「ケータリングをお願いしたいのですが」

そうご相談をいただいたとき、私はまず、その言葉が何を指しているのかを確かめるところから始めます。大皿の料理を届けてほしいのか、会場に人が来て配膳までしてほしいのか、それとも料理人が入って一皿ずつ出してほしいのか。同じ一語で、まったく違う三つのことが語られているからです。

ケータリングという言葉は、日本ではかなり広い意味で使われています。宅配のオードブルもケータリングと呼ばれますし、立食のパーティー料理もケータリングです。料理人が自宅に来て火を入れる形も、そう呼ばれることがあります。範囲が広いので、頼む側と受ける側で認識がずれたまま当日を迎える、ということが実際に起こります。

この記事では、ケータリングとは何かを、言葉の成り立ちから整理します。五つの型に分けて違いを示し、場面からどう選ぶか、費用をどう見るかまでをまとめました。個別の手順や相場の細かい話は、それぞれの記事に譲ります。ここでは、全体の地図をお渡しします。

SUMMARY

結論:ケータリングとは、指定された会場に料理と人を運び、その場で食事の提供まで行うサービスです。 料理を届けて終わるデリバリーや仕出しと違い、設営・盛り付け・配膳・片付けまでを含むのが、本来の意味にあたります。 さらに、料理人が会場に入って火入れから仕上げまでを行う型は出張料理と呼ばれ、同じ言葉のなかでも別の設計になります。 この記事では、ケータリングとは何かを語源から整理し、五つの型と場面別の選び方、費用の見方までをまとめます。

あわせて、出張シェフの到着から退出まで出張料理の料金に含まれるものもご覧ください。

ケータリングとは、会場に料理と人を運び、その場で食事の場をつくることです

ケータリングとは、指定された会場に料理と人を運び、その場で食事の提供まで行うサービスです。料理を届けて終わるデリバリーや仕出しと異なり、盛り付け・配膳・片付けまで含むのが本来の意味で、料理人が会場で仕上げる型は出張料理と呼ばれます。

この定義のなかで、いちばん見落とされやすいのが「人を運ぶ」という部分です。

料理を運ぶだけなら、配達で足ります。けれどケータリングという言葉が本来抱えているのは、会場に人が入り、卓を整え、料理を並べ、食べ終わったあとを片付けて帰る、という一連の仕事です。運ぶのは料理だけではなく、その料理が食事として成立するまでの工程ごとだと考えると、輪郭がはっきりします。

つまり、こう言い換えられます。ケータリングとは、会場を一時的に「食事ができる場所」に変える仕事です。テーブルしかない部屋に、料理と器とサービスが持ち込まれ、その時間だけ食事の場が立ち上がる。会が終われば、すべて引き上げられて、もとの部屋に戻ります。

語源をたどると、cater は「用意する」という言葉でした

会場へ料理と人を運ぶケータリング
届けるだけの形から会場仕上げまで、目的に合う型を選びます。

ケータリングは英語の catering から来ています。動詞の cater は「食事などを用意して供する」という意味です。

もとをたどると、この言葉は「買い付ける」という古い動詞に行き着きます。宴のために食材を調達し、必要なものを揃える役目を指す言葉でした。つまり cater の中心にあるのは、調理そのものよりも「その場に必要なものを揃えて、整える」という働きです。

現在の英語圏でも、catering は業として食事を供給することを広く指します。パーティーや式の料理はもちろん、社員食堂の運営や機内食のように、継続して食事を供給する事業も catering と呼ばれます。日本語で思い浮かべる「ケータリング=パーティー料理」より、ずっと範囲の広い言葉です。

また、cater には「〜の要望に応える」という使い方もあります。相手が求めているものを見て、それに合わせて揃える。この語感は、実務の感覚とよく合っています。私たちが現場でしていることも、料理を作ることと同じくらい、その会が何を必要としているかを読んで揃えることだからです。

ケータリングの意味を調べる方が多いのは、この広さが理由なのだと思います。言葉が広いぶん、頼む前に「どの型を指しているのか」を決める必要があります。

ひとつの言葉に、五つの型が入っています

日本でケータリングと呼ばれているサービスは、実際には五つの型に分けられます。分ける軸は、現地に人が付くかどうかと、料理がどこで仕上がるかの二つです。この二つが決まれば、料理の温度も、価格帯も、向く場面も、ほとんど自動的に決まります。

現地に人が付くか料理が仕上がる場所向く場面
デリバリー付きません店の厨房少人数の集まり、進行の読めない現場
仕出し配達と器の回収のみ店の厨房法事、会議、家の行事
ケータリング設営・配膳・片付けに付きます会場で仕上げ・盛り付け立食の会、社内行事、レセプション
シェフ帯同ケータリング料理人を含めて付きます会場で火入れから仕上げまで規模のある会で、温度を落としたくないとき
出張料理料理人が主体で付きます会場で一皿ずつ仕上げる着席のコース、記念日、顔合わせ、会食

