レシピに「エシャロット」と書かれている。買いに行ったら、見つからない。
棚にあったのは「エシャレット」という、細長い白い根のついた野菜でした。名前がほとんど同じですから、これだろうと思って買って帰る。家で刻んでみると、どうも様子が違う。香りが鋭くて、らっきょうに近い。
この二つは、別の野菜です。そこを混同したまま作ると、仕上がりが思っていたところに着きません。
この記事では、エシャロットとは何かを整理したうえで、エシャロットの代用を料理別に分けてお伝えします。加熱するソースと、生で使うドレッシングでは、置き換える先が変わります。量の目安と、代用したときに何が変わるのかまで書きました。
結論:エシャロットの代用は、加熱するか生で使うかで分けると近づきます。 この野菜は、玉ねぎより甘く香りが繊細な、小さな玉ねぎの仲間です。日本で売られている「エシャレット」とは別のものです。 加熱するソースなら、玉ねぎにごく少量のにんにくを足します。生で使うビネグレットなら、赤玉ねぎを薄切りにして水にさらします。 量は、エシャロット1個を玉ねぎ1/4個で換算してください。
エシャロットとは、小さな玉ねぎの仲間です
エシャロットは、玉ねぎより甘く、香りが繊細な、小さな玉ねぎの仲間です。フランス料理では、ソースの出発点として使われることが多い野菜です。
姿は小ぶりで、細長い形をしています。皮をむくと、いくつかの房に分かれているものもあります。刻むと玉ねぎに似た香りが立ちますが、玉ねぎほど強く主張しません。甘さが先に来て、辛味が後ろに下がる。その配分が、ソースに使われる理由です。
ここで、名前の似た野菜を整理しておきます。一般には、次のように区別されています。
| 名前 | 正体 | 使われ方 |
|---|---|---|
| エシャロット | 小さな玉ねぎの仲間 | 刻んでソースやドレッシングの土台にする |
| エシャレット | らっきょうを若採りしたもの | 生のまま味噌などをつけて食べる |
| 玉ねぎ | 一般的な玉ねぎ | 炒める、煮る、生で薄切りにする |
| 赤玉ねぎ | 紫色の玉ねぎ | 生のサラダやマリネに使う |
日本で「エシャレット」として売られているのは、らっきょうの若採りです。フランス料理のエシャロットとは、植物として別のものです。名前が近いので入れ替わって流通した時期があり、今も混同されやすくなっています。
エシャロットが実際にどう効いているのか。わかりやすい例がブールブランです。白ワインとビネガー、刻んだエシャロットを煮詰めて、冷たいバターを少しずつ加えて乳化させる。ロワール生まれの、バターの乳化ソースです。この最初の煮詰めの段階で、甘さと香りが酸の中に溶けていきます。
フレンチのソース全体の見取り図はソースの地図にまとめました。エシャロットは、その幹のかなり手前に立っている材料です。
料理別に、代用先を変えてください

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。エシャロットの代用は、ひとつの野菜で決まりません。料理が加熱するものか、生のままかで、置き換える先が変わります。
| 料理 | 代用に使うもの | 入れ方 |
|---|---|---|
| 加熱するソース | 玉ねぎ + にんにく | にんにくはごく少量。刻んで一緒に煮詰める |
| 生のビネグレット | 赤玉ねぎ | 薄切りにして水にさらしてから使う |
| 煮込み | 玉ねぎ | 刻んで、香味野菜の一員として入れる |
| 仕上げに散らす | 赤玉ねぎ か 長ねぎの白い部分 | 細かく刻み、水にさらして辛味を抜く |
加熱するソースなら、玉ねぎにごく少量のにんにくを
ソースのように火を入れるものには、玉ねぎを使い、そこへごく少量のにんにくを足します。
