テーブルにボトルが何本も並び、その前に少量だけ注がれた

グラスが置かれている引きの構図。人の手や背中が入っていてもよい

注がれる量が少ないのには、理由があります

ワインの試飲会で並んだボトルと少量注がれたグラス

ワインの試飲会に行ってみたい。そう思って調べ始めると、無料のものと有料のものが並んで出てきます。業者限定と書かれたものもあれば、どこが開いている会なのか読み取れないものもあります。

作法の情報も断片的です。吐き出すものらしい、香水は控えるらしい、買わないと気まずいらしい。どれも外れてはいませんが、なぜそうなのかまでは書かれていません。

理由が分かれば、迷いはほとんど消えます。ワインの試飲会という場には、ひとつの前提があるからです。そこは、売るために開かれている場所です。

私は仕入れの場所、試飲会、インポーター経由、ワイン会、自社のイベント、そしてレストランの営業と、ありとあらゆる機会でワインを口にしています。年間でおよそ2,000種。その中で試飲会は、買うかどうかを決めるために足を運ぶ場所です。

この記事では、試飲会の種類と参加の仕方、四つのマナー、東京での探し方を整理します。そのうえで、試飲会では分からないことと、それをどこで確かめるかまで書きます。

SUMMARY

結論:ワインの試飲会は、売り手が販売のために開く場です。 酒販店やインポーターが開く無料のものと、イベントとして設計された有料のものがあり、それぞれ目的が違います。 短い時間で多くの銘柄を比べられる一方、立ったまま短時間で判断する場なので、料理と合わせたときの味わいまでは分かりません。 買う一本を決めるなら試飲会、味わいそのものを確かめたいなら、座って料理と合わせられる少人数の会と使い分けてください。 この記事では、試飲会の種類と参加の仕方、四つのマナー、東京での探し方までを整理します。

あわせて、ワイングラスを形から選ぶとワインペアリングの組み立て方もご覧ください。

ワインの試飲会とは、売るために開かれる場です

試飲会とは、ワインを売る側が、買い手に味を確かめてもらうために開く場です。主催するのは酒販店、輸入元であるインポーター、生産者や産地の団体、そして百貨店などの小売になります。

無料のものが多いのは、試飲が販売のための費用として組まれているからです。飲んでもらうこと自体が目的ではありません。飲んで、選んで、買ってもらうところまでが一連の設計になっています。

この前提をつかむと、細かい作法の理由が一本の線でつながります。

注ぐ量が少ないのは、一人でも多くの方に、一本でも多くの銘柄を試してもらうためです。吐器が置かれているのは、最後まで判断力を保ったまま会場を回ってもらうためです。香りを控えるように書かれているのは、香りが商品そのものだからです。

もうひとつ、イベントとして設計された有料の試飲会もあります。こちらは入場料が体験の対価にあたります。テーマを立てて銘柄を集め、解説がつくこともあります。目的が販売だけではないぶん、ゆっくり味わえる設計になっていることが多いです。

無料か有料かという違いは、金額の問題ではありません。その会が何のために開かれているかの違いです。

試飲会の種類 ― 無料と有料は、目的が違う

試飲会で比べる複数のワインボトル
試飲会は購入を判断する場。楽しみ方との違いを考える。

主催者の種類で整理すると、ワインの試飲会はおおよそ四つに分かれます。

種類主催するのは参加の条件会の目的向いている方
店頭の試飲酒販店・ワインショップ無料が多く、予約が要らないこともその場で選んで買ってもらう買う一本を決めたい方
業者向けの試飲会インポーター・卸飲食店や酒販店などの業者に限定取引先の仕入れ判断一般の方は参加できません
一般向けの有料試飲会インポーター・主催会社・産地の団体有料・事前申込が基本体験と販売の両方広く飲み比べたい方
百貨店やフェアの催事百貨店・イベント主催者無料と有料の両方がある催事期間中の販売気軽に足を運びたい方

一般の方がまず出会うのは、一段目の店頭試飲と、四段目の催事です。この二つは、買い物の延長線上にあります。じっくり比べるというより、目当ての一本を決めるための場と考えてください。並ぶ本数も、限られていることがほとんどです。

三段目の一般向け有料試飲会は、性格が少し違います。入場料を払って入るぶん、出品される銘柄の幅が広く、時間にもゆとりがあります。ワインの試飲会を体験として楽しみたい方には、こちらが向いています。

