料理の一皿を前にすると、まず味の話が始まります。肩書きや名刺を出す前に、同じものを味わう時間を共有できる。人脈を考えるとき、私はその違いを思い出します。

名刺入れは厚くなっていくのに、相談できる相手は増えていない。交流会からの帰り道、その日に会った方の顔が、もう思い出せない。そういう夜を、私も何度か経験してきました。

人脈とは何か。この言葉は、使う人によって中身がかなり違います。会った人の数を指している方もいれば、実際に動いてくれる相手の数を指している方もいる。同じ言葉で別のものを語っているので、話が噛み合いません。

この記事では、まず測り方を決めます。そのうえで、増やす順番と、交流会で消耗しないための考え方を整理しました。毎月、8名から30名ほどのワイン会を主催している立場から見えていることを、そのままお伝えします。

自己啓発の話にはしません。こうすれば人脈ができる、という法則を私は持っていないからです。書けるのは、場をひらく側から見えている観察だけです。

SUMMARY

結論:人脈とは何かと問われたら、困ったときに頼める、そして頼まれる関係の数です。 名刺の枚数でも、連絡先アプリの件数でもありません。片方向で終わる関係は、まだ数に入りません。 だから増やすときも、新しい場に出るより先に、すでにある関係を一段深めるほうが早く進みます。 交流会で消耗しやすいのは、場の目的が出会いそのものに置かれているときです。 料理や趣味のように、別の目的で集まる場のほうが、関係はあとに残ります。

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人脈とは何か。頼める関係の数のことです

人脈とは、頼める関係の数です。もう少し正確に言えば、頼めて、かつ頼まれる関係の数になります。

片方向では関係になりません。こちらから連絡はできるけれど、相手から頼まれたことは一度もない。その状態は、関係というより窓口です。逆に、頼まれるばかりで、こちらからは切り出せない相手もいます。これも関係としては傾いています。

測り方を、一度変えてみてください。名刺の枚数を数えるのではなく、次の二つを数えます。

  • 明日、判断に迷うことが起きたとき、ためらわずに連絡できる相手
  • その相手の側から、何かのときに声をかけてもらえそうな関係

両方に当てはまる名前だけを数える。多くの方が、想像よりずっと小さな数字にたどり着きます。私自身も、初めて数えたときは驚きました。

「人脈が広い」は、顔の広さのことではありません

人脈が広いと言われる方を思い浮かべると、たいてい顔の広い人が浮かびます。どの業界にも知り合いがいて、名前を出せばたいてい通じる。

ただ、実際に関係が機能している方を見ていると、少し様子が違います。広く見える人ほど、少数の相手と深くつながっている。そう感じることが多いのです。

理由は単純で、深くつながっている相手が、それぞれ自分の関係を持っているからです。信頼している相手から「この人に聞くといい」と言われたとき、その一言は名刺一枚よりもはるかに強く働きます。深い相手が五人いれば、その五人の背後にある関係にまで手が届く。結果として、広く見えます。

数を追うか、深さを追うか。この二つは、やることがまるで違います。数を追うなら、会う人数を増やすことになる。深さを追うなら、同じ相手と何度会うかが問題になります。

人脈は、三つの層でできている

人脈をひとつの塊として扱うと、話が進みません。関係の濃さで、三つの層に分けて見ています。

関係の中身数の見当維持の仕方
頼める・頼まれる断られても関係が壊れないと、互いに分かっている名前をすぐ挙げられる。数えられる用がなくても、年に数回は会う
顔がわかる会えば話が続く。前回の続きから始められる思い出せば挙がるが、数えようとすると曖昧になる同じ場に、また行くかどうか
連絡先だけある交換した記録が残っている件数は数えられるが、数えても意味がない維持しない

この表で見ていただきたいのは、層ごとの人数ではありません。維持の仕方が、層によってまったく違うという点です。

いちばん下の層は、放っておくと静かに消えます。維持に手間がかからない代わりに、関係としての強度もありません。交流会に一度出れば、この層は一晩で二十人増えます。増えやすいものは、減りやすいものでもあります。

