、若いうちの香りが中心の品種と相性がよいとされます
  • ライナーの選択で、長期熟成を見込んだワインにも使えます
  • キャップシールはコルクのボトルにあるカバーで、もとは虫から栓を守るためのものでした
  • 現場では、数日に分けて出すときと、道具を持ち込めない出張の現場でこの栓を選びます

次にスクリューキャップのワインを手にしたら、価格ではなく、その造り手が何を守ろうとしたのかを考えてみてください。回すだけで開く栓の向こうに、畑の香りを減らさずに届けたいという判断があります。

次のアクション

若いうちの香りが好きなのか、時間を経た香りが好きなのか。好みは、栓の選び方よりも先に知っておくと役に立ちます。

ワイン診断では、白を5タイプ、赤を5タイプに分けています。無料・全30問、5分ほどで終わります。結果に合わせた品種ガイドは公式LINEでご案内しています。

診断の結果は、あくまで仮説です。確かめるにはグラスを並べるのが早道で、Na Team Labでは毎月テーマを立ててワイン会を開いています。これまでの会では、7割近くの方がお一人で参加されています。

よくある質問

スクリューキャップのワインは長期熟成できますか?

できます。キャップ内側のライナーには、酸素をほとんど通さないものと、わずかに通すものがあり、造り手が目的に応じて選んでいます。20年以上を経たスクリューキャップのワインの例も報告されています。

開けたあと、閉め直して冷蔵庫で何日もちますか?

閉め直せるぶん、コルクを押し戻すより状態を保ちやすくなります。日もちそのものはワインの種類と保管の仕方で変わるため、開栓後の扱いを整理した記事をあわせてご覧ください。立てて置けるのも、この栓の利点です。

合成コルクとは何ですか?

樹脂でコルクの形を再現した栓です。カビ臭が起きないという点はコルクより有利で、見た目と抜栓の所作はコルクに近いという位置にあります。通す酸素の量は製品によって異なります。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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