二段目の業者向けは、飲食店や酒販店のための場です。私が足を運ぶのは、主にここになります。売り手が業者に向けて開いている場なので、一般の方は参加できないものと考えてください。

試飲会に参加するまでの流れ

参加までの段取りは、込み入ったものではありません。押さえる点は四つです。

ひとつめは、申込です。有料の会と業者向けの会は、事前の申込が前提になります。店頭の試飲や催事は、予約が要らないこともあります。案内文のどこかに主催者名が書かれているはずなので、まずそこを確かめてください。誰が開いている会なのかが分かれば、性格はおおよそ読めます。

ふたつめは、服装です。会場によって空気は違いますが、多くの会は立ったまま歩き回る形式です。歩きやすい靴を選んでください。淡い色の服は、赤ワインが跳ねたときに気になります。手荷物は預けるか、肩にかけられるものにしておくと、グラスとメモを両手で扱えます。

みっつめは、香りです。これがいちばん大切です。香水、整髪料、香りの強い柔軟剤は控えてください。ワインの香りは驚くほど繊細で、隣に立った方の香りが、自分のグラスの香りを覆ってしまいます。自分のためだけでなく、周囲の方の一杯を守るための作法です。

よっつめは、体調です。空腹のまま向かうと、少量でも回ります。軽く食べてから行き、水を持つか、会場の水を遠慮なくもらってください。口紅はグラスに残るので、控えめにしておくと落ち着いて回れます。

メモは、紙でもスマートフォンでもかまいません。銘柄名と、感じたことを一言だけ。会場を出た瞬間から、記憶は薄れていきます。

グラスを持つ手元と、その脇に置かれたメモ帳やカードの寄りの構図。

背景はぼかして、手元に焦点が合っているとよい

  • 試飲会が「飲む場」ではなく「記録して判断する場」だと伝わる
  • メモという具体的な持ち物の提案が、視覚的に伝わる

会場を出た瞬間から、記憶は薄れ始めます

ワインの試飲会でメモを取りながらグラスを持つ手元

試飲会のマナーは、四つ覚えれば足ります

試飲会のマナーは、細かく並べると切りがありません。ただ、根っこはひとつです。ここは売り場である、という一点から考えれば、判断に迷う場面はほとんどなくなります。

吐器は、使ってよいものです

会場に置かれている、口の広い容器。あれが吐器です。含んだワインを吐き出すための道具で、使うことは失礼にあたりません。

私自身は、場によって使い分けています。お客様の前では吐き出しません。試飲会やテイスティングの場であれば吐き出します。

判断力を保ったまま最後まで回りきるためには、飲み込まないという選択が要ります。会場に何十本と並んでいれば、すべてを飲み干すことはできません。吐器は、遠慮の対象ではなく、判断の道具です。

慣れないうちは、口をすぼめて静かに落とすようにすると、跳ね返りが少なくて済みます。

一口は、少なく注いでもらう

注ぎ手に「少しだけお願いします」と伝えてかまいません。むしろ、その一言のほうが場に馴染みます。

グラスに一口分あれば、色も香りも味わいも取れます。たくさん注いでもらうことが、丁寧さの証になるわけではありません。

質問は、料理に寄せると答えが返ってきます

ブースに立っている方は、そのワインの売り手であり、造り手の意図を知っている人でもあります。聞き方ひとつで、返ってくる情報の密度が変わります。

「おすすめはどれですか」と尋ねると、答えはどうしても一般的なものになります。かわりに「何と合わせると良さが出ますか」と聞いてみてください。相手の中にある具体的な絵が、言葉になって出てきます。

私が試飲会でワインを口に含むとき、考えているのは、基本的には、何の料理に合わせるのかということです。その問いを持って立っていると、質問は自然に具体的になります。

買わずに帰っても、問題はありません

試してみて、自分には合わなかった。そういうことは当たり前に起こります。試飲会は、そのために開かれています。買わずに帰ることを負い目に感じる必要はありません。

ただし、販売の場であることは頭の隅に置いてください。人が並んでいるブースを長く占有しない。同じブースに何度も戻って注いでもらわない。その程度の配慮があれば、十分です。

