準備量の目安は、ワインを飲む方1人あたり750mlボトル0.7本です。10名なら7本を用意します。飲み切る量や推奨飲酒量ではなく、飲まない方の人数・会の長さ・飲み方で減らして調整し、水とノンアルコールも用意します。
ソースの好みから、あなたに好きになりやすいワインのタイプを約5分で探せます(無料・全30問)。ワイン診断はこちら
クリスマスや忘年会の食卓に、ローストビーフを一皿。見栄えがして、切り分けるだけで場が整う、この季節の定番です。では、何を開けるか。
「牛肉だから重い赤」と考えると、半分は当たりますが、半分は外れます。ローストビーフは、肉そのものより、ソースと焼き加減でワインが決まります。 同じ一本の塊肉でも、わさび醤油で食べるのと、濃い赤ワインソースをかけるのとでは、皿の上の主役が入れ替わるからです。
この記事では、まずソース別の早見表を出します。そのうえで、焼き加減との関係、温かいまま出すか冷めたまま出すかの違い、そしてパーティーで用意するワインの本数まで、出張料理の現場から順にお話しします。
結論:ローストビーフに合うワインは、肉そのものより「ソース」と「焼き加減」で選ぶと外れません。 和風のわさび醤油ならピノ・ノワール、肉汁のグレイビーならメルロー、濃い赤ワインソースならカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーが合います。 レアに近いほど軽めの赤が、しっかり火を入れるほど重めの赤が寄ります。 パーティーで出すなら、ワインは飲む方1人あたり0.7本(準備量)。10名なら7本が準備の目安ですが目安です。
あわせて、ワイングラスを形から選ぶとワインペアリングの組み立て方もご覧ください。
ソース別の早見表
ローストビーフのソースは、おおむね5つに分かれます。それぞれに寄る品種を並べます。
| ソース | 味わいの性格 | 合わせたい赤 | 診断での言葉 |
|---|---|---|---|
| わさび醤油 | 塩気と辛み、旨味。香りは引き算 | ピノ・ノワール | 赤い果実と軽やかさ |
| 肉汁のグレイビー | 肉の旨味とコク。まろやか | メルロー | プラムとまろやかさ |
| 赤ワインソース | 濃縮した果実と酸、ほろ苦さ | カベルネ・ソーヴィニヨン/シラー | カシスと力強さ/黒胡椒とスパイス |
| ホースラディッシュ | 辛みとクリームのコク | メルロー/樽熟成シャルドネ | プラムとまろやかさ/バターとコク |
| バルサミコの煮詰め | 甘みと酸。とろりと重い | メルロー | プラムとまろやかさ |
考え方の軸は、ひとつです。渋みを料理で受け止めるか、果実でそのまま飲むか。 ソースにコクと脂があるなら、渋みの強い赤を受け止められます。ソースが引き算の味つけなら、渋みの穏やかな赤を選んで、果実の側で合わせます。
わさび醤油にピノ・ノワールが寄るのは、この理屈です。醤油の旨味と塩気はまっすぐで、脂はほとんどありません。ここに渋みの強い赤を置くと、渋みだけが前に残ります。赤い果実と軽やかさを持つピノ・ノワールなら、肉の繊維の甘みと並びます。産地によってピノ・ノワールの性格がどう変わるかはピノ・ノワールの産地別の記事にまとめました。
グレイビーにメルローが寄るのは、ソース自体がすでにまろやかだからです。メルローは果粒が大きく果皮が薄いため、渋みの粒が丸い。ソースの丸さと、ワインの丸さが同じ方向を向きます。詳しい性格はメルローの記事で扱っています。
赤ワインソースにカベルネ・ソーヴィニヨンが寄るのは、産地の同調に近い考え方です。ソースの中に、すでに赤ワインの濃縮した味わいが入っている。グラスの中の味わいと、皿の上の味わいが、同じ素材から来ているわけです。カベルネ・ソーヴィニヨンの記事も合わせてご覧ください。
甘いソースは、渋みを強める
ここは、知っておくと失敗が減るところです。
甘い料理は、渋みを強めます。 バルサミコを煮詰めた甘いソース、照り焼きに寄せた味つけ、果実のジャムを添えたローストビーフ。こうした甘みのある皿に渋みの強い赤を合わせると、渋みが前に出て、口の中が乾く感じが残ります。
