「ワインスクールに通えば、ワイン好きの知り合いができるだろうか」。そう考えて検索された方は、資格が欲しいわけではないのだと思います。仕事の外側に、同じものを面白がれる人がいてほしい。動機としては、とても自然なものです。
ただ、半年分の受講料を払う前に、確かめておきたいことがあります。そのクラスで、受講者どうしが言葉を交わす時間があるかどうかです。ワインスクールに出会いがあるかどうかは、講師の人柄でも、通う人の性格でもなく、授業の形式でほとんど決まります。
私自身、ワインスクールに通っていた時期があります。資格は取りませんでした。いまは東京・恵比寿で八席のレストランを営みながら、毎月ワイン会と料理教室を開いています。現場では年間およそ2,000種のワインをテイスティングしています。教わる側と、場を開く側の両方を経験したうえで、この記事を書いています。
結論:ワインスクールで出会いがあるかは、授業の形式で決まります。 資格対策を中心にした座学のクラスでは、受講者どうしが話す時間はあまり多くありません。少人数でテイスティングが中心にあり、同じ顔ぶれで何回か続き、懇親会のあるクラスなら、知り合いはできやすくなります。 知識よりも人と過ごす時間が目的なら、半年通うスクールより、1回から参加できるワイン会のほうが合う場合もあります。 この記事では、スクールの三つの型と、申し込む前に確認したい四点を整理します。
あわせて、ワインスクールと料理教室の違いとワイン会の流れと一人参加もご覧ください。
ワインスクールは、目的の違いで三つの型に分かれます
ひとくちにワインスクールといっても、中身は同じではありません。東京で募集されている講座を目的で分けると、おおよそ三つの型になります。
| 型 | 主な目的 | 参加の形 | 同じ顔ぶれが続くか |
|---|---|---|---|
| 資格対策コース | 試験範囲を体系的に学ぶ | 一定期間、決まった回数に通う | 続くことが多い |
| 趣味の講座 | 味や産地への理解を広げる | 複数回またはテーマ別 | 講座による |
| 単発セミナー | 一つのテーマを味わう | 一回で完結 | 続くとは限らない |
募集条件や料金は学校・開講期・クラスによって変わります。申し込み前に各校の公式案内で確認してください。この記事で比べたいのは価格ではなく、同じ顔ぶれが何回続くかという授業の形式です。私たちのワイン会でも、何度か通ううちに顔なじみになる方がいらっしゃいます。
逆にいえば、単発セミナーは入口としては軽やかですが、そこで生まれた会話が次につながる設計にはなっていません。1日で完結することの価値と、続かないことの限界は、同じ一つの性質の裏表です。
知り合いができやすいクラスの、四つの条件

形式で決まる、と書きました。では、どういう形式なら人と知り合えるのか。場を開く側として見てきた範囲では、次の四つが揃っているかどうかで、ずいぶん変わります。
一つ目、少人数であること
人数が増えるほど、一人あたりが口を開く時間は短くなります。30人の教室で全員と話すことはできません。目安として、一つの卓を全員で囲める人数かどうかを見てください。
私たちの料理教室は8名限定で、一つのテーブルを8席で囲む形にしています。カウンターに横並びで座るのではなく、同じ卓を全員で囲む。この配置にしているのは、そのほうが仲良くなると考えているからです。人数の話は、席の配置の話でもあります。
二つ目、テイスティングが中心にあること
手元にグラスがあると、話す材料を探さなくてよくなります。「これ、さっきのより濃いですね」。その一言で会話は始まり、しかも全員が同じものを飲んでいますから、返事に困る人がいません。
座学だけの回では、受け取る情報の量は増えます。ただ、口を動かす機会はあまり増えません。知識を得る目的なら効率のよい形式ですし、そこに優劣はありません。目的が「人」のほうにあるなら、飲む時間が組み込まれた形式を選ぶということです。
三つ目、同じメンバーで何回か続くこと
一度きりの場で親しくなるのは、どなたにとっても難しいことです。2回目に同じ顔を見つけたとき、人は初めて「知っている人だ」と思います。