気に入った一本があったなら、その場で求めるのがいちばん確実です。会場限定で出ている銘柄は、後から探しても見つからないことがあります。

東京で試飲会を探すなら、主催者から逆算する

東京では、ワインの試飲会が季節の催事に合わせて増える傾向があります。ただ、開催情報を端から追いかけても、目的に合う会にはたどり着きません。順序を逆にしてください。

最初に決めるのは、目的です。買う一本を決めたいのか、知らない産地を広く知りたいのか。この二つで、行くべき会は変わります。

次に、主催者の種類で絞ります。

  • 酒販店・ワインショップ … 店頭で、扱っている銘柄を試せる
  • インポーター … 自社が輸入する銘柄をまとめて出す。一般向けの回もある
  • 百貨店・商業施設 … 催事として、複数の輸入元の銘柄が並ぶ
  • 産地や生産国の団体 … 国や地方を単位にしたテーマの会
  • ワインスクール・飲食店 … 解説や食事とセットになっていることがある

会場の形も、主催者によって決まります。店頭のカウンター、輸入元のオフィスやショールーム、百貨店の催事場、ホテルの宴会場や貸し会場。会場の種類が分かれば、服装も所要時間も見当がつきます。

案内文の読み分けにも、目印があります。価格と購入方法が前に出ていれば、販売寄りの会です。テーマと解説者が前に出ていれば、学び寄りの会です。どちらが良いということではなく、自分の目的と合っているかだけを見てください。

東京はワインの試飲会の数が多いぶん、選ぶ側の基準がないと流されます。目的、主催者、会場。この三つの順に絞れば、行くべき会は自然に残ります。

ボトルが列になって並び、ラベルが見えている棚か

テーブルの引きの構図。人物は写っていなくてよい

  • 「選ぶ」という行為が視覚化され、探し方の章の内容と噛み合う
  • 銘柄の多さが、基準を持つことの必要性を後押しする

数が多いほど、選ぶ基準が要ります

東京のワイン試飲会で並べられたボトルの列

試飲会で分かること、分からないこと

ここからは、注ぐ側からの話をします。

試飲会で分かることは、思っているより多くあります。色調からは熟成の度合いと、味わいの厚みと、アルコール度数のおおよその見当がつきます。香りからは、そのワインが今どれくらい開いているか、飲み頃のピークがどのあたりにあるかが読めます。味わいからは、適した温度帯と、余韻の長さが分かります。

観察の手順そのものについては、別の記事で細かく書きました。見る、嗅ぐ、味わうの三段でシェフが何を判断しているかは、そちらを読んでみてください。

では、分からないことは何か。料理と合わせたときの姿です。

私は、ワインの余韻の長さに、料理の余韻の長さを合わせにいきます。余韻が長いワインなら、ソースにバターや糖分を増やして、料理側の余韻も長くする。余韻が短いワインなら、酸味をきかせて、料理側も短く切り上げる。

この判断は、皿がないとできません。グラスだけを手にして立っている状態では、どこまでいっても片側しか見えていないのです。

時間の問題もあります。試飲会では、立ったまま、短い時間で、吐き出して判断していきます。抜栓してから時間をかけて開いていく変化や、温度が上がったときに立ち上がる香りは、その場では追えません。

ですから私は、試飲会では買うかどうかを決めるところまでで止めます。どう出すか、何に合わせるかは、厨房に戻ってから決めます。試飲会が向いているのは判断であって、味わうことではない。そう割り切っています。

試飲会の次に行く場所 ― 座って、料理と合わせて、話す

味わいそのものを楽しみたいのであれば、条件は三つです。座れること。料理があること。話す相手がいること。

この三つが揃うと、同じワインでも見え方が変わります。座っていれば時間の変化を追えます。料理があれば、合わせた瞬間に何が起きるかが分かります。話す相手がいれば、感じたことが言葉になって残ります。

飲み比べをするなら、設計にひとつだけ約束事があります。共通点をつくって、変えるのは一つだけにすることです。同じ品種で産地を変える。同じ生産者で年を変える。そうやって条件を揃えると、「ここまで味わいが違うのか」という驚きが生まれます。並べ方については、飲み比べを扱った記事で詳しく書きました。

Na Team Lab のワイン会は、毎月テーマを立てて6本から15本を並べています。飲み比べができて、そのままワインの知識にもつながるセレクトを基本方針にしています。