デリバリー ― 仕上げた料理が、そのまま届く

宅配のオードブルや、大皿の盛り合わせがこれにあたります。店の厨房で完成させた料理を、容器に詰めて届ける形です。

いちばん手軽で、当日の人手も要りません。そのかわり、料理は届いた時点から時間が進み始めます。揚げ物の衣は湿り、温かい料理は室温に近づいていく。冷たいままおいしい設計にしてあるものは強いのですが、火入れの妙を見せる料理には向きません。

時間が読めない場に強いのが、この型の本質です。誰がいつ食べるか分からない現場では、先に置いておける形がいちばん機能します。

仕出し ― 日本の伝統的な、器ごと届く形

折詰や会席を店の器に盛って届け、後日その器を引き取りにくる。日本で長く続いてきた形です。

法事や会議、家の行事のように、席次と進行が決まっている場によく合います。人数分がきちんと同じ形で用意され、配るだけで整うからです。デリバリーとの違いは、器と回収まで含めて設計されている点にあります。

ケータリング ― 会場で仕上げて、配膳まで行う

ここからが、人が付く型です。

料理を会場に運び込み、現地で仕上げと盛り付けを行い、卓に並べ、会の間の補充や下げ物をして、終わったら片付けて撤収する。会場に厨房がなくても成立するよう、必要な機材を持ち込む場合もあります。

デリバリーとの決定的な違いは、料理が「置かれた瞬間」に完成するよう設計できることです。仕上げの工程を現地に残しておけるので、会の始まりに合わせて温度を作れます。立食のパーティーや社内行事のように、人が動きながら話す場に向いています。

シェフ帯同ケータリング ― 料理人が会場に入る

ケータリングのなかでも、料理人が現地に入り、火入れから仕上げまでを担う形です。

大皿で供する構成は保ちながら、揚げたて・焼きたてをその場で出せます。会場の設備次第で組み立ては変わりますが、火と水が使えれば、できることの幅はかなり広がります。規模がありながら、温度を落としたくない会に向く型です。

出張料理 ― 一皿ずつ、その場で仕上げて出す

料理人が会場を厨房として使い、コースを一皿ずつ仕上げて卓に出す形です。ケータリングと同じ言葉で語られることも多いのですが、設計思想はレストランに近いものになります。

「ケータリングをお願いしたい」の中身は、毎回違います

私は出張料理人として、年間200件を超える食卓に伺ってきました。そのなかで、最初のご相談の言葉と、最終的にお受けした形が一致しないことは、めずらしくありません。

たとえば「ケータリングで、30名くらい」というご相談をいただいたとします。私が次にお聞きするのは、料理の内容ではありません。会場に、お一人1枚ずつ皿が乗るテーブルがあるかどうか。椅子が人数分あるかどうか。この二つです。

そこが、型の分かれ目だからです。皿と椅子が揃うなら、着席のコースをご提案できます。揃わないなら、立って食べられる形に組み替えたほうが、会そのものがうまくいきます。料理の話は、そのあとです。

逆に、立食のケータリングでとおっしゃっていた方に、着席のコースをご提案したこともあります。伺ってみると、ご参加の方の年齢層が高く、長く立っているのが負担になりそうでした。会の目的も、交流よりも「ゆっくり話すこと」にありました。

料理を選ぶ前に、場のほうを見る。これが、型を決めるときの順番です。

場面から選ぶと、型は自然に決まります

言葉の定義から入ると迷いますが、場面から入ると、選択肢はかなり絞られます。

場面向く型判断の理由
自宅の会(6〜16名)出張料理席が決まっていて、温度と順番を守れる
会社の懇親会(立食・20名以上)ケータリング人が動いて話す場に、料理を添える形が合う
レセプション・お披露目ケータリング/シェフ帯同設えの見栄えと、進行の自由度を両立できる
撮影現場・楽屋デリバリー/ケータリング進行が読めないため、先に出しておける形が強い
法人の少人数会食出張料理会話が中心。皿が静かに変わっていく設計が合う

判断の軸は、結局のところ三つに集約されます。人数、席があるかどうか、進行が読めるかどうか。

人数が増えれば、一皿ずつは物理的に難しくなります。席がなければ、コースは成立しません。進行が読めない現場では、出来たてを狙うより、先に整えて置いておくほうが機能します。

費用の見方は、一人あたり制と最低注文額の二段構えです

ケータリングの費用は、多くの場合「お一人あたり ◯◯円」で提示されます。ここに、もうひとつ「1回のご依頼につき最低 ◯◯円」という下限が重なります。この二段構えを知らないと、人数を減らしたのに総額が下がらない、ということが起こります。

一人あたりの単価は、先ほどの型とほぼ対応しています。一般的な目安として、次のような幅で語られることが多いようです。

形式お一人あたりの目安料理の状態
配達型(デリバリー・仕出し)1,500〜3,000円仕上げた料理を届ける
会場仕上げ型(ビュッフェ)5,000〜10,000円現地で仕上げ・盛り付け
着席コース型15,000円〜一皿ずつその場で提供

ケータリングの相場は幅が広いと言われますが、正確ではありません。幅が広いのではなく、ひとつの言葉に三つの形式が入っているだけです。形式を決めれば、価格帯はかなり明確になります。

