SUMMARY

結論:南アフリカワインは、ヨーロッパの造りの考え方と、暖かい土地の果実味をあわせ持つワインです。 ワイン造りの歴史は1659年までさかのぼるとされ、新世界と呼ばれながら、味わいの骨格は旧世界に近いと言われます。 白の代表は、この国でもっとも多く植えられてきたシュナン・ブラン。赤の代表は、南アフリカで生まれたピノタージュです。 品質に対して価格が手頃な一本が多く、ワインリストで知らない国のページを開いたときに、いちばん外れにくい国だと私たちは考えています。

あわせて、ピノタージュは、南アフリカでしか生まれなかった赤とシュナン・ブランは、辛口から甘口まで一人で担う品種ですもご覧ください。

絵の前のテーブルに並べた白ワインと赤ワインのボトル5本。南アフリカワインの飲み比べをイメージ
ひとつの国を、白から赤まで並べて飲むと、その国の輪郭が見えてきます(写真は店内のテーブル)

レストランでワインリストを渡されたとき、フランスとイタリアのページだけを見て決めている。そういう方は、少なくありません。知らない国のページは、当たりはずれが読めないからです。

けれども、そのページの中にひとつ、外れにくい国があります。 南アフリカです。

理由は、この国のワインが置かれている位置にあります。歴史はヨーロッパから持ち込まれて350年以上、造りの考え方はフランスに近い。一方で、日照は強く、果実の熟し方は新しい産地のそれです。そして、まだ価格が実力に追いついていません。

この記事では、南アフリカワインの特徴、代表品種、主な産地、そして白・赤・泡の選び方を順に整理します。恵比寿で一日ひと組のレストランを営み、年間およそ2,000種のワインを試飲する立場から、どこを見て選んでいるかをお話しします。

南アフリカワインの特徴は、どこにあるのか

南アフリカのワインは、よく「旧世界と新世界のあいだ」と形容されます。曖昧な言い方ですが、飲むと納得のいく表現です。理由は三つあります。

歴史は、1659年までさかのぼります

南アフリカで最初のワインが造られたのは1659年のことだとされています。ケープに入植したオランダ東インド会社の指揮官が、その日の記録を書き残したと伝えられています。

ヨーロッパから苗が持ち込まれ、その後フランスから逃れてきた人々が栽培と醸造の技術をもたらしました。18世紀から19世紀にかけては、コンスタンシアの甘口ワインがヨーロッパの王侯に愛されたという記録も残っています。

つまり、「新世界」と区分されながら、ワイン造りの歴史はドイツやオーストリアの一部の産地と比べても遜色がありません。 新世界という言葉がヨーロッパから見た呼び方にすぎないことは、ニューワールドのワインの記事でも触れました。

冷たい海と、高い山が、涼しさを与えています

南アフリカは、地図で見れば南緯34度前後。日本なら高知のあたりで、ぶどうには暑すぎる土地に見えます。

それでも引き締まったワインが生まれるのは、二つの条件があるからです。

ひとつは海です。大西洋側には冷たいベンゲラ海流が流れ、そこから吹き込む風が畑の温度を下げます。南東から吹く強い風は、現地で「ケープ・ドクター」と呼ばれています。

もうひとつは山と標高です。ケープの産地は折り重なった山地のあいだに広がり、斜面の向きと高さによって、同じ地域の中に涼しい畑と暖かい畑が混在します。

この二つが、強い日照のもとでも酸を残す条件になっています。果実は熟しているのに、後味が重くならない。 これが南アフリカのワインを飲んで最初に気づくところです。

造りの考え方は、ヨーロッパに近い

三つめは、人の側の事情です。

南アフリカの造り手は、歴史的にフランスやドイツの考え方を受け継いできました。果実味を前面に押し出すのではなく、酸と骨格で組み立てる。樽は使うけれども、香りで塗りつぶすところまでは行かない。