逆に、たんぱく質と脂は、渋みを和らげます。 肉の脂とたんぱく質がタンニンと結びつくので、渋みの角が取れるのです。そして塩は、苦みを和らげます。
だから、順序はこうなります。甘いソースを使うなら、渋みの穏やかなメルローへ寄せる。渋みの強いカベルネを開けたいなら、ソースの甘みを抑えて、塩と脂で受け止める。ソースのレシピとワインは、別々に決めるものではありません。
ソースを2種類以上並べるなら
ホームパーティーでは、ソースを数種類添えて、好きに取っていただく形が多いと思います。この場合、どの一本を開けるか。
私はいちばん幅の広い赤を1本置きます。メルローです。渋みが中程度でなめらかなので、醤油でもグレイビーでもバルサミコでも、大きく外れません。そのうえで、余裕があればもう1本を足します。甘いソースが多いなら軽いピノ・ノワール、濃いソースが中心ならカベルネ。
ソースの数に合わせてワインを増やすのではなく、幅の広い1本を軸にして、端の2つを補う。 これが、本数を抑えながら外さない組み方です。
焼き加減で、ワインの重さを合わせる

ソースが決まったら、次は焼き加減です。こちらは「重さの同調」の話になります。
| 焼き加減 | 肉の状態 | 寄るワインの重さ |
|---|---|---|
| レアに近い | 中心が赤く、しっとり。鉄分と甘みが前に | 軽め〜中程度の赤(ピノ・ノワール、軽めのメルロー) |
| ミディアム | 火が入って肉の旨味がまとまる | 中程度の赤(メルロー) |
| しっかり火を入れる | 水分が抜け、香ばしさと繊維感が立つ | 中程度〜重めの赤(カベルネ、シラー) |
レアに近いローストビーフは、見た目は赤くても、味わいの総量は意外に軽いものです。しっとりした食感と、ほのかな鉄分と甘み。ここに重い赤を置くと、肉が負けます。
一方、しっかり火を入れた断面は、水分が抜けて繊維が立ち、香ばしさが強く出ます。この香ばしさが、重めの赤を支えます。
火入れは、二段で入れる
ここからは、作る側の話です。私がローストビーフを焼くとき、火は二段で入れます。
まず強火で表面に焼き色をつける。メイラード反応を起こすための、専用の火入れです。そのあと弱火でじっくり加熱して、中心に火を通す。この順序にすると、外側の香ばしさを損なわずに、中は柔らかなロゼ色に仕上がります。
この一段目の香ばしさが、ワイン選びにそのまま効いてきます。メイラード反応が生む香ばしさは、ワインの樽の香りと同じ帯域で響き合うのです。バニラ、スパイス、焙煎の香り。これは果実からは出てきません。樽の由来です。
つまり「肉だから赤」ではなく、「肉の香ばしさだから、樽のある赤」という一歩細かい設計ができます。表面をしっかり焼いたローストビーフには、樽の効いた赤が寄る。これは魚にも同じことが言えて、香ばしく焼いた魚には樽の効いた白が寄ります。
難しいのは、火入れの着地点です。火を入れすぎれば焦げるか、肉がぱさつきます。足りなければ香ばしさが出ません。香ばしさと水分・食感のバランスが、ピークの一点にある。 そこを毎回探り当てるのが、この料理の難しさだと思っています。
温かいまま切るか、冷めたまま出すか
同じローストビーフでも、出し方で合わせ方が変わります。ここは、あまり語られていないところです。
温かいまま切り分ける場合(着席のコース、切り分けのサービス)
香りが立ち上がります。脂は液体のまま舌に乗り、肉の旨味がまっすぐ届きます。ワインも、香りと厚みのある側が受け止めます。しっかりした赤なら16〜18℃が出発点。「赤は常温」と言われますが、しっかりした赤は16〜18℃を出発点にし、日本の夏の室温とは区別して考えます。日本の暖房の効いた部屋に置いた赤は、適温を大きく超えていることがあります。
冷めたまま薄切りで出す場合(ビュッフェ、前菜の一皿)
薄切りで冷製にしても、ローストビーフはおいしい料理です。ただし、冷えると脂が固まり、香りの立ち上がりが弱まります。味わいの総量が一段下がるので、ワインも一段軽い側へ。渋みの穏やかな赤を13〜15℃で、あるいは辛口のロゼやスパークリングという選択も成立します。
