結論:新盆の料理は、仏様へのお供えと、来客へのおもてなしを分けて考えると迷いが減ります。 お供えは精進を基本とする考え方が、長く受け継がれてきました。 一方、来客にふるまう料理は、現代では精進料理でないことも多いとされています。 ただし宗派や地域によって考え方が異なるため、菩提寺やご親族への確認が前提です。 人数が多い場合は、仕出しや料理人に任せて、施主も席に着ける形にしておきます。
あわせて、法事のあとの食事(お斎)は、何を用意するかとお盆と年末年始、親戚の集まりは山場の一日だけ任せるもご覧ください。

新盆の支度をしていて、料理のところで手が止まる。親族が何人来るのか、僧侶に食事を出すのか、そして精進料理にしなければならないのか。調べるほど、書いてあることが違う。
迷いが生じる理由は、はっきりしています。仏様へのお供えと、来客にふるまう料理が、一つの話として語られているからです。この二つは、性質が違います。分けて考えると、決めるべきことが見えてきます。
この記事では、新盆の料理を、施主の手順としてお話しします。お供えと来客の料理の違い、献立の考え方、仕出しや出張料理との比較、そして夏場に気をつけること。ご家庭に伺って料理をお出ししている側から見えていることを、一般的な慣習と分けて書きます。
なお、この領域は宗派と地域による違いが非常に大きいところです。この記事で「一般に」と書いた部分は、あくまで広く語られている慣習です。最終的には、菩提寺やご親族のお考えを先に確かめてください。
新盆(初盆)とは ― 通常のお盆との違い
新盆とは、故人が亡くなられてから、四十九日の忌明けを過ぎて初めて迎えるお盆を指すとされています。毎年のお盆と比べて丁寧に営まれることが多く、僧侶をお招きして法要を行い、そのあとに会食の席を設けるご家庭もあります。
通常のお盆との違いは、料理の内容そのものではなく、人が集まる規模に出ます。毎年のお盆が家族だけで静かに過ぎるのに対して、新盆には親族が集まります。そのぶん、施主の支度が増えます。
法要のあとの会食は、一般に「お斎(おとき)」と呼ばれます。地域によっては「おとぎ」とも言われます。「斎」は、僧侶が正午までに食べる正式な食事を意味する「斎食(さいじき)」に由来するとされ、施主が参列者と僧侶をもてなすために用意するものと説明されています。
法事のあとの食事そのものについては、法事のあとの食事をまとめた記事に詳しく書きました。この記事では、新盆に特有の論点だけを扱います。
呼び方と、宗派・地域による違い
呼び方から違います。「新盆」「初盆」の両方が使われ、読み方も「にいぼん」「しんぼん」「あらぼん」「はつぼん」と地域によって分かれます。
考え方そのものも、宗派で異なります。たとえば浄土真宗には忌中という概念がなく、「精進落とし」という言葉を使わないと説明されています。お斎についても、仏事のひとつとして位置づける宗派があります。
ですから、一般的な慣習の説明をいくら集めても、ご自身の家の答えには届きません。菩提寺に一度伺うのが、いちばん早くて確実です。 親族の年長の方に聞いておくのも有効だと思います。
お供えの料理と、来客の料理を分けて考える
ここが、この記事の中心です。新盆の料理には、役割の違う二つがあります。
- お供えの料理。仏様へお供えするもの。精進を基本とする考え方が長く受け継がれてきました
- 来客の料理。親族と僧侶をもてなすもの。現代では精進料理でないことも多いとされています
同じ日の、同じ家の中にある料理ですが、向いている先が違います。お供えを精進で整え、来客には別の献立を用意するという形は、矛盾ではありません。
精進料理にすべきかどうか
もっとも検索されている疑問だと思いますので、正直に書きます。一つの答えはありません。
一般には、「現代では忌明け前でも通常の食事が一般的になったため、お斎も精進料理ではなくなっている」と説明されています。肉料理が出ることも多くなっている、という寺院の説明もあります。