玉ねぎだけだと、甘さは出ますが香りの奥行きが足りません。エシャロットが持っている「甘さの後ろにある少しの鋭さ」が抜けてしまいます。そこを補うのが、にんにくです。
量はごく少量にしてください。刻んだにんにくをひとつまみ、という感覚で考えます。入れすぎると、にんにくの料理になります。代用として足すなら、香りの輪郭を薄く縁取るくらいで止めます。
生のドレッシングなら、赤玉ねぎを水にさらす
生で使う場合は、方向が変わります。赤玉ねぎを薄切りにして、水にさらしてから使ってください。
生のエシャロットは、辛味が穏やかです。その穏やかさを玉ねぎで再現するには、辛味を抜く手が要ります。水にさらすと、表面の辛味成分が流れて角が取れます。さらしすぎると香りも抜けますので、短めにして、味を見て決めてください。
赤玉ねぎを選ぶ理由は、色と甘さです。断面の紫がドレッシングの中で見えると、仕上がりがきれいに映ります。白い玉ねぎより辛味が穏やかなものが多い、という点も助けになります。
ドレッシングやマリネの組み立て方そのものは、マリネは、酸と油と塩の設計ですに書きました。マリネ液は酸1、味付け1、油1を基本にしています。どれかが突出すると、その方向に振り切れて戻せなくなります。
煮込みなら、玉ねぎだけでも足ります
ポトフやシチューのように、長く煮込むものであれば、玉ねぎだけで十分です。
長時間の加熱で、香りの繊細な違いはならされていきます。そこへにんにくを足すと、かえって主張が出すぎることがあります。煮込みは、エシャロットの代用にいちばん寛容な料理です。
量は、エシャロット1個を玉ねぎ1/4個で換算します
分量の目安を書いておきます。エシャロット1個を、玉ねぎ1/4個と考えてください。
レシピに「エシャロット2個」とあれば、玉ねぎ半分ほどになります。エシャロットは小さいので、個数だけを見て玉ねぎを同じ数用意すると、量が大きく増えてしまいます。
ただし、これは出発点です。玉ねぎは品種や季節で甘さと水分が変わります。新玉ねぎの時期なら、水分が多くて甘さが前に出ます。同じ重さでも、煮詰めたときの残り方が違ってきます。
ですから、最初は換算どおりに入れて、味を見ながら決めてください。足りなければ足せますが、入れすぎたものは戻せません。この順序は、塩のときと同じ考え方です。塩は足りなければ素材の味が立ち上がらず、過ぎれば素材の個性が消えます。塩とうま味の関係は塩は、うま味を彫る道具ですに詳しく書きました。
手に入る場所と、買ってからの置き方
エシャロット自体を探す場合の話も、少しだけ書いておきます。
扱いがあるのは、輸入食材を置いている食料品店や、品ぞろえの広い生鮮売り場です。見つからないときは、売り場で「エシャロット」と「エシャレット」のどちらなのかを確かめてください。細長い白い根に葉がついていれば、それはエシャレットです。
保存は、玉ねぎと同じ考え方で足ります。風通しのよい、暗くて涼しいところに置いてください。皮がついたままなら、しばらくもちます。刻んだものは香りが飛びやすいので、使う直前に刻むほうが仕上がりがよくなります。
代用で変わること、変わらないこと
代用を考えるときに、ここを分けて持っておくと判断が速くなります。
変わらないのは、構造です。 エシャロットがソースでしている仕事は、甘さと香りを酸や油の土台に入れることです。玉ねぎでも赤玉ねぎでも、その仕事は果たせます。ブールブランの白ワインとビネガーを煮詰める工程も、玉ねぎで成り立ちます。
変わるのは、香りの細さです。 エシャロットの香りは、玉ねぎより細くて、角が立ちません。玉ねぎで代用すると、香りの線が少し太くなります。これは失敗ではなく、別の仕上がりです。
もうひとつ、変わるのは濃度の出方です。玉ねぎは水分が多いので、同じ時間煮詰めても残る水分が違います。ゆるいと感じたときの手は、煮詰める以外にもあります。濃度のつけ方は四通りです。乳化、バター、糖分、そして温度帯。温かい状態より、冷やしたほうが濃度がつきます。バターを足す、少し糖分を入れる、冷やす。この三つを覚えておくと、代用した日の仕上げが楽になります。