形式は二つあります。コース形式は少人数で、ペアリングが中心です。料理は7品ほど、ワインは6杯。立食形式は人数が多いぶんワインも多く、10本から15本を並べます。料理はビュッフェ形式で10品ほどです。しっかり料理を味わいたい方にはコース形式を、交流も楽しみたい方には立食形式をおすすめしています。

参加は8名から30名ほどの規模で、開催は19:00から21:30のパターンが多くなっています。参加費は1回15,000円から30,000円です。一般的なワイン会の相場より上に位置しますが、そのぶんを料理とワインの質に振り向けています。同じ関心を持つ方が集まりやすいのも、この設計の結果だと感じています。

一人で参加される方が7割近くを占めます。自己紹介の時間を設けるなど、初めての方が話しやすい場づくりをしています。参加者は30〜40代を中心に、60代の方までいらっしゃいます。男女比はおよそ1対1です。

テーブルに着席した数名が、料理とワインを前に

話をしている引きの構図。表情は分からない程度でよい

  • 立ったままの試飲会との対比が、一枚で伝わる
  • 料理とワインが同じ卓にある状態が見える

座って、料理と合わせて、話す。試飲会では手に入らない三つです

試飲会の次に選ぶ、料理とワインを合わせる着席のワイン会

一本を、皿と一緒に

試飲会で気になった一本を持ち帰ったあと、それをどう出すかで迷う。その一歩を、私たちは引き受けています。

恵比寿では、ワインを飲みながらの料理教室を開いています。8名限定、1回6,000円(税込・ドリンク込み)、2時間で3品をシェフが実演します。入会金はなく、1回で完結します。土日の昼12時開始がほとんどで、内容は月替わりです。

ご自宅で、料理とワインの組み立てごと確かめたい場合は、出張料理という形もあります。コースはお一人15,000円から、ワインのペアリングをつける場合は22,000円。いずれも6名から16名さま、税・サービス料・出張費込みです。1回のご依頼につき90,000円からで、対応エリアは基本的に東京都内になります。

ワイン会の開催テーマや日程、そのほかのご相談は、公式LINEにてご案内しています。ご検討の節は、こちらからお声がけください。

一皿の料理と、その隣に置かれたワイングラスの寄りの構図。

皿とグラスが同じ高さで並んでいるとよい

  • 記事の結論「一本を、皿と一緒に」が一枚で伝わる
  • グラス単独ではなく皿と対になっている点が、試飲会との違いを示す

グラスだけでは、半分しか見えません

ワインと料理を一緒に合わせた一皿とグラス

まとめ

  • ワインの試飲会は、酒販店やインポーターなど売る側が、販売のために開く場です
  • 無料のものは販売が目的、有料のものは体験と販売の両方が目的という違いがあります
  • 服装は歩きやすく、香水や整髪料の香りは控える。これがいちばん大切な作法です
  • 吐器は使ってよいものです。私も、試飲会やテイスティングの場であれば吐き出します
  • 東京で探すときは、目的、主催者、会場の順に絞ると、行くべき会が残ります
  • 試飲会で分かるのは色調と香りと余韻まで。料理と合わせた姿は、皿のある場でしか分かりません

よくある質問

試飲会で飲み過ぎないコツはありますか?

吐器を使うことがいちばん確実です。含んで、香りと味わいを取ったら、飲み込まずに落としてください。あわせて、注ぐ量を少なくしてもらうこと、空腹で会場に入らないこと、水をこまめに挟むこと。この四つで、最後まで落ち着いて回れます。

試飲会に一人で参加しても大丈夫ですか?

試飲会はもともと一人で回る方が多い場ですので、気兼ねは要りません。ブースの方と話しながら進められます。人との交流もあわせて楽しみたい場合は、自己紹介の時間がある少人数のワイン会のほうが向いています。私たちの会でも、7割近くの方が一人で参加されています。

子ども連れで試飲会に参加できますか?

酒類を提供する場ですので、同伴の可否は主催者によって扱いが異なります。入場そのものを制限している会もあります。申込の前に、案内文の参加条件を確かめるか、主催者に直接尋ねてください。お子さまと一緒の食事の場をお探しであれば、別の形をご提案できます。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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一杯の違いを、料理とともに確かめる。

少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

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