一方で、今も精進の形を受け継いでいる宗派があります。 真宗大谷派(東本願寺)が提供するお斎は、今も精進料理です。浄土真宗では、お斎を仏事のひとつとして捉える考え方があるとされています。
ですから、「現代のお斎は精進料理でなくてよい」と一般化してしまうと、宗派によっては不正確になります。判断の順番は、次のようになります。
- 菩提寺の考え方を確認する
- ご親族、特に年長の方の考え方を確認する
- そのうえで、来客の献立を決める
この順番を踏んでおけば、当日になって気まずくなることはありません。先に聞いておくことが、いちばんの備えです。
来客への献立の考え方と、避けたい料理
来客の料理を用意する場合、考え方は二つです。
一つめは、華やかさを立てないこと。弔事の席ですから、祝いの席の設えとは逆に振ります。
複数の情報源で一致して「避けたい」とされているものを挙げます。
- 鯛
- 伊勢海老
- 紅白のもの
- 松竹梅の飾り
- 金箔を使ったもの(盛り付けが華やかになりすぎるため)
いずれも、祝いの席の記号として広く共有されているものです。これらを外すだけで、設えは静かになります。
二つめは、食べ進みやすさです。新盆の席には、年齢の幅のある親族が集まります。移動して到着したばかりの方もいます。味を強く立てすぎない、量を詰め込みすぎない。この二点を押さえておくと、箸が進みます。
私たちがご家族の席に伺うときも、ご年配の方が同席される場合は塩味を抑え、量とお出しするペースを調整しています。 食べやすく、噛み切りやすく仕立てる。これは料理の作り方そのものの話です。
献杯についても、ひとつ触れておきます。一般に、「乾杯」という言葉と拍手は避け、「献杯いたします」と言うとされています。グラスは胸の高さまで静かに持ち上げ、高く掲げない。挨拶は1分程度にまとめるのが目安とされています。
ただし、発声する人に決まりはありません。 親族の代表格、家長、故人のご兄弟、ご友人、会社関係の方。施主ご自身が音頭をとっても問題ないと説明されています。そして地域や宗派によっては、献杯を行わないこともあります。 ここも、先に確かめておく項目です。
私たちがお受けする場合は、献杯のタイミングに合わせてコースを組むことができます。 施主のご挨拶と献杯が済んでから一皿目をお出しする、という進行合わせです。BGMや照明を抑えた設えで組み立てることもできます。

仕出し・手作り・出張料理・会食店の比較
用意の方法は、四つあります。
- 仕出しを頼む。仏事でもっとも広く使われている形です。器に入った料理が届き、器の回収がある場合があります(事業者ごとの運用です)
- 自宅で手作りする。費用は抑えられますが、施主が当日ずっと台所に立つことになります
- 会食の店を使う。準備が不要です。移動が必要になり、人数の変更に弱くなります
- 料理人に来てもらう。家で、作りたてを出せます。費用は上がります
仕出しという言葉そのものの意味は、仕出しとは何かの記事にまとめました。
選ぶ基準は、施主が当日どう過ごしたいかです。親族の相手をして、僧侶にご挨拶をして、進行を見る。この三つをしながら料理も作るのは、現実的ではありません。人数が多いなら、どこかを人に渡すことになります。
ご自宅に伺う出張料理は、6名さまから16名さままで、コース形式で一皿ずつお出しします。お一人 15,000円〜、1回のご依頼につき 90,000円〜 で、表示の金額に税・サービス料・出張費がすべて含まれます。17名さま以上の場合は、ビュッフェ形式でお一人 8,000円〜としてご提案しています。
食材・器・グラス・カトラリー・調理道具はすべて持参します。恵比寿の店で先に仕込みを済ませてから伺うため、現地での作業は仕上げが中心です。IHが1口あれば成立します。 ご実家の食器が人数分なくても問題ありません。片付けはシンク・コンロ・排水口まで済ませて引き上げます。
