ワインが好きで、何年も飲んでいる。産地や品種の話もひととおりは分かる。けれども、自分の知識が体系として整っているのかどうかは、自分では確かめられない。そう感じて資格を調べ始めたものの、試験がいつあるのか、いくらかかるのか、独学で届くのかが分からないまま年を越してしまった。そういう方は、少なくありません。
ワインエキスパート試験は、ワインを仕事にしていない方のために用意された資格です。 満20歳以上であれば、職業も実務経験も問われません。むしろ愛好家が主な対象だと、日本ソムリエ協会(JSA)自身が明記しています。
結論:ワインエキスパート試験は、満20歳以上なら職業を問わず受けられる、日本ソムリエ協会(JSA)の呼称資格試験です。 夏のあいだに各自が予約して受ける一次試験(CBT・120問70分)と、秋の二次試験(テイスティング50分)の二段構えで、三次試験はありません。 2025年度の合格率は26.4%で、前年の41.4%から大きく下がりました。 費用は受験料と認定登録料を合わせて5万円前後。一次は範囲の広さに対する暗記量、二次は同じ言葉で何度も飲んで確かめた経験の量で差がつきます。
あわせて、ワインの種類を造り方から知るとラベルから産地を読むもご覧ください。
ワインエキスパートとは 職業を問わないJSAの呼称資格
ワインエキスパートの正式名称はJ.S.A.ワインエキスパートです。一般社団法人日本ソムリエ協会が1996年に創設した呼称資格で、国家資格ではなく民間資格にあたります。
JSAによる定義は、次のように書かれています。酒類、飲料、食全般の専門的知識とテイスティング能力を有する者を指し、プロフェッショナルな資格ではないので職業は問わず、むしろ愛好家が主な対象となる、と。
この一文が、ソムリエとの違いをほとんど説明しています。
| 項目 | J.S.A.ソムリエ | J.S.A.ワインエキスパート |
|---|---|---|
| 年齢 | 満20歳以上 | 満20歳以上 |
| 職業の要件 | ソムリエの職務が本職であり、全収入の60%以上を同職務で得ていることが必須 | 問わない |
| 実務経験 | 実働月90時間以上で通算3年以上(JSA会員歴2年以上なら2年以上) | 不要 |
| 試験の段数 | 一次(CBT)→二次(テイスティング)→三次(論述・サービス実技)→書類審査 | 一次(CBT)→二次(テイスティング) |
| 上位資格 | J.S.A.ソムリエ・エクセレンス | J.S.A.ワインエキスパート・エクセレンス |
ワインエキスパートには、三次試験がありません。 JSA公式の試験案内にも「ワインエキスパートの方は第三次試験はありません」と明記されています。サービス実技が課されないのは、職業資格ではないからです。
なお、上位資格の呼称は2019年に「シニア」から「エクセレンス」へ変更されました。現在「シニアワインエキスパート」という呼称は存在しません。ワインエキスパート・エクセレンスを受けるには、満30歳以上であること、そしてワインエキスパート認定後5年目以降であることが条件になります。
試験の流れと日程 夏に一次、秋に二次

ワインエキスパート試験は、年に一度の実施です。流れは二段です。
一次試験は、決められた期間のなかから、受験者が自分で日時と会場を予約して受けます。期間は夏の約6週間。二次試験は、全国の指定都市で一斉に行われます。
2026年度の日程は、次のとおりでした。
- 一次試験:2026年7月15日〜8月26日(期間内で各自が予約)
- 二次試験:2026年9月28日
参考に、2025年度は一次が7月15日〜8月26日、二次が10月6日でした。一次の期間はほぼ同じで、二次の日付が年によって動きます。
日程・受験料・試験形式は年度ごとに改められます。 受験を決めたら、必ずJSA公式サイトの当該年度の募集要項で確認してください。この記事の数字は2026年度のものです。
一次の予約を自分で取れる形式は、働きながら受ける方にとって大きな利点です。繁忙期を避けて、学習の仕上がりに合わせて日を選べます。ただし裏を返せば、自分で締め切りを決めなければ、いつまでも先に延ばせる形式でもあります。申し込みの段階で、受験日をカレンダーに固定しておくことをおすすめします。
一次試験の内容 CBTで120問を70分
一次試験はCBT方式です。会場に用意されたパソコンで解答します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方式 | CBT(会場のパソコンで解答) |