真ん中の層は、場に依存しています。同じ場に行けば会えるけれど、その場がなくなると自然に消える。会社の同僚や、通っていた教室の仲間を思い出していただくと分かりやすいかもしれません。関係が切れたのではなく、会う理由が消えただけです。

いちばん上の層だけが、場から独立しています。用がなくても会う。会う理由を、こちらでつくっている。だから場が変わっても残ります。

層を上げる作業は、下の層ほど簡単で、上に行くほど時間がかかります。だとすれば、どこから手をつけるかという話になります。

人脈を広げるより、深めるほうが早い

ここからが実務の話です。

新しく一人に会って、その方を上の層まで引き上げるには、かなりの時間がかかります。一方で、すでに顔がわかる層にいる方を一段上げるのは、もっと短い時間で済みます。土台がすでにあるからです。

にもかかわらず、多くの方が新規の場に出ることから始めます。そのほうが、動いている実感を得やすいからだと思います。名刺は増えるので、成果が目に見える。けれど数ヶ月後に残っているものは、あまり変わりません。

月に一人、すでに知っている相手と食事をする

私が現実的だと考えているのは、こういう進め方です。

月に一度、すでに知っている相手を一人選んで、食事をする。新規開拓ではありません。顔がわかる層にいる方から、一人だけ選びます。

選ぶ基準は、用があるかどうかではありません。前に話したとき、もう少し聞いてみたいと思った相手。その感覚だけで選びます。用件があるときに連絡する関係は、用件が終われば止まるからです。

これを一年続けると、十二人になります。全員が上の層に上がるわけではありません。半分でも上がれば、一年で六人です。交流会に十二回出て名刺を二百枚集めるより、そちらのほうが手応えがあると私は感じています。

もうひとつのやり方は、同じ場に通うこと

一対一の食事が苦手な方には、別の道もあります。同じ場に、何度か通うことです。

私が会を主催していて感じるのは、三回くらい通うと顔なじみになってくる方がいる、ということです。一回目は、その場にいるだけで精一杯になります。二回目に、前回の話の続きができる。三回目には、仕事以外の話が出てくる。

一回で判断しないでいただきたい、というのはここに理由があります。初回の印象で合わないと決めてしまうと、二回目以降に起きることを見ないまま終わります。

人脈づくりは、まず相手に興味を持つところから始まると、私は考えています。興味は、一度会っただけでは湧きません。何度か会って、その人の背景が少しずつ見えてきたときに湧くものです。

交流会で疲れる理由と、会の選び方

交流会から帰ると、妙に疲れている。その理由は、体力の問題ではないと思っています。

全員が探す側に回る場は、休まらない

場の目的が出会いそのものに置かれていると、参加者の全員が探す側に回ります。誰も落ち着いて座っていられません。話しながら、相手の肩越しに次の相手を見ている。そういう空気の中で二時間過ごせば、疲れます。

私自身、いろいろな会に足を運んできました。その場で営業を受けることがあります。後日あらためてお会いしたら、そこからしつこい営業が続いたこともあります。結局そういうことか、と感じた経験は、一度や二度ではありません。

参加費には、余裕が表れます

会を選ぶときに私が見ているのは、参加費です。

参加費が安い会は、営業の色が強くなりやすい。参加費が高い会は、来ている方に余裕がある。そういう傾向があると見ています。私は参加費の金額を見て、行くかどうかをある程度決めています。

いくら以上なら良い会か、という境界線は引けません。業種や地域によって相場が違いますし、高ければ良い会だと言い切れるものでもないからです。あくまで、参加者の温度感と会費のあいだに関係がある、という程度の見立てです。

名刺交換が目的の会や、会費の安い交流会について、質がよくなかったという話は実際によく耳にします。その一方で、ある程度の会費を払ってでも、落ち着いた場に行きたいという声も聞きます。

行ってよかった会に共通していたこと

これまでに参加した中で、行ってよかったと感じた会には、共通点がありました。

  • 来ている方に余裕がある
  • 営業が第一になっていない。いい人がいたらいいな、という程度の温度感
  • その時間そのものを楽しんでいる方がいる

反対に、時間の無駄だったと感じた会は、ほぼ裏返しでした。営業が第一で、参加者に余裕がない。今日中にでも何かを売らなければいけない、という状態の方が集まっている場です。

