日程は決まりそうで、人数も見えている。料金も調べました。それでも、問い合わせの画面で手が止まる。

うちには、お出しできる器がない。

引っ越したばかりで食器棚が空のまま。セカンドハウスだから最低限のものしか置いていない。人を招く前提で暮らしていなかったから、グラスが人数分そろわない。理由はさまざまですが、行き着く先は同じです。「うちは、頼むに値する家ではないのかもしれない」という、静かな自己判断です。

先に申し上げます。それは、私たちがもっとも頻繁に受け取るご相談のひとつです。「お皿がないんです」「グラスがないんです」というお声を、私たちは年間を通して何度も頂戴しています。例外でも、特殊なご事情でもありません。

ですので、隠さずに書きます。出張シェフが何を持参し、キッチンにどこまでの条件を求めるのか。そして、ひとつだけご用意いただきたいものは何か。 すべてお伝えします。

SUMMARY

結論:出張シェフは食器を持参するため、器も調理器具もない家でフルコースは成立します。 Na Team Lab は食材・器・グラス・カトラリー・調理道具を持参します。事前のヒアリングで現地にないものを洗い出し、足りないものはすべて携えて伺います。 キッチンはIHが1口あれば十分です。熱源がない部屋にはカセットコンロを持参し、冷蔵庫がなければ可動式のものを持ち込みます。 ご用意いただきたいのは、テーブルと椅子だけです。設備の条件によって料理の内容は変わりますので、まずはご相談ください。

結論|器がなくても、フルコースは成立します

出張料理は、器や調理設備のない家でも成立します。Na Team Lab は器・グラス・カトラリー・調理器具まで一式を持参し、使った後はすべて引き上げます。ご自宅側に必要なのは、水道と最小限の熱源、そしてテーブルと椅子だけです。

私たちが大切にしているのは、「運ぶ」のではなく「その場で仕立てる」という考え方です。できあがった料理を届けるのではなく、シェフが空間に入り、そこをひと夜だけの厨房と客席に編み直す。そのためには、道具を移動させる必要があります。

他の料理人に頼めない理由が、そのまま答えになっています

飲食店で働く料理人に出張をお願いしようとすると、多くの場合ハードルが高くなります。理由は三つです。

  • 機材の問題
  • お皿・グラスの問題
  • カトラリーの問題

店の厨房と食器棚を前提に仕事をしている以上、これらは持ち出せません。だから「うちの器を使ってください」という条件が生まれ、器のない家は最初から候補から外れてしまいます。

Na Team Lab は、出張料理を前提に装備をそろえています。 数々の現場を重ねるなかで、これだけ持っていけば会として成立する、という最低限の装備が手元に残りました。ですから、このハードルがそもそも存在しません。器がないことは、私たちにとって断る理由になりません。

出張シェフが食器を持参する範囲と、その決め方

黒い布の上に大きさの違う白い皿と小鉢が並べられている
現地にないものは、こちらで携えて伺います。

よく「どこまで持ってきてもらえますか」とお尋ねいただきます。方針としては、ひとつです。必要なものは、すべて持っていきます。

ただし、これは「毎回同じ荷物を積んでいる」という意味ではありません。持ち物は、現場ごとに決まります。

決め方は、事前ヒアリングの引き算です

私たちは、ご依頼をいただいた段階で、現地の設備をうかがいます。キッチンに何があるか。器はどれくらいあるか。グラスはあるか。まな板は。鍋は。

そのうえで、現地にないものを洗い出し、足りないぶんをすべて携えて伺う。 この引き算が、出張料理の準備の実体です。

裏を返せば、お客様がご用意くださるものが多ければ荷物は減り、何もない家であれば一式まるごと運ぶことになる、というだけの違いです。どちらであっても、卓の上に出るものは変わりません。目指しているのは、レストランと同じ質で楽しんでいただくことです。

実際に持参してきたもの

パーティールームのように、フライパンもまな板もない会場に伺うこともあります。その場合は調理器具から食器まで一式を持ち込み、その場に厨房を立ち上げます。

ワイングラスも、必要に応じて持参します。以前、「グラスは一人につき3脚ずつ、10名で対応できますか」というご相談をいただいたことがあります。ワインを何種類も開ける会でしたら、当然のご要望です。こうした形にも、お応えしてきました。

会場のご事情で食器を洗う時間が取れない場合や、持ち帰りが難しい場合には、紙皿でご用意する形も選べます。設えを優先するか、気楽さを優先するか。そこはご相談のうえで決めています。

キッチンの最低条件はどこか

もうひとつの不安は、キッチンのほうだと思います。狭い。古い。口が少ない。そもそも、料理をする前提の部屋ではない。

条件別に、対応をお伝えします。

現地の状態私たちの対応
IHが1口あるそのまま対応できます
熱源が一切ないカセットコンロを持参します
水が使えない使い捨ての器でご用意するか、コース全量を持ち帰って洗えるフルセットを持参します
冷蔵庫がない可動式の冷蔵庫を持参することも可能です
電子レンジしかないビュッフェ形式で組み立てるか、カセットコンロで対応します

ただし、先にご相談ください

表をご覧になって、「なんとかなるのか」と思われたかもしれません。半分は、その通りです。ただ、もう半分は違います。

設備の条件が変われば、お出しする料理の内容そのものが変わります。

熱源がひとつしかない料理と、二口使える料理とでは、組めるコースが違います。水が使えないなら、洗い物の発生しない構成に寄せる必要があります。冷蔵庫がなければ、保冷の設計から逆算してメニューを決めます。当日になって現場で判断するのではなく、条件を先に共有していただき、その条件のために一から組み直す。 これが正しい順序です。