東京で頼むときに確認したい、三つのこと

東京は、ケータリングを頼める会社の数がとても多い場所です。選択肢が多いぶん、先に確かめておくと安心な点があります。実務として重要なのは、次の三つです。

その料理は、どこで仕込まれたか

ケータリングには、必ず事前の仕込みがあります。そして、その仕込みがどこで行われたかは、料理の安全に直結します。

事前に料理を作る場所には、営業許可が必要になります。お客様のご自宅で仕込みから始める形のように、許可が不要になるケースもありますが、判断は運用によって異なります。ですので、依頼する側が確かめるのは条文ではなく、「その料理は、どこで作られたのですか」という一点で十分です。

店舗を構えているかどうか

「営業許可証を見せてください」とは、なかなか言いにくいものです。そこで私がおすすめしているのは、店舗を自社で構えているかを聞くことです。

理由は二つあります。店舗を構えているなら、飲食店営業許可を取得している蓋然性が高いこと。もうひとつは、一定の品質を保っていなければ、費用のかかる店舗を維持し続けることは難しいということです。店舗の存在そのものが、事業の実態と継続性を示します。

キャンセルと人数変更の規定

会は、直前に動きます。人数が増えることも、減ることもあります。

食材は事前に仕入れ、当日まで仕込みが進んでいますので、直前のキャンセルは受ける側の負担が大きくなります。私たちの場合は、開催日から7日以内のキャンセルについて、料金の全額を頂戴することが多くなります。一方で、人数が増えるご連絡は、前日でも対応できることがほとんどです。

区が変わると、会場の型が変わります

東京でケータリングを頼むとき、区によって会場の性格がはっきり変わります。タワーレジデンスのパーティールームが中心の区もあれば、戸建てのご自宅が中心の区もあります。搬入経路も、火や水の条件も、それによって変わってきます。

区ごとの実務は、それぞれのページにまとめています。

Na Team Lab は、どの型にあたるのか

最後に、私たちがどの型でお受けしているのかを整理します。

Na Team Lab は、出張料理(着席コース)とケータリング(ビュッフェ形式)の二つをお受けしています。どちらも、恵比寿の店舗で仕込み、会場で仕上げる形です。器・グラス・カトラリー・調理道具まで持参し、片付けまで行って引き上げます。会場側でご用意いただくものはありません。

  • 着席コース:6〜16名さま/お一人 15,000円〜
  • 着席コース+ワインペアリング:6〜16名さま/お一人 22,000円
  • ビュッフェ形式:17名さま〜/お一人 8,000円〜
  • 1回のご依頼につき、最低 90,000円〜

表示価格には、税・サービス料・出張費がすべて含まれます。ビュッフェ形式は50名規模まで承っており、17名さまを超える会でも、会場の設備と席が整えば着席コースをご相談いただけます。対応エリアは基本的に東京都内で、都外や遠方は別途ご相談を承ります。ご相談は、2週間前までにいただけると余裕をもって組み立てられます。

まとめ

ケータリングとは何か。要点を整理します。

  • ケータリングとは、会場に料理と人を運び、その場で食事の提供まで行うサービスです。運ぶのは料理だけではありません
  • 語源の cater は「食事などを用意して供する」という意味で、もとは宴のために必要なものを揃える役目を指す言葉でした
  • 日本語のケータリングには、デリバリー・仕出し・ケータリング・シェフ帯同ケータリング・出張料理という五つの型が混在しています
  • 型を分ける軸は、現地に人が付くかと、料理がどこで仕上がるかの二つです
  • 選ぶときは、人数・席の有無・進行が読めるかどうかの順に見ると、迷いが少なくなります
  • 費用は「お一人あたり」と「1回あたりの最低額」の二段構えで見ます。相場の幅は、形式の違いです

言葉を決めることは、会の形を決めることでもあります。頼む前に「どの型を指しているのか」を一度そろえておくと、当日のずれはほとんどなくなります。

Na Team Lab の出張料理・ケータリングの詳細や、ご相談は公式LINEにてご案内しています。人数と日取り、会場の場所だけお聞かせいただければ、そこから適した形をご提案します。

よくある質問

ケータリングとデリバリーの違いは何ですか?

デリバリーは、店の厨房で仕上げた料理を届けて終わる形です。ケータリングは、会場に人が入り、仕上げ・盛り付け・配膳・片付けまでを行います。料理だけが運ばれるのか、それを食事として成立させる工程ごと運ばれるのかが違いです。

ケータリングは英語でどういう意味ですか?

英語の cater は「食事などを用意して供する」という意味の動詞です。catering は業として食事を供給することを広く指し、パーティー料理だけでなく、社員食堂の運営や機内食のような継続的な供給も含みます。日本語より範囲の広い言葉です。

ケータリングは個人でも頼めますか?

頼めます。ご自宅での記念日、両家の顔合わせ、ご家族のお祝いなど、個人のお客様からのご依頼は多くいただいています。Na Team Lab の場合、着席コースは6名さまから、ビュッフェ形式は17名さまから承っています。

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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