卓に置かれた辛口ワインのグラス一杯と、

その隣に並ぶ塩と酸で組んだ前菜の皿

辛口ワインのグラス一杯と、糖質を抑えて塩と酸で組み立てた前菜の皿

一杯の糖質は、選び方で決まります

糖質を気にしはじめると、最初に食卓から消えていくのがお酒です。ご飯を半分にするのは我慢できても、夜の一杯まで手放すとなると、話が変わってきます。ワインは果実から造るのだから糖質が高いはずだ、と考えて遠ざけている方も少なくありません。

私は出張料理人として、年間200件を超える食卓に伺ってきました。糖質を控えていらっしゃる方の卓に、どのワインをお持ちするか。その判断を繰り返すうちに見えてきたのは、ワインの糖質を決めているのは色ではなく、辛口か甘口かという一点だということです。

辛口ワインの糖質は、100mlあたり赤でおよそ1.5g、白でおよそ2.0g。レストランで注がれる標準的な一杯を125mlとすると、グラス1杯でおよそ2gという計算になります。角砂糖1個がおよそ3〜4gですから、一杯飲んでも角砂糖半分ほど。この記事では、種類別の数値と、ラベルから辛口を見分ける手順をまとめます。

なお、糖質制限をどこまで行うかは、体質や治療の状況によって変わります。数値は目安としてお読みいただき、制限の可否については医師や専門家の指示を優先してください。

SUMMARY

結論:糖質制限中にワインを選ぶなら、ラベルで「辛口」を見分けることがいちばんの近道です。辛口ワインの糖質はグラス1杯で2g前後、角砂糖半分ほどで、ビールや日本酒より少なめに収まります。避けるのは甘口とデザートワインだけ。Brut・Sec・Trocken・残糖表示の4つを見れば、売り場でも選べます。種類別の数値はワインのカロリー・糖質一覧表にまとめています。

あわせて、ワイングラスを形から選ぶとワインペアリングの組み立て方もご覧ください。

糖質の少ないワイン、多いワイン

数値を並べます。ワインの比重はおよそ1のため、100g=100mlとして扱っています。

種類100mlあたりの糖質グラス1杯(125ml)
赤ワイン(辛口)約1.5g約1.9g
白ワイン(辛口)約2.0g約2.5g
ロゼワイン約4.0g約5.0g
スパークリング(ブリュット)約1.2g未満約1.5g未満
甘口ワイン約4.5g以上約5.6g以上
貴腐ワイン・デザートワイン別格。上の区分をさらに大きく超えます―

表を見ると、赤と白の差はグラス1杯で1g未満にとどまります。白がやや高く出ているのは、成分表の数値に甘口も含まれるためです。辛口の白なら、実際にはもっと下に来ます。この程度の差であれば、飲みたいほうを選んでいただいて構いません。

覚えておくと役に立つのは、ロゼが赤白より高く出ている点です。ロゼは造り方の幅が広く、甘めに仕上げたものが市場に多いためです。ロゼを選ぶときだけは、辛口かどうかを一度確かめてください。

泡は、意外にも低いほうに入ります。ブリュットと表示されたスパークリングは、後述するとおり残糖の上限が決められているためです。反対に、貴腐ワインやアイスワインのようなデザートワインは、そもそも糖を残すために造られています。ここだけは桁が変わると考えてください。

赤・白・ロゼ・スパークリングの4杯が、卓に横一列に並んでいる様子

  • 種類ごとの比較という章の主題が一目で伝わる
  • 色の違いと糖質量が別の話であることを、視覚的に意識させられる

赤・白・ロゼ・スパークリングを並べてワインの糖質を比較するグラス

色の違いは、糖質の違いではありません

ビールや日本酒と比べると、どうか

カウンターに並ぶ赤ワインと白ワインのグラス
ワインの糖質は甘口か辛口かによって異なる。

糖質量は、100mlで比べても実感につながりません。実際に飲む一杯の量で並べ直します。

お酒100mlあたりの糖質一般的な一杯一杯あたりの糖質
ワイン(赤・辛口)約1.5gグラス125ml約1.9g
ビール(淡色)約3.1g中ジョッキ435ml約13.5g
日本酒(普通酒)約4.9g1合180ml約8.8g
焼酎(単式蒸留)0gグラス100ml0g
ハイボール(ウイスキー30ml使用)0g1杯0g