ワインが重いと感じたら2℃下げ、痩せて感じたら2℃上げる。グラスを手で短く包むと温度を少し上げられます、氷水に3分から5分浸ければ2℃下がります。変化は10分から15分で体感できます。温度計は要りません。詳しくはワインの適温の記事に書きました。
もうひとつ、温度差そのものを使う手もあります。温かい皿のあとに冷たい一杯が来ると、冷たさがより際立ちます。温と冷は、脂と酸、甘と塩と並ぶ対比のひとつです。温かく切り分けたローストビーフに、しっかり冷やした辛口のロゼを合わせる。定石からは外れますが、記憶に残る組み合わせになります。
白やロゼ、スパークリングを合わせるなら
赤以外も、十分に成立します。3つの道筋をお伝えします。
樽熟成のシャルドネ
バターとコクを持つ白です。先ほどの「香ばしさは樽と響く」という理屈で、焼き面の香りと手を繋ぎます。ホースラディッシュのクリームを添えるなら、乳脂肪の方向でも揃います。
辛口のロゼ
冷製の薄切りに、いちばん使いやすい一本です。赤の果実味と、白の酸の両方を持っているので、ソースが複数並ぶビュッフェでも受け止める幅があります。
スパークリング
乾杯から通して飲みたい日に。泡と酸が脂を切るので、脂のある部位でも口がリセットされます。ホームパーティー全体のワインの組み立てはホームパーティーのワインペアリングの記事にまとめています。
一方で、避けたほうがよい白もあります。甲州のような軽やかで飲みやすい白は、肉料理に合わせると、その良さが消えてしまいます。 これは日本ワインのメーカーズディナーを重ねてきて、はっきり分かったことです。甲州は前菜から軽めの魚料理に置くと本当によく働く品種で、ローストビーフの隣に置く一本ではありません。軽い白を選ぶなら、ローストビーフではなく、その前の一皿に合わせてください。
パーティーで出すときの、ワインの本数
ここは、よくご相談をいただくところです。私たちが組むときの目安をお伝えします。
ワインは、飲む方1人あたり0.7本(準備量)。10名なら7本が準備の目安ですです。
飲む方が多い会や、3時間を超える長い会では、少し足してください。逆に、ノンアルコールの方が多い会では減ります。この数字は献立と同じで、参加者の属性で動きます。
グラスについても、ひとつだけ。お一人1脚が最低ラインです。 ペアリングで型を替えていくなら、注ぐ杯数の分だけ脚数が要ります。グラスが足りないと、同じ一本でも表情が出ません。注ぐ量の目安はワインを注ぐ量の記事で扱っています。
料理の量についても、考え方は共通です。立食なら30名規模で10品ほどをお出しすることが多いのですが、これも一概には言えません。若い男性が多い会なら炭水化物を多めにして「お腹いっぱい」を目指し、ワインを楽しむ会なら炭水化物を減らして量より質で組みます。量は、少し余るくらいを見込んで持参します。
ビュッフェで、いちばん早くなくなる皿
正直なところをお話しします。ビュッフェ形式の会では、ローストビーフをお出しすることが多く、これはすぐになくなります。
メインの肉料理は、やはり反応が上がります。立食の会では、できる限りローストビーフでカジュアルに楽しんでいただくことを目指していて、その場で切り分けてお渡しする形にすることもあります。
使う牛肉のひとつが、石垣島の美崎牛です。年間300頭しか出荷されないブランドで、都内では3店舗にしか卸されていません。Na Team Labはそのうちの1つです。ビュッフェの場では、この牛をローストビーフにしてお出しすることが多く、フィレの部分はステーキでお出しする場合もあります。いつでもご用意できるとは限らないため、ご相談の際にお伝えしています。
あなたのタイプなら、ローストビーフにはこの1本
好みの品種タイプが分かっていれば、ソースを逆から決めることもできます。診断の赤5タイプと白の一部を、ソースに重ねておきます。
| あなたのタイプ | ローストビーフなら、このソースで |
|---|---|
| ピノ・ノワール(赤い果実と軽やかさ) | わさび醤油、塩と胡椒だけ。レアに近い焼き加減で |