その結果、南アフリカのワインは香りは新世界、骨格は旧世界という、やや変わった立ち位置に収まりました。これが「あいだ」と呼ばれる理由です。

南アフリカの代表品種

品種から入ったほうが、選ぶときに迷いません。まず表にします。

色品種味わいの傾向
白シュナン・ブラン洋梨、りんご、蜜。酸がきれいで、辛口から甘口まで幅がある
白ソーヴィニヨン・ブラン柑橘とハーブ。涼しい産地のものは輪郭が鋭い
白シャルドネ白桃と樽の香り。酸が残り、重くなりにくい
赤ピノタージュ黒い果実に、燻製とコーヒー。南アフリカ生まれの品種
赤シラーズ(シラー)黒胡椒とスパイス、濃い果実。スワートランドに秀作が多い
赤カベルネ・ソーヴィニヨン黒すぐりと杉。ステレンボッシュの柱
赤ケープ・ブレンドピノタージュを含む南アフリカ独自のブレンド

白の柱は、シュナン・ブランです

シュナン・ブランは、フランスのロワールを原産とする白ぶどうです。南アフリカでは古くから「スティーン」という現地名で大量に植えられ、現在もこの国でもっとも栽培面積の広い品種です。

かつては、安価な日常のワインやブランデーの原料として扱われてきた品種です。それが近年、樹齢の高い古木から、驚くほど密度のある白ワインが生まれることが知られるようになりました。

味わいは、青りんごや洋梨、熟したものでは蜜や蜂蜜を思わせる香りが出ます。酸がきれいに通っていて、辛口でも輪郭があります。ロワールのシュナン・ブランと比べると、果実の甘い香りが前に出やすい傾向があります。品種そのものの性格は、シュナン・ブランの記事で詳しくまとめました。

赤の柱は、ピノタージュとカベルネです

赤には、二つの入り口があります。

ひとつは、この国で生まれたピノタージュ。1925年にピノ・ノワールとサンソーを掛け合わせてつくられた品種で、栽培はほぼ南アフリカに集中しています。黒い果実に燻製とコーヒーの香りが重なる、分かりやすい個性をもった赤です。詳しくはピノタージュの記事に書きました。

もうひとつは、カベルネ・ソーヴィニヨン。ステレンボッシュを中心に、骨格のしっかりした赤が造られています。ボルドーの考え方で組み立てたブレンドも多く、こちらは国際的な評価がもっとも高い領域とされています。

畝が奥へ続くぶどう畑の風景。南アフリカの産地の畑をイメージ
写真は国内のぶどう畑です。南アフリカでは、冷たい海風と山が酸を残します

主な産地を知ると、選びやすくなります

南アフリカのラベルには、産地名が書かれています。これが読めるようになると、味の見当がつきます。

産地性格得意な品種
ステレンボッシュ温暖で、山の斜面が多い。この国の中心地カベルネ・ソーヴィニヨン、ボルドー・ブレンド、ピノタージュ
パールステレンボッシュの北。やや暖かいシラーズ、シュナン・ブラン、泡
スワートランド乾いた丘陵。古木が多く、小さな造り手が集まるシュナン・ブラン、シラー、サンソー
コンスタンシア海に近く、涼しい。古い歴史をもつ地区ソーヴィニヨン・ブラン、甘口ワイン
エルギン標高が高く、国内でもっとも涼しい産地のひとつシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール
ヘメル・アン・アールド海からの風が入る谷。冷涼ピノ・ノワール、シャルドネ

覚え方は単純です。赤の骨格を求めるならステレンボッシュ、白の鋭さを求めるならエルギンかコンスタンシア、個性を求めるならスワートランド。

ヘメル・アン・アールドは、現地の言葉で「天と地」という意味をもつ谷の名前です。ここのピノ・ノワールは、ブルゴーニュとは別の方向から、同じ品種の繊細さに近づいています。