料理の形は、和食寄りのコースに組むことができます。 フレンチとイタリアンを基軸にしながら、和のテイストへ寄せた構成です。
ひとつ、正直にお伝えしておきます。法要のあとの会食としてのご依頼は、まだお受けしたことがありません。 お盆のタイミングで、ご家族の集まりに作りに伺ったことはあります。法要の席そのものの経験ではありませんが、同じ設計でお受けできます。
費用の目安(一般的な相場)
一般的な相場についても触れておきます。これは私たちの価格ではなく、広く語られている目安です。
お斎の費用は、一人あたり3,000円から10,000円とされ、会場によって幅があります。斎場やお寺で3,000〜8,000円、料亭やレストランで5,000〜10,000円という整理が見られます。三回忌以降は、3,000〜5,000円に縮小されることが多いとも説明されています。会場の確保は、2週間前までが目安とされています。
僧侶が会食を辞退された場合は、御膳料をお渡しします。相場は5,000〜10,000円が目安で、会食の内容によってはそれ以上になることもあります。白い無地の封筒(郵便番号欄のない一重のもの)を使い、水引は基本的に不要。表書きは濃墨で「御膳料」と書き、その真下に施主名を入れます。薄墨ではありません。
地域によっては「膳部料」「粗飯料」「お斎料」という表記も使われます。お布施・御車代とは別の封筒に分け、お布施を一番上にして、袱紗や切手盆を使ってお渡しするのが丁寧な形とされています。渡すタイミングは、法要が始まる前のご挨拶のときが推奨されています。
会食を設けないという選択
近年は、お斎のない法要も増えているとされています。 少子化や高齢化、参列される方の負担、感染症の影響などが理由として挙げられています。
会食を設けない場合に大切なのは、事前に知らせておくことです。案内状に一言書いておけば、参列される方が食事の支度をして来ることもありません。
文例として、こうした書き方が紹介されています。「法要後の食事の席は設けておりませんが、ささやかながら折詰を用意しております」。代わりにお渡しするものとしては、持ち帰り用のお弁当(3,000〜5,000円程度)、折詰、菓子折り、カタログギフトが挙げられています。返礼品は消え物や日用品がよく、金額が分かる金券は不適とされています。
設けないという判断は、失礼にはあたりません。 伝えておくかどうかだけの話です。
夏場の衛生と、施主の負担を減らす工夫
新盆には、他の法要にない条件が一つあります。夏であることです。
ここは、料理を預かる側としていちばん神経を使うところなので、実際にやっていることをお話しします。
夏は、現地で火を入れる料理に寄せています
夏の依頼では、料理の構成そのものを変えています。
極力避けるのは、次の三つです。
- 生もの
- 現地で火を入れないもの(仕込んだまま、そのままお出しする料理)
- 鮮度が落ちやすい魚介類
つまり夏は、現地で火を入れる料理に構成を寄せるということです。断るのではなく、設計を季節で変えています。
運搬は、保冷剤を入れた保冷バッグが基本です。長時間になる場合は冷凍対応にして、冷凍のまま持ち込めるものは冷凍で運びます。移動式の冷蔵庫も持っていますので、現場の条件に合わせて使い分けます。
他人の台所で調理するときに見ているのは、水回りと冷蔵まわりの二点です。この二つが整っていれば問題ありません。整っていない場合は、無い前提で準備して持ち込みます。
もう一つ、現場での手順の話をします。まな板が1枚しかない台所は、珍しくありません。そういうとき、私は順番で交差汚染を断ちます。野菜のように生でも食べられるものを最初に下処理し、次に生で食べられる魚介類、次に火を入れる魚介類、最後に肉。各段階のあいだに洗浄を入れます。食材にも使えるアルコールを持参しています。
