ワインの飲み方を調べると、マナーの話ばかりが出てきます。けれど家で一本を美味しく飲むために必要なのは、作法ではなく順番です。温度を合わせ、グラスを選び、少なめに注ぐ。それだけで同じ一本が別の顔になります。

この記事は、恵比寿で毎月ワイン会をひらき、注ぐ側に立ってきた料理人がまとめた「飲み方の親記事」です。温度・グラス・注ぎ方の7手順に加えて、抜栓と保存、飲む量とペース、料理との合わせ方、よくある失敗までを一つにまとめ、それぞれの詳しい記事へここから入れるようにしています。

SUMMARY

結論:ワインの飲み方は、温度→グラス→注ぐ量→回す→香り→一口→料理の7手順で決まります。赤は16〜18℃で大きめのグラス、白は8〜12℃で小さめのグラス、泡は6〜8℃でフルート。注ぐのはグラスの一番広いところより下まで、氷は入れません。開けたら栓をして冷蔵庫へ、3日以内が目安。水を挟み、料理と交互に飲むと、酔いにくく、どちらの味も変わります。

ワインの飲み方は、7つの手順で決まる

ワインの飲み方に正解の作法があるわけではありませんが、美味しく飲むための順番はあります。温度を合わせる、グラスを選ぶ、注ぐ量を決める、軽く回す、香りをとる、一口を含む、料理と交互に飲む。この7つを守ると、同じ一本が別のワインのように感じられます。

手順やること理由よくある失敗
1. 温度赤は16〜18℃、白は8〜12℃、泡は6〜8℃に温度で香りと酸の出方が変わる(ワインの適温)常温の赤、キンキンの白
2. グラス赤は大きめ、白は小さめ、泡はフルートかチューリップ形で香りの集まり方が変わる(グラスの種類)何でも同じグラス
3. 注ぐ量グラスの一番広いところより下まで回す空間と香りの空間を残すなみなみ注ぐ
4. 回す手首で2〜3回、軽く空気に触れて香りが開く激しく回してこぼす
5. 香り鼻を近づけて2秒果実・花・樽の三層で捉える(ワインのアロマ)香りを取らずに飲む
6. 一口少量を含み、舌全体に広げる酸・渋み・重さを感じる(テイスティングのやり方)一気に飲む
7. 料理一口飲んで、一口食べる口の中で合わせるとどちらも変わる(ペアリングの基本)料理を食べ切ってから飲む

家で温度を整える時間の目安

適温の数字を覚えても、家に温度計がなければ測れません。家庭の冷蔵庫はおおむね3〜6℃前後なので、「冷蔵庫に何分入れるか、出して何分置くか」で考えると実践しやすくなります。

ワインスタートやること目安の温度
重めの赤室温(22〜28℃)冷蔵庫に30〜40分16〜18℃
軽めの赤室温冷蔵庫に1時間前後14〜16℃
白・ロゼ冷蔵庫で冷えた状態出して10〜15分置く8〜12℃
スパークリング冷蔵庫で冷えた状態出してすぐ。急ぐなら氷水に20分6〜8℃

飲んでいる間にも温度は上がっていきます。白や泡は、ボトルを氷水に戻しながら飲むと最後の一杯まで香りが保てます。赤は逆に、グラスの中で少しずつ温度が上がるにつれて香りが開いていく変化も楽しめます。

赤ワインの飲み方

赤ワインは16〜18℃が目安です。日本の室温は夏で28℃、冬でも22℃前後なので、「常温」のまま飲むと温すぎて、アルコールの刺激だけが立ちます。飲む30分前に冷蔵庫へ入れる、それだけで香りが整います。グラスは口が広めのものを選び、量は3分の1まで。渋みの強い赤は、開けてから30分置くか、デキャンタに移すと角が取れます。

軽い赤(ピノ・ノワールなど)は14〜16℃とやや低め、重い赤(カベルネ、シラーなど)は18℃前後。この「軽い・重い」の見分け方はワインのボディで説明しています。

白ワインの飲み方

白ワインは8〜12℃。冷蔵庫から出してすぐは6℃前後で、香りが閉じています。出して10分ほど置くと、果実の香りが出てきます。グラスは赤より小さめで、注ぐ量も少なめに。温度が上がる前に飲み切れる量を注ぎ、足していくのが基本です。氷は入れません。薄まるうえに、温度が下がりすぎて香りが消えます。