なお、南アフリカには1973年に始まった産地を表示するための制度(Wine of Origin)があり、ラベルの産地表記はこの制度に基づいています。

おすすめの選び方

ここからは、実際に一本選ぶときの順番です。

白なら、まずシュナン・ブラン

最初の一本には、シュナン・ブランをおすすめしています。理由は三つです。

  • この国を代表する品種なので、「南アフリカを飲んだ」という手応えが残る
  • 辛口から甘口まで幅があり、好みの位置を探しやすい
  • 価格の幅が広く、手頃なところから試せる

選ぶときに見るのは、産地と「オールド・ヴァイン」などの表記です。樹齢の高い畑のものは、味の密度が上がる傾向があります。

ソーヴィニヨン・ブランを選ぶなら、エルギンやコンスタンシアのものを。ニュージーランドのような強い香りではなく、もう少し静かで、柑橘と石の印象が残ります。

赤なら、ピノタージュか、ステレンボッシュのカベルネ

その国でしか飲めない味を知りたいなら、ピノタージュです。炭火の肉と合わせると、この品種の居場所がすぐに分かります。

よく知っている品種で比べたいなら、ステレンボッシュのカベルネ・ソーヴィニヨン。同じ価格のボルドーやカリフォルニアと並べると、酸の残り方と渋みのきめの違いが見えます。カベルネ・ソーヴィニヨンの記事と読み比べてみてください。

泡は、メトード・キャップ・クラシックを探す

南アフリカには、瓶の中で二次発酵をおこなう本格的な泡があります。メトード・キャップ・クラシック(Méthode Cap Classique)と呼ばれ、ラベルに「MCC」や「Cap Classique」と書かれています。2020年ごろからは、呼び名を「キャップ・クラシック」に揃える動きが進んでいます。

造りはシャンパーニュと同じ考え方で、使う品種もシャルドネとピノ・ノワールが中心です。ただし価格は、シャンパーニュよりかなり手頃な位置にあります。泡の造りの違いそのものは、シャンパーニュとスパークリングワインの違いの記事で整理しました。

なぜ、価格に対して質が高いのか

南アフリカのワインを飲んだ方が、たいてい口にされる感想があります。「この値段で、これなのか」というものです。

理由は、ワインの中身だけの話ではありません。一般に、次のような事情が重なっているとされています。

要因内容
歴史と技術350年以上の蓄積があり、造りの水準が高い
自然条件日照が安定し、良年と不作の差が小さい傾向がある
生産コスト土地と人件費が、ヨーロッパの銘醸地より低い水準にある
ブランド産地名の知名度が価格に反映されていない

最後の一行が、いちばん大きいと私たちは考えています。ワインの価格は、味だけでなく、産地の名前への評価で決まります。 ブルゴーニュの村名が持つ値段の力は、まだ南アフリカの地名にはありません。

ですから、同じ品質を比べたとき、南アフリカは安く見えます。これは造り手にとっては悔しい話で、飲む側にとっては幸運な話です。ワインリストの価格の読み方については、レストランのワイン価格の記事にも書きました。

南アフリカワインに合う料理

品種ごとに、方向が決まります。

ワイン合う料理
シュナン・ブラン(辛口)白身魚のソテー、鶏のクリーム煮、チーズを使った前菜
シュナン・ブラン(蜜のあるもの)フォアグラ、青かびチーズ、果物を使った前菜
ソーヴィニヨン・ブラン貝、ハーブのサラダ、山羊のチーズ
シャルドネ帆立、鶏、きのこのクリーム
ピノタージュ炭火の牛・羊、スペアリブ、ジビエ
カベルネ・ソーヴィニヨン牛のロースト、赤身のステーキ
泡(MCC)食卓の最初の一杯、揚げもの、生ハム

南アフリカの食卓には、炭火のバーベキューと、スパイスを使った煮込みが根づいていると言われます。煙と香辛料。 この二つに寄り添えるのが、この国の赤の強みです。

ワイン会の日の恵比寿の店内。長いテーブルに並ぶ多くのワイングラス
ひとつの国を並べて飲むと、その国の輪郭が一度で分かります(写真は恵比寿の店内のテーブル)

