夫婦で何か始めたいと思って検索すると、趣味の一覧がいくつも出てきます。旅行、キャンプ、映画、家庭菜園、ゴルフ。どれも悪くありません。それでも、読み終えたあとに何も始まらなかったという経験は、ないでしょうか。
ジャンルの一覧では、選べないのです。足りないのは候補の数ではなく、どういう趣味なら続くのかという基準です。
この記事では、夫婦の趣味が続く条件をひとつに絞り、そこから選び方を組み直します。そのうえで、毎日の延長で始められる「食卓を趣味にする」という選択をご紹介します。恵比寿で一日ひと組のレストランを営み、ご夫婦でお越しになる料理教室を開いている側から見えていることを書きます。
結論:夫婦の趣味が続くかどうかは、好みが一致するかではなく、同じ時間に同じものを味わえるかで決まります。 どちらかが教える側になる趣味は、長続きしにくいものです。上手下手が、毎回表に出てしまうからです。 その点で始めやすいのは、毎日の延長にある「食べること・飲むこと」です。 料理を一緒に習う、ワインを並べて飲み比べる。こうした趣味は、好みが違うほど会話が増えます。 二人の好みを別々に確かめて、違いを持ち寄る。それが、夫婦の趣味のいちばん軽い入口です。
あわせて、ワイングラスを形から選ぶとワインペアリングの組み立て方もご覧ください。
夫婦の趣味が続く条件は、ひとつだけ
結論を先に置きます。夫婦の共通の趣味が続くかどうかは、同じ時間に、同じものを体験できるかどうかで決まります。
好みが一致しているかどうかは、思われているほど重要ではありません。むしろ、一致を条件にすると候補がほとんど残らなくなります。片方が好きなものを、もう片方がまったく同じ強さで好きになる。そんな前提を置くと、そもそも始められません。
大切なのは、二人が同じ時間を、同じ対象に向けて過ごせるかです。
たとえば、片方だけが走りに行く趣味は、時間が分かれます。片方がゲームをして、もう片方が隣で本を読む。これも、同じ部屋にいるだけで時間は分かれています。一方で、同じ映画を観る、同じ卓で同じものを食べる、同じ説明を同時に聞く。これは時間が重なります。
教える側と教わる側に分かれると、続かない
もうひとつ、続かない形があります。どちらかが教える側になる趣味です。
片方が先に始めていた、あるいは片方のほうが明らかに上手だという趣味を二人でやると、関係が自然と上下に分かれます。教える側は良かれと思って指摘し、教わる側は毎回うまくいかない時間を過ごす。これが数回続くと、片方の足が止まります。
私はこれを、相性の問題ではなく形式の問題だと考えています。上手下手が可視化される形式を選ぶと、技量の差がそのまま関係の差になってしまう。だから、夫婦で始めるなら、上手下手が表に出ない形式を選ぶほうがよいのです。
夫婦で楽しめる趣味を、続きやすさで並べ直す

この二つの基準で、よく挙げられる趣味を並べ直してみます。費用や所要時間ではなく、「時間が重なるか」「技量の差が出るか」で見ていきます。
| ジャンル | 時間は重なるか | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 旅行 | 重なる | 回数が限られる。日常の習慣にはなりにくい |
| スポーツ・ゴルフ | 重なる | 技量の差が出やすい。片方が教える側になる |
| 映画・観劇 | 重なる | 感想を話す時間を別に作らないと、並んで座るだけになる |
| 家庭菜園 | 重なりにくい | 作業の担当が分かれ、片方の持ち物になりやすい |
| 楽器・語学 | 重なりにくい | 上達の速度差がそのまま意欲差になる |
| 食べること・飲むこと | 重なる | 「外食」で終わると趣味として積み上がらない |
こうして並べると、旅行と食事が残ります。ただし旅行は、回数を増やしにくいという弱点があります。年に一度か二度の趣味は、記憶には残りますが、習慣にはなりません。
残るのは、食べることと飲むことです。これは毎日やっていることなので、回数の心配がありません。弱点は一つだけ。外食に行くだけでは、趣味として積み上がらないということです。ここを解くのが、この記事の後半です。
「食卓」を趣味にするという選択