樽の香りがする白(シャルドネの一部)は12℃前後とやや高め、すっきりした白(ソーヴィニヨン・ブランなど)は8℃前後が目安です。

スパークリング・シャンパンの飲み方

泡は6〜8℃、しっかり冷やします。開けるときはコルクを回さず、瓶のほうを回してゆっくり抜きます(シャンパンの開け方)。グラスは細長いフルートか、少し膨らんだチューリップ型。持つときは脚を持ち、手の温度を伝えないようにします(シャンパングラスの持ち方)。乾杯でグラスをぶつけないのが、いまの作法です。

グラスの持ち方と、香りのとり方

グラスは、脚(ステム)の部分を持つのが基本です。ボウル(膨らんだ部分)を手のひらで包むと、体温でワインが温まり、指紋で色も見えにくくなります。脚のないタンブラー型のグラスなら、下のほうを軽く持ちます。

香りは2回とります。注いですぐ、グラスを回さずに一度。次に、テーブルにグラスを置いたまま小さく2〜3回まわして、もう一度。1回目は軽く立ちのぼる香り、2回目は空気に触れて開いた香りです。この差が大きいワインほど、時間をかけて飲むと表情が変わります。口に含んだら、すぐに飲み込まず、舌の上で少し転がしてから飲むと、酸・渋み・甘さの釣り合いが分かります。

抜栓の基本 ― コルク・スクリューキャップ・泡

美味しく飲む準備は、開けるところから始まります。コルクの赤や白は、ソムリエナイフで開けるのがいちばん確実です。

  • キャップシール(瓶の口を覆う薄い膜)を、瓶口の出っ張りの下でぐるりと切って外す
  • スクリューの先をコルクの中心に当て、まっすぐねじ込む。最後の一巻きを残して止めると、コルクを突き抜けない
  • てこの一段目を瓶の縁に掛けてコルクを半分引き上げ、二段目に掛け替えて残りを引く
  • 最後は手でコルクを揺らしながら静かに抜く。「ポン」と音をさせないほうが、ワインが暴れない

スクリューキャップは、ボトルを持ってキャップを回すだけで開きます。品質が劣るわけではなく、白ワインを中心に多くの生産者が採用している栓です。コルクが途中で折れたときは、押し込む前にコルクが折れたときの対処を試してください。スパークリングやシャンパンは、コルクではなく瓶のほうを回してゆっくり抜きます。手順はシャンパンの開け方で説明しています。

開けたら、まず香りを確かめる

抜栓したら、グラスに少しだけ注いで香りを確かめます。湿った段ボールやかびのような匂いがしたら、コルク由来の劣化(ブショネ)の可能性があります。果実の香りがほとんどせず、茶色がかった色で、ひねた酸味がある場合は、保管中の熱や酸化で傷んでいることも。こうしたワインは、温度やグラスを整えても戻りません。お店で買ったものなら、ボトルと栓を残して購入先に相談してください。

複数のワインを飲むときの順番

ワイン会や家族の集まりで何本か開けるときは、順番で印象が大きく変わります。基本は「軽いものから重いものへ」です。

原則順番理由
種類泡 → 白 → 赤 → 甘口先に重いものを飲むと、あとの繊細な香りが拾えなくなる
重さ軽い → 重いボディの軽いワインを先に。ピノ・ノワールの後にカベルネ
味わい辛口 → 甘口甘口の後の辛口は、酸っぱく感じやすい
熟成若い → 熟成熟成したワインの複雑な香りを最後に味わう

料理のコースと同じ考え方です。前菜には泡や白、魚には白、肉には赤、デザートには甘口。料理の流れに合わせると、自然とこの順番になります。

飲む量とペース ― 1杯は何ml、ボトルは何杯か

ワインの1杯は、レストランでは90〜125ml前後が一般的です。750mlのボトル1本で、おおよそ6杯分。2人で1本を開ければ、1人3杯ずつになります。グラスの一番広いところより下まで注ぐと、ちょうど1杯分に収まります。

