SUMMARY

結論:焼肉のワインは、肉の種類ではなく、タレか塩かで決めます。 甘いタレには、渋みより果実味の強い赤。塩やレモンで食べるタンや鶏には、辛口の白か泡が寄り添います。 ホルモンのように脂の強い部位には、酸と果実味を併せ持つ辛口のロゼが落ち着きます。 焼肉にワインを合わせるとき大切なのは、2枚目、3枚目でも口が重くならないこと。それを支えているのは酸です。 1本で通すなら、ロゼか泡を選んでおくと最後まで崩れません。

あわせて、もつ鍋に合うワインは、スープで決まるとすき焼きのワインは、卵で変わるもご覧ください。

酸が好きか、果実味が好きか。合う品種を5分で診断できます(無料・全30問)。ワイン診断はこちら

塩と黒こしょうを添えた焼いた牛肉のスライス。焼肉に合うワインを考える
選ぶ手がかりは、肉そのものではなく、何をつけて食べるかにあります

焼肉の日は、たいていビールかハイボールで始まります。炭火の匂いと脂に、冷えた炭酸はよく合います。それでも、ワインを一本持ち込んでみたくなる日があります。

ただ、焼肉には固有の難しさがあります。一度の食事のなかに、何種類もの肉と、何種類もの味付けが出てくるということです。タレのカルビと、塩のタン。ホルモンと、赤身のハラミ。一皿ずつ別の料理が運ばれてくるコースとは、構造がまったく違います。

ですから、焼肉のワイン選びには別の軸が必要になります。結論は単純です。肉の種類ではなく、タレか塩かで決める。 この記事では、その理由と、部位別の合わせ方、そして一本で通す場合の選び方までをお話しします。

結論:タレと塩で分ける早見表

まず、全体の地図を置きます。

味付け立っている要素まず向かう方向
甘辛いタレ砂糖・みりん・果物の甘み、醤油の香ばしさ果実味の強い赤。ジンファンデル、グルナッシュ
塩・レモン繊細な塩気と柑橘の酸辛口の白、スパークリング
味噌だれ発酵のうま味とコク辛口のロゼ、果実味のある軽めの赤
辛味噌うま味に辛みが重なるしっかり冷やした辛口のロゼ
塩だれ(ニンニク・ごま油)香りの太さと油酸の高い白、泡

この表のどこが自分の好みに近いかは、5分のワイン診断で確かめられます。酸味・甘み・渋み・ボディの4つの軸で、どの方向が合うかが出ます。

タレか塩か、という分け方にする理由は、口の中でいちばん強いものがそこにあるからです。肉そのものの味の差よりも、タレの甘みや塩とレモンの酸のほうが、はるかに大きく口を支配します。ワインを合わせるときは、いちばん強いものを見る。これは鍋のスープを見るのと同じ考え方で、もつ鍋に合うワインやすき焼きに合うワインでも同じ原則を使いました。

甘いタレに、渋い赤を合わせない理由

「焼肉なら肉料理だから、しっかりした赤」と考えたくなります。けれど、タレで食べる焼肉に渋みの強い赤を合わせると、たいていうまくいきません。

理由は、厨房の知恵のひとつにあります。甘い料理は、渋みを強めます。 焼肉のタレには砂糖、みりん、りんごや梨といった果物が入っています。この甘みが、ワインのタンニンを前に押し出します。グラスを口に運ぶたびに渋みだけが立ち上がり、肉の味が遠くなる。

ですから、タレで食べるなら渋みではなく果実味で合わせます。選びたいのは、黒い果実やジャムのような甘やかな香りを持つ赤です。

  • ジンファンデル … 果実が濃く、甘やかさがある
  • グルナッシュ … 丸みがあり、渋みは穏やか
  • メルロー … 粒が大きく果皮が薄いので、渋みがなめらか

もうひとつ、焼肉にはワイン側と手を繋ぐ要素があります。焼き目の香ばしさです。 網の上でついた焦げ目の香りは、樽の香りと同じ帯域で共鳴します。ですから、樽を使った赤も候補になります。ただし条件があって、渋みが穏やかなものを選ぶこと。香ばしさで手を繋ぎ、渋みでは争わない、という組み立てです。

渋みと苦みの違いについてはワインが苦いと感じるときに整理しました。

部位別の合わせ方

味付けで方向が決まったら、次は部位です。焼肉は部位ごとに脂の量がまったく違うので、ここで微調整します。

カルビ・ロース ― 脂を酸で切る

カルビは脂の多い部位です。一枚目はおいしく、三枚目から口の中に膜が残ってくる。これは脂が舌の上に積み重なるからです。

ここで働くのが、ワインの酸です。脂と酸は対比の関係にあります。 油脂分がワインの酸でリセットされると、次の一口が新鮮に感じられる。打ち消し合っているのではなく、互いを引き立てる関係です。脂があることで酸は心地よく、酸があることで脂は重くならない。