食べることを趣味にすると言っても、食べ歩きの記録を増やす話ではありません。毎日の食卓に、少しだけ理由を持ち込むということです。
やり方は、大きく二つあります。
ひとつは、一緒に習うこと。同じ説明を、同じ場所で、同時に聞く。片方が家で再現し、もう片方が味を見る。この往復ができると、食卓は趣味になります。
もうひとつは、並べて飲むこと。一本を順番に飲むのではなく、二本を同時に開けて見比べる。違いを言葉にしようとすると、自然に会話が生まれます。
どちらも、特別な設備は要りません。Na Team Lab の料理教室でお見せしている料理は、食材はすべて近所のスーパーで揃うもので、火器も家庭と同じIHです。お店の厨房でしか成立しない技を見せる場ではなく、家の台所に持ち帰れる形にしています。
包丁を握らない教室だと、腕の差が出ない
夫婦で料理を習うとき、いちばん心配されるのが「どちらかが得意で、どちらかが苦手」という差です。
一般的な料理教室は、実習が中心です。参加者が自分で手を動かします。この形式では、包丁の速さ、火加減の判断、作業の分担が、そのまま目に見えます。 二人で参加すると、そこに教える側と教わる側の関係が生まれやすくなります。
Na Team Lab の料理教室は、デモンストレーション型です。シェフが3品を実演し、参加者は包丁を握りません。 ですから、料理の腕の差が表に出る場面が、そもそも存在しません。
これは、ご夫婦のために用意した配慮ではありません。この形式を選んだ結果、そうなっているだけのことです。手を動かさないので手が空き、手が空くのでグラスが持てる。だから飲みながら学べる教室になっている。同じ形式から、二人参加のしやすさも出てきています。
教えているのは、レシピではありません。味見です。同じ鍋が、段階ごとにどう変わるか。どの時点で何を足したのか。それを二人で同時に味わうと、家に帰ってからの会話が変わります。「あのとき味が変わった」が、共通の記憶になるのです。
教室の条件も書いておきます。各回8名、1回6,000〜12,000円(税込・ドリンク込み)、入会金なしの1回完結、基本は12時から約2時間です。テーマ・開催日・料金は予約ページをご確認ください。 場所は恵比寿で、八席のレストランをそのまま教室として使っています。ワインは飲める方に2〜3杯ほど、ノンアルコールもご用意していて、料金は変わりません。
参加者は20〜40代が多く、男女比はおよそ半々です。お一人での参加が多いのですが、ご夫婦・カップルでお越しになった実績もあります。ご希望があれば、お二人並びに配席しています。
形式の違いについて詳しく知りたい方は、ワインを飲みながら学べる料理教室が少ない理由の記事をご覧ください。資格を目指す学び方との違いは、資格のためのワインと、食卓のためのワインの記事に書きました。
好みが違う夫婦ほど、話が続く
ここで、ひとつ考え方を裏返します。夫婦の好みが違うことは、共通の趣味にとって弱点ではありません。 食卓を趣味にする場合は、むしろ資源になります。
好みが同じ二人は、同じものを頼み、同じ感想を持ちます。会話は「おいしいね」で終わってしまうこともあるでしょう。好みが違う二人は、違う方向を選び、違う言葉で話します。すると、持ち寄るものが生まれます。
遊び方としておすすめしているのは、二人で別々に好みを確かめて、結果を見せ合うことです。Na Team Lab にはワイン診断があります。無料・全30問、所要はおよそ5分で、白5タイプ・赤5タイプのいずれかの品種タイプが提示されます。
これを、同じ部屋で別々に答えてから、結果を交換してみてください。同じものが出ることもあれば、まったく違う方向が出ることもあります。どちらでも楽しめます。同じなら一本を分け合えばよく、違うなら二本開ける理由ができます。
診断で出るのは、あくまで仮説です。グラスを並べて飲み比べて、はじめて分かります。つまり、答え合わせのための外出が必要になるということです。趣味としては、ここが都合のよいところです。確かめたいことがあると、次の予定が決まります。
ワインという趣味が続く条件そのものは、ワインの趣味は、人と飲むと続くという記事にまとめました。