| メルロ(プラムとまろやかさ) | 肉汁のグレイビー、バルサミコ、ホースラディッシュ |
| シラー(黒胡椒とスパイス) | 黒胡椒をきかせたソース、クミンやスパイスの味つけ |
| カベルネ・ソーヴィニヨン(カシスと力強さ) | 濃い赤ワインソース。しっかり火を入れた断面で |
| ネッビオーロ(バラと力強い酸) | きのこのソース、トリュフを添えて |
| 樽熟成シャルドネ(バターとコク) | 冷製の薄切りに、クリーム系のソースで |
自分がどのタイプなのかは、5分のワイン診断で確かめられます。香りの7分類と、酸味・甘み・渋み・ボディの4軸で、どの方向が合うかが出ます。結果に合わせた品種ガイドは公式LINEでご案内しています。
診断の結果は、好みに近い方向を探す目安です。グラスを並べて飲み比べて、はじめて分かります。
出張料理でローストビーフを頼むなら
ご自宅やタワーレジデンスのパーティールーム、オフィスへ伺って、コースを仕立てる出張料理をしています。クリスマスや忘年会の時期は、肉料理を軸に組むご相談が増える季節です。
コースのみでお一人15,000円から、ワインペアリングをつける場合はお一人22,000円。6名さまから16名さままで、一皿ずつお出しする形です。17名さまを超える集いには、お一人8,000円からのビュッフェ形式でご提案しています。法人の会についてはパーティー・ケータリングのページもご覧ください。
食材・器・グラス・カトラリーはすべて持参します。ワイングラスも人数分お持ちしますので、お客様の手をわずらわせる工程はひとつもありません。
お客様がご用意されたワインに、料理を合わせる設計もできます。事前にワインリストを共有いただければ、その一本に寄せてコースを組みます。恵比寿の店では、ワインの持ち込み料は無料で、本数の上限もありません。手配した会場で開く場合も同じです。
対応エリアは基本的に東京都内で、都外・遠方も別途ご相談にて承っています。ご相談は2週間前までにいただけると、仕込みから設計できます。クリスマスの献立の考え方はクリスマスパーティーの料理の記事と自宅のクリスマスディナーの記事にまとめました。
まとめ
ローストビーフに合うワインは、肉ではなくソースと焼き加減で決まります。
- わさび醤油のような引き算の味つけには、渋みの穏やかなピノ・ノワール
- 肉汁のグレイビーには、粒の丸いメルロー
- 濃い赤ワインソースには、カベルネ・ソーヴィニヨンやシラー
- 甘いソースは渋みを強めます。たんぱく質と脂は渋みを和らげます
- レアに近いほど軽めの赤、しっかり火を入れるほど重めの赤が寄ります
- 表面の香ばしさは、樽の香りと同じ帯域で響き合います
- 冷製の薄切りなら、辛口のロゼやスパークリングも成立します
- パーティーのワインは、飲む方1人あたり0.7本(準備量)。10名なら7本が準備の目安ですが目安です
今年のクリスマスは、ワインを決める前にソースを決めてみてください。順序を入れ替えるだけで、選ぶ一本が変わります。
よくある質問
ローストビーフに白ワインは合いますか?
合わせられます。樽熟成のシャルドネのように、香ばしさと厚みのある白なら、ローストビーフの焼き面の香りと響き合います。冷製で薄切りにして、柑橘やオリーブオイルで食べる場合は、辛口のロゼやスパークリングもよく寄ります。
1本だけ選ぶなら、どの品種ですか?
メルローをおすすめします。渋みが中程度でなめらかなので、わさび醤油でもグレイビーでも大きく外れません。ソースを数種類並べるパーティーでは、いちばん受け止める幅が広い一本になります。
10人のパーティーなら、何本用意すればいいですか?
10名なら7本が準備の目安です。飲む方1人あたり0.7本(準備量)という換算で、私たちは組んでいます。飲む方が多い会や、長い会では少し足してください。グラスは、お一人1脚が最低ラインです。
一杯の違いを、料理とともに確かめる。
少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