そして酸について、ひとつ付け加えます。エシャロットを使うソースやドレッシングは、たいてい酸と組みます。酸はいろいろな酸をブレンドすると、複雑さが出ます。 ワインビネガーだけでなく、レモンを少し足す。りんご酢を混ぜる。そうすると、エシャロットの香りが細くないぶんを、酸の層で埋められます。
素材の置き換えは、味見の順番で決まります
代用がうまくいくかどうかは、材料の知識より味見の順番で決まります。
私が教室でお伝えしているのは、レシピに書かれていない工程、つまり味見の話です。レシピ通りに作ってもおいしくならない原因は、腕やセンスではありません。鍋の前で何度も味を見て、そのたびに次の一手を決める。その工程が書かれていないからです。
塩を入れる前の味。塩を入れた瞬間の変化。そして完成形。この三つの変わり目を、全員で味見して確かめていきます。代用するときも同じです。入れる前と、入れた後を比べる。足りないものが甘さなのか、酸なのか、塩なのかを言葉にできれば、手元の材料で届きます。
各回8名、1回6,000〜12,000円(税込・ドリンク込み)、入会金なしの1回完結です。基本は12時から約2時間。開催日時・テーマ・料金は回ごとに予約ページでご確認ください。スーパーで手に入る食材と家庭のIHを基本に、季節の特別な食材を使う回もあります。
フレンチの会で扱っているのは、ソースと火入れです。これまではイタリアン寄りの会が多くなっていました。家で再現しやすいからです。今後はフレンチの会を増やしていく予定です。単発ですので、順番に縛られることはありません。惹かれた回にいらしてください。
開催日程とお申し込みは料理教室のページにございます。ご質問やご相談は公式LINEでも承っております。
まとめ
エシャロットの代用は、料理の性格で分けると迷いません。
- エシャロットは、玉ねぎより甘く香りが繊細な、小さな玉ねぎの仲間です
- 日本の「エシャレット」はらっきょうの若採りで、別の野菜です
- 加熱するソースは、玉ねぎ + ごく少量のにんにくで代用します
- 生のビネグレットは、赤玉ねぎを薄切りにして水にさらして使います
- 煮込みなら、玉ねぎだけでも足ります
- 量はエシャロット1個を玉ねぎ1/4個で換算し、味を見て決めてください
- 代用しても構造は変わりません。変わるのは香りの細さと濃度の出方です
- ゆるいと感じたら、バター・糖分・温度帯で濃度を作れます
次にレシピでエシャロットを見かけたら、「これは火を入れるのか、生で使うのか」を先に確かめてみてください。それだけで、置き換える先が決まります。
よくある質問
エシャロットの代用に長ねぎを使ってもよいですか?
仕上げに散らす用途であれば使えます。白い部分を細かく刻み、水にさらして辛味を抜いてください。ただし加熱するソースの土台には向きません。長ねぎは火を入れると甘さが強く出て、香りの方向がエシャロットから離れていきます。
乾燥エシャロットは生のエシャロットの代わりになりますか?
一般には、香りづけとしては使えるとされています。ただし生のものが持つ水分と甘さは入っていませんので、ソースの土台としては物足りなくなります。玉ねぎを刻んで量を補い、乾燥のものは香りの補強として少量足す。その組み合わせが現実的です。
エシャロットは冷凍できますか?
一般には、刻んで冷凍する方法が知られています。ただし解凍すると水が出て、香りも弱くなります。煮込みに入れる用途なら差は小さくなりますが、生のドレッシングには向きません。香りを使いたい料理には、その日に刻んだものをお使いください。
理由まで持ち帰れる、八席の料理教室。
恵比寿の厨房で、塩と火入れを実演と一皿から学べます。