| 問題数・時間 | 120問/70分 |
| 受験回数 | 1人最大2回まで。出願時に回数を決めて受験料を払う(出願後の変更は不可) |
| 出題範囲 | 当該年度の日本ソムリエ協会教本 |
| 会場 | 全国47都道府県の指定会場、約340会場 |
| 合否 | 試験終了後、画面上で即時発表 |
120問を70分ですので、1問あたり35秒です。考え込む時間はほとんどありません。知っているか、知らないか。その切り分けが瞬時にできる状態まで持っていく試験だと考えてよいと思います。
出題は、その年度のJSA教本から行われます。そして一次から受験する方には、全員に教本が配布されます(Book版と電子版)。電子版には「ワインを識る」という動画教材が付属します。つまり、出題範囲の資料は受験料のなかに含まれていて、別途買い集める必要はありません。
受験回数を2回まで選べる点も、この試験の特徴です。1回目で合格すれば2回目は受けなくてよく、その場合の差額は返金されません。逆に、1回目の結果を見て弱い分野を補ってから2回目に臨む、という組み立て方もできます。どちらを選ぶかは、学習開始の時期と手持ちの時間で決まります。
英語での受験も可能ですが、その場合のみペーパー方式となり、会場は東京のJSAビルに限られます。
二次試験の内容 テイスティング50分で問われること
二次試験はテイスティングです。ワインエキスパートの場合、テイスティング50分。ソムリエ受験者は40分のテイスティングに加えて20分の論述がありますが、ワインエキスパートに論述はありません。
会場は、札幌・盛岡・仙台・東京・長野・金沢・名古屋・京都・大阪・神戸・岡山・広島・高松・福岡・鹿児島・那覇の各都市です。
使用するグラスについては、JSAが仕様まで公開しています。国際規格テイスティンググラスを使用し、素材はLuigi Bormioli社のSparkxと名づけられた生地で、鉛や重金属を含まないソーダライムガラスであると明記されています。
グラスの形が決まっているという事実は、練習の設計に直接効いてきます。 香りの立ち上がり方は、グラスの形で変わります。本番で使うものに近い形で練習しておくほうが、記憶と本番がつながります。
なお、出題されるワインの本数や、ワイン以外の酒類が含まれるかどうかについては、JSA公式の募集要項および試験案内で確認できませんでした。具体的な本数を挙げる記述を見かけることはありますが、一次ソースで裏が取れないため、この記事では断定を避けます。
難易度と合格率 2025年度は26.4%
難易度を測る手がかりは、合格率です。JSAが公表している統計から、ワインエキスパートの数字を並べます。
| 年度 | ワインエキスパート合格率 | 受験者数 | ソムリエ合格率(参考) |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 40.7% | 3,490名 | 42.1% |
| 2022年 | 32.9% | 3,469名 | 30.1% |
| 2023年 | 41.9% | 3,499名 | 17.7% |
| 2024年 | 41.4% | 3,381名 | 29.2% |
| 2025年 | 26.4% | 3,577名 | 19.9% |
※2026年1月1日現在のJSA公式統計
2024年度の41.4%から、2025年度の26.4%へ。1年で15ポイント近く下がっています。 受験者数は3,381名から3,577名へと増えていますので、合格率は年ごとに大きく動くものとして見ておく必要があります。
合格率を見るときに大切なのは、年度とセットで記憶することです。「ワインエキスパートの合格率は約40%」という数字を見かけることがありますが、それは2024年度までの話です。2025年度の実績は26.4%でした。難易度の感覚を2021年のまま持っていると、見積もりを誤ります。
2025年のワインエキスパート認定者は944名、累計で24,872名です。上位のワインエキスパート・エクセレンスは2025年の合格率が12.6%で、こちらはさらに厳しい数字になっています。
費用 受験料と認定登録料、教本、練習のワイン代
費用は、受験料だけを見ていると足りません。合格後に認定登録料がかかります。
受験料は税込で、2025年度の改定額が2026年度にも適用されています。
