レシピに「ブーケガルニ」と書かれている。聞いたことはあるけれど、家にはない。
スーパーの乾物の棚を見ても、そういう名前の商品は見つかりません。そこで「ブーケガルニ 代用」と調べると、「ローリエで代用できます」という答えが並びます。たしかに近づきます。けれど、それで何が足りているのか、何が足りていないのかは分かりません。
この記事では、ブーケガルニの代用を、役割から考えます。ブーケガルニが煮込みの中でしている仕事は、ひとつに絞れます。そこが分かると、手元のもので組み直せます。
あわせて、生のハーブで束ねる方法と、乾燥ハーブで作る方法、ローリエ1枚だけで済ませるときの考え方も書きました。最後に、私が店でハーブをどう扱っているのかもお伝えします。
結論:ブーケガルニの代用は、家にあるハーブを束ねて、あとで取り出せる形にすれば足ります。 ブーケガルニは、ローリエ・タイム・パセリの軸などを束ねた香草の束です。煮込みに香りの土台をつけ、最後に取り出せることが役割です。 市販品がなければ、ローリエ1〜2枚とタイム数本を糸で縛るか、乾燥ハーブを小さじ1/2ずつお茶パックに入れれば代わりになります。 大切なのは量より、どのくらいの時間入れておくかです。
ブーケガルニとは、取り出せる香草の束です
ブーケガルニは、数種類の香草を束ねて、煮込みに入れるものです。フランス語で「ブーケ」は束、「ガルニ」は添えるという意味を持っています。名前のとおり、香りの花束です。
役割は、はっきりしています。煮込みに香りの土台をつけ、最後に取り出せることです。
この後半が大事です。塩や砂糖は、入れたら取り出せません。香辛料の粉も、液体に溶けて残ります。けれどブーケガルニは、束ねてあるので引き上げられる。つまり入れた香りを、あとで止められる調味なのです。
だからこそ、調整できる変数が二つあります。どのくらいの時間入れておくかと、どの種類を使うかです。私が店で煮込みを作るときも、この二つで加減しています。量を細かく量ることより、この二つのほうが仕上がりを動かします。
煮込みという調理そのものの考え方は、煮込むとは、火と時間で素材をほどくことにまとめました。
基本の組み合わせと、店で足すもの

まず、基本形です。一般にブーケガルニの軸とされているのは、次の三つです。
| 材料 | 役割 | 入れ方 |
|---|---|---|
| ローリエ | 香りの柱。少量で全体をまとめる | 1〜2枚 |
| タイム | 樹脂のような香り。肉と相性がよい | 数本 |
| パセリの軸 | 青い香り。葉より軸を使う | 数本 |
| セロリ | 甘さと青さ。だしの厚みが出る | 1本を短く切る |
| 長ねぎの青い部分 | 香りと甘さ。捨てる部分を使える | 1本ぶん |
上の三つが基本で、下の二つは私が足しているものです。セロリと、長ねぎの青い部分。どちらも普段は切り落とす部分ですが、煮込みに入れると香りと甘さを出します。
だしを取るときも、同じ考え方をしています。鶏のだしを引くときに、鶏だけでは取りません。昆布を入れたり、トマトを入れたり、セロリや玉ねぎを入れたりします。鶏だけの味わいより、野菜と鶏のうまみを重ねたほうが、味わいの広がり方が増すからです。
ここには、うま味の仕組みも関係しています。昆布やトマトはグルタミン酸、肉や魚はイノシン酸という、別の系統のうま味を持っています。この二つを組み合わせると、単独で使ったときの合計を大きく超える効果が生まれます。相乗効果の程度は、組み合わせや濃度によって変わります。 だしの取り方は鶏ガラ出汁は、澄ませるか濁らせるかを先に決めるに、うま味の仕組みは旨味とは、重ねて増える味ですに書きました。
生のハーブで手作りする
生のハーブが手に入るなら、束ねるのがいちばん簡単です。
ローリエ1〜2枚と、タイム数本。これを重ねて、料理用の糸で縛ります。パセリの軸があれば一緒に入れてください。セロリの茎や長ねぎの青い部分を使う場合は、それで包むように巻いてから縛ると、ばらけません。
縛るときのこつは、糸を長めに残すことです。鍋の取っ手に端を結んでおくと、引き上げるときに探さずに済みます。煮込みの中で散らばってしまうと、取り出すのに手間がかかります。
ローリエの枚数は、鍋の大きさより煮る時間で考えてください。長く煮るなら1枚で足ります。短時間なら2枚。葉を折ったり切ったりすると香りが出やすくなりますが、そのぶん強く出ますので、最初は折らずに入れるほうが扱いやすくなります。
生のハーブを使う理由は、フレッシュ感です。私も基本的には生を使っています。乾燥のものは香りが落ち着いていて、長い煮込みには向きますが、立ち上がりの軽さは生のほうが出ます。
乾燥ハーブとお茶パックで作る
生のハーブがない場合は、乾燥ハーブで組めます。
棚にある乾燥のローリエ、タイム、オレガノなどを、小さじ1/2ずつお茶パックに入れる。それを口を閉じて鍋に落とせば、ブーケガルニの代わりになります。茶こし用の袋でも、だしパックでも同じです。
お茶パックを使う理由は、取り出せるようにするためです。乾燥ハーブをそのまま振り入れると、煮込みの中に散って、最後まで残ります。葉が口に入ると、舌に残って邪魔になります。取り出せる形にするという一点を守れば、乾燥でも役割は果たせます。
量は、小さじ1/2ずつが出発点です。乾燥ハーブは水分が抜けているので、同じ重さなら生より香りが濃く出ます。生と乾燥の換算については「生は乾燥の3倍」といった目安が一般に言われていますが、種類によって差があります。最初は少なめにして、途中で味を見て決めてください。