家庭でよく言われる「まな板を使い分けましょう」は、まな板が複数あることを前提にした話です。道具を増やせないときは、手順で担保する。 これが出張料理の衛生管理だと考えています。衛生の考え方そのものは、食中毒予防の三原則の記事に書きました。
リスクの高い食材については、線を引いています。牡蠣とレバーは、基本的にお出ししません。 細心の注意を要する食材だからです。どうしてもというご希望があった場合のみ、注意を払ってお出しします。
そしてもう一つ。お出しした料理の残りは、お客様にお渡ししません。 例外はありません。手を離れたあとの温度と時間は、こちらで管理できないからです。夏の仏事の席では、特に大切な線引きだと考えています。
当日の進行についても触れておきます。開始の1時間ほど前に伺って仕込みを展開し、コースは2時間から3時間で進めます。固定の進行表で機械的に流すのではなく、席の様子を見ながら間を取ります。時間が押しても、延長料金は発生しません。
お支払いは、当日現金か、事前のお振込をお願いしています。事前にお振込を選んでいただければ、当日その場で会計が発生しません。 親族が集まる席で、お金のやりとりを人目に触れさせずに済みます。

まとめ
新盆の料理は、献立選びの問題ではなく、役割を分ける作業です。
- 新盆は、四十九日の忌明けを過ぎて初めて迎えるお盆を指すとされています
- お供えの料理と、来客にふるまう料理は、向いている先が違います。分けて考えます
- 精進にするかどうかに一つの答えはありません。菩提寺とご親族に先に確認します
- 鯛・伊勢海老・紅白のもの・松竹梅の飾り・金箔は避けるとされています
- 献杯は「献杯いたします」と静かに。発声者に決まりはなく、行わない地域もあります
- 一般の相場はお一人 3,000〜10,000円、御膳料は 5,000〜10,000円が目安とされています
- 会食を設けないという選択も増えているとされています。案内状に一言添えておきます
- 夏は、現地で火を入れる料理に構成を寄せます
新盆の支度でいちばん削られるのは、施主の時間です。料理をどこかに渡せば、その時間は席に戻ります。
ご自宅に伺う出張料理は、基本的に東京都内で承っています。和食寄りのコースに組むこともできます。ご相談は2週間前までにいただけると、当日までに設備とご希望に合わせた組み立てができます。料金の考え方は出張料理の料金の記事に、お盆の家族の集まりについてはお盆と年末年始の集まりの記事にまとめました。ご相談は公式LINEにて承っております。
よくある質問
新盆の来客の料理も、精進料理にすべきですか?
現代では精進料理でないことも多いとされています。ただし浄土真宗など、今も精進の形を受け継いでいる宗派もあります。宗派と地域で考え方が異なるため、菩提寺やご親族にご確認いただくのが確実です。
新盆の料理は、何人分を用意すればよいですか?
案内状で出席を確認し、僧侶の分を含めて数えます。会食を設けない場合は、持ち帰りの折詰や菓子折りを用意する形もあります。いずれにしても、人数は事前に確定させておくほうが安心です。
僧侶に食事を出すべきですか?
お斎は、施主が参列者と僧侶をもてなすために用意するものとされています。辞退された場合は御膳料をお渡しするのが一般的で、相場は5,000〜10,000円が目安です。白い無地の封筒に濃墨で表書きします。
新盆の会食で避けたほうがよい料理はありますか?
一般に、鯛、伊勢海老、紅白のもの、松竹梅の飾り、金箔を使ったものは避けたいとされています。いずれも祝いの席の記号として広く共有されているもので、外すだけで設えは静かになります。年齢の幅がある親族が集まるため、味を強く立てすぎず、量を詰め込みすぎないことも大切です。
ご自宅のお祝いを、シェフに任せる。
恵比寿のレストランのシェフチームが、食材と器を持ってご自宅へ伺います。お持ちのワインに合わせてコースを組み、後片付けまで終えて帰ります。あなたは、ゲストの隣へ。