| 区分 | JSA会員 | 一般 |
|---|---|---|
| 一次試験から・1回受験 | 23,700円 | 32,900円 |
| 一次試験から・2回受験 | 28,600円 | 37,800円 |
| 二次試験から(一次免除者) | 7,300円 | 14,210円 |
一次から受験する場合、この受験料に教本代と二次試験の受験料が含まれます。別会計で教本を買う必要はありません。
そして最終合格後に、認定登録料20,950円(うち消費税1,905円)が別途必要です。ここが見落とされやすい項目です。
総額の目安は次のようになります。
- 一般・一次1回受験で合格:32,900円+20,950円=53,850円
- JSA会員・一次1回受験で合格:23,700円+20,950円=44,650円(会費は別途)
会員のほうが約9,000円安く、受験の年に入会される方もいます。入会年の4月1日時点で27歳以下の方は、初年度のみ入会金と会費が無料になる制度があります。
これに、二次試験のための練習用のワイン代が加わります。ここは人によって幅が大きい部分です。品種の基準をつくるために、同じ品種を産地違いで何本も開けることになります。一本あたり2,000円前後のものを月に4本開けるとしても、半年で5万円前後。受験料と同じくらいの額が、グラスの中に消えていく計算になります。
この練習用のワイン代を、ひとりで全部負担する必要はありません。 後述しますが、複数人で開けて分け合う形にすると、同じ金額で飲める本数が数倍になります。
独学とスクール どちらでも受けられる制度になっている
「スクールに通わないと受からないのではないか」という問いは、よく聞かれます。制度の話として先に答えます。
JSAの募集要項を全文確認した結果、受験資格にワインスクールの受講や修了を求める記載は一切ありません。 要件は、満20歳以上であること、国籍は問わないものの日本国内に書類送付先があること、そしてその呼称を未保有であることのみです(ソムリエのみ実務経験が加わります)。募集要項に「スクール」という語が出てくるのは、受験者以外の来場を断る注意書きと、CBT会場がパソコンスクール等であるという説明の2箇所だけで、いずれも受験要件とは無関係です。
加えて、一次から受験する方全員に教本が配布され、電子版には動画教材が付属します。制度としては、独学で受験し合格することが可能です。
ここで、比較のために別の資格の話をします。イギリスに本部を置くWSETは、ワインの資格を4段階で設けていますが、全レベルで認定コースプロバイダーの講座受講が受験の必須要件です。JSAは講座受講を一切要件としません。この設計思想の違いは、どちらを目指すかを決めるときの分かれ目になります。WSETの体系についてはWSET Level 3を扱った記事に整理しています。
ただし、独学が可能であることと、独学が容易であることは別の話です。2025年度の合格率は26.4%でした。この記事では「独学で合格しやすい」という評価はしません。
では、スクールに通うとどうなるか。参考として、公開されている料金を並べます。
| スクール | 講座 | 受講料 | 回数・期間 |
|---|---|---|---|
| アカデミー・デュ・ヴァン | ワイン入門 | 33,000円 | 全4回・約1ヶ月 |
| アカデミー・デュ・ヴァン | 総合コース Step-I(通学) | 179,300円 | 全20回・約5ヶ月 |
| アカデミー・デュ・ヴァン | Step-I オンライン | 140,800円 | 全20回 |
| アカデミー・デュ・ヴァン | 1Dayセミナー | 平均8,800円 | 1日 |
| レコール・デュ・ヴァン | Step-I | 約170,000円(別途入会金5,500円) | 全20回 |
※2026年8月時点の公開情報です。最新の料金は各スクールの公式サイトでご確認ください
勉強時間の目安は、JSAが公表していません。 ただし、総合コースが全20回・約5ヶ月で組まれていること、そして一次試験が7月中旬から始まることを重ね合わせると、逆算の形が見えてきます。年明けから春のあいだに学習を始め、夏の一次に合わせて仕上げる。スクールのカリキュラムは、おおむねこの時間軸で設計されています。独学で進める場合も、同じだけの期間を見ておくのが現実的です。