これは参加者を見下す話ではありません。状態の話です。余裕がないときは、どなたでもそうなります。ただ、その状態の人ばかりが集まった場からは、関係は生まれにくい。それだけのことです。

経営者と会社員では、人脈の意味が違う

同じ人脈という言葉を使っていても、立場によって指しているものが変わります。ここを混ぜたまま話すと、助言が噛み合いません。

会社員にとっては、看板を外しても残るもの

会社に所属していると、関係の多くは会社の看板が運んできます。取引先も、社内の協力者も、その立場があるから成立している部分がある。

だから会社員の方にとっての人脈は、看板を外したときに残るものという意味合いが強くなります。転職、独立、異動。立場が変わったときに、それでも連絡が取れる相手が何人いるか。そういう数え方になります。

経営者にとっては、相談先そのもの

経営者の方から、相談相手がいないという話を伺うことがあります。判断を一人で引き受ける時間が長いからです。

ただ、私が会でお会いする経営者の方々を見ていて感じるのは、孤独の解消だけを求めているわけではない、ということです。それ以上に多いのは、相談も、遊びも、仕事も、一緒にできる相手をつくりたいというものです。役割で区切らない関係、と言い換えてもいいかもしれません。

私自身も会社を経営している立場なので、この感覚はよく分かります。そして、世間で言われていることのうち、いくつかは実感と少しずれています。

経営者は社員に弱みを見せられない、とよく言われます。ある程度は合っているでしょう。ただ、すべてにおいて弱みを隠す必要もないと、私は考えています。全員で同じ方向に進めるのであれば、それでいい。

同業者はライバルだ、という言い方もあります。けれど実際には、同業の方と一緒に仕事をすることがあります。外注先としてお願いできることもある。ですから私は、同業の方との関係づくりも大切にしています。

出会いを目的にしない場のほうが、関係は残る

Na Team Labの料理の一皿
料理を共通の話題にすると、肩書きより先に会話が始まります。

この一皿は、人が集まる食卓の入口です。まず料理やワインの感想を交わす。相手の肩書きを聞く前に、共通の話題ができます。

ここからは、私自身の実感です。

営業をしようと思って作った関係より、趣味でつながった関係のほうが長続きしています。これは、はっきりそう感じています。趣味で知り合った相手とは、今も一緒に仕事をしています。

営業で作った関係に意味がない、と言いたいのではありません。長続きの度合いを比べたときに、差がある、という話です。

なぜ、利害のない場のほうが残るのか

利害がないからこそ、人と人としてつながれる。理由はこれに尽きると思っています。

ワインという共通の対象が先にあると、最初に開くのが肩書きではなくなります。何がおいしいと思ったか、どれが好きだったか。そこから始まる会話は、立場を必要としません。その感覚が、私には心地よく感じられます。

ワイン会で、実際に起きていること

Na Team Lab では、毎月ワイン会を企画しています。会によって幅はありますが、8名から30名ほどの規模で、19時から21時半のパターンが多くなっています。

参加者の様子をお伝えすると、次のようになります。

  • 7割から8割ほどが、お一人での参加です。むしろ、お一人で来ていただくことを前提に会を組んでいます
  • 年齢は30代から40代が中心で、60代の方もいらっしゃいます
  • 男女比は、およそ半々です
  • 経営者と会社員の比率は、平日の回は経営者が高く、土日の回は会社員が多くなります。ならすと半々くらいです

会の最初に、全体で自己紹介の時間を設けています。共有していただくのは、どんな仕事をしているか、どんな趣味があるか、どんな価値観を持っているか。この三つです。

名刺交換ではなく自己紹介にしているのは、理由があります。人数が多いとき、どの方に声をかけたら話が合いそうかを、参加者が最初に把握できるからです。仕事だけを差し出す場と、ここで差が出ます。