出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)増補2023年」の炭水化物値をもとに換算。

こうして並べると、ビール1杯とワイン1杯では7倍ほどの差が出ます。100mlあたりでは2倍程度しか違わないのに、一杯あたりでは大きく開きます。理由は単純で、ビールは一度に飲む量が多いからです。ワインは、少ない量を時間をかけて飲む酒でもあります。

蒸留酒である焼酎とウイスキーは、糖質がゼロです。数値だけを追うなら、蒸留酒に並ぶものはありません。ただし、ハイボールで肉料理の脂を流すことはできても、皿の香りと響き合わせるのは難しいものです。何を基準に選ぶかによって、答えは変わります。

なお、糖を加えて漬ける梅酒は100mlあたりおよそ20.7gと、この表の外に出ます。糖質の高さは、その酒が甘いかどうかにほぼ比例すると考えてください。

なぜ辛口は、糖質が低いのか

ぶどうの果汁は、そもそも糖の塊です。それなのに辛口ワインの糖質が低いのは、発酵という工程で、糖がアルコールと炭酸ガスに変わるからです。

酵母は、果汁の糖を食べてアルコールを出します。糖を食べ尽くすまで発酵を進めれば、残るのはごくわずかな糖だけです。この造り終えた後に残る糖を残糖と呼びます。辛口とは、つまり残糖の少ないワインのことです。

反対に、甘さを残したいときの道筋は二つあります。ひとつは発酵を途中で止めること。もうひとつは、糖が濃く凝縮した果汁から造ることです。遅摘み、凍結、貴腐といった手法は、どれも後者にあたります。

酒精強化ワインは、その中間にある存在です。発酵の途中でアルコールを加えて酵母の働きを止めるため、度数が高く、同時に糖も残ります。私はマデイラやポートをよく使いますが、それはこの二つが同時に成立しているからです。コースの最後にお出しする王のティラミスは、沖縄県産の黒糖を使っています。その黒糖のコクと、酒精強化の甘さが噛み合う。だからペアリングとして提供しています。

収穫されたぶどうと、発酵が進むタンクや樽のある静かな醸造の風景

  • 「糖がアルコールに変わる」という工程が、頭ではなく画で理解できる
  • 果実から酒へという時間の流れが伝わる

ぶどうの糖がアルコールに変わり、ワインの糖質が減っていく発酵の工程

辛口とは、糖が使い切られた状態のことです

ラベルから辛口を見分ける

ここからが実務です。店の棚の前で、どこを見れば辛口と分かるのか。甘辛の手がかりは、ラベルに書かれています。

スパークリングワインには、残糖の量による表示区分が定められています。

表示残糖(1リットルあたり)甘さの位置
Brut Nature / Dosage Zéro3g未満最も辛口
Extra Brut0〜6gかなり辛口
Brut12g未満辛口。最も流通が多い
Extra Dry12〜17gやや甘い
Sec17〜32g中甘口
Demi-Sec32〜50g甘口
Doux50g以上最も甘口

出典:欧州委員会 委任規則(EU)2019/33 附属書III。

ここに、間違えやすい点がひとつあります。Sec はフランス語で「乾いた」、つまり辛口を意味する言葉ですが、スパークリングの区分では中甘口にあたります。泡でいちばん辛口なのは Brut Nature、次いで Extra Brut、そして Brut です。シャンパンで糖質を抑えたいなら、この三つを覚えておけば足ります。

スティルワイン、つまり泡のないワインでは、表示の言葉がそのまま辛口を指します。

  • Sec(フランス)/Secco(イタリア)/Seco(スペイン)
  • Trocken(ドイツ)。半辛口は Halbtrocken
  • Dry(英語表記)

ドイツワインのように甘口の印象が強い産地でも、Trocken の表示があれば辛口です。近年は、残糖量を数値で記載する造り手も増えてきました。裏ラベルに「残糖 2g/L」といった記載を見つけたら、それが最も確かな手がかりです。

糖質制限中のワインと、合わせる皿

軽めの一杯を希望されるお客様に、私がブルゴーニュ系のワインや日本ワインをおすすめすることが多いのは、味わいの重心が軽やかで、食事の邪魔をしないからです。糖質という観点から見ても、こうしたワインはたいてい辛口に仕上がっています。