つまり、カルビに合わせるワインの条件は一つです。酸があること。 赤でも白でもロゼでも泡でも、酸がしっかりしていれば脂は切れます。反対に、酸の低い甘やかなだけの赤を選ぶと、後半で苦しくなります。

タン・鶏 ― 塩とレモンには白と泡

塩で食べるタン、レモンを絞る鶏。ここは白と泡の領域です。

塩とレモンの組み合わせは、料理側の酸が立っている状態です。ここに赤を合わせると、赤の渋みだけが浮きます。選びたいのは、柑橘とハーブの香りを持つソーヴィニヨン・ブランや、酸のきれいな辛口の白です。レモンの酸と、ワインの酸が同じ方向で響きます。品種の性格はソーヴィニヨン・ブランの記事にまとめました。

泡を選べば、酸と炭酸の両方で脂を押し流せます。塩のタンから始めて、泡で口を切りながら進む。焼肉の最初の一杯としては、これがいちばん軽やかです。

ハラミ・赤身 ― 赤の出番

ハラミや赤身のもも、イチボといった部位は、脂より肉の味が前に出ます。ここが赤のいちばんの出番です。

肉のうま味と鉄分に、赤い果実の香りが寄り添います。焼き加減をレアに近く仕上げるなら軽めの赤、しっかり火を入れるなら少し厚みのある赤へ。火入れとワインの重さの関係はステーキに合うワインに詳しく書きました。

ホルモン ― ロゼがいちばん落ち着く

ホルモンは、脂の量がもっとも多く、香りも強い部位です。

白では軽すぎて香りに負け、渋みの強い赤では脂と重なって重くなる。この中間に収まるのが、しっかり冷やした辛口のロゼです。酸が脂を切り、わずかな果実味がタレの甘みと辛みを受け止めます。ホルモンの脂の扱いについてはもつ鍋に合うワインでも触れました。ロゼの選び分けはロゼワインの記事にあります。

焼肉の部位に合わせて選びたい白ワインと赤ワインのボトル5本
脂の量が変わると、合わせるワインの方向も動きます

和牛の霜降りには、酸のある赤を選ぶ

和牛の霜降りを焼肉で食べるとき、私はワインの選び方をひとつだけ変えています。重さで合わせず、酸で合わせる。

一般的なペアリングの考え方では、重い料理には重いワインを合わせます。重さの同調です。霜降りの和牛は、たしかに脂の量だけを見れば「重い料理」に入ります。ですから、フルボディの赤を持ってきたくなる。

ところが、焼肉の席ではこれがうまくいかないことが多いのです。理由は、一枚で終わらないからです。霜降りを一枚だけ味わうなら、濃い赤と並べて互いに引き立て合うという組み立ては成立します。けれど焼肉では、二枚、三枚と続きます。脂が積み重なった口に重い赤を重ねると、どちらも動けなくなります。

そこで、脂の多い部位には、酸のあるワインのほうが2枚目以降も重くならないという選び方をします。これは店で肉を出すときの感覚とも一致します。脂が強い皿の隣には、味わいの総量が少し下のワインを置く。ペアリングは、従う側の味わいの総量をほんの少し下げることで成立します。焼肉の場合、下げる役を担うのが酸です。

もうひとつ、助けになる事実があります。たんぱく質と脂は、渋みを和らげます。 肉の脂とたんぱく質がタンニンと結びつくので、単独で飲むと少し渋いと感じる赤が、焼肉と一緒だと丸く感じられるようになります。渋みが少し気になる軽めの赤を持っているなら、焼肉の日に開けるとちょうどよいかもしれません。

1本で通すなら、ロゼか泡

タレも塩も、カルビもタンも出てくる。それが焼肉です。そのうえで一本だけ選ぶとしたら、答えは二つに絞られます。

辛口のロゼ。 酸で脂を切りながら、わずかな果実味がタレの甘みと辛みを受け止めます。赤と白の役を一本で兼ねられるので、味付けが混ざる食卓にはいちばん向いています。しっかり冷やして出してください。

辛口のスパークリング。 炭酸と酸の両方で脂を流します。塩の部位には完璧に寄り添い、タレの部位でも口を切る役として働きます。泡の造りの違いはシャンパンとスパークリングワインの違いにまとめました。

二本開けられるなら、流れを作れます。前半は泡か白で軽やかに始め、赤身やタレの部位に移るところで赤へ。 コースの組み立てと同じで、軽いものから重いものへ歩かせます。焼肉は自分で順番を決められる料理なので、この設計がそのまま使えます。

人数が集まる日の本数は、10名で5本前後、お一人半本が目安です。焼肉はビールやソフトドリンクも並ぶ食卓なので、全員がワインだけを飲むわけではありません。泡を1本、ロゼを1本、赤を1本という組み方にして、足りなければ赤を足す。この並べ方なら、タレも塩も、最初の一枚から最後の一枚まで受けられます。