そして、一人で来ても楽しめたという感覚が生まれると、緊張はほどけます。自己紹介の時間は、そのために置いています。

仕事は、関係のあとからついてきます

会をきっかけに始まった経営者同士の関係は、たくさんあります。順番を見ていると、だいたい同じ流れをたどります。

1. ワインという共通の趣味を通して、まず仲良くなる

2. 何度か会ううちに、信頼が生まれる

3. そこから、仕事の話になる

4. 一緒にできること、依頼できることが見つかる

この順番は、逆にはなりません。初対面で仕事の話から入った関係が、あとから趣味の話に広がる。そういう例を、私はあまり見ていません。

参加者同士の関係は、会の外にも広がっています。会の外で顔を合わせたり、一緒にワインを飲みに行ったり。そのまま一緒に仕事をしている方もいます。

ただ、誤解のないようにお伝えしておきます。ワイン会に来れば仕事につながる、という場ではありません。会の第一目的は、料理とワインです。不動産や保険、ネットワークビジネスなど、明らかに営業を目的とした参加はお断りしています。恋愛や出会いを目的とした募集もしていません。連絡先の交換も、会としての紹介や仲介はせず、参加者の判断にお任せしています。

それでも関係が生まれているのは、その前提があるからだと思っています。売られる心配がない場だから、落ち着いて座っていられる。

仕事にならなくても、意味は残ります

もうひとつ、大事だと思っていることがあります。

仕事につながらなかったとしても、経営者同士がつながって友人になることで、抱えていた悩みが解けることがあります。成果が出なければ意味がない場ではありません。むしろ、成果を約束しない場だからこそ、話せることがあると感じています。

飲食に関わる方々のためのコミュニティも、30人ほどの規模で続けています。お互いに仕事を依頼し合うケースが多いのですが、そこでも順番は同じです。先に関係があって、仕事はあとから来ます。

まとめ

人脈とは何か。この記事でお伝えしたことを整理します。

  • 人脈とは、困ったときに頼めて、かつ頼まれる関係の数のこと。名刺や連絡先の件数ではない
  • 関係は三つの層に分かれ、層ごとに維持の仕方が違う。上の層だけが場から独立している
  • 新しい場に出るより、すでに顔がわかる相手を月に一人選んで食事をするほうが早い
  • 交流会で疲れるのは、全員が探す側に回るから。参加費には参加者の余裕が表れる
  • 経営者にとっての人脈は相談先、会社員にとっては看板を外しても残る選択肢という違いがある

最後にひとつ。関係は、増やそうとした分だけ増えるものではないと感じています。相手に興味を持ったとき、結果として残っている。その順番だけは、これまで変わりませんでした。

同じ卓で、名刺を出さずに

関係を深める作業のうち、自分では用意しにくいものがひとつあります。会う理由です。

用がなくても会える関係になるには、その前に、用のない時間を何度か共有している必要があります。けれど大人になると、その時間を作る口実が見つかりません。

Na Team Lab のワイン会は、毎月テーマを立てて開いています。19時から21時半のパターンが多く、参加費は1回15,000円から30,000円です。お一人での参加を前提に組んでいて、会の最初に全体での自己紹介の時間を設けています。形式は、ペアリングを中心に据えた少人数のコースと、交流を中心に据えた立食の二つです。

ご自宅や別邸に数名を招いて、落ち着いて話せる時間を作りたい場合は、出張料理という形もあります。コースはお一人15,000円から、ワインのペアリングをつける場合は22,000円。6名から16名さまで、税・サービス料・出張費込みです。1回のご依頼につき90,000円からで、対応エリアは基本的に東京都内になります。

日程のご相談やご質問は、公式LINEにてご案内しています。ご検討の節は、こちらからお声がけください。

よくある質問

人脈作りは、何から始めればいいですか?

新しい場に出る前に、すでに知っている相手を数えてみることをおすすめします。そのうえで、また話を聞きたいと思った方を月に一人選び、食事をする。この進め方が現実的です。人脈づくりは、まず相手に興味を持つところから始まると考えています。

SNSでつながっている相手も、人脈に入りますか?

連絡先がある、という層には入ります。ただ、頼めて頼まれる関係かどうかは別の話です。判断に迷ったときに連絡できるか、相手から声をかけてもらえそうか。この二つで測ると、線が引きやすくなります。

内向的でも、人脈は作れますか?

場の設計しだいだと感じています。私たちのワイン会は、7割から8割ほどがお一人での参加です。最初に全体で自己紹介の時間を設けているため、誰に声をかければ話が合うかが先に分かり、人数が多くても消耗しにくくなります。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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