ワインは度数が12〜14%と、ビールの2〜3倍あります。大きなグラスになみなみ注ぐと、1杯のつもりが2杯分になっていることもあります。ペースを落とすいちばん簡単な方法は、ワイン1杯に水1杯を添えること、そして料理と交互に飲むことです。酔いやすさの理由と適量の目安はワインは酔いやすいのかで、カロリーや糖質はワインのカロリー・糖質一覧表で詳しく書いています。

飲み比べの会では、1種類あたり20〜40mlほどを少しずつ注ぐことが多く、5種類を飲んでもグラス1杯分程度に収まります。量より種類を楽しむ飲み方なので、お酒に強くない方にも向いています。自分のペースを守るために、最初に「今日は何杯まで」と決めておくのもひとつの方法です。

乾杯のスパークリングは、グラスの脚を持ち、目の高さに軽く掲げます。グラス同士を強くぶつけないのが、いまの作法です(シャンパングラスの持ち方)。

料理と合わせる基本 ― 4つだけ覚える

料理人の立場から言うと、ペアリングの理屈は多くありません。家の食卓で使うなら、次の4つで十分です。

考え方やること例
色を合わせる料理の色とワインの色を近づける白身魚に白、赤身肉に赤、サーモンにロゼ
重さを合わせる軽い料理に軽いワイン、濃い料理に重いワイン塩焼きに軽い白、煮込みにしっかりした赤
酸で脂を切る脂のある料理に酸のあるワイン揚げ物に泡、クリーム煮にすっきりした白
甘さはワインを上にデザートにはデザートより甘いワイン辛口を甘い菓子に合わせると、ワインが酸っぱく感じる

迷ったら、料理の「いちばん強い味」に合わせます。醤油の甘辛いたれなら果実味のある赤、レモンを搾る皿なら酸のある白。詳しい型はワインペアリングの基本にまとめました。

和食やチーズと合わせるとき

和食には、出汁のうま味と同じ方向を持つワインがよく寄り添います。刺身や白身の塩焼きにはすっきりした白や泡、焼き鳥のたれや照り焼きには軽めの赤。醤油は少量ならワインを邪魔しませんが、わさびや強い酢は渋みを際立たせるので控えめにします。チーズは、フレッシュなものに白、熟成したハードタイプに赤、青かびのチーズに甘口という組み合わせが外れにくい定番です。

家で美味しく飲むための道具

道具必要度目安補足
グラス(赤用・白用の2種)必須1脚1,000〜3,000円兼用なら中くらいの白用を1種類
ソムリエナイフ必須1,000円前後コルクが折れたときの対処はこちら
ワインストッパーあると便利500円前後開けたワインの保存は保存方法へ
温度計あると便利1,000円前後慣れるまでは温度を測ると早い
デキャンタなくていい3,000円〜渋い赤を開かせたいときだけ(デキャンタの使い方)

デキャンタは必要か ― 空気に触れさせる時間

家でデキャンタを使う場面は、多くありません。渋みの強い若い赤を開けて硬いと感じたら、グラスに注いで10〜15分置くだけでも印象は変わります。それでも閉じている赤や、澱(おり)の出た熟成ワインのときに、デキャンタが役に立ちます。白や泡は、基本的にそのまま注いで構いません。使い方はデキャンタの使い方で説明しています。

開けたワインの保存

飲み切れなかったワインは、栓をして冷蔵庫へ。赤も白も3日以内が目安です。ワインは空気に触れると酸化が進み、果実の香りが抜けていきます。残りが少ないほどボトルの中の空気が多くなるので、半分以下になったら翌日までに飲み切るのが安全です。

スパークリングは専用のストッパーで栓をすると、泡が1〜2日は保ちます。赤は冷蔵庫から出して30分ほど置き、温度を戻してから飲みます。未開栓のワインは、光の当たらない涼しい場所に横に寝かせて保管します。詳しくはワインの保存方法で説明しています。