前の章で触れたとおり、3回くらい通うと顔なじみになってくる、という方がいらっしゃいます。裏を返せば、1回で判断しないほうがいいということでもあります。続けて通えるクラスかどうかを、費用と日程の両面から先に確かめておくと安心です。
四つ目、懇親会や、終わったあとの時間があること
授業の終わりが、そのまま解散になる形では、話しかける余地がほとんどありません。終了後に立ち話ができる時間があるか、懇親会が設けられているか。ここは案内ページに書かれていないことも多いので、確認する価値があります。
私たちは、会の最初に自己紹介の時間を設けています。「一人で来ても楽しめた」という感覚があると、緊張はほどけていきます。交流は偶然に起きるものではなく、場を開く側が設計するものだと考えています。
東京でスクールを選ぶとき、申し込む前に見ておきたい四点
東京はワインを学ぶ場の選択肢が多い街です。選べるということは、選ぶ基準が要るということでもあります。案内ページを読むだけでは分からないことが多いので、次の四点は問い合わせて聞いてしまうのが確実です。
1. 1クラスの人数:定員は何名か。実際の平均出席人数も聞けるとなおよい
2. 席は固定か、回ごとに入れ替わるか:入れ替わる形なら、期間中に接する人の数は増える
3. 懇親会や交流の時間があるか:授業後に残れる時間があるかどうか
4. 受講者の年齢層と、一人参加の割合:自分と近い層がいるかどうか
いずれも、答えにくい質問ではありません。むしろ、こうした問い合わせに丁寧に答えてくれるかどうかが、そのスクールの人への向き合い方を映します。返信の温度は、通い始めてからの居心地と、だいたい同じ方向を向いています。
なお、ここで挙げた四点は、スクールの良し悪しを測るものではありません。資格対策のコースは、試験に必要な範囲を期間内に扱いきる設計です。その目的に対しては、無駄のない形式が選ばれています。合う・合わないを見分けるための質問だとお考えください。
スクールとワイン会は、何が違うのか
ワインを学ぶ場として、スクールとワイン会はよく並べて語られます。ただ、この二つは同じ棚に置けるものではありません。
| ワインスクール | ワイン会 | |
|---|---|---|
| 目的 | 資格・体系的な知識 | 味わう・話す |
| 費用 | 学校・講座・開講期によって異なる | 開催回によって異なる |
| 頻度 | 決まった曜日に、期間をまとめて | 単発。気になる回に |
| 会話 | 授業の設計による | 会話があることが前提 |
| 知識の積み上がり方 | カリキュラムで縦に積む | テーマごとに横に広がる |
私たちのワイン会は、毎月テーマを変えています。テーマが変わるため、その回で伝えることも、開けるワインも変わります。体系的に積み上がる学び方ではありません。半年後にブルゴーニュの村名をすべて言えるようにはならない代わりに、その夜に飲んだ数本の記憶だけは、身体に残ります。
資格を取りたいなら、順番が変わります
目的に「資格」が含まれるなら、スクール選びの基準そのものが変わります。制度の側から先に決まる部分があるからです。
資格が第一目的なら、まず受験団体の最新の要件と、各校の開講条件を確認してください。必要な学習時間や試験内容は資格によって違います。人との交流を重視する講座と、試験の範囲を限られた期間で扱う講座では、授業中の会話の置き方も変わります。資格制度そのものはWSET Level 3 の学習時間と試験の構成とワインエキスパートは意味がないのかで分けて扱っています。
出会いの観点から、一つだけ。試験が近づくと、その場の時間の使い方は試験に向かいます。それは当然のことですし、悪いことでもありません。ただ、資格と人間関係の両方を一つの講座で満たそうとすると、どちらも半端になりやすいと感じています。目的が二つあるなら、場を分けたほうが結局は早いと思います。
人と過ごす時間が目的なら、別の入口があります
ここまで読んで、自分が欲しいのは知識よりも人と過ごす時間のほうだ、と感じた方へ。半年分の受講料を先に払う必要はありません。1回で完結する場から試すことができます。