家焼肉と、店に持ち込むとき

家で焼肉をするとき。 便利なのは、グラスを二つ出しておくことです。塩の部位には白、タレの部位には赤。一枚ごとに飲み分けると、同じ肉でも印象が変わるのが分かります。温度は、泡が6〜8℃、辛口の白が8〜10℃、軽い赤が13〜15℃が出発点です。赤は冷蔵庫から出してすぐでは冷たすぎますが、夏の室温ではぬるくなります。15分ほど前に冷蔵庫から出す、という程度の管理で十分です。

店に持ち込むとき。 焼肉店にワインを持ち込みたい場合は、先に確認しておきたいことがあります。

  • 持ち込みができるか(店によって方針が異なります)
  • 抜栓料(持ち込み料)がいくらか
  • ワイングラスを貸してもらえるか
  • 氷と氷入れを用意してもらえるか

持ち込みの可否と料金は、店ごとに決まっていて一律ではありません。予約の電話のときに一言たずねておくのが、いちばん確実です。考え方はワインの持ち込み料と持ち込みの作法にまとめました。

焼肉店ではグラスが小さいことも多いので、持参する選択肢もあります。香りを広げたいなら、少し大ぶりのグラスのほうが有利です。

赤ワインのグラスを手に持つ人と手前の料理の皿
脂の多い肉には、酸のあるワインが2枚目以降も口を軽くします

あなたのタイプなら、焼肉にはこの1本

ここまでは、焼肉の側から見た地図です。もう一つの地図は、自分の好みの側にあります。

  • プラムとまろやかさが好きな方 … メルローのタイプ。タレのカルビへ
  • 黒胡椒とスパイスが好きな方 … シラーのタイプ。味噌だれとハラミへ
  • 赤い果実と軽やかさが好きな方 … ピノ・ノワールのタイプ。赤身の部位へ
  • 柑橘とハーブが好きな方 … ソーヴィニヨン・ブランのタイプ。塩とレモンのタンへ
  • ミネラルとキレが好きな方 … シャブリのタイプ。塩だれと泡の役割へ

酸味・甘み・渋み・ボディの4つの軸で、自分がどの方向かは5分のワイン診断で確かめられます。結果に合わせた品種ガイドは公式LINEでご案内しています。

ただし、診断で出るのは仮説です。グラスを並べて飲み比べて、はじめて分かります。Na Team Labでは毎月テーマを立ててワイン会を開いています。同じ肉に果実味の赤と酸の高いロゼを並べると、自分がどちらに惹かれるかは一瞬で分かります。コース料理とともに6杯を合わせる会と、10〜15本を並べて立食で楽しむ会の2つの形式があります。これまでの会では、7割近くの方がお一人で参加されています。

まとめ

焼肉のワインは、肉を見るのをやめるところから始まります。

  • 焼肉に合うワインは、肉の種類ではなくタレか塩かで決まります
  • 甘いタレには果実味の強い赤。甘い料理は渋みを強めるので、渋みでは合わせません
  • 塩とレモンには、柑橘とハーブの香りを持つ辛口の白か泡が寄り添います
  • カルビのような脂の多い部位の条件は、酸があること。酸が脂をリセットします
  • 霜降りの和牛には、重さで合わせるより酸で合わせるほうが、2枚目以降も重くなりません
  • ホルモンには、しっかり冷やした辛口のロゼが落ち着きます
  • 1本で通すならロゼか泡。2本開けられるなら、泡や白から赤へ動かします
  • 店に持ち込むときは、持ち込みの可否、抜栓料、グラスの有無を先に確認します

次の焼肉の日は、タレと塩を自分で分けて食べてみてください。同じ肉が、二つの料理になっていることに気づきます。

よくある質問

焼肉に合うのは赤ワインですか、白ワインですか?

味付けで分かれます。甘いタレで食べるなら果実味のある赤、塩やレモンで食べるなら辛口の白やスパークリングが寄り添います。どちらも出てくる食卓では、辛口のロゼが両方を受け止めてくれます。

安いワインでも焼肉に合いますか?

価格よりも、酸があるかどうかで決まります。脂を切る働きをしているのは酸なので、手に取りやすい価格帯の果実味のある赤やロゼでも十分に成立します。渋みの強い高価な赤のほうが、かえって合わせにくいことがあります。

ホルモンに合うワインは何ですか?

しっかり冷やした辛口のロゼをおすすめします。脂の量に対して酸が働き、タレの甘みと辛みは果実味が受け止めます。白では軽すぎ、渋みの強い赤では重くなりやすい部位なので、ロゼがちょうど中間に収まります。

焼肉にワインを1本だけ持っていくなら、何を選べばいいですか?

辛口のロゼか、辛口のスパークリングです。ロゼは酸で脂を切りながら果実味がタレの甘みを受け止め、泡は炭酸と酸の両方で脂を流します。タレと塩が混ざる焼肉の食卓でも、最初から最後まで崩れません。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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一杯の違いを、料理とともに確かめる。

少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

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