二人で参加できる料理教室とワイン会
二人で出かける先を、二つご紹介します。
ひとつは、先に書いた料理教室です。土日の昼12時から2時間なので、昼に終わります。1回完結で入会金もありませんから、合わなければ次を入れなければよいだけです。夫婦の趣味を試すときに、やめやすい形から始めるのは大事なことだと考えています。
もうひとつは、ワイン会です。毎月テーマを立てて開いていて、形式は2つあります。コース料理とともに6杯を合わせる会と、10〜15本を並べて立食で楽しむ会です。しっかり料理を召し上がりたい方にはコース、交流も楽しみたい方には立食をおすすめしています。開催は19時から21時半が多く、土日も平日もあります。会費は1回15,000円から30,000円です。
この会は、7割近くの方がお一人で参加されている場です。ですから、ご夫婦でお越しになると、二人のあいだだけで完結しない夜になります。参加者は30〜40代が多く、60代の方もいて年齢の幅は広く、男女比はおよそ1対1です。会の最初に自己紹介の時間を設けています。ドレスコードは設けていませんが、少し綺麗目な装いの方が多くいらっしゃいます。
夫婦二人で話し続けるのに疲れている時期には、この「二人以外もいる」という形が合うことがあります。ワイン会の流れそのものは、7割がひとりで来ているという記事をご覧ください。
記念日に使うこともできます
料理教室は、記念日の日にご参加いただくこともできます。ただし、サプライズの演出などの特別な対応は行っていません。 ケーキやメッセージプレートのご用意もありません。あくまで通常の回に、その日ご参加いただけるという意味です。
記念日そのものをどう過ごすかについては、別の選択肢があります。興味深いのは、レストランをいろいろ食べ歩いてこられた方ほど、ある時点で「自分の家に来てもらう」という選択に魅力を感じられる、という傾向です。結婚20年目あたりのご夫婦が、ご自宅での出張料理を初めて選ばれた例もあります。
ご自宅や別邸なら、ワインの持ち込みに制約がありません。結婚した年のヴィンテージを開ける、お互いの生まれ年を並べて開ける。そうした夜の組み方もできます。記念日の過ごし方については、結婚記念日に何をするかの記事に詳しく書きました。
まとめ
夫婦の趣味は、相性を試すものではなく、同じ時間を作る仕組みです。
- 夫婦の趣味が続く条件は、好みの一致ではなく、同じ時間に同じものを体験できるかどうかです
- どちらかが教える側になる趣味は続きにくいものです。上手下手が表に出ない形式を選ぶ
- 旅行は時間が重なりますが、回数を増やしにくく、習慣になりにくい弱点があります
- 毎日の延長で始められるのが「食べること・飲むこと」。一緒に習う、並べて飲む、の二通り
- 包丁を握らない形式の教室なら、料理の腕の差が表に出る場面がそもそもありません
- 好みが違うほど、持ち寄る話が増えます。別々に確かめて、結果を見せ合う
- 1回完結でやめやすい形から試すと、夫婦の趣味は始めやすくなります
今夜、同じテーブルで二本開けてみてください。どちらが好きかが分かれたら、それが次の予定になります。
よくある質問
夫婦で趣味が合わないときは、どうすればいいですか?
趣味そのものを合わせようとせず、同じ時間を共有できる場を一つだけ持つのがおすすめです。好みは違ったままでかまいません。違いがあるほうが、持ち寄る話は増えます。合わせるのは対象ではなく、時間のほうだとお考えください。
夫婦で習い事をすると、ケンカになりませんか?
原因はたいてい、どちらかが教える側になることです。手を動かす形式だと技量の差が見えますが、見て味わう形式の教室では、腕の差が表に出る場面がそもそもありません。形式を選ぶほうが、気をつけるより確実です。
料理教室は、夫婦二人で参加できますか?
できます。Na Team Lab の料理教室はご夫婦・カップルでのご参加実績があり、ご希望があればお二人並びに配席しています。8名限定・1回完結で、入会金はありません。開催日は料理教室のページでご案内しています。
一杯の違いを、料理とともに確かめる。
少人数のワイン会で、グラス、温度、料理との関係を実際に比べます。