ですから「うちは条件が悪いので無理でしょうか」ではなく、「うちはこういう状態です」とだけお伝えください。そこから設計が始まります。なお、水が使えない場合の対応のように、選ぶ形によってはご予算に関わる調整が生じることもあります。その点も含めて、事前にご相談いただければ整えられます。

ひとつだけ、ご用意いただきたいもの

ここまで「持参します」と書いてきましたので、正直に申し上げておきたいことがあります。

テーブルと椅子は、基本的に持参できません。

器やグラスは運べますが、人数分の卓と席は、車に積める性質のものではありません。ですので、家具のまったくない空間でのご依頼は、そのままの形ではお受けできない場合があります。

まったく方法がないわけではありません。レンタルで手配する形であれば、別途ご予算をいただけるかぎりで対応できる可能性があります。 ただ、これはお約束としてお伝えできるものではないため、可能性としてお伝えするにとどめます。

こう書くと、弱点のように見えるかもしれません。ですが、条件を曖昧にしたまま当日を迎えることのほうが、お客様にとってははるかに困ります。できることと、できないことの境目を、先に開いておく。 それが、私たちの誠実さの形です。

裏返せば、テーブルと椅子さえあれば、あとはこちらで整えられるということでもあります。

モデルルームという、相性の良い会場

ここからは、私自身の経験をひとつ。

モデルルームで、会をご用意したことがあります。

暮らしが始まっていない空間ですから、器も食材も当然ありません。それでも、何の問題もなく成立しました。理由は明快で、モデルルームには水道もIHも通っており、机と椅子も設えられているからです。私たちが求める条件が、最初から整っている空間なのです。

そして、暮らしの痕跡がないぶん、空間の表情がこちらの設えに素直に応えてくれます。生活の気配が薄い場所は、ひと夜だけ別の顔をさせやすい。器を並べ、グラスを置き、灯りを落とせば、そこはもうモデルルームではなく、その夜だけの卓になります。

正直に申し上げると、モデルルームでのご依頼は、もっと増えてほしいと思っています。 内覧のあとに、その部屋で実際に食事の時間を過ごしていただく。暮らしの想像力が動く場面として、これほど適した使い方は、そう多くありません。

何もない家は、いちばん自由な家です

長く出張料理を続けてきて、思うことがあります。

設えが決まっていない空間ほど、編みやすい。

暮らしの整った家には、その家なりの流儀があります。器にも並べ方にも、これまで積み重ねてきた時間が宿っています。それは美しいことですし、私たちはその流儀に合わせて設計します。一方、何もない部屋には、合わせるべき前提がありません。持ち込んだ器と、その夜の料理と、集まった方々の顔ぶれだけで、卓の輪郭を決められます。

ですから、器がないことを引け目に感じていただく必要はありません。それは制約ではなく、余白です。

来たときより、少しだけ整った状態にして帰る。それが、私たちの引き際です。

まとめ

器も設備もない家で、出張シェフのフルコースは成立します。要点を整理します。

  • 出張シェフは食器を持参します。 食材・器・グラス・カトラリー・調理道具まで一式を運びます
  • 持ち物は事前ヒアリングで現地にないものを洗い出し、足りないぶんを携える形で決まります
  • キッチンはIHが1口あれば十分。熱源がなければカセットコンロ、冷蔵庫がなければ可動式のものを持参します
  • 設備によって料理の内容は変わります。 事前のご相談をお願いしています
  • ご用意いただきたいのは、テーブルと椅子だけです

「うちは何もないから」という一言が、招く楽しみを諦める理由になっているなら、それはもったいないことです。何もない家は、私たちにとって、いちばん設えやすい家です。

Na Team Lab の出張料理は、6名さまから16名さままで、お一人 15,000円〜(ワインペアリング付きは 22,000円/税・サービス料・出張費込)で承っています。対応エリアは基本的に東京都内で、2週間前までにご相談いただければ、その空間のためのコースを組み立てます。料金の考え方については、すべて込みの理由をまとめた記事をご覧ください。

ご相談は、公式LINEにて承っております。現地の設備の状態をお知らせいただければ、そこから設計を始めます。

よくある質問

出張シェフは食器を本当にすべて持参してくれますか?

はい。食材・器・グラス・カトラリー・調理道具を持参します。事前のヒアリングで現地にないものを確認し、足りないものはすべて携えて伺います。フライパンやまな板すらない会場に、一式を持ち込んで対応した実績もあります。

電子レンジしかない部屋でも頼めますか?

ご相談いただければ対応できます。ビュッフェ形式で組み立てるか、カセットコンロを持参する形が基本です。ただし設備によって料理の内容が変わりますので、まずは現地の状況をお知らせください。

後片付けはどこまでしてもらえますか?

シンク・コンロ・排水口まで整えて撤収します。ゴミは会場のルールに合わせ、持ち帰りが必要な場合は分別して持ち帰ります。水が使えない現地では、器をすべて持ち帰って洗う形も選べます。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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何もない部屋から、始められます。

器もグラスもカトラリーも、調理道具まで一式を携えて伺います。ご用意いただくのは、テーブルと椅子だけです。キッチンはIHが1口あれば成立し、熱源がなければカセットコンロを、冷蔵庫がなければ可動式のものを持参します。事前に現地の設備を伺ったうえで、その空間のためのコースを組み立てます。片付けはシンク・コンロ・排水口まで整えて撤収しますので、翌朝に前夜の痕跡は残りません。

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