11種を並べると、見えてくること

ここまで、品種と産地を分けて説明してきました。けれども、国を知るのにいちばん速い方法は、同じ晩に、その国のワインを並べて飲むことです。

一杯ずつ別の日に飲んでいては、違いは記憶の中でぼやけます。隣に並べれば、その場ではっきりします。

1月16日の「南アフリカワインを巡る会」は、そのために組んだ会です。南アフリカの11種、泡1・白4・ロゼ1・赤5を、各約45mlずつ。昼の部と夜の部に分け、どちらも八席の卓で進めます。

会でおこなうのは、三つのことです。

  1. 南アフリカにしかない味に出会う … シュナン・ブラン、ピノタージュ、ケープ・ブレンド
  2. よく知っている品種の、この国の顔を知る … ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワール
  3. 好きだと思った1本の名前を、紙に残して帰る

泡はパールの造り手のメトード・キャップ・クラシック、白はシュナン・ブランとソーヴィニヨン・ブランから、といった構成を考えています。

この記事を読んで分かったことを、舌で確かめる場だと思っていただければ十分です。

ワイン会の日程と空席を見る

会の構成と当日の流れは、南アフリカワインを巡る会のページにまとめています。

まとめ

南アフリカワインは、知らない国のページを開くときの、いちばん安全な一歩です。

  • ワイン造りの歴史は1659年までさかのぼるとされ、新世界と呼ばれながら造りは旧世界に近いと言われます
  • 冷たい海風と山、標高が、強い日照のもとでも酸を残しています
  • 白の柱はシュナン・ブラン。古木から密度の高い辛口が生まれています
  • 赤の柱は、この国で生まれたピノタージュと、ステレンボッシュのカベルネ・ソーヴィニヨン
  • 産地は、赤ならステレンボッシュ、涼しい白ならエルギンやコンスタンシア、個性ならスワートランド
  • 泡は、瓶内二次発酵のメトード・キャップ・クラシックを探してください
  • 価格が手頃なのは、産地名の知名度が価格に追いついていないからだと考えられます
  • 煙と香辛料の料理に寄り添うのが、この国の赤の強みです

次にワインリストを開いたら、南アフリカのページを一度見てみてください。知らない国の中で、いちばん読みやすいページです。

この記事に書いたことは、すべて並べて確かめられます。1月16日の会では、南アフリカの11種をひとつの卓に置きます。ワイン会の日程と空席を見る

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よくある質問

南アフリカワインの最高峰は、どのあたりですか?

一般に名前が挙がるのは、ステレンボッシュのカベルネ・ソーヴィニヨンとボルドー型のブレンド、スワートランドの古木から造るシュナン・ブランとシラー、そしてコンスタンシアの甘口ワインです。いずれも国際的な品評で高い評価を受けてきた領域とされています。

南アフリカの白ワインは、どれを選べばよいですか?

まずシュナン・ブランです。青りんごや洋梨の香りに、きれいな酸が通る辛口が中心で、価格の幅も広く試しやすい品種です。より鋭い白を求めるなら、涼しいエルギンやコンスタンシアのソーヴィニヨン・ブランをおすすめします。

ワインに詳しくなくても、ひとりで参加できますか?

参加者の半数以上がおひとりでのご参加です。知識は要りません。これまで100回以上開いてきて、「初めてで緊張していたのですが、とても楽しいお時間過ごすことができました」(30代・女性・会社員)という声もいただいています。八席の卓で、シェフが一杯ずつ説明します。

南アフリカワインが価格の割に質が高いのはなぜですか?

350年以上の歴史による造りの水準、安定した日照、ヨーロッパの銘醸地より低い生産コストに加え、産地名の知名度がまだ価格に反映されていないからだと考えられます。同じ品質を比べたとき、南アフリカは安く見えます。

ピノタージュとはどんな品種ですか?

1925年にピノ・ノワールとサンソーを掛け合わせてつくられた、南アフリカ生まれの赤ぶどうです。黒い果実に燻製とコーヒーの香りが重なる個性があり、炭火で焼いた牛や羊の料理とよく合います。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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