ローリエ1枚だけで代用するなら
手元にローリエしかない、という場合もあると思います。それでもローリエ1枚だけで代用になります。
ローリエは、ブーケガルニの中でいちばん強い柱です。タイムやパセリは、その柱の周りに細い線を足している役割です。柱が立っていれば、煮込みの香りはまとまります。
ただし、足りないものは出ます。タイムが持っている樹脂のような香りと、パセリの軸の青さです。そこを補いたいときは、長ねぎの青い部分を一緒に入れてください。青い香りの部分は、これでかなり埋まります。
それでも物足りないと感じたら、仕上げに別の手を使います。煮込みを皿に移してから、刻んだパセリや、こしょうを挽いて足す。煮込みの中で足りなかった香りを、口に入る直前に乗せる形です。この考え方は、ハーブの使い方全体に通じます。タイムの扱いはタイムは、効かせすぎないほうがいいに詳しく書きました。
入れる前に、入れるかどうかを決めています
ここが、私の実際の判断です。レシピ媒体はたいてい「ハーブをもっと使おう」と書きます。私は逆の順番で考えています。
ハーブ類は、入れるのか、少し利かせるのかを、先に決めています。 判断の基準は、ワインです。基本的にワインに合わせた料理を作るので、料理の主張が強くなりすぎるとワインの味わいが消えてしまいます。ハーブ類は食材としての主張が強いものですから、ワインを選ぶ段階で、入れるかどうかを決めておきます。
ブーケガルニも同じです。煮込み料理で使うことはありますが、ハーブ感が強くなりすぎないように、入れておく時間と使う種類を選んでいます。どんな仕上がりにしたいか。そこから逆算して決めます。
量についても、同じ方向です。肉に対してハーブが多すぎると、ハーブ感が強くなりすぎて、肉のうまみを感じにくくなります。軽く香りづけをするくらいのイメージでいたほうがよいと思います。数値でお伝えできるのは、肉200gに対して小枝1本という目安です。
そして、合わないハーブというものはありません。合わない場面があるのです。ハーブが料理より主張してしまう場合。繊細な食材を、繊細な料理として楽しみたい場合。そういう場面では、入れないという選択のほうが料理に合います。
塩も同じ考え方です。足りなければ素材の味が立ち上がらず、過ぎれば素材の個性が消えます。一度過剰になった塩は戻すことができません。香りも同じで、入れすぎたものは抜けません。だから「入れるかどうか」を先に決めます。
香りの使い方は、一度見ると早いです
香りの加減は、文章よりも鍋の前で見たほうが早く入ります。どのくらいで引き上げるのか、入れた直後と引き上げた後で何が変わるのか。味を見れば、言葉より確かに分かります。
各回8名、1回6,000〜12,000円(税込・ドリンク込み)、入会金なしの1回完結です。基本は12時から約2時間。開催日時・テーマ・料金は回ごとに予約ページでご確認ください。スーパーで手に入る食材と家庭のIHを基本に、季節の特別な食材を使う回もあります。
フレンチの会で扱っているのは、ソースと火入れです。これまではイタリアン寄りの会が多くなっていました。家で再現しやすいからです。今後はフレンチの会を増やしていく予定です。単発ですので、順番に縛られることはありません。惹かれた回にいらしてください。
開催日程とお申し込みは料理教室のページにございます。ご質問やご相談は公式LINEでも承っております。
まとめ
ブーケガルニの代用は、材料探しではなく、役割の再現です。
- ブーケガルニは、香草を束ねて煮込みに入れ、最後に取り出すものです
- 役割は香りの土台をつけ、あとで取り出せること。ここを満たせば代用になります
- 基本はローリエ・タイム・パセリの軸。店ではセロリと長ねぎの青い部分を足します
- 生ならローリエ1〜2枚とタイム数本を糸で縛る
- 乾燥なら小さじ1/2ずつをお茶パックに入れる
- ローリエ1枚だけでも代用になります。青さは長ねぎで補えます
- 調整するのは量より、入れておく時間と使う種類です
- ハーブは入れるかどうかを先に決める。合わない食材ではなく、合わない場面があります
次に煮込みを作るときは、「いつ引き上げるか」を決めてから入れてみてください。それだけで、香りの加減が自分の手に戻ります。
よくある質問
ブーケガルニは入れっぱなしでもよいですか?
入れっぱなしにはしないほうが扱いやすくなります。束ねてあるのは、香りが入ったところで引き上げられるようにするためです。長く入れていると香りが強く出て、素材のうまみを感じにくくなります。仕上げたい方向が決まったら、取り出してください。
ブーケガルニは何分くらい煮ればよいですか?
分数ではなく、香りの出方で決めてください。煮汁を少し味見して、ハーブの香りが立ってきたら引き上げる、という判断のほうが確かです。長く煮る料理では、途中で取り出してから煮込みを続ける形になります。短い煮込みでは、最後まで入れたままでも強く出すぎません。
ハーブソルトでブーケガルニの代わりになりますか?
香りだけを見れば近づきますが、二つ違いがあります。ひとつは塩分が入ることで、塩を最後に決められなくなる点です。もうひとつは取り出せない点です。使う場合は、料理全体の塩の総量から逆算して、ほかの塩を減らしてください。
理由まで持ち帰れる、八席の料理教室。
恵比寿の厨房で、塩と火入れを実演と一皿から学べます。