スクールと独学は、優劣ではなく目的が違います。範囲の広い暗記を自分で管理できる方は独学で足りますし、週に一度の締め切りが学習を進めてくれる方にはスクールが効きます。私自身はワインの資格を持っておらず、スクールに通った経験もありません。ですから体験談として語ることはできませんが、ワインエキスパートを持つスタッフと日々働き、有資格のソムリエに現場へ入ってもらってきて、どちらの道を通った方も、同じところに着いているとは感じています。
二次試験の練習は、基準の一本を決めることから始まる
ここから先は、制度の話ではなく、練習の設計の話です。
一次は暗記量の勝負です。範囲が広く、やるべきことがはっきりしています。やりにくいのは二次です。テイスティングは、知識ではなく記憶で答える試験だからです。グラスの中身が何かを言い当てるには、その品種を飲んだ記憶が自分の中に残っていなければなりません。
そこで有効なのが、二つの手順です。
ひとつは、品種ごとに「基準の一本」を決めること。この品種はこの味、という軸になる一本を自分の中に置きます。軸がないと、毎回ゼロから考えることになり、記憶が積み上がりません。
もうひとつは、同じ品種を産地違いで並べること。ひとつだけ飲んでも、それが品種の特徴なのか産地の特徴なのかが分かりません。並べたときに初めて、どちらが動いた要素なのかが見えてきます。別の日に一本ずつ飲んでいては、記憶の中で比べることになり、輪郭がぼやけてしまいます。
Na Team Labでは、毎月テーマを立ててワイン会を企画しています。1回あたり6〜15本を並べ、飲み比べができて、かつワインの知識にもつながるセレクトを基本方針にしています。これまでにシャンパーニュだけを並べる会を開催し、ピノ・ノワールの回やシャルドネの会も企画してきました。恵比寿のレストランでは、コースのペアリングのなかで樽の強いワインと樽の弱いワインを続けてお出しし、違いがどこに出るかを確かめていただくこともあります。
同じ品種を何本も並べる形式は、ひとりで用意するには重すぎます。 けれども、卓を囲む人数がいれば一夜で済みます。試験の練習のために来ていただく場ではありませんが、結果として練習になる並びをつくることは、できます。
まとめ
ワインエキスパート試験は、愛好家のために開かれた資格試験です。
- J.S.A.ワインエキスパートは満20歳以上なら職業も実務経験も問われません
- 試験は一次(CBT)と二次(テイスティング)の二段で、三次試験はありません
- 一次は120問70分のCBTで、夏の約6週間のなかから各自が日時を予約します
- 二次はテイスティング50分。グラスは国際規格のものと仕様まで公開されています
- 合格率は2024年度41.4%、2025年度26.4%。年度による変動が大きいため、最新の実績を確かめましょう
- 費用は受験料に認定登録料20,950円を加えて、一般で53,850円が目安です
- スクール受講は受験の要件ではなく、独学での受験・合格は制度上可能です
- 一次は暗記量、二次は同じ言葉で何度も飲んで確かめた経験の量で差がつきます
今日できることがひとつあります。好きな品種を一つ決めて、その基準になる一本を選んでおくことです。試験まで何ヶ月あっても、記憶は一本目から積み上がり始めます。
よくある質問
ワインエキスパートは独学でも合格できますか?
制度上は可能です。JSAの募集要項には、受験資格としてスクールの受講や修了を求める記載がありません。一次から受験する方には教本が配布され、電子版には動画教材も付属します。ただし2025年度の合格率は26.4%ですので、独学が容易だという意味ではありません。
一次試験に落ちたら、その年の二次試験は受けられますか?
一次試験に合格しないと二次試験には進めません。ただし一次は1人最大2回まで受験でき、出願時に回数を選んで受験料を払う仕組みになっています。2回受験を選んでおけば、1回目の結果を見てから2回目に臨めます。出願後の回数変更はできません。
合格したあとに、更新や年会費は必要ですか?
最終合格後、認定登録料20,950円(うち消費税1,905円)を納めることで、認定証・認定カードとともに認定バッジが交付されます。認定バッジの所有権はJSAに帰属し、認定者への貸与という扱いです。JSA会員として在籍を続ける場合の会費は別途必要ですので、最新の金額はJSA公式サイトでご確認ください。
一杯の違いを、料理とともに確かめる。
少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