もうひとつ大切なのが、皿のほうです。ワインの糖質を気にしながら、甘いソースの料理を食べていては釣り合いが取れません。みりんや砂糖を重ねた煮物、甘みの強いドレッシング、仕上げに蜂蜜を使ったソース。こうした皿は、卓全体の甘さを静かに押し上げていきます。

私が辛口のワインに合わせるとき、皿は塩と酸と旨味で組み立てます。甘みを足さずに輪郭を立てるには、塩のピークを見極めるほかありません。塩が足りなければ素材の旨味は眠ったままで、過ぎれば旨味は塩辛さに溶けて消えます。魚に塩とオリーブオイルとレモンだけを添えた皿、焼いた肉に赤ワインと出汁で伸ばしたソースを合わせた皿。引き算でつくった皿ほど、辛口のワインは寄り添ってくれるというのが、私の実感です。

糖質を避けるという発想から、甘さを設計するという発想へ。その視点に立てたとき、食卓は我慢の場所ではなくなります。

塩とレモンとオリーブオイルで仕上げた魚料理と、

その隣に置かれた辛口白ワインのグラス

  • 甘みを足さずに組み立てた皿の具体像が伝わる
  • 辛口ワインとの組み合わせが、我慢ではなく設計だと分かる

甘みを足さず塩と酸で仕上げた魚料理に、糖質の低い辛口の白ワインを合わせた一皿

甘みを足さない皿は、辛口の一杯と響き合います

辛口の一杯と、皿を合わせる

Na Team Lab は、東京・恵比寿で一日ひと組・八席のプライベートレストランを営み、ご自宅やオフィスへの出張料理も行っています。コースは、料理とワインを一組ずつ対話させながら設計しています。

糖質を控えていらっしゃる方、お酒の量を決めていらっしゃる方。そうしたご事情は、事前に伺えれば、ワインの選定と皿の構成の両方に反映できます。甘さをどこに置き、どこで引くか。それを決めるのが、私たちの仕事です。

Na Team Lab のレストラン、出張料理、ペアリングのご相談については、公式LINEにてご案内しています。お飲みになれる量や、避けたいもののことだけでも構いませんので、お聞かせください。

まとめ

  • ワインの糖質は、辛口なら100mlあたり赤1.5g・白2.0g、グラス1杯で2g前後です
  • 角砂糖1個はおよそ3〜4g。一杯飲んでも角砂糖半分ほどにあたります
  • 赤と白の差はグラス1杯で1g未満。色より、辛口か甘口かのほうが影響は大きいです
  • ビール中ジョッキ1杯は約13.5g、日本酒1合は約8.8g。一杯で比べるとワインは少なめに収まります
  • 辛口の糖質が低いのは、発酵でぶどうの糖がアルコールに変わるためです
  • 泡は Brut Nature、Extra Brut、Brut が辛口。Sec は泡では中甘口という逆転に注意します。スティルワインは Sec、Secco、Seco、Trocken が目印です
  • 合わせる皿から甘みを引き、塩と酸と旨味で組むと、辛口の一杯と響き合います

よくある質問

糖質ゼロのワインはありますか?

糖質を抑えた商品は流通していますが、通常のワインで完全なゼロはほとんどありません。辛口ワインは発酵の過程で糖の大半が失われるため、残るのはごくわずかです。数値を厳密に確認したい場合は、商品ごとの成分表示や裏ラベルの残糖表記をご覧ください。

シャンパンの糖質はどのくらいですか?

ブリュットと表示されたものは、残糖が1リットルあたり12g未満と定められています。グラス1杯なら1g台に収まる計算です。さらに少ないものを選びたい場合は、エクストラ・ブリュットやブリュット・ナチュールという表示が目印になります。

赤ワインと白ワイン、糖質が低いのはどちらですか?

成分表の数値では、赤が100mlあたり1.5g、白が2.0gで、赤のほうがやや低く出ます。ただし差はグラス1杯で1g未満にとどまります。赤か白かよりも、辛口か甘口かのほうが糖質量への影響は大きいため、まずはそちらを基準に選ぶことをおすすめします。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

私たちの理念・会社情報を見る →
掲載実績・参加者の声を見る →


一杯の違いを、料理とともに確かめる。

少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

▶ 出張料理を頼む前に読む(一覧)

TOP

Na Team Lab|東京・恵比寿

Na Team Labをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

0