よくある失敗と、その直し方

失敗何が起きるか直し方
氷を入れる薄まり、温度が下がりすぎて香りが消える氷水を張ったボウルにボトルごと10分
赤を常温で飲む日本の室温では温すぎ、アルコールの刺激が立つ飲む30分前に冷蔵庫へ
グラスになみなみ注ぐ回せず、香りの空間がなくなる。飲む量も分からなくなる一番広いところより下まで
白をキンキンに冷やす香りが閉じ、酸だけが立つ冷蔵庫から出して10分置く
甘い料理に辛口を合わせるワインが酸っぱく感じるデザートには甘口を
空腹で飲み始める酔いが早く回る最初の一皿が来てから飲む
開けたまま放置する翌日には香りが抜ける栓をして冷蔵庫へ。3日以内に

どれも、知っていれば今日から直せることばかりです。高いワインを選ぶより、温度とグラスと量を整えるほうが、一本の美味しさは確実に上がります。

ワイン会・レストランでの飲み方

お店やワイン会では、ワインは注いでもらうのが基本です。注いでもらうときはグラスを持ち上げず、テーブルに置いたままで構いません。量が多いと感じたら「少なめで」と伝えて大丈夫です。失礼にはなりません。

ボトルで頼んだとき、最初に少量を注がれて味見を求められることがあります(ホストテイスティング)。これは好みを判断する場ではなく、ワインが傷んでいないかを確かめるためのものです。香りを嗅いで、ひと口含んで、問題がなければ「お願いします」と伝えるだけで十分です。ワイン会という場の流れはワイン会という場の流れと作法にまとめています。

ラベルの読み方と選び方

飲み方を覚えると、次は選び方です。ラベルは全部読まなくて構いません。産地と年号、それに辛口かどうかの表示を見るだけで、味の方向が読めます(ワインラベルの読み方)。赤・白・ロゼ・泡の違いはワインの種類で、度数の見方はワインのアルコール度数で説明しています。

一人で覚えるより、隣で見るほうが早い

飲み方は本で読むより、注ぐ人の手元を見るほうが早く身につきます。温度が2℃違うと何が変わるのか、同じワインをグラスを替えて飲むとどう変わるのか。Na Team Labのワイン会では、料理人が注ぎながらその場で説明します。参加者の7割がお一人で、ワインの知識は要りません。まずはワイン初心者が最初に持つ三つの軸から始めるのもいいですし、飲み比べで違いを体で覚えるのも近道です。

よくあるご質問

ワインに氷を入れてはいけませんか?

薄まるうえに温度が下がりすぎて香りが消えるので、おすすめしません。冷やしたいときは、氷水を張ったボウルにボトルごと10分つけると、味を変えずに温度だけ下がります。

開けたワインは何日で飲み切ればいいですか?

栓をして冷蔵庫に入れ、赤も白も3日以内が目安です。残りが少ないほど空気に触れて劣化が早いので、半分以下になったら翌日までに。詳しくはワインの保存方法の記事で説明しています。

グラスは何を買えばいいですか?

最初の1脚は、口がすぼまった中くらいの白ワイン用を選ぶと、赤にも泡にも使えます。2脚目に大きめの赤用を足すと、香りの違いが分かるようになります。1脚1,000〜3,000円で十分です。

ワインボトル1本はグラス何杯分ですか?

750mlのボトルで、1杯90〜125mlとするとおおよそ6杯分です。グラスの一番広いところより下まで注ぐと、ちょうど1杯分に収まります。

複数のワインはどの順番で飲めばいいですか?

泡、白、赤、甘口の順が基本です。同じ種類なら軽いものから重いもの、辛口から甘口、若いものから熟成したものへ進むと、それぞれの香りを拾いやすくなります。

飲み方を、もう一歩

量・温度・グラス

開ける・残す・寝かせる

苦手・アレンジ

楽しむ場と日

Na Team Lab オーナーシェフ 川原壯太
ABOUT NA TEAM LAB Na Team Lab|株式会社Na Team

東京・恵比寿を拠点に、出張料理・店舗貸切・料理教室・ワイン会を展開。料理、ワイン、空間、その日の時間までを設計し、食を通して心に残る体験をつくっています。

執筆:(オーナーシェフ)。年間200件を超える出張料理・会食の経験をもとに、現場の視点をお伝えします。

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飲み方の違いを、同じ卓で。

温度とグラスで一本がどう変わるかを、注ぐ側の説明つきで実際に飲み比べます。

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