毎月ひらくワイン会
私たちのワイン会は、これまでの開催で7割近くが一人参加です。むしろ、一人でいらっしゃる方を前提に会を組んでいます。最初に自己紹介の時間を設けているのも、そのためです。
ドレスコードは設けていません。少し綺麗目の装いでお越しになる方が多いですが、そこまで気にせず、気軽にいらしていただければと思います。
続けて来てくださる方のあいだでは、会の外で会ったり、一緒にワインを飲みに行ったり、一緒に仕事をしていたりという広がりも生まれています。ただ、先に仕事の話があったわけではありません。不動産やネットワークビジネス、保険など、明らかな営業を目的とした参加はお断りしています。まずワインを楽しみたいという動機を持っていらしてほしい、という順番です。
恵比寿の八席でひらく料理教室
参加者は20〜40代が中心、男女比はおよそ半々で、お一人での参加が多い会です。最初に自己紹介をしていただき、1品目を作って召し上がっているあいだに、私から話題を振ります。盛り上がるのは料理まわりの話が多く、「これ作ったことがある」「家で作りたいと思っていた」といった言葉から、話が横へ広がっていきます。同じ会で一緒だった方どうしが、そろって次回の回を予約されていくこともあります。
連絡先を交換される方もいらっしゃいますが、そこは個人の自由にお任せしています。既婚の方もご参加いただけますし、カップルやご夫婦でいらっしゃる方もいます。恋愛的な出会いを目的にした場ではないので、婚姻状況を気にしていただく必要はありません。
まとめ
- ワインスクールで出会いがあるかどうかは、講師や通う人の性格ではなく、授業の形式で決まります
- スクールは資格対策コース・趣味の講座・単発セミナーの三つの型に分かれ、同じ顔ぶれが続くかどうかが人間関係には効きます
- 知り合いができやすいのは、少人数・テイスティング中心・同じメンバーで続く・終わったあとの時間がある、という四つが揃ったクラスです
- 申し込む前に、1クラスの人数、席は固定か入れ替わりか、懇親会の有無、年齢層の四点を問い合わせて確かめてください
- 資格が目的ならスクール、人と過ごす時間が目的なら1回から参加できるワイン会というように、目的で場を分けるほうが結局は早く着きます
次のステップ
半年分の受講料を払って、隣の席の方と一度も話さないまま修了する。そういうことは起こり得ます。形式を先に確かめておけば、避けられることでもあります。
1回から、同じ卓で。 まずはそこから試していただければ十分だと思います。
Na Team Lab では、毎月テーマを変えてワイン会を開いています。会ごとに案内ページを作っていますので、気になった回にお越しいただく形がいちばん自然です。料理と一緒に学びたい方には、恵比寿の八席でひらく料理教室があります。どちらも、お一人での参加が多い場です。
日程や内容のご相談は、公式LINEにて承っています。ご検討の節は、こちらからお声がけください。
よくある質問
ワインスクールは、一人で通う人が多いのでしょうか?
スクール側の参加形態の統計は公表されていないため、一般論としては断定できません。Na Team Lab のワイン会では7割近くが一人参加で、料理教室もお一人での参加が多い会です。ワインを学ぶ場に一人で申し込むこと自体は、珍しいことではないと考えています。
ワインスクールの年齢層は、どのくらいですか?
スクールやクラスによって異なりますので、申し込む前に直接確認するのが確実です。Na Team Lab の場合、ワイン会は30〜40代の方が多く、60代の方もいらっしゃいます。料理教室は20〜40代が中心で、男女比はおよそ半々です。
恋愛目的でワインスクールに通うと、浮いてしまいますか?
学ぶ場では、動機の違いは自然と伝わります。私たちの教室も、料理やワインを楽しみたい方が集まる場と考えており、出会いだけを目的とした参加はお断りしています。まず関心を共有できる場を選ぶほうが、結果として人ともつながりやすくなります。
一杯の違いを、料理とともに確